ウォッカ

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ウォツカ

ウォッカロシア語: водка ヴォートカポーランド語: wódka ヴートカウクライナ語: горілка ホリールカ)は、ロシアポーランドウクライナなど東欧・旧ソ連圏で製造されている蒸留酒

概要

日本酒税法上はスピリッツに分類される。大麦小麦ライ麦ジャガイモなど穀物を原材料とし、蒸留後、白樺濾過して作る。このため、一般に無味無臭無色である。ただし、フレーバー(フレーバード、フレイバード)・ウォッカのように、香味が付けられているものも存在する。

ヴォトカ、ウォトカ、ウォツカ、ウオッカとも表記される。なお、ウォッカの読みは日本における慣用とされ、むしろ原語発音に近いヴォトカ、ウォトカないしウォツカに修正される方向にある。

成分は、ほとんどがエタノールであるため癖が少ない。このため、本来ウォッカを常飲していたロシア・東欧圏以外では、カクテルの材料の1つとして他の飲料と混ぜて飲むことが多い。一方、ロシア・東欧圏では「混ぜ物をしてウォッカを飲む」ということは邪道と目されている。スラブ諸語においては、ウォッカは「水 (вода) 」から派生した名詞である。

また、アルコール度数98%のウォッカも存在していたが現在は作られていない(96%のスピリタスウォッカは現在も販売中)。

ウォッカとは、ロシアなどでは単に「蒸留酒」を表す一般名詞であり、ロシアの少数民族で飲まれていたような蒸留酒も、ロシア語ではすべて「ウォッカ」と区分されている。

ウォッカの種類

穀物

ライ麦
ポーランド産が多い。
グレーン
色々な穀物を原料としたもの。
小麦
小麦をメインとしたもの。
大麦
フィンランド産に多い。

穀物以外

ミルク
ミルク等から抽出した乳糖を原料としたもの。
フルーツ
アメリカ産が多い。
じゃがいも
ポテトをメインとしたもの。
ビート(甜菜
サトウダイコンをメインとしたもの。
モラゼス
サトウキビの廃糖液をメインとしたもの。蒸留方法等によりラム酒にもなる。
フレーバード
生姜・唐辛子・パプリカ・ハーブ・レモン等で風味付けたもの。

歴史

  • 12世紀ごろからロシア地酒として飲まれるようになったといわれているが、11世紀ポーランドで飲まれていたとする説もあり、詳細な起源は不明である。
  • 14世紀のポーランドではウォッカで食器などを消毒したりなどを消臭する習慣があった。このことは1405年のポーランド王国の宮廷の記録に残っている。アルコールで消毒や消臭をする習慣はアラビアからポーランドへの陸上交易によって伝わったものとされる。
  • 1794年白樺活性炭でウォッカを濾過する製法が開発され、それ以降ウォッカは「クセの少ない酒」という個性を確立する。
  • 1917年ロシア革命により、モスクワのウォッカ製造会社の社長ウラジーミル・スミルノフフランスに亡命し、亡命先のパリでロシア国外では初めてウォッカの製造販売を始めた。このスミルノフの工場に1933年、ロシアからアメリカに亡命していたルドルフ・クネットが訪れた。クネットはアメリカとカナダにおけるスミノフ・ウォッカの製造権と商標権を買い取って帰国。以後、アメリカ産ウォッカの製造が始まり、アメリカは世界屈指のウォッカ消費国となる。
  • ソビエト連邦時代は経済の停滞・言論の不自由の不満から多数の国民がウォッカ中毒に陥った。そのためミハイル・ゴルバチョフペレストロイカの一環でウォッカの製造を削減した。しかし国民はウォッカを求め自宅で密造をしたため効果はなかった。それどころか貴重な税収である酒税が落ち込んだことでソ連は財政難に陥った。またウォッカを密造するには砂糖が必要なため多くの商店が砂糖不足になった。
  • 日本で初めてウォッカを製造・販売したのは、ロシア系亡命ユダヤ人ミハエル・コーガンが創業した太東貿易である。ただし同業他社が登場したのですぐ撤退、その後は輸入やアミューズメント事業に方針転換、現在はゲーム会社のタイトーとなっている。

ウォッカ戦争

欧州連合における、ウォッカの定義に関する議論を俗にウォッカ戦争という[1]

  • 穀物、ジャガイモが原料のもの以外はウォッカとして認めない - ポーランド、スウェーデンなど
  • サトウキビやブドウが原料のものも認めるべき - イギリス、オランダなど

以上の二派に分かれ、5年の間議論が続けられた[1]

議論は2007年12月17日に決着し、「原材料を明記することによって、ウォッカと認める」という結論で双方が合意した[1]

ウォッカの生産国と主な銘柄

東欧

ウクライナ

  • スラヴァ
  • ネミロフ
  • ナレヴァイコ
  • ミールナ(Мірна / Мѣрна) ウクライナ語で「厳選された」といった意味。さまざまな製造方法の製品が揃えられており、庶民的値段のもののうちでは、もっとも良いとされているものひとつ。

エストニア

リトアニア

ポーランド

ポーランドのウォッカは、主にプレミアムクラスはライ麦、スタンダードクラスはジャガイモ果物などを原料としているものが多い。ポーランドでは中世の昔から、ピュアウォッカ(ヴトゥカ・チスタwódka czysta)だけでなく、ハーブスパイス香木果物などで香りをつけたフレーバード・ウォッカ、フレーバード・ウォッカの一種で原料のライ麦の香りを残したまま木の樽で熟成させるスタルカ(英語のオールドと同じ意味)も多数製造されている。

主なウォッカは以下のとおり。この他にも多数のブランドがある。

  • ズブロッカ(ジュブルフカ)(Żubrówka) - フレーバード・ウォッカ
  • スピリトゥス(スピリタス)・レクティフィコヴァヌィ (Spirytus Rektifikowany)
  • ベルヴェデーレ・ヴトカ (Belvédére wódka)
  • ヴィボロヴァ (Wyborowa)
  • チェリーウォッカ(ヴィシニュフカ)(Wiśniówka) - フレーバード・ウォッカ
  • オジェフフカ (Orzechówka)
  • ジトニャ・ヴトカ (Żytnia wódka)
  • ショパン・クラシック (Chopin Classic)
  • ショパン・ブラック (Chopin Black)
  • マクシムス (Maksimus / Maximus)
  • ダンスカ (Dańska)
  • コペルニクス
    • シーズンド (Copernicus seasoned) - フレーバード・ウォッカ
    • ピュア (Copernicus pure)
  • サクセス (Sukces)
  • トルンスカ (Toruńska)
  • シリヴォヴィツァ・ポルスカ (Śliwowica polska) - フレーバード・ウォッカ
  • ジギスムンドゥス・III・ヴァーサ (Sigismundus III Vasa) - フレーバード・ウォッカ
  • アルペイスカ (Alpejska)
  • アマトル (Amator)
  • チスタ (Czysta)
  • グローバル・ライト (Global Light)
  • グランド・マキシマム (Grand Maximum)
  • マゾヴィェツカ・ジトニア (Mazowiecka Żytnia)
  • ミレニアム (Millenium)
  • スピリトゥス(スピリタス)・ドモヴィ・チスティ (Spirytus Domowy Czysty)
  • ウニヴェルスム (Uniwersum)
  • ズウォタ (Złota)
  • ゾジャ (Zorza)
  • アップルウォッカ(ヤブウコ) (Jabłko) - フレーバード・ウォッカ
  • クジェスカ (Krzeska) - フレーバード・ウォッカ
  • ワゴドナ (Łagodna) - フレーバード・ウォッカ
  • ルプチック (Lubczyk) - フレーバード・ウォッカ
  • トゥンドラ (Tundra)
  • ウニヴェルスム・ブラックカラント (Uniwersum Black Currant) - フレーバード・ウォッカ
  • ウニヴェルスム・ブラックカラント・ホワイト (Uniwersum Black Currant Biała) - フレーバード・ウォッカ
  • スタルカ
    • スタルカ10年 (Starka 10) - オールドウォッカ
    • スタルカ15年 (Starka 15) - オールドウォッカ
    • スタルカ20年 (Starka 20) - オールドウォッカ
    • スタルカ25年 (Starka 25) - オールドウォッカ
    • スタルカ30年 (Starka 30) - オールドウォッカ
    • スタルカ50年 (Starka 50) - オールドウォッカ
  • シャンベラン (Szambelan)
  • ポモルスカ (Pomorska)
  • ポモルスカ・ゴーシュカ (Pomorska Gorzka) - フレーバード・ウォッカ
  • ヴィルトゥオズ (Wiltuoz)
  • ドヴル・アルトゥサ (Dwór Artusa)
  • ジャズ (Jazz)
  • バルサム・ポモルスキ (Balsam Pomorski) - フレーバード・ウォッカ
  • バルサム・ポモルスキ・ス・ジュラヴィナ(with クランベリー)(Balsam Pomorski z Żurawiną) - フレーバード・ウォッカ
  • グダンスキ・スピリトゥス(スピリタス) (Gdański Spirytus)
  • スタロガルヅカ (Starogardzka Wódka)
  • ヴトゥカ(ウォッカ)・グダンスカ (Wódka Gdańska)
  • ビャワ・ダーマ (Biała Dama)
  • ポロネーズ・ブラックラベル (Polonaise)
  • ポロネーズ・ブルーラベル (Polonaise)
  • ワンツト (Łańcut)
  • ハルナシ (Harnaś)
  • ツェーケー(シーケー) (CK)
  • プロ・ポローニア (Pro Polonia)
  • ポルカ (Polka)
  • クラコヴィア・クラシック (Cracovia Classic)
  • クラコヴィア・シュープリーム (Cracovia Supreme)
  • タトラ (Tatra)
  • フィドラー (Fiddler)
  • クラコフスカ・ヴトゥカ (Krakowska Wódka)
  • プシェプランカ・クラクフスカ (Przepalanka Krakowska) - フレーバード・ウォッカ
  • スピリトゥス(スピリタス)・クラコフスキ (Spirytus Krakowski)
  • クラクス (Krakus)
  • ルクスソーヴァ (Luksusowa)
  • パン・タデウシュ (Pan Tadeusz)
  • シヴハ (Siwucha) - フレーバード・ウォッカ
  • ソプリツァ (Soplica)
  • ジョウォンドコヴァ・ゴーシカ (Żołądkowa Gorzka) - フレーバード・ウォッカ

ロシア

創始者であるロシア人、P.A.スミノフの名から命名。「スミルノフ」と表記されることも。ロシア皇室御用達の栄誉を受け、現在では世界No.1の販売量を誇る、正統派プレミアム・ウォッカ(ただし、一般に流通しているものの大半は分家であるアメリカ産のものである)。 
サンクトペテルブルクのお酒。ロシア語読みでは「ルースキー スタンダールト」。上位種にルースキー・ブリリアントがある。
  • バルティスカヤ (Балтийская)
「バルト(海)の」という意味。
  • ストリチナヤ (Stolichnaya / Столичная) - 「首都の」を意味するウォッカ。ロシア3大ウォッカの一つ。現在、日本に正規代理店がある数少ないロシアンウォッカの一つで、入手しやすい。厳密な読みは「スタリーチナヤ」。
  • プーチンカ
  • クリスタル
  • モスコフスカヤ (Moskovskaja / Московская) - 「モスクワの」ウォッカ。ロシア3大ウォッカの一つ。厳密な読みは「マスコフスカヤ」。
  • ストロワヤ (Stolovaja / Столовая) - ロシア語で「食卓の」を意味する。ロシア3大ウォッカの一つ。以前は、ストリチナヤと同じく、日本に正規代理店があり、入手が容易だったが、契約が切れ、現在は並行輸入でしか手に入らず、入手しにくくなった。厳密な読みは「スタローヴァヤ」。
  • スタルカ (Starka / Старка) ブランデーとのハーフブレンド。
  • ペルツォフカ (Pertsovka / Перцовка) - 唐辛子が漬けてあるため、赤く辛い。
  • サルート ズラットグラヴァヤ (SALUTE ZLATOGLAVAYA / САЛУТЕ ЗЛАТОГЛАВАЯ)
  • グジェリカ
  • クレプカヤ
  • サハリンスカヤ (Сахалинская) - サハリンのウォッカ。
  • ユーリー・ドルゴルーキー(Юрий Долгорукий) - ハイクラスなウォッカ。

その他の地域

  • フィンランディア (Finlandia) (フィンランド)
  • コスケンコルヴァ (Koskenkorva) (フィンランド)
  • アブソルート (Absolut) (スウェーデン)
  • レベル (Level) (スウェーデン)
  • スヴェードッカ (Svedka)(スウェーデン)
  • グレイグース (Grey Goose) (フランス)
  • ケテルワン (Ketel One) (オランダ)
  • 42 ビロウ (42 Below) (ニュージーランド)
  • アイスバーグ (Iceberg) (カナダ)
  • スカイウォッカ (SKYY) (アメリカ)
  • ダイアモンド 100 (Diamond 100) (アメリカ)
  • クレーター・レイク (Crater Lake) (アメリカ)
  • マザマ (Mazama) (アメリカ)

ウォッカベースのカクテル

(英語名順)

※ 一部の缶チューハイはウォッカベースのものがある。

関連項目

脚注

  1. ^ a b c 『EUのウオツカ戦争終結=定義めぐり合意』2007年平成19年)12月18日付配信 時事通信
  2. ^ http://www.nichiro.org/00_news/news.cgi?action=vew&code=81 ISBN 978-4885956164 など参照。