ウパニシャッド

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ウパニシャッド: उपनिषद्)は、サンスクリットで書かれたヴェーダの関連書物。一般には奥義書と訳される。また、漢字で書くと優婆尼沙曇となる。

概要

約200以上ある書物の総称である。各ウパニシャッドは仏教以前から存在したものから、16世紀に作られたものまであり、成立時期もまちまちである。もっとも、ウパニシャッドの最も独創的要素は、仏教興起以前に属するので、その中心思想は遅くとも西暦前7世紀ないし前6世紀に遡る[1]

ウパニシャッドの語源について、「近くに座す」ととるのが一般的である。それが秘儀・秘説といった意味になり、現在のような文献の総称として用いられるようになったと広く考えられている。

後世の作であるムクティカー・ウパニシャッドにおいて108のウパニシャッドが列記されていることから、108のウパニシャッドが伝統的に認められてきた。その中でも10数点の古い時代に成立したものを特に古ウパニシャッドと呼ぶ。多くの古ウパニシャッドは紀元前500年前後に成立し、ゴータマ・ブッダ以前に成立したものと、ゴータマ・ブッダ以後に成立したものとある。古ウパニシャッドはバラモン教の教典ヴェーダの最後の部分に属し、ヴェーダーンタとも言われる。

ウパニシャッドの中心は、ブラフマン(宇宙我)とアートマン(個人我)の本質的一致(梵我一如)の思想である。ただし、宇宙我は個人我の総和ではなく、自ら常恒不変に厳存しつつ、しかも無数の個人我として現れるものと考えられたとされる[2]

古ウパニシャッド

成立時期によって、以下に分類される。

初期
紀元前800年から紀元前500年にかけて成立。古散文ウパニシャッド。
中期
紀元前500年から紀元前200年にかけて成立。韻文ウパニシャッド。
後期
紀元前200年以降に成立。新散文ウパニシャッド。

古ウパニシャッド一覧

初期

中期

後期

日本語訳

完訳

  • 湯田豊『ウパニシャッド 翻訳および解説』大東出版社、2000年。ISBN 4-500-00656-7 
    上記一覧に挙げられている13ウパニシャッドの全訳。

抄訳

  • 服部正明『ウパニシャッド』中央公論社世界の名著1, 中公バックス〉、1979年。ISBN 412400611X 
    • 服部正明『ウパニシャッド』中央公論社〈世界の名著1〉、1969年。 
      ブリハッド・アーラニヤカ、チャーンドーギヤ、カウシータキ、カタ(全訳)の主要4ウパニシャッドの抄訳(一部全訳)。
  • 岩本裕『原典訳 ウパニシャッド』筑摩書房ちくま学芸文庫〉、2013年。ISBN 4-480-09519-5 
    • 岩本裕『ウパニシャッド』筑摩書房〈世界古典文学全集3〉、1967年。 
      ブリハッド・アーラニヤカ、チャーンドーギヤ(全訳)、カウシータキ、カタ(全訳)、プラシュナ(全訳)の主要5ウパニシャッドの抄訳(一部全訳)。
  • 佐保田鶴治『ウパニシャッド』平河出版社、1979年。ISBN 4892030260 
    上記一覧の13ウパニシャッドの内、ケーナだけを除いた主要12ウパニシャッドの抄訳。
  • 日野紹運奥村文子『ウパニシャッド』日本ヴェーダンタ協会、2009年。ISBN 4931148409 
    上記一覧の13ウパニシャッドの内、カウシータキ、マイトリーを除き、カイヴァルヤを追加した主要12ウパニシャッドの抄訳。

脚注

  1. ^ 辻直四郎(1953)『ヴェーダとウパニシャッド』182頁。
  2. ^ 辻直四郎(1953)『ヴェーダとウパニシャッド』149頁。

参考文献

  • 佐保田鶴治『ウパニシャッドからヨーガへ』平河出版社、1977年。 
  • 辻直四郎『ウパニシャッド』講談社〈講談社学術文庫〉、1990年。ISBN 4-06-158934-2 
  • 前田專學『インド哲学へのいざない』日本放送出版協会〈NHKライブラリー〉、2000年。ISBN 4-14-084126-5 
  • 辻直四郎『ヴェーダとウパニシャッド』創元社、1953年 東京

関連項目