クアッガ

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クアッガ
London, Regent's Park ZOO, 1870
生きたクアッガの数少ない写真の一つ
保全状況評価
EXTINCT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 奇蹄目 Perissodactyla
: ウマ科 Equidae
: ウマ属 Equus
: サバンナシマウマ E. quagga
亜種 : クアッガ E. q. quagga
学名
Equus quagga quagga
(Boddaert, 1785)
英名
Quagga
フンボルト博物館ドイツ)に展示されているクアッガの剥製

クアッガ(文馬[1][2]: quagga学名: Equus quagga quagga)は、ウマ目(奇蹄目)ウマ科ウマ属サバンナシマウマの一亜種である。南部アフリカ草原地帯に生息していたが、すでに絶滅した。クアッハとも表記される。

クアッガ、またはクアッハという名前の由来は、「クーアッハクーアッハ」というその鳴き声を写したものである。1785年のある記録では、クアッガの鳴き声は「ロバとはかなり違っており、マスティフの滅茶苦茶な吠え声に似ていた」という。

形態[編集]

体高135cm程度。外見上特徴的なのは、身体の後ろ半分に縞模様がなく茶色一色であることである。この縞模様はウマとの交雑(ゼブロイド)によって発現したものではなく、クアッガ特有のものである。

とその付け根は白。歯の形や耳が小さく、ウマと共通の特徴を有しており、ウマとシマウマのどちらに近縁なのかわかっていなかった[3]。その後、DNAの解析により、サバンナシマウマが一番の近縁であることが判明した[3]

生態[編集]

数十頭で群れを作って生活していた。なお、同じ地域にバーチェルサバンナシマウマが生息していたが、混じり合わずに別々の群れを作っていたという。なお、一体何の利点があって身体の後ろ半分に縞がないという進化の仕方をしたのかについては資料に記載がない。

絶滅の経緯[編集]

人間による乱獲と開発に伴う生息地の減少とされる。は食糧に、皮はなどに加工されるため、大量に殺された[3](つまり、上述のバーチェルサバンナシマウマと同じ事情である)。野生の最後のクアッガは1861年に射殺された。ヨーロッパ各地の動物園にいた個体はその後も生きていたが、飼育下で絶滅回避を図るには数が少なすぎた。この時、雄雌両方のクアッガがいたが、雄のクアッガが暴れたことで薬殺処分されたため、絶滅が決定的となってしまった。アムステルダムアルティス動物園で飼育されていた最後の1頭[3]である雌のクアッガが死んだのは、1883年8月12日のことである。

復活の試み[編集]

モカラ国立公園で保護されているバーチェルサバンナシマウマ。右の2頭はクアッガに似た縞模様をしている。

DNAの解析によってクアッガはサバンナシマウマの亜種であることが判明した。これを受けて、交配によってクアッガを復活させようという「クアッガプロジェクト英語版」が1986年に発足した。事務局は南アフリカ共和国ケープタウンに置かれ、カルー国立公園やエランズバーグの農場などにて繁殖が行われている。

まず、1988年12月9日にクアッガに似た模様の個体が生まれ、2005年1月20日に「ヘンリー」と名付けられた個体が生まれた。その後も、クアッガ似の模様のサバンナシマウマは増え続けており、これらの個体群は「Rau quagga」と呼ばれている。

脚注[編集]

  1. ^ グードリッチ 著、須川賢久 訳「厚皮類」『具氏博物学』 五、田中芳男校閲、文部省、1876年、70-71頁。 
  2. ^ 永田健助訳 著「動物綱目」、ウィルレム・チャンブル; ロベルト・チャンブル 編『百科全書』 上、丸善、1884年、502頁。 
  3. ^ a b c d 更科 功著、『化石の分子生物学―生命進化の謎を解く』、講談社現代新書講談社、2012年、ISBN 978-4-06-288166-1

外部リンク[編集]

  • Hack, M.A., East, R. & Rubenstein, D.I. 2002. Equus quagga. In: IUCN 2007. 2007 IUCN Red List of Threatened Species. Downloaded on 18 December 2007.