ガス室
ガス室(ガスしつ)は毒ガスによって中に入れられたものを殺傷する密閉された部屋。
ジェノサイド
ナチス・ドイツがアウシュビッツで多数のユダヤ人や精神障害者を一度に殺害するためにガス室を用いたとされる。このときに使用された毒ガスはチクロンBであり、天井に設けられた穴から投げ入れられたとされる。室内の人たちが死亡するまで20分ほどであった。
ただし、「チクロンBはチフス対策の防疫用衛生害虫駆除剤であり、換気装置の無い倉庫や地下室などを用いての連続的大量殺人は不可能である。ナチスによるユダヤ人殺害にガス室は用いられていない」という主張も存在する(ホロコーストの項を参照)。
アメリカの死刑
アメリカ合衆国のいくつかの州では、ガス室による死刑を執行している。受刑者は密閉されたガス室内の椅子に固縛され、外部操作によって椅子の下に置かれた硫酸容器の中に青酸ナトリウムが落ちると、青酸ガスが発生し、受刑者を死に至らしめる。あらかじめ装着された長い聴診器により、外部から医師が死を判定する。判事や許可を受けた報道関係者に見えるように、ガラスの大きな窓を備えている。
1979年公開のアメリカのドキュメント映画「ジャンク 死と惨劇」には、実際の死刑囚に対するガス処刑風景が記録されており、処刑時の受刑者の様子を見ることが出来る。
執行後のガス室は壁面に付着した青酸ガス成分を除去するため、毎回の洗浄作業が必要となる。この作業に対する防護措置、危険手当、各種消耗品等の負担は大きく、現在のアメリカにおいて最もハイコストな死刑方法である。実際、1999年以降ガス室による処刑は行われていない[1]。
家畜・動物の屠殺
家畜を安全、能率的かつ安価に屠殺するためガス室が使用されている。
また、飼い主に捨てられた犬猫などのペット動物を殺処分する場合に用いられることもある。有毒ガスではなく二酸化炭素を用いるケースが多い。動物は充満した二酸化炭素により、イヌでは30~40%CO2と酸素により1、2分間で麻酔導入され、ネコでは60%CO2の吸入で45秒後に意識を消失し、5分以内に呼吸が停止する(酸素欠乏症)。これらのガス室は『ドリームボックス』と呼ばれることがある。二酸化炭素の使用は米国獣医学会においても適切な手段のうちのひとつとされる[2]。死亡後の遺体はそのまま焼却炉へと落とされ、焼却処分される。焼却処分の後、遺骨は粉砕処理され、産業廃棄物処理業者へと引き渡される。このような方法に対して反対する者もいる[3]。
脚注及び参考文献
- ^ アメリカの死刑囚が「最後の晩餐」に選んだものは、ライブドアニュース、2014年11月23日、2015年10月24日閲覧
- ^ AVMA Panel : J.Am.Vet.Med.Ass,218(5),669-696 (2001)
- ^ 『犬たちをおくる日』 今西乃子 2009年 金の星社 ISBN 978-4323060859