グラスハート

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グラスハート』 (GLASS HEART) は、若木未生による日本ライトノベルシリーズ。イラストは橋本みつる羽海野チカ藤田貴美

概要[編集]

1993年、雑誌「コバルト」(集英社)にて読み切り『グラスハート a piece of introduction』が掲載され(2月号「特集 若木未生スペシャル・エディション」)、同年8月号に『グラスハート2 the BAND has no name』が掲載され、シリーズ化された。単行本は、1994年に第1巻『グラスハート』が集英社のコバルト文庫から刊行された。

2001年から第2期としてシリーズ名表記を『GLASS HEART』に改める。雑誌掲載分は『ラッキースター』(同誌2001年6月号)、単行本では『冒険者たち』よりイラスト担当が橋本みつるから羽海野チカへ交代となる。

2009年、最終巻が幻冬舎バーズノベルスから刊行された。イラスト担当は藤田貴美へ交代となる。2010年2月より、コバルト文庫から刊行された分を藤田のイラストに統一して一部書き下ろしを追加し、順次バーズノベルスから刊行。2011年2月にコバルト文庫既刊分の出版が終了した。今後は「ボーナストラック」としての番外編を1冊書き下ろす予定[1]とされていたが、12年越しの2023年12月に『アグリー・スワン』が四六判ソフトカバーで幻冬舎コミックスより刊行。

2025年配信予定でNetflixで実写ドラマ化されることが発表された[2]

あらすじ[編集]

所属していた学生バンドを「女だから」というだけの理由でクビになった西条朱音の元に、一本の電話がかかってくる。「大至急あんたのドラムが欲しい」「すでにメジャーデビューが決まっている」との言葉に半信半疑の朱音だが、その電話の主が音楽業界では有名な藤谷直季である事を知る。約束のままに翌日、藤谷・高岡尚坂本一至と合流し、朱音は新しいバンド「テン・ブランク」になし崩しで参加する事に……。

天才藤谷の元、デビューから順風満帆な活動をしている様に見える「テン・ブランク」。しかしその中では、メンバーそれぞれが音楽に対し、お互いに対して様々な思惑や葛藤を持っていた。曲作りやライブを重ねる度に成長する朱音の姿や、それをとりまく人間模様が描かれている。

主な登場人物[編集]

TEN BLANK(テン・ブランク)[編集]

西条朱音(さいじょう あかね)
11月23日生。最終巻(『イデアマスター』時。以下同様)で18歳。主人公。一人称は「西条」か「あたし」。TEN BLANK(テン・ブランク)ドラマー。スティックはヒッコリーを愛用している。本作スタート時は高校2年生(17歳)で、『コゴエ ノ イロ』で大学に無事合格。
中学の音楽教師である父とフリーの音楽誌ライターである母、坂本と同学年の兄を持つが、6歳頃に親が離婚しており、現在母親と2人暮らし。両親の音楽の趣味がほぼ正反対だったため、ロックやポップス以外にクラシック音楽も聞いて育つ。父親の意向もあって、音楽に関わる物(ステレオコンポや楽器類)にはあまり不自由したことがない。3歳から10年間クラシックピアノを習っていた。食べ物の好き嫌いは特にないが、強いて挙げるならメロンマスカットといった、値段の高い果物が苦手。
自宅は新宿御苑付近のオートロック・マンションで、最寄の地下鉄駅は新宿御苑前駅
前バンド「テディ・メリー」ではキーボードだったが、理不尽な理由でクビになる。が、その直後に藤谷側から連絡があり、それがテン・ブランク加入のきっかけとなった[注 1]。ただし、完全に「テディ・メリー」と縁が切れたわけではなく、メンバーの1人で彼女をバンドに引き込んだ張本人でもある高校の上級生・羽原ヒロマサ[注 2]とは、藤谷の過去のインタビュー記事をかき集めてもらったりするなど、関係が続いていた。
元々高岡尚の大ファンであり、Z-アウトのツアーはサポートの高岡目当てに追っかけをしたこともある。地の文では「尚」と呼び捨てにしているが、ファン心理が働くためか、高岡が相手の会話だと受け答えや態度が変化することも。作中中盤にかけて「音楽の神様」藤谷に惹かれるが、終盤で坂本と恋仲になる。『海と黄金』ラストより1年後には坂本と結婚、同居している。
高岡曰く「本能」でドラムを叩くため、クリックトーンがあっても若干つんのめったようなリズム(藤谷は「変なタイム感」、ユキノは「躊躇がない」「じぶんをまもらない」と評する)になるが、一度叩き始めたらリズムキープはできる。そのドラムを高岡は「バンドの要」と評し、ヒビキは「藤谷さんの中で一番(の理想)」と評した。ライブのように声(ボーカル)が傍にある状態で叩くとその本領を発揮できる模様。なお本人は、ファンでありスタジオ・ミュージシャンとして定評のある高岡をはじめとする「雲の上の人」に囲まれていると認識している節がある。
真崎桐哉には、出会った当初の会話から「野望娘」と呼ばれることがある(途中で1度「無謀娘」に格下げされた)。
TBの活動停止期間に、坂本のプロデュースで10曲入りのソロアルバムを作った。ゲストミュージシャンには真崎や高岡、藤谷がいる上、藤谷の策略で1曲歌っている。
高岡尚(たかおか しょう)
9月17日生。最終巻で26歳(『ラッシュ』で27歳)。一人称は「俺」(時々「ワタシ」)。極まれに藤谷から「ショウタ君(尚太君とも表記)」と呼ばれる。テン・ブランクギタリストで、たまに作曲したりベースも弾く。バンド内最年長者。そのため最年少である朱音との年齢差からくる「感覚の違い」を気にする描写も。「いい曲が弾ければ経緯は関係ない」主義。藤谷に「先生」というあだ名をつけた張本人で、後にマネージャーや朱音といった関係者に伝染する。
実家は手打ち蕎麦屋で、3兄弟の長男(実家は上の弟が継ぐ。下の弟は小劇団員[3])。父親が『ストロボライツ』の頃に脳梗塞で倒れたため、一時的に仕事を調整して実家のヘルプに入っていたことがある(後に他界)。成人式に行かなかったクチらしい。メンバー唯一の自動車免許持ち(車は楽器車としても使用するためタウンエース)で、16歳からバイクにも乗っている。1人で移動する時は単車が多い(朱音曰く、「ファンとしては複雑」[注 3])。
マイナー時代はバンド「マイルス・ヴェール」のメンバーとして活動(初期ボーカルの周防タカシはその後ソロで活動している)。当時大学生だったが、バイトとバンドに明け暮れており、ほぼニセ学生だった模様。「マイルス・ヴェール」活動末期に偶然路上で藤谷と出会い、バンド活動に誘うが、振られている。バンド解散後は、玄人受けのよいスタジオ・ミュージシャンとしてアイドル・神取アキや人気バンド「Z-アウト」などにサポートで参加。この頃にある事情から、上山源司がチーフ・マネージャーを務めるバンド「ブーギーズ」のレコーディングにも参加している。
大学を卒業した藤谷の誘いに乗り、新たにバンド活動をスタートすることに。その際、藤谷との活動に専念するため、「Z-アウト」のサポートなどの契約を一旦白紙にし、事務所を移籍した。神宮前の通称「藤谷スタジオ」で坂本・藤谷と共同生活をしているが、2人の生活習慣があまりに杜撰なためお母さん的存在と化している(後に、元々住んでいた世田谷区の防音マンションに戻った)。バンドが活動縮小し始めた頃からサポートの仕事で入ったボーカリスト・香椎理多の曲と声が気に入って、自ら日程を調整しライブやレコーディングのギターを積極的に受け持つ。後に恋仲となり、理多が高岡のマンションで寝起きするようになったが、その後とある事情から千駄ヶ谷のマンションへ移った。
忙しい時ほど部屋の中や台所を片付けてしまうタイプ。「楽器の練習をしない」「楽器を愛していない」人間が気に入らない。実はバックコーラス程度なら歌えるのだが、それを知った藤谷に「歌えるのに歌わないのは詐欺」と非難されたことがある。
長い茶髪がトレードマーク(煙草に火をつける際、ライターから毛先に燃え移って「かちかち山」状態になったこともあるらしい)。煙草セーラムライトを好む(以前はマイルドセブンキャメルを吸っていた)が、喘息持ちの坂本や、ボーカルの藤谷への気遣いでピックをくわえている事が多い。
基本的にお節介な性格で、喧嘩っ早い側面を持ち、冷静でいようと、かつて性格を改造したらしいが、その分、楽器の音が喧嘩腰になる(朱音とその母は、Z-アウト時代に気づいていた)。その「喧嘩腰なんだけどどこか人懐っこい」音は、モモコに「藤谷の音楽性と合ってないんじゃない?」と評されるが、藤谷にとって「自分とは異質」であるが故に必要らしい。そのため、藤谷とは「楽器の音色」で喧嘩を繰り広げることが多い。藤谷の音に飲まれることなく自分の音を出すことができるが、それでも「藤谷の曲」の根幹部分を自分なりに感じ取り、そこだけは崩さないようにしている。
手が空いているときは、大抵床に座ってギターを抱えている。いくつかのギターメーカーとモニター契約していることもあって、常にギターは複数持つ[注 4]。また、中期以降のピックは白色で「TB」のロゴを彫り込んだオリジナルデザインの物を使う。
マネージャー・甲斐の退社後、上山が来るまでブランクがあったが、彼が藤谷のスケジュールをある程度把握していたため、何とかなっていた節がある。また、メンバー内では藤谷と一番付き合いが長いため、藤谷の暴走を止めるために喧嘩することもしばしばあり、藤谷に執着する面々を「ストーカー」と認識している。また、朱音が自身のファンであることを知ってからは、彼女をおもちゃにして遊ぶことも。当初は、朱音を含め基本的に名字で呼んでいた(上山のみ「源司」)が、マネージャーの上山が「アカネ」呼びしていることと、朱音が坂本と結婚し「坂本」姓が2人になったため、上山に倣い「アカネ」呼びに変えた(「さん」づけはしたりしなかったりまちまち)。朱音と坂本の遊び半分の提案に乗って、ギターソロを3つ即興で作るというお茶目な一面もある。
自身を「プレイヤー体質」と評し、朱音が来るまでは、アーティスト気質の藤谷・坂本に「バンド」のイロハを1人で教育する羽目になっていた。また、天性の才能を持つ他の3人と比べて、自分が「凡人」であると感じているが故に、努力を怠らない。心の中の優先順位は、恋人である理多の仕事よりバンドの仕事のほうが上。ただしどちらもやりたいので、藤谷が言うところの「二股」は両立させるつもり。
坂本一至(さかもと かずし)
2月6日生。朱音のひとつ年上で、最終巻で19歳。一人称は「俺」。朱音は普段「坂本くん」と呼ぶが、たまに「先輩」と呼ぶ。テン・ブランクキーボード担当。主な使用機材はローランド。中盤からはマッキントッシュでも打ち込み作業をする。新機種には目がなく、発売されると足しげく楽器屋に通う。ピアノは朱音が羨ましがるほどの腕前だが、独学であるため、本人に言わせると「癖がありすぎ」るので、「普通に弾けるようになりたい」らしい。元々多重録音オタクであり、どの楽器もそれなりに弾きこなせるが、本職はドラムでメトロノームのように正確にリズムを刻む。しかし後述の喘息のため、ドラムを叩くことは少ない。バンドでは「傍若無人に弾きとばすソロプレイ」を身上とし、主にシンセサイザーの打ち込みと、一部の楽曲の作・編曲を担当する。藤谷経由で届くプリプロの打ち込みも仕事としており、アレンジ作業を「音と自分のケンカ」と表現する。『アグリー・スワン』第三章の頃(バンド再開後)には、アニメ映画のサントラを手がけている。
耳がいいので、テープを聴いただけでパート毎に分析できてしまい、音の細かいニュアンスにこだわる癖がある。ライブ前のリハーサルで少し距離のある場所から朱音のヘッドホンのクリック音を聞き取る、ライブの観客の歓声のベクトルがバラバラなことに困惑する、野音ライブの音の調整に手こずるなど、耳がよすぎるゆえのエピソードもある。
藤谷との出会いは、彼が何処かのコンテストに送ったデモテープを入手した藤谷が、全面的に曲を改変し、そのテープを坂本に送りつけて喧嘩を売ったこと。そのテープの、跡形もなく改変された曲を1度だけ聴いた坂本が、怒りのあまりテープをずたずたにした挙句早朝に藤谷の家に怒鳴り込んだらしい。藤谷の才能に嫉妬すると同時に人一倍尊敬もしている。そのため彼を意識しすぎて、真崎に「ミニ藤谷」と例えられたことも。
外見は眼鏡をかけたボサボサ頭ゆえに、合流当初の朱音には野比のび太に形容された。視力は0.1以下でコンタクトレンズは苦手だが、使い捨てレンズを作ったことがある[3]。常に吸入器を携帯しているほどの喘息持ちで、気候と体調・精神状態によっては発作を起こすことがある。それに加えて引きこもりがちなため、心配性の母から過度の愛情を受けており、逆にそれを負担に感じている。家族構成は両親のほかに3つ年上の兄(大学の医学部在学)がいる。父親は医者であり、息子達も医者になるべきと厳しく躾けられてきたが、父親が「子供は殴って言うことを聞かせる」主義だったため、兄は、好き勝手している坂本を度々殴って言うことを聞かせようとする。また、自身の家族を「音感のかけらもない」と評する。家族との確執を見られてしまったことがある朱音の精神的な強さを「軽騎兵みたいだ」と評した。
有名な6年制の男子校に籍を置くが、中学受験で疲れ果て、中学時代から「出席日数のかけらもない」状態であるため、自分の学年を把握していない(最終的に高校中退。通っていたのは私立祥英高校[3])。
料理や家事は得意でなく、食事はたいてい外食か出前、コンビニ弁当などで済ますが、中盤以降は彼を気遣った西条母の計らいで、西条家で食べることもある。藤谷との共通点は、集中すると休憩や食事を忘れることと、納豆が苦手なこと。また、根本的に藤谷と同じアーティスト気質なため、作曲中は外野には意味の分かりづらい会話を披露することも多い。
作中終盤で自身が藤谷に甘えていたことに気づき、「藤谷スタジオ」を出る決心をする(その後、高田馬場付近にある、防音完備の小さなアパートで1人暮らしを開始)。また、バンド活動停止中も、藤谷との仕事(主に作曲)は続いており、楽譜やパソコンデータを通しての「交換日記」のような物をやっていた。
藤谷直季(ふじたに なおき)
2月28日生。最終巻で25歳。一人称は「僕」か「俺」。通称「先生(センセイとも表記)」(名付け親は高岡)。テン・ブランクベーシストボーカルでバンドリーダー。プロデューサーも兼ねるため、無意識に猫を被ったりする(本人曰く「撮影用、音楽用、人間用のマスクがある」)。撮影モードだと、朱音曰く「きれいな人」になっている。裸眼視力は0.4くらいで、近視用眼鏡を所持[3]
14歳の若さで彗星の如く音楽シーンに現れた「ロック界のアマデウス」と呼ばれる天才音楽家。バンドでは作詞作曲、主な楽曲の編曲も担当。大抵「生き方(人生哲学)」を詞にする。きっちりバンドスコアを書き下ろすが、ギターリフやキーボードのアレンジは大まかな指示だけで、高岡や坂本に任せる。また、周囲がどんな状況であっても、新曲を思いついては五線紙に書き込んでいる。なお、その譜面構成は複雑で、朱音曰く「ベースを鍵盤楽器か何かと間違えている」。その他、大学時代の同期である漫画家・土岐喧介の原稿に、消しゴムをかけ、ベタを塗り、トーンを貼るという器用さを見せたことがある。ただし、基礎体力が低く、作曲に集中しすぎていたりすると、よく体調を崩す。
本職はピアノなのだが、ギターなど他の楽器もそれなり以上にこなせる、元神童(1stツアーでヴァイオリンを弾く、新曲候補のデモテープでギターを弾くなどの描写がある)。ただし右足が悪い為(後述)ドラムは叩く事が出来ず、キーボード類は作曲にしか使わない(本人曰く「自分の曲でピアノを弾くと、テン・ブランクがいらなく」なってしまうため。また「自分のピアノは誰もいない部屋」とも表現)。大抵の楽器は人並み以上の技量を持つため、高岡に「コンビニエンスストア」と評されたことがある。主に黒のプレシジョンベースを使うが、ごく稀にアイバニーズ(「バニーちゃん」)、リッケンバッカー(「バカ」)も使うらしく、作中で「俺のバカ知らない?!」などと言ったことがある。また、フェンダー・ジャズベースをライブで使用している描写もある。レコーディング時などに、ギタリストの高岡に対して「楽器の音色」でよく喧嘩を売る。
癖のある黒髪が特徴。ある事故の後遺症で、歩く際に右足を若干引きずるため、精神状態によってはよく物にぶつかったり転んだりする。そのため高岡などから「走るな」と注意されることも。普段たばこは吸わないが、ごく稀に高岡から分けてもらったりしている。また、時季に関わらず丈の長いコートをよく着ている(財布と鍵を入れっぱなしにしているため[3])が、真夏にも着そうになって、高岡に注意されたことがある。
渋谷・神宮前の一等地に一軒家を持っている。関係者に「藤谷スタジオ」と呼ばれるそこに、高岡と坂本が居候しているが、作中終盤で2人とも出て行ったため、寂しさのあまり猫を飼い始めたらしい。
真崎桐哉の異母兄で、そのあたりの話は複雑。また、幼い頃は桐哉がいる実父の家で過ごし、桐哉の母にピアノを教わっていたが、ある事情からピアノの調律師とピアニストの夫婦の養子となり、「藤谷」姓に。養父母と共に海外で暮らした経験もある。スタインウェイのグランドピアノの音が好きで、彼にピアノを弾かせたい坂本とは、作中で「坂本の曲だったらピアノを弾く」という約束をしている(朱音のソロアルバムを作る際に叶った)。
ソロ活動時代、自身が歌うことは少なく、井鷺一大プロデュースの歌手、森生リカ、高野仁実などに楽曲を提供。また、名前は出さずにギターやピアノを弾くことも多々あったという。東京大学教育学部)入学を理由に音楽活動を停止していた[注 5][注 6]が、大学を卒業し、音楽活動を再開するにあたり、コンテスト等に送られてきたデモテープを人脈を駆使してかき集め、それらを聞いて人選を行う。そこで偶然見つけた坂本と、出会って以来度々連絡を取っていた高岡とで、名前を決めないままバンドを結成、これが後にテン・ブランクとなる。このデモテープの件を見てもわかるように、業界に広がるプライベートな人脈は膨大であり、年長者の多くに自分の名前が知られていることも含めて「消えないならドロドロに汚れるまで利用した方がマシ」と発言したことがある。
昔は曲をアレンジする際に、作曲者の美点と言えるものを壊してしまっていたが、バンドとして活動するうちに、坂本の曲を「坂本らしさ」を壊さずにアレンジすることもできるようになった。
根っからのアーティスト気質であるため、全力で音楽に集中するあまり思考回路や言動が飛ぶ事が多く(朱音曰く「全身音楽の人」「音楽の神様」、高岡にも「音楽バカ」と評される)、たびたび周囲を振り回している「困ったちゃん」[注 7]。人に対して腹を立てることが苦手なためか、朱音のいる前で理性を飛ばして作曲モード全開にした際は、「作曲モード全開の方が理性的なんじゃないか」と評されている。なお、自身が精神面で「普通の人」ではないことは自覚している。
喘息のためドラムに集中できない坂本のドラムの音に近く、自分のバンドで使えるキーボード兼ドラマーを探していて、偶然朱音のドラムに出会った。また、作中終盤で、「天才である自分に壊されない人(=藤谷直季より天才な人)」となら、共同で音楽をやっていけると思い、バンドの人選をしていたことが明かされる。また、「自分1人では出せない音」を創り上げることができるのがバンド、というような認識をしている。自分が見出したためかバンドメンバーに対しては執着心を持っており(特に高岡に対してのそれが顕著)、「ギタリストの高岡」を奪い合う、ライバル関係となったボーカリスト・香椎理多に対して「高岡君は譲らない」と宣言しつつも、「友人として彼が幸せなのは嬉しい」と吐露している。
作中では、セリフや彼視点の一人称の場合、あまり句点がつかず、句点を打つべきところが読点になっていることがある。

オーヴァークローム[編集]

真崎桐哉(しんざき とうや)
11月12日生。最終巻で24歳。音楽ユニット「オーヴァーサイト・サイバナイデッド・クローマティック・ブレイドフォース」(通称オーヴァークローム)のボーカル(作詞作曲も担当するが、編曲とプロデュースは有栖川と共同)。作曲にはピアノ、シンセサイザー、ギターを使う。ステージでは時々、ギターとブルースハープを演奏。一種のカリスマ性を持つ。煙草はバージニア・スリムを吸う。オーヴァークローム結成前からバンドを転々とし歌う事に執着してきた。ユニット名は『ブレードランナー』などの影響によるもので、いずれ映画のサウンドを手がけたいと願っている。オーヴァークローム解散後は、藤谷のサポートを受け、ソロプロジェクトを立ち上げる。
趣味は映画、ゲーム、スポーツジム通い、ドライブ、スノボ、買い物、DJの真似事、藤谷のウォッチング[3]
黒が好きなので服装はたいてい黒ずくめ(ゆえに「教徒」と呼ばれるレベルに達した彼のファンも黒ずくめが多い)。指輪は銀、ピアスは赤を好む[3]。サングラスをかけて目元を隠していても、その服装のために、分かる人には分かってしまう。気に入らない人間への嫌がらせは平気でエスカレートさせるような自己中心的な性格で、傍から見ればひどい事もさらっと言ったりやったりする。口は悪いが理詰めで筋を通すタイプであり、雑誌のインタビュアーに対して怒っている際は「理論武装っぽく怒る」と朱音に評された。
藤谷直季の異母弟で、とある事情から6歳ごろまで藤谷と一緒に育ち、母親にピアノを習っていた。芸名の「真崎」は母の旧姓。その複雑な家庭事情から、藤谷をあまり「兄」として意識していないが、藤谷の厄介な性格をある程度把握していて、特に音楽に関わることではライバル視しており、時々嫌みったらしく「オニイチャン」と呼んだりする。藤谷が自宅で猫を飼い始めてからは、藤谷不在時の世話係として呼び出されることがあり、文句を言いつつも受け持っている。
藤谷がソロ時代に参加した曲が入ったCDについても詳しい。「テン・ブランクの人間と個々の音楽性は嫌い」だと言い放ち(特に高岡を嫌っている)、藤谷に見出された朱音に度々ちょっかいを出してくるが、朱音のドラムを聴いてからは「藤谷バンドの中ではワンアンドオンリー」「バンドとは別にしてやった」と評価し、速達で新曲のサンプル盤を送りつけて、それに同封したメモで自宅の電話番号を教えるなど、何かと助けになる事も多い。
「鍵盤屋が書いた曲はボーカルのことを考えていない」と愚痴るが、自身はオーヴァークローム時代に鍛えたので何とかなっていると言う。
有栖川シン(ありすがわ シン)
本名は有栖川真広(まひろ)。「マサヒロ」と読み間違われるのが嫌なため、芸名で活動[3]オーヴァークロームの相方で、結成時27歳(当時真崎は21歳)。音楽ディレクターである佐伯オサムの紹介で真崎桐哉に出会う。「機械仕掛け」と称される音作りはほぼ一任されており、ミキシングも自分でやってしまう。「機械仕掛け」にこだわるため生の音は使わないが、中期以降はサンプリングした朱音のドラムをシークエンスの素材としてよく使っている。朱音のドラミングを「ナマモノ」と評した。解散後も、真崎から呼び出されて彼のライブに関わっている。
実は偏食(ロールキャベツの肉だけ食べてキャベツを残すなど)で、真崎にキレられている[3]

その他[編集]

西条モモコ(さいじょう モモコ) ※名前の漢字表記は「百子」
朱音の母親でJ-POP系音楽誌のフリーライター。大雑把なためか夫とはどうしても生活リズムが合わなかったらしい。「どーしても好意的なCDレビューが書けない」と逃避してみたり、締切りと編集者の電話に追われている姿が殆どだが、テン・ブランクに参加する娘にアドバイスをしたり藤谷に直接挨拶に行くなど、プロとしての一面も見せる。異名は「火の玉モモコ」。
また、坂本の体調を気遣い、なるべく手料理を食べさせようと「〆切り前でも坂本は家に上げてよし」「手鍋を提げてアパートに押しかけるくらいはしなさい」と娘にハッパをかける、「ムチャな母親」でもある。
日野ヒビキ(ひの ヒビキ) ※名前の漢字表記は「響」
「ラッキースター」時に14歳のアイドル歌手。一人称は「ヒビキ」。憧れていた藤谷のプロデュースで新曲をリリースすることに。表向きは愛想の良い女の子だが、しっかりした考えの持ち主で時に毒舌でもある。執拗に藤谷を狙うユキノを嫌う。テン・ブランクがクリスマスのライブに参加した翌日にレコーディングの予定があり、その少し前に藤谷に呼ばれてスタジオに来た理多と出会う。以降、関係者枠でテン・ブランクのライブにやってくることがある理多と交友関係を持つ。
藤谷個人のことは苦手だがテン・ブランクのファンでもあり、テン・ブランクや朱音を「音楽をやる人」として尊敬しているため、彼らの前ではあまり自分を偽らない。テン・ブランクのツアー各地で姿を見せ、楽屋に出入りし打ち上げにも混ざり、朱音を励ます存在にもなっている。
櫻井ユキノ(さくらい ユキノ) ※名前の漢字表記は「有貴乃」
テン・ブランクの1stシングル『ZONE-ZERO』のタイアップで、パソコン「デルフィア」のCMに起用されたモデル。その繋がりから、日野ヒビキと同時期に藤谷の楽曲提供を受けて歌手デビュー(藤谷の「真似事ばかりやる井鷺に取られるよりは」という選択)。朱音と同い年だが、芸歴はすでに7年。
坂本が「声域が5オクターヴ近い」と見抜き、藤谷から「魔女」と評される程の歌唱力を誇る。1曲のみという約束だったが以後も藤谷のプロデュースを強く望んでおり、度々執拗な行動に出る。
また、業界各所にスパイがいて、藤谷を独占するために、常にテン・ブランクの動向を観察している。
甲斐弥夜子(かい みやこ)
株式会社「BEAT」のプロデュース&プランニング部・マネージメント担当。テン・ブランクの初期マネージャー。朱音曰く「かっこいい女性」ではっきりした色合いのスーツを着こなす。かつて歌の才能を藤谷に見出され、彼曰く「作った歌は甲斐に歌わせるつもりだった」らしいが、藤谷の我侭でナシにされたこともあってか、藤谷に執着している。
当初、事務所の意向もあって、バンドに女子(しかも素人で未成年)が入ることに反対していたが、藤谷に押し切られた。Z-アウトの前座以降は、朱音に対する態度も若干軟化している。
だが、藤谷に執着するあまりバンド全体よりも藤谷個人を優先するため、朱音をはじめとするメンバーが藤谷を甘やかすことをよく思っておらず、テン・ブランクは、彼女が裏で糸を引いた嫌がらせ(リハーサルスタジオに来る楽器車の鍵が開いていてギターのネックが折れている、TV収録当日に、キーボードの打ち込みデータを入れたフロッピーがバックアップも含めて行方不明になるなど)に一時苦しむこととなった。特に朱音は、真崎つながりで親交があったと思われるオーヴァークロームファンを利用した嫌がらせを受け、TV収録当日にバスドラムを鳴らせなくなる程の怪我を負った。その全てを暴露して退社した後、同じく藤谷に執着する井鷺と組んだ模様。
上山源司(かみやま げんじ)
最終巻で28歳。マネージャー・甲斐弥夜子の退社後、テン・ブランクのチーフ・マネージャーとなる(2ndシングル『SELECTIVE SUN』以降)。もともとファンだったロックバンド「ブーギーズ」のローディー兼護衛を経てマネージャー職に就くが、「ブーギーズ」はある理由から解散、その後テン・ブランクのマネージャーに。サポートミュージシャン時代の高岡と面識があった事もテン・ブランクに関わる事になった理由の1つの様である。
ガテン系の外見で、応対は体育会系だが気遣いの細やかさは人一倍であり、頼りになる存在。
井鷺一大(いさぎ かずひろ)
中年の音楽プロデューサーでアレンジャー。昔はベースを弾いていたらしい。業界の中では「ダイさん」と呼ばれることもある[注 8]。学生でありながら音楽活動をしていた藤谷の面倒をよく見ていて、音楽ユニットを結成したりもしたが、結果的に彼に「壊された」人。その後も藤谷の音楽に固執し続け[注 9]、真似のようなことばかりやるので、藤谷に「潰す対象」と見なされている。神取アキのプロデューサーも務めており、彼女の曲のギターを弾いたことがある高岡とも面識を持つ。
藤谷がテン・ブランクで活動を再開した後に「テレヴィジョン・トラック」という名前のプロジェクトを立ち上げ、櫻井ユキノをボーカルに据えようとしていたが、藤谷に阻止された。
藤谷と組んでいた頃、左ハンドルのルノーに乗っていた。
西野智孝(にしの ともたか)
『AGE』及び『楽園の涯』の主人公。高岡の高校から大学にかけての同級生。中学・高校とバレー部で、高校ではセッター
高校1年の時に、同じクラス・出席番号が一つ違いだったことから高岡と知り合い、夏前にある事情で部活を退部してからは、高岡や彼の知人で部活の先輩の同級生でもある山崎和彦と昼休みを共に過ごすようになる(後に再入部)。
自称「腐れ縁」で高岡と同じ大学に進学した後は、高岡がほぼニセ学生となったため、学内ではほとんど顔を合わせなくなったが、高校時代から続く高岡のバンド活動にある程度理解を示している。
香椎理多(かしい りた)
『アグリー・スワン』の主人公。12人組の地下アイドル「ミュジカ・ドリカ(ミュジ・ドリ)」で不動のセンターを務めるメンバー。愛称は「りーた」。第一章(本編『冒険者たち』の頃)では19歳。第三章で21歳になっている。
うまく笑えないのがコンプレックスで、コアなファンもいればアンチもいるタイプだが、歌唱力の高さからライブ時の生歌を唯一許可されている。
19歳の頃、友人に誘われてプライベートでTBのライブに行き、高岡と対面。その後、プロデューサーの意向で普段のアイドル路線とは違う路線のソロシングルを出すことになり、プロデューサーのツテからギター担当として高岡が呼ばれ、再会する。以降、高岡のギターに対して独占欲を見せ、バックバンドのメンバーに求めるようになるも、藤谷との実力差に打ちひしがれ、それでも高岡の奪い合いを続ける、努力の人。
母親がミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュース好きで、アイドルとして活動する娘に対して度々引き合いに出したり、過保護気味な行動を取るため、対応に苦慮している。
ソロデビューを機に「プロデューサーに枕営業した」と囁かれ始め、メンバーからいじめを受けるようになり、ユニットのファンにもその噂は広がっていく。ソロに専念するためユニットを脱退するが、ファンの中にストーカーがいて嫌がらせのメールは収まらず、ミュジカ・ドリカの人気もかげりを見せる(後に、実際に枕営業していたのはリーダーだったことが週刊誌に出ている)。
高岡と個人的に交友関係を持つようになり、世田谷区の高岡のマンションの合鍵を貰ってからは、三鷹の自宅よりも仕事で高岡が不在なこともあるマンションにいることが増え、学生時代の友人(テン・ブランク、特に高岡のファン)や「ミュジ・ドリ」時代からの自身のファンに噂が回る。プロデューサーや藤谷と相談の末、双方の判断をもとに、その噂は自身の認知度を稼ぐために利用する。
高岡や藤谷を通してテン・ブランクの他のメンバーとも面識を持ち、高岡がギターとして参加したソロツアーの東京公演初日では、藤谷と朱音が会場に来ている。

用語[編集]

TEN BLANK(テン・ブランク)
主人公たちが活動するバンド。TBとも略される。メンバー構成はギター・トリオ+キーボードでベースの藤谷がボーカルも兼任。キーボードの坂本とドラムの朱音に「互換性」があるのが特徴。ピアニストが本業の藤谷による作曲が中心の為、メロディアスな曲が多い。その譜面構成もさることながら、メンバーそれぞれに独特のリズムがあるため、「曲」として成立するかしないかの瀬戸際を地でいく[注 10]
作品序盤、一旦は音楽活動を辞めた藤谷直季が復帰することが、水面下では音楽ライターや音楽雑誌の編集部に伝わっており、その時は名前がなかった。TV出演の際、藤谷はバンド名について「100の1桁目が不明という意味」と説明した。
オーヴァーサイト・サイバナイデッド・クローマティック・ブレイドフォース
通称「オーヴァークローム」。英字で書くとOversight Cyberni-dead Chromatic Bladeforceとなる。真崎桐哉と有栖川シンによるユニット。シンセサイザーを多用した、「機械仕掛け」とも評される楽曲が特徴だが、作詞・作曲は一貫して桐哉が1人で行っている。
インディーズ時代は都内でライブを重ね、アルバム1枚をリリース後メジャーデビュー。その後も精力的に楽曲を発表し続けていたが、メジャーデビューから2年2か月で解散となった。
藤谷スタジオ
神宮前の一等地にある、藤谷所有の一軒家の通称(『嵐が丘』の少し前に高岡が名づけたらしい)。2階建てで、1階のリビングは完全防音仕様になっており、そのままスタジオにできるらしく、楽器類や作曲に使うパソコンといった機器が置かれている。リビングに置かれた電子ピアノの椅子は、藤谷の「定位置」とされる。藤谷の個室はリビングよりも玄関に近い場所にある。また、2階は坂本と高岡に1部屋ずつ貸している他、サラウンド仕様のステレオセットが置かれた「視聴覚教室」がある。リビングに置かれた電話以外にも、藤谷や高岡の個人用回線が引いてあるらしい。
グラスハート
ソロ時代(17歳)に藤谷が作った楽曲の曲名。ある女性歌手に提供された。歌詞の一部がシリーズを通してのキーワード。坂本はこの歌を「『純粋』な曲」と表現する。また、TBのデビュー前のライブでは、藤谷が歌詞を変え、バンド用に再編曲した。
ミュージックステイツ
視聴率20%は確実という、有名な音楽番組。TBのテレビデビューはこの番組だった。オーヴァークロームも出演経験がある。

作中年表[編集]

文庫版『LOVE WAY』(新書版は『熱の城』)収録の「オーヴァークローム クロニクル」をベースに、『イデアマスター』以降の長編と、年代や時期を特定できる短編作品を追加。
第1作『グラスハート』を基準年とする。『 』内は作品タイトル(末尾に#印があるものは新書版書き下ろし)。

年/タイトル TB関連 真崎関連
-9年
(基準年時よりマイナス9年、以下同様)
高岡尚、高校1年(16歳)。知人がいるスタジオに出入りするようになり、ギターを始める(『AGE』)。
-4年 高岡、大学生。路上で偶然見かけた藤谷直季をバンドにスカウト。ただし交渉不成立(『楽園の涯』)。 真崎、インディーズバンドを渡り歩くが、長続きせず。
-3年 高岡、藤谷と再会。知人と呼べる関係となり、藤谷に「僕のために弾いてよ」と誘われる(『楽園の涯 II オクターヴ』)。 真崎、インディーズバンド「CRAVER」在籍中。ディレクター・佐伯オサムと出会う。CRAVERはデビュー目前まで話が進むが、解散(『さよならカナリア』)。
11月、オーヴァークローム結成。真崎21歳、有栖川27歳(『LOVE WAY』)。
-2年 高岡23歳。Z-アウトのサポートギタリストに。その他のツアーでもバックバンドに参加。度々藤谷と連絡を取っている。業界のベテラン達が藤谷直季の名を覚えていることに複雑な感情をもつ(『あたらしい朝』#)。 オーヴァークローム、都内各所でライブ活動。自主制作アルバム発売。
メジャーデビューに向けてレコーディング。
-1年 藤谷が坂本一至のテープを聴き、捕獲法を思いつく。後に高岡がバンドやツアーのサポートを辞め、藤谷の思惑に乗る(『エンゲイジド・チルドレン あたらしい朝 II』#)。 2月、デビューアルバム発売。以降2月、4月、6月と連続してシングル発売。
11月、ミニアルバム発売、ライブツアー開始。
『グラスハート』
(基準年)
1月、西条朱音、TBに半ばなし崩しで参加。
3月初旬、Z-アウトの野外ライブ(前座はオーヴァークローム)に、強引に前座としてゲスト参加。
『薔薇とダイナマイト』 TB、デビュー曲『ZONE-ZERO』制作(パソコン「デルフィア」のCMタイアップ)。
坂本、実家に顔を出して、過去に作ったテープを1本持ち出し、春休み中の朱音に渡す。坂本宛の無言電話や追っかけ、朱音に対しての嫌がらせが度々起こる。
4月、同名のアルバム&シングル『ELECTRIC ROSES』発売。
『嵐が丘』 坂本、朱音の声を鍵として作曲。帰宅したところ、藤谷宅の玄関先で藤谷に絡む井鷺に遭遇。その後、藤谷にいずれピアノを弾いてもらう約束をする(『ムーン・シャイン』)。
TB、アルバムレコーディング開始。6月、1stシングル『ZONE-ZERO』発売。初のTV出演。
6月、シングル『FALLING』、初のチャート1位に(TVドラマタイアップ)。TV出演。
『いくつかの太陽』 櫻井有貴乃がTBのレコーディングスタジオ等に顔を出し始める。
マネージャー・甲斐が嫌がらせの黒幕であることを告白。
朱音の怪我回復、アルバム最後の1曲録音。
『冒険者たち』 日野響、藤谷の楽曲提供を受ける(『ラッキースター』)。
上山源司、TBのマネージャーに(『目を覚ませ』)。
8月、1stアルバム『TEN BLANKS』発売。
9月、2ndシングル『SELECTIVE SUN』発売。秋に全国ツアー。香椎理多、友人に誘われてTBのライブにプライベートで行き、高岡と対面。後にソロシングルのバンドメンバーとして高岡が呼ばれる。(『アグリー・スワン』第一章)
10月、シングル録音中に高岡の父が脳梗塞で倒れる(『ストロボライツ』)。
櫻井有貴乃のデビューアルバム、完パケ。
7月、TBと緊急合同ライブ。
8月、ミニアルバム、リミックスアルバム連続発売。長期ツアー開始。
9月、シングル『NO DAMAGE』発売(CMタイアップ、TBの『SELECTIVE SUN』と競作企画)。
『熱の城』 TB、朱音の大学受験のため活動を一時縮小。
12月、3rdシングル『Quaters』発売(携帯電話のCMタイアップ)。
クリスマスライブイベント(in 武道館)参加。理多、チケットを貰ってこのイベントに友人と行き、楽屋で藤谷に喧嘩を売る。翌日、藤谷のいるスタジオ入口で響と出会う。(『アグリー・スワン』第一章)
冬、真崎、ファンの1人に手を刺される。「オーヴァークローム解散」の噂が流れ始める(『アンダーエデン』)。
負傷後、自宅に押しかけるファンを嫌って、音楽ディレクター佐伯の下に逃げ込む(『夜に飛ぶ鳥』#)。
傷の治療のため、表向きは「のどを壊した」として、やりかけだったツアーをキャンセル(『LOVE WAY II』)。
『イデアマスター』
(+1年)
冬〜春、朱音が受験をクリア(『コゴエ ノ イロ』)。
それに伴い、3月にシングル『ラプンツェル脱獄」、4月にハーフアルバム『CATSLE』を発表、5月からツアーを開始するが、ツアー後、活動休止を発表(発売時期は『アグリー・スワン』で判明)。7月のツアーファイナルに関係者枠で参加した理多、会場入口で響と遭遇し、終演後、最近のTB側の事情を知らされる。(『アグリー・スワン』第二章)
9月、女性3人での対バンライブ(うち一人は神取暁)に理多が出る。理多はトリを務めるが、ステージに爆竹を投げられて中止に。高岡、馴染みのバンマスから連絡を貰い、会場に顔を出す。10月頃から理多が高岡のマンションに入り浸るようになり、12月頃には高岡のファン、理多のファン双方の間で噂になる。後にセキュリティ強めのところへ引っ越し。(『アグリー・スワン』第二章)
2月、シングル2枚同時発売。3月、ラストアルバム発表。
4月、解散コンサート(『アカツキに火を放て』)。
以降、真崎はソロで活動。
+2年 冬〜春、TBは活動休止中。メンバーはそれぞれソロでしばらく活動する(『ラッシュ』、『海と黄金』)。
夏、結果的に約1年の休止の後、活動再開(『海と黄金』ラスト)。ここに関係者枠で響と理多がいて、理多が悪質なTBファンに手のひらを刺される。犯人は夏の終わりに逮捕され、週刊誌に報道が載る(『アグリー・スワン』第三章)。
『アグリー・スワン』(第三章)
(+2年)
活動再開に浮かれた藤谷、帰国から時差ボケが続いて栄養失調を起こし、山手線渋谷駅のホームから落下、病院に一泊。
10月、TBが秋のツアーの日程を変更したため、理多のライブツアーに高岡が参加。初日の東京公演に藤谷と朱音が来ており、トリプルアンコールで藤谷と理多、高岡のギターをバックに「アグリー・スワン」をデュエット。

関連[編集]

  • 高岡尚が登場するという意味では『AGE』(第13回コバルト・ノベル大賞佳作入選作)がシリーズ第1作とも言える。また『イデアマスター』収録の『ラッシュ』ではサポートミュージシャンとしての姿が描かれている(『ラッシュ』の初出は『文学メルマ!』2001年12月。 若木未生公式blog MEGALO VISIONの2005年9月 - 10月分に全文掲載。単行本収録に際し加筆修正された)。
  • SEXION(セクション)というバンドが名前だけ登場するが、これはXAZSAに登場するバンド。一方、XAZSAにはZ-アウトが名前だけ登場する。また、どちらにも土岐喧介(とき けんすけ)を名乗る漫画家が登場する。
  • 読者の間では藤谷直季のモデルは小沢健二説と小室哲哉説が大半だが、若木未生は特に実在人物の想定はしていないと述べている。
  • 逆にオーヴァークロームはBRAIN DRIVEがモデルであると明言(ただし音楽性のみ)。これは当のメンバーも承知しており、『MIUZIQ ATHELETE』(アルバム『GOD ANGLE』収録)ではオーヴァークロームの正式名称が歌われている。
  • 上山源司の当初のイメージはCHEMISTRYの川畑要である。が、当初名前を覚えておらず、「色の黒い方」などと言っていた。
  • 『ハイスクール・オーラバスター オリジナルアルバム2 "END OF SILENCE"』(1994年7月27日、パイオニアLDC)収録の『END OF SILENCE』は「作詞:藤谷直季・若木未生」となっており、SPECIAL THANKS欄にも「N.FUJITANI(TEN BLANK)」と記されている。これに関して若木は「歌詞を書くのは大変なので藤谷君に手伝ってもらった」と話している。
  • 著者自らが個人サークルで同人誌として発表してきた様々な作品の番外編の一部は、ブログの小説アーカイブで公開されているが、本作の短編もある。

シリーズ一覧[編集]

集英社コバルト文庫
イラスト:橋本みつる
イラスト:羽海野チカ
幻冬舎バーズノベルス
イラスト:藤田貴美
  • イデアマスター ISBN 9784344815759、2009年2月
    • 事実上の最終巻。表紙は朱音。
  • グラスハート ISBN 9784344819061、2010年2月
    • 文庫版『グラスハート』『薔薇とダイナマイト』の合本。表紙は藤谷。
  • 嵐が丘 ISBN 9784344819795、2010年6月
    • 文庫版『ムーン・シャイン』『嵐が丘』の合本。表紙は坂本。
  • いくつかの太陽 ISBN 9784344820692、2010年10月
    • 文庫版『いくつかの太陽』『AGE/楽園の涯』の全文、『冒険者たち』より一部の合本。表紙は高岡。
  • 熱の城 ISBN 9784344821606、2011年2月
    • 文庫版『冒険者たち』の残り、『熱の城』『LOVE WAY』の合本。その他、文庫未収録だった『Cobalt』掲載記事を収録[1]。表紙は真崎。
幻冬舎コミックス
イラスト:藤田貴美
  • アグリー・スワン ISBN 9784344853485、2023年12月
    • 12年振りの刊行。表題と短編1作は書き下ろし。2010年と2011年の応募者全員サービス小冊子、同人誌から2作、収録されている。表紙は理多、高岡、藤谷。

WEBドラマ[編集]

2025年、Netflixにて配信予定。主演は藤谷直季を演じる佐藤健

キャスト
スタッフ
  • 原作:若木未生/「グラスハート」シリーズ(幻冬舎コミックス刊)
  • 監督・撮影:柿本ケンサク
  • 監督:後藤孝太郎
  • 脚本:岡田麿里阿久津朋子、小坂志宝、川原杏奈
  • エグゼクティブプロデューサー:岡野真紀子
  • 共同エグゼクティブプロデューサー:佐藤健
  • プロデューサー:アベゴウ
  • ラインプロデューサー:櫻井紘史
  • 制作プロダクション:ROBOT
  • 製作:Netflix

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ たまたまドラムを叩いた時のテープ(コンテストに送られたデモテープの余白部分)が、ドラマーを探していた藤谷達の耳に入り、キーボード担当の坂本の本職であるドラムの音に近い音で叩ける「互換性」ゆえに選出された、と言える。だが、キーボードはアレンジの都合もあってほとんど坂本が担うので、ドラムに専念している。
  2. ^ 作中で朱音は名前を呼び捨てていたが、実は実兄。バンド内ではドラムを担当。高岡のギター・テックである伊澤ともつながりを持つことが、新装版『熱の城』収録の「フラワーズ」にて判明。
  3. ^ コンサート会場に単車で乗り付けるのはかっこいいけど怪我されたらイヤ、というファン心理による。
  4. ^ 中期以降のTBのライブなどでは、パールがかかった野草色の塗装をしてあるため「ミドリ」と呼ばれる物をメインギターに使っている他、サブギターに「蛍光」がある。その他に、初期の頃は「初号機」と呼ばれる物を使っている。『ラッシュ』ではフェンダー・テレキャスターを使っている描写も。『海と黄金』では、普段メンテナンスを任せているギター・テクニシャンの伊澤も絶賛する(「例えるならνガンダム、それもフィン・ファンネルつき」)、メタリックホワイトのオリジナルモデルを使った。
  5. ^ 音楽活動を停止し、東大に入学したのは「自分自身の再教育」が目的だったらしい。また、東大在学という経歴が「先生」の由来。
  6. ^ ゴーストライターのような名前を出さない仕事は(アルバイトとして)していた。期間中に1度、路上で唄っていた所を見かけた高岡が、バンド「マイルス・ヴェール」にヴォーカルとして誘ったが辞退。
  7. ^ が、同じように人を振り回す櫻井ユキノにそれを指摘された際は、「僕には免罪符になる物が多いけど、君にはないから」と発言。
  8. ^ 名前の「一大」を「イチダイ」と読み替えたことに由来する模様。
  9. ^ それも、藤谷が彼と組んでいた頃の方向性に偏執している。
  10. ^ 上山は「三半規管が阿波踊りしそうに」なった、「壊れる寸前で生きて」いると表現。

出典[編集]