ケッペンの気候区分

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Updated Köppen–Geiger climate map[1]
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ケッペンの気候区分(ケッペンのきこうくぶん、Köppen-Geiger Klassifikation)は、ドイツ気候学者ウラジミール・ペーター・ケッペンが、植生分布に注目して1923年に考案した気候区分である。

特徴

ケッペンが植生分布に注目して考案した気候区分は、気温降水量の2変数から単純な計算で気候区分を決定できることに特徴がある。

  • 分類基準が明確で簡便
  • 植生、風土の特徴を反映している
  • 立地条件など気候の成因と相関している

など扱い易い上に有用な分類法であり、現在でも気候産業文化農業を論ずる上で欠かすことができない。ただし、簡便であるが故に大雑把過ぎる分類になってしまう点は短所でもある(例えば、日本においては青森市と那覇市が同じ分類となる)。

歴史

1884年に発表した論文では、季節ごとの温度分布を測定点ごとに示した単純なものであった。1900年に気候区分を拡張、1918年に今日知られている区分とほぼ同じ区分を公表した。この時点ではAからEまでの気候区分が定められていた。1936年に最後の論文を公表した。現在は、トレワーサーなどによりH(高山気候)を追加するなどの補正が加わっている。

ケッペン以外の気候区分も考案されている。1879年に公表されたズーパンの気候区分は、年平均気温のみで気候を区分していた。1950年以降はケッペンのような結果としての気候ではなく、気候の成因(原因)から分類する試みが続いている。1950年にはヘルマン・フローンが風系(季節風)を加味した区分(=フローンの気候区分)を、同年アリソフは気団や前線帯の位置を生かした区分(=アリソフの気候区分)を、1960年にはヘンデルが大気の大循環を考慮に入れた気候区分を発表した。

気候型の判定法

気候型を区分するには各月毎の平均気温と降水量のデータがあればよい。気温を折れ線、降水量を棒グラフで示した雨温図や、縦軸に気温、横軸に降水量をとった座標上に各月のデータをプロットしたハイサーグラフから読み取るのが便利である。

判定には、まず一般的な樹木が生育するのに必要な最低限の降水量があるかどうかを見る必要がある。この基準を乾燥限界といい、以下の計算式から求められる。計算式の違いは季節ごとの水分の蒸発量を考慮したもので、夏季は水分がすぐ蒸発するため乾燥限界を大きくして調整をはかっている。

気候帯

樹林気候と無樹林気候

樹林気候 寒帯(E) 無樹林気候
亜寒帯(D)
温帯(C)
乾燥帯(B)
熱帯(A)

5つの気候帯があり、低緯度から順に(赤道から極地に向け)A - Eと符号が付けられている。

乾燥帯(B)と寒帯(E)は樹木が生育できず、無樹林気候にまとめられる。ただし、無樹林気候と判別される基準はそれぞれで異なる。それらを除いた熱帯(A)・温帯(C)・亜寒帯(D)は、森林が生育する樹林気候(湿潤気候)にまとめられる。 年間降水量が500㎜未満ならBである。

乾燥帯(B)の判定

まず、最暖月の平均気温が10以上であること(寒帯では無いこと)。次に、乾燥帯であるかどうかを判定する。判定式 で得られる乾燥限界を年平均降水量が下回っていれば、乾燥帯である。

記号の意味は以下のとおり。

  • - 乾燥限界 / mm
  • - 年間平均気温 /
  • - 以下の降水パターンの条件により決まる項
w(冬季乾燥/夏雨) 最多雨月が夏にあり、10×最少雨月降水量<最多雨月降水量
s(夏季乾燥/冬雨) 最多雨月が冬にあり、3×最少雨月降水量<最多雨月降水量かつ最少雨月降水量が30mm未満
f(年中湿潤/年平均降雨) wでもsでもない

寒帯(E)の判定

最暖月平均気温が10℃未満(樹木が育たない)なら寒帯となる。降水量は考慮しない。

樹林気候(A/C/D)の区別

乾燥帯でも寒帯でもない、つまり年平均降水量が乾燥限界を上回り最暖月平均気温が10℃以上ならば樹林気候(湿潤気候)である。

最寒月・最暖月平均気温を基準にして以下のように区分する。

  • A熱帯) - 最寒月が18℃以上(ヤシが生育できる)
  • C温帯) - 最寒月が-3℃以上18℃未満かつ最暖月が10℃以上(冬季の積雪は根雪にならないが、ヤシが生育するほどでもない)
  • D亜寒帯) - 最寒月が-3℃未満かつ最暖月が10℃以上(冬季の積雪は根雪になるが、樹木は生育できる)

高山気候(H)

高山気候(H)もしくは山地気候(G)が区別されることがあるが降水量や気温から判別されるものではなく、ケッペンの気候区分とは相容れないものである。

気候区

気候帯はそれぞれいくつかの気候区にさらに分類される。気候区の判定基準は樹林気候、寒帯、乾燥帯のそれぞれで異なるが樹林気候の3つの気候帯ではまったく同じではないもののよく似ている。

樹林気候(A/C/D)の気候区

A、C、Dの気候区は以下のようになるがA(熱帯)とC(温帯)・D(亜寒帯)では基準値が異なる。

  • f - feucht(湿潤)
  • m - Mittelform(中間) - 熱帯のみ
  • w - wintertrocken(冬に乾燥)
  • s - sommertrocken(夏に乾燥)
温帯(C)と亜寒帯(D)の気候区
  • w(冬季乾燥/夏雨) - 最多雨月が夏にあり、10×最少雨月降水量<最多雨月降水量
  • s(夏季乾燥/冬雨) - 最多雨月が冬にあり、3×最少雨月降水量<最多雨月降水量かつ最少雨月降水量が30mm未満
  • f(年中湿潤/年平均降雨) - wとsのどちらでもない

それぞれ、最暖月平均気温によってさらに細分される。

  • a - 最暖月が22℃以上。
  • b - 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が4か月以上
  • c(温帯) - 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3か月以下
  • c(亜寒帯) - 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3か月以下かつ最寒月が-38℃以上-3℃未満
  • d(亜寒帯) - 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3か月以下かつ最寒月が-38℃未満

なおトレワーサは亜寒帯をまず最暖月平均気温によりa - dに分け、それをw/s/fに分けた。

乾燥帯気候(B)の気候区

WはWüste(砂漠)、SはSteppe(ステップ)の頭文字。

年平均気温によってさらに細分される。

  • h - 年平均気温が18℃以上
  • k - 年平均気温が18℃未満

hはheiß(暑い)、kはkalt(寒い)の頭文字。

寒帯気候(E)の気候区

  • ETツンドラ気候) - 最暖月平均気温が0℃以上10℃未満(夏の間だけコケなどの地衣類が生育する)
  • EF氷雪気候) - 最暖月平均気温が0℃未満(植物の生育はない)

TはTundre(ツンドラ)、FはFroste(氷点下)の頭文字。

気候型と植生

上の記号の組み合わせにより、次のような区分ができる。

気候図

参考文献

脚注

  1. ^ Peel, M. C. and Finlayson, B. L. and McMahon, T. A. (2007). “Updated world map of the Köppen–Geiger climate classification”. Hydrol. Earth Syst. Sci. 11: 1633–1644. doi:10.5194/hess-11-1633-2007. ISSN 1027-5606. http://www.hydrol-earth-syst-sci.net/11/1633/2007/hess-11-1633-2007.html.  (direct: Final Revised Paper)

関連項目

外部リンク