ケソンプティ
ケソンプティ(Kesong puti)はフィリピンのカッテージチーズ。ラグナ州で盛んに作られる事から、ラグナチーズとも呼ばれる[1]。
タガログ語でkesoはチーズ、putiは白であり、「白いチーズ」を意味する[1]。キメの細かい絹ごし豆腐のような食感を有する[2]。
特徴
ケソンプティはカラバオという水牛の乳を原料とし、16世紀から作られていた[3]。スペイン統治時代に、スペインからチーズの製法が伝わったとみられる[4]。ルソン島のラグナ州やセブ島ではレンネット、ルソン島のブラカン州とカヴィテ州では酢酸を凝固に用いており、この2つに製法は大別される[1]。前者は少し甘苦く、後者は塩味と酸味、ミルクの味が混ざったような味とされる[2]。
水牛は全世界の保有頭数の96%がアジアで飼育されており、中でもカラバオは東南アジアにしかいないため、ケソンプティは同地域に固有のチーズである[1]。一方で、乳牛としての水牛は絶対数が少ないうえ、農業機械の導入によって水牛の飼育は減少傾向にあり、ケソンプティの生産は家内工業レベルの小規模なものにとどまっている[1]。カラバオからは1日平均1Lほどしか乳が得られないが、乳脂肪は10%を超え、タンパク質も多い[4]。このため、ケソンプティはチーズの中でも栄養が豊かである[4]。
製法
酵素法
集荷したカラバオ乳はチーズ布でろ過し、70-80°Cで2分間処理するパスチャライゼーションによって加熱殺菌を行う[2]。室温まで冷却されたら、2Lの乳に対して0.5Lのレンネット液を加える[2]。レンネット液は、洗浄した子牛の第4胃を室温のホエーに1夜漬けるか、5日間水に浸けて調製する[2]。また、ラグナ州では子牛の胃袋の代わりにニワトリの砂嚢を用いる地域もある[2]。
乳にレンネット液を加えて30-60分経つとカードが生成されるので、網目のある容器に移して1時間ぐらい置き、ホエーを流出させる[2]。このカードをバケツ状の容器に移し、食塩を加えて強く手で撹拌すると、とろみのある液体になる[2]。バナナの葉で作った4-5cmの角形容器にこれを流し込み、しばらく放置してから再びホエーを除く[2]。バナナ葉で蓋をし、それを数個まとめてビートルナッツの乾燥した葉で包んで完成となる[2]。
有機酸法
集荷されたカラバオ乳は、2時間以内に製造に回される[1]。容積30mlほどの小さなコップに乳を入れ、40-45°C(地域によっては60°C)に温めた酢酸液に投入する[1]。なお、酢酸液は1ガロンの水に対して酢酸50mlを加えて約1.2%に調製し、3-4回使用したら交換する[5]。
直ちに凝固するので小型容器に入れて杵で成形し、食塩水に入れて30-60分ほど浸漬させる[1]。この食塩水は、3Lの水に対して1Lの食塩を加えて作る[6]。1個ずつ、ないし数個まとめたケソンプティをバナナの葉に包んで完成となる[6]。1軒の農家で1日に100Lのカラバオ乳を使い、5,000個のケソン・プティが作られる[6]。
脚注
参考文献
- 小崎道雄、Priscilla C. SANCHEZ、Erlinda I. DIZON「フィリピンのカテージチーズ ケソンプティ」『日本食品保蔵科学会誌』第27巻第4号、日本食品保蔵科学会、2001年、211-221頁、doi:10.5891/jafps.27.211。