エネミー・オブ・アメリカ

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エネミー・オブ・アメリカ
Enemy of the State
監督 トニー・スコット
脚本 デビット・マルコーニ
製作 ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮 チャド・オーマン
ジェームズ・W・スコッチドポール
アンドリュー・Z・デイヴィス
出演者 ウィル・スミス
ジーン・ハックマン
ジョン・ヴォイト
音楽 トレヴァー・ラビン
ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影 ダニエル・ミンデル
編集 クリス・レベンゾン
製作会社 タッチストーン・ピクチャーズ
ジェリー・ブラッカイマー・フィルムズ
スコット・フリー・プロダクションズ
配給 ブエナビスタ
公開 アメリカ合衆国の旗 1998年11月16日
日本の旗 1999年4月17日
上映時間 140分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $90,000,000[1]
興行収入 $250,649,836[1] 世界の旗
$111,549,836[1] アメリカ合衆国の旗カナダの旗
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エネミー・オブ・アメリカ』(Enemy of the State)は、トニー・スコット監督が製作した1998年サスペンスアクション映画ブエナビスタ作品。

音楽は当初はハンス・ジマーがすることになっていた。

テロ防止法を巡る暗殺事件の証拠となるビデオを、偶然掴んだ弁護士が、事件の首謀者である国家安全保障局(NSA)の高官に追われることになるが、その陰謀に挑んでいく。

あらすじ[編集]

アメリカ連邦議会ではテロ対策のための「通信の保安とプライバシー法」案を巡って議論が交わされていた。この法案は、犯罪やテロを防止するものと説明されていたが、法執行機関による監視権限を拡大し、一般市民のプライバシーを大幅に侵害する恐れがあった。国家安全保障局(NSA)の高官トーマス・ブライアン・レイノルズは、法案を可決させるべく、強硬な反対派の下院共和党議員フィリップ・ハマースリーを、目撃者のいない湖畔で暗殺させる。レイノルズの思惑通りハマースリーの死は心臓発作による事故死とされた。だが、殺害の一部始終が、渡り鳥を観察するために設置されていた無人カメラに録画されていたことを、事件現場を偵察していたレイノルズの部下が気づく。レイノルズは、この事態に対処するため、アメリカ海兵隊特殊部隊員数名を工作員としてスカウトする。

無人カメラのテープを回収した動物研究者のダニエル・ザビッツは、帰宅後テープを見て、ハマースリーの死の真相に気づき、知り合いのジャーナリストに渡すべくテープをPCカードディスクにコピーしている最中に、レイノルズが送った工作員がザビッツのアパートを急襲する。すんでのところでアパートを脱出したザビッツは、ディスクを持ってワシントンDCの街中を必死に逃走するが、NSA側は、偵察衛星や指揮通信車、ヘリコプターを駆使し次第に追い詰めていく。女性下着店に逃げ込んだザビッツは、偶然、ジョージタウン大学の同級生で、妻のクリスマスプレゼントを選ぶために店で下着を選んでいた弁護士のロバート・クレイトン・ディーンに出会う。ザビッツは秘かにディスクをディーンの買い物袋の中に隠し、さらに逃走を図るが、店先で消防車にはねられて死亡してしまう。

下着店の監視カメラの映像から、ディーンの買い物袋にディスクが入っていると推察したレイノルズは、工作員をディーン宅に侵入させ、ディスクを探させるが見つけることができない。

次にレイノルズはディーンへ秘密工作を仕掛けた。その結果、マフィアとの癒着を疑われ法律事務所を解雇されてしまい、さらに、過去の不倫相手で私立探偵ブリルとの仲介をしていたレイチェル・バンクスとの関係を妻から問い詰められて家を追い出され、その上、口座を凍結されクレジットカードが使用できなくなってしまう。

ディーンは、一連の事件のきっかけはブリルが提供した情報にあると考え、ブリルに直接接触することを試みる。かつてNSA技官であったブリルは、盗聴器や発信器が多数ディーンの衣服に仕掛けられていることを見抜き、NSAに追われているディーンを避けようとする。しかしNSAの秘密工作の一環で、レイチェルが殺されてしまい、その殺人容疑がディーンにかぶせられたと聞き、ブリルはディーンを助けることを決心する。ブリルのNSA時代の相棒の娘がレイチェルであり、相棒がイラン革命下のテヘランで殉職して以来、ブリルはレイチェルの成長を陰ながら支えていたのだ。

ブリルはディーンを自身のセーフハウスに連れて行く。ファラデーケージで出来たオフィスでディスクの中身を解析し、映っていたのがレイノルズであると分かって二人はハマースリーの死の真相をはじめて知る。ディーンがセーフハウスへ向かう途中にかけた電話をもとに、レイノルズ配下のNSA工作員たちはこのセーフハウスを発見し突入する。ブリルはセーフハウスを爆破し、二人とブリルの飼い猫はかろうじて脱出、逃走するが、その際に証拠のディスクが破損してしまう。

ブリルとディーンは、レイノルズから直接ハマースリー暗殺の証言をとるためにレイノルズに会うが2人とも工作員に捕えられてしまう。コピー先がディスクであり、既に破損したことを知らずに、その引き渡しを迫り脅迫してくるレイノルズに対して、ディーンは咄嗟に、ある訴訟で自分の依頼人を脅迫していたマフィアのボス、ピンテロの元にディスクがあると嘘をつく。ディーンは以前、ピンテロが訴訟に介入するのを牽制するために、ピンテロ自身を逮捕できる証拠テープを入手し、そのテープで無理矢理に取り引きをし、ピンテロから撮影者を明かさなければ殺すと脅迫されたという経緯があった。ピンテロに会ったレイノルズはすぐにテープを要求するが、ピンテロは、それをディーンが自分との取り引きで使ったテープのことと勘違いし、拒否する。ピンテロとレイノルズの双方が勘違いした上でテープをめぐり押し問答を繰り返し、激しい銃撃戦となる。その結果レイノルズは射殺され、NSA工作員やマフィアの大半も死亡。生き残った数名はピンテロを監視していたFBIに逮捕され、レイノルズらによるハマースリー暗殺が白日の下に曝された。 疑いが晴れたディーンは家族と幸せな時をすごす。一人になった時、テレビからブリルの別れの電波映像が流れてきて物語は終わる。

登場人物[編集]

ロバート・クレイトン・ディーン
演 - ウィル・スミス
弁護士。専門としては労働問題を扱っている。たまたま再会したザビッツに犯行を記録したディスクを持たされて事件に巻き込まれる。
ブリル / エドワード・ライル
演 - ジーン・ハックマン
私立探偵。レイチェルの情報源ともいえる情報量も持つ。元NSAの工作員でありレイチェルの父と同僚だった。このことからレイチェルにも深い情を持つ。
トーマス・ブライアン・レイノルズ
演 - ジョン・ヴォイト
国家安全保障局(NSA)の高官。
レイチェル・F・バンクス
演 - リサ・ボネット
クレイトンの元恋人。現在は仕事仲間。クレイトンをブリルに引き合わせるなどの活躍をするが殺害されてしまう。
カーラ・ディーン
演 - レジーナ・キング
クレイトンの妻。夫同様、弁護士。妻の立場から夫の元恋人であるレイチェルに良い印象を抱いていない。
サム・アルバート
演 - スチュアート・ウィルソン
議員。
エリック・ディーン
演 - ジャッシャ・ワシントン
クレイトンとカーラの息子。
フィリップ・ハマースリー
演 - ジェイソン・ロバーズ
下院議員。レイノルズに心臓発作に見せかけて暗殺される。
ダニエル・ザビッツ
演 - ジェイソン・リー
動物研究家。観察用に仕掛けた無人カメラでレイノルズの犯行を記録していた。クレイトンとは大学時代の同級生。
レニー
演 - グラント・ヘスロヴ
ザビッルの知人。
フィードラー
演 - ジャック・ブラック
NSAの一員。

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹替
ソフト版 フジテレビ
ロバート・クレイトン・ディーン ウィル・スミス 古澤徹 平田広明
ブリル / エドワード・ライル ジーン・ハックマン 勝部演之 石田太郎
トーマス・ブライアン・レイノルズ ジョン・ヴォイト 小林修 堀勝之祐
レイチェル・F・バンクス リサ・ボネット 坂本千夏 石塚理恵
カーラ・ディーン レジーナ・キング 津田真澄 朴璐美
サム・アルバート議員 スチュアート・ウィルソン 塚田正昭 小山武宏
ヒックス ローレン・ディーン 内田直哉 小山力也
デヴィッド・プラット バリー・ペッパー 松本保典 藤原啓治
ジョン・ビンガム イアン・ハート 樫井笙人
クルーグ ジェイク・ビジー 乃村健次 檜山修之
ジョーンズ スコット・カーン 咲野俊介
ダニエル・ザビッツ ジェイソン・リー 山野井仁 牛山茂
ブリル(偽者) ガブリエル・バーン 沢木郁也 宝亀克寿
ジェリー・ミラー ジェームズ・レグロス 諸角憲一
フィードラー ジャック・ブラック 塩屋浩三 楠見尚己
ジェイミー・ウィリアムズ ジェイミー・ケネディ 浜田賢二
エリック・ディーン ジャッシャ・ワシントン 浅井清己
レニー グラント・ヘスロヴ 堀川仁 中博史
ウー アルバート・ウォン 松岡文雄 藤本譲
ウー夫人 ナンシー・イー 堀越真己
ラリー・キング 本人 渡部猛 糸博
セルビー セス・グリーン
(クレジットなし)
野島健児 桐本琢也
マーク・シルバーバーグ フィリップ・ベイカー・ホール
(クレジットなし)
松岡文雄
フィリップ・ハマースリー下院議員 ジェイソン・ロバーズ
(クレジットなし)
渡部猛 大木民夫
ポウリー・ピンテロ トム・サイズモア
(クレジットなし)
沢木郁也 立木文彦

スタッフ[編集]

評価[編集]

レビュー・アグリゲーターRotten Tomatoesでは85件のレビューで支持率は72%、平均点は6.40/10となった[2]Metacriticでは22件のレビューを基に加重平均値が67/100となった[3]

地上波放送履歴[編集]

回数 テレビ局 番組名 放送日 吹替版
初回 フジテレビ ゴールデンシアター 2003年3月1日 フジテレビ版
2回目 日本テレビ 金曜ロードショー 2004年10月8日
3回目 テレビ朝日 日曜洋画劇場 2009年5月10日
4回目 テレビ東京 水曜シアター9 2010年8月25日
5回目 TBS 水曜プレミア 2013年5月15日
6回目 テレビ東京 午後のロードショー 2018年5月10日 ソフト版
7回目 テレビ東京 午後のロードショー 2023年6月6日

作品解説[編集]

NSAは当初撮影への協力を完全拒否していたが、出演者にNSA高官の娘がいたために辛うじて外観の撮影と内部の限られた部屋の見学のみが許された(この時撮影した本部の外観は一部の映像がオープニングに使用されている)。ただし、職員への質問は禁じられ、地下にあるといわれるコンピュータルームへの立ち入りも許されなかった。そのため、撮影では元職員の証言や文献資料に頼らざるを得なかった。しかし本作でNSAが使う技術は、20年前のもの、また制作当時は逆に研究開発中だったものもあるが、ほとんどが実際に使われているものだという[4]。また、公開直後にNSAの長官に就任したマイケル・ヘイデンは映画でのNSAの描かれ方はNSAに対するマイナスな印象を一般市民に与えると危機感を覚えてNSAのイメージを改善させる戦略を行うこととなった[5][6]。しかし、ヘイデンはアメリカ同時多発テロ事件後のNSAの令状無し盗聴英語版を推し進めた張本人として矢面に立つことになった[7]

ハックマン演じるブリルは『カンバセーション…盗聴…』でハックマンが演じたハリー・コールを彷彿とするオマージュが見受けられる。ブリルがハリー・コール同様に通信傍受のプロであるという設定に加え、ブリルのNSA履歴ファイルにはハリー・コールを演じているときのハックマンの写真が添付されていた。

ソフト[編集]

2007年2月23日Blu-ray Disc版が発売。

脚注[編集]

  1. ^ a b c Enemy of the State (1998)”. Box Office Mojo. 2009年11月29日閲覧。
  2. ^ Enemy of the State (1998)”. Rotten Tomatoes. Fandango Media. 2022年7月11日閲覧。
  3. ^ Enemy of the State Reviews”. Metacritic. CBS Interactive. 2022年7月11日閲覧。
  4. ^ http://martykaiser.com/enemy.htm
  5. ^ Inside the NSA: The Secret World of Electronic Spying”. CNN (2001年3月25日). 2019年2月15日閲覧。
  6. ^ Zeke J Miller (2013年6月7日). “Former NSA Chief Was Worried About "Enemy Of The State" Reputation”. Time. 2019年2月15日閲覧。
  7. ^ John Pike. "Remarks By General Michael V. Hayden: What American Intelligence & Especially The NSA Have Been Doing To Defend The Nation".

関連項目[編集]

外部リンク[編集]