インターネット

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インターネット: Internet[1])は、インターネット・プロトコル技術を利用してコンピュータネットワーク間の相互接続を行うことにより実現されるネットワークのことである。

用語

「インターネット」の語の起源は一般名詞の「インターネットワークinternetwork)」で、本来の意味は「ネットワーク間のネットワーク」や「複数のネットワークを相互接続したネットワーク」であるが[2]、通常は固有名詞として、ARPANETを前身とする特定の世界的規模のネットワークを指す[3]。特に日本語で「インターネット」と呼ぶ場合は、固有名詞の意味である場合が大半である。中国では「国際互連網[4]あるいは「互連網絡[5]などと訳されている。

また、インターネット技術を使用した社内など組織内のネットワークはイントラネット、複数のイントラネット間あるいはインターネットとイントラネット間を接続したネットワークをエクストラネットとも呼ぶ。

「インターネット」はネットワークまたはネットワークシステムを表す用語である。電子メールウェブなどはインターネットのネットワークを利用したサービスの一つである。

概要

管理と経緯

インターネットにおいて一般的に利用される各種の技術や管理制度は、歴史的経緯から一般に公開されているものが多い。インターネット上においては特定の集中した責任主体は存在しない。全体を1つの組織・ネットワークとして管理するのではなく、接続している組織が各ネットワークを管理する建前となっている。事実上の管理主体(ICANNIETFなど)はあるにしても、それは接続している組織・ネットワークの総意として委任されていると言う建前になっている(国際的に中立的とされ、また一部は国際機関による管理もある)。それはインターネット・プロトコルの開発においても同様であり、RFC(Request for Comments)に具体化される。ただし、ICANNは非営利団体ながらも米商務省の傘下にあり、国際問題となっている。

インターネット接続が難しかった時代には、UUCPによる研究機関大学や一部の企業などの間でのメールネットニュースの交換が多く見られた。専用線が高価だったための苦肉の策であった。その後、接続コストの低下に加え、World Wide Web(WWW)の流行、さらにパソコン向けOSのインターネット接続対応により、一般的ユーザへも爆発的な普及を見るに至った。 情報の伝達速度が飛躍的に向上したため、物理的な距離と関係なく様々なコミュニティが形成され活動を行うようになった(IT革命掲示板SNSを参照)。

商用のインターネット利用についてはまだ歴史が浅く、20世紀末期の概ね1980年代後半に入ってからである。1990年代末期までは、個人向け接続サービスの大半は低速なダイヤルアップ接続で、従量制の課金が多くみられた。定額のブロードバンド接続サービスが低価格で提供され、爆発的に普及しはじめたのは2000年になってからであった。同時期に携帯電話でもインターネットへの接続サービスが提供されるようになり、携帯電話でのインターネット接続も一般化する。しかし、セキュリティに関する仕組みが現行のインターネットのプロトコルに組み込まれていないために、コンピュータウイルスの感染や不正アクセスなどの問題が後を絶たず、アプリケーションレベルで様々な対策が行われている。最近ではセキュアなネットワークを目指した新しい仕組みを作る動きも見られる。

プロトコル

インターネット・プロトコル(IP)は、インターネット上の通信に用いられる基本プロトコル(ネットワーク層(レイヤー))であり、その上にトランスポート(転送)層、さらにその上にアプリケーション層のプロトコルを組み合わせて用いる。転送プロトコルにはTCPやUDPなどがあり、アプリケーション・プロトコルにはWWWで用いられる HTTPネットニュースに用いられる NNTPチャットIRC)、ファイル転送(FTP)、ストリーミングなどさまざまな利用方法に伴うプロトコルが存在する。これらのプロトコルの定義の多くは RFC として公開されている。

インターネット・プロトコルは狭義のインターネット(The Internet)だけに使われるプロトコルではない。例えばインターネット・プロトコルや周辺技術を、企業内等のローカル・エリア・ネットワーク(LAN)環境で応用したものはイントラネットと呼ばれる。また、イントラネットを相互接続したものはエクストラネットと呼ばれる。

IPアドレス、ドメイン名

IPにおいては、基本的に通信するコンピュータごとに(厳密には機器のインターフェイスごとに)唯一無二の「IPアドレス」と呼ばれる固有番号を割り当てられることが通信時の前提となっており、IPを採用するインターネットにおいても、接続する各組織に対して固有のIPアドレスの領域(範囲)がそれぞれ割り当てられる。各組織はそれぞれに割り当てられたIPアドレス領域の中の固有の番号を、所有する各コンピュータに割り当てる。

IPアドレスは数字の羅列で人間には分かり難いというデメリットがあり、一般には英数字を使用した名前(ドメイン名)をIPアドレスに対応させて用いる。
例えば、「ja.wikipedia.org」というドメイン名は「208.80.152.2」というIPアドレスに対応する。インターネットに参加する各組織(研究機関、教育機関、企業、プロバイダ (ISP) 、協会・団体、政府機関その他)に対して、識別子として(広義の)ドメイン名が割り当てられており、各組織は所有する各コンピュータに対してホスト名を割り当てる。ホスト名とドメイン名をドット(.)でつないだものが各コンピュータの固有名(FQDN)となる。

本来接続先ホストにはIPアドレスを指定する必要があるが、(狭義の)ドメイン名とIPアドレスをDNSによって関連づけることにより、IPアドレスに代わってドメイン名を指定することが可能となっている。

しかし、現在主に使われている規格(IPv4)のアドレスが枯渇しつつあるためIPv6が開発されたが、対応にはネットワーク機器の更新が必要である上、IPv4とIPv6の機器間では直接通信ができない(IPv6の機器はほぼIPv4にも対応しているのであまり問題にはならないが)。2011年2月現在、日本での完全な対応は一部のプロバイダや学術ネットワークにとどまっている。

アクセス

1997年から2007年までの、人口100人当りのインターネットユーザーの割合(青は先進国、オレンジは開発途上国、黄色は世界平均。出典:国際電気通信連合)

インターネットへのアクセス(接続)は、一般にはインターネット・プロトコル技術を搭載したインターネット端末を使用して、インターネットサービスプロバイダ経由で接続する。また独自ネットワークやイントラネットから、ゲートウェイ等を経由して接続できる場合もある。初期のインターネットでは、使用言語は英語文字コードASCII、文字はラテン文字で、接続デバイスは各種のコンピュータが大多数であった。

1990年以降のインターネットの世界的な普及により、現在では各種のコンピュータに加えて各種の携帯電話ゲーム機家電、産業機器などがインターネット端末機能を持つようになった。接続形態も従来の有線ダイヤルアップ接続に加えて各種の無線通信が一般化した。インターネット上で使用可能なサービスも、当初の電子メールファイル転送などから、World Wide Webインターネット電話検索エンジンソーシャル・ネットワーキング・サービスなどに広がり、そのユーザインタフェースもグラフィカルユーザインタフェースマルチメディア対応を含んだものも普及した。またコンピューティングの利用形態としてSaaSクラウドコンピューティングなどの表現や概念が普及する基盤ともなった。これらと平行して、各種の国際化と地域化多言語化、他のネットワークや技術との相互接続や相互運用性などが進んだ。

歴史

1960年、インターネットの前身ARPANETに直接影響を及ぼした概念であるJ・C・R・リックライダータイムシェアリングシステムが発表される。[6]

1969年10月29日、後のルータの原型となったIMPを用いてUCLAスタンフォード研究所(SRI)間が接続され[7][8]、同年12月5日までにUCサンタバーバラユタ大学が接続され4つのノードのインターネットが実現された。

1983年、ARPANETがプロトコルをそれまで利用していたNetwork Control ProgramからTCP/IPに切り替える。

1984年9月、村井純がテープメディアの物理的な配送の代わりとして電話回線を用いた300bpsの速度の回線で慶應義塾大学東京工業大学を接続した。同年10月に東京大学が接続され、日本のインターネットの始まりであるJUNETに拡大する。[9]

1985年、アメリカの「全国科学財団」による学術研究用のネットワーク基盤NSFNetが作られ、インターネットのバックボーンの役割がARPANETからNSFNetへ移行する。

1988年、アメリカで商用インターネットが始まる。同年、日本でWIDEプロジェクト開始。

1989年、商用ネットワークとNSFNetとの接続が開始される。

1990年、スイスの素粒子物理学研究所・CERNの研究員であったティム・バーナーズ=リーは、当時上司だったロバート・カイリューらの協力によりWorld Wide Webシステムのための最初のサーバとブラウザを完成させる。

1994年7月、アメリカのタイム誌で、「インターネットは核攻撃下でのコミュニケーションの生き残りを想定して開発された」[10]という記事が掲載される。以降、ARPANETは核戦争時のための軍事ネットであるという俗説が流布するようになる。一方、ARPANET立ち上げ時のIPTO責任者であったロバート・テイラーは、この記事に対して事実とは異なる旨、正式な抗議をタイム誌に対して行った。

1995年、NSFNetは民間へ移管され、Windows95の登場で一般の人にインターネットが急速に広まった。なお、Windows95の初期バージョンではインターネット関連の機能は「Microsoft Plus!」による拡張機能とされていたが、OSR2以降は標準搭載されている。

1999年にInternet of Thingsという用語が提唱された。

1999年にはADSLによるインターネットへの接続サービスが開始される。

2001年にはFTTH,CATV,無線通信によるインターネットへの接続サービスが開始される。

2002年から2005年に掛けて、友人紹介型のソーシャルネットワークサービスが提供され始める。

2004年にWeb2.0の概念が提唱される。

2005年は2010年代に一般的な日常生活で使われるようになる様々なサービスが提供開始した時期である。Google Mapsのサービス提供開始, iTunes Music Store の日本へのサービス提供開始、2005年末にはYoutubeがサービスを提供を開始した。特にWebサービスに関わる重要な出来事が集中している。この年に人類史上初めて巨大知の基盤が成立したと考えられる。

2004年末にはNintendo DSが、2005年末にXbox360が、2006年末にはPS3Wiiがオンライン機能を標準搭載し発売された。2005年以降、オンライン対戦の一般化が進んだ。

2005年からネットレーベルの音楽業界への台頭が始まる。

2006年にはPLCによるインターネットへの接続サービスが開始される。

2000年代後半にはYoutube,mixi,Facebook,Twitter等が流行し、インターネットにおけるコミュニケーション活動が活発化した。

2000年から2010年に掛けて、インターネットに接続される計算機やセンサーが加速度的に増えるに従って、インターネットを介して膨大な実世界データが収集可能となり、そのようなデータを処理する専門の職業まで現れた。(データサイエンティスト)

社会の変化

2007年よりYoutubeやニコニコ動画などの動画共有サービス, 2010年よりSoundCloud等の音声ファイル共有サービスを用いた音楽活動が活発化した。特にDTMを行う者には人気となった。若年層にはネット上の音楽活動で有名になりメジャーデビューする音楽家が多数現れるようになった。 現在のインターネットは、音楽を筆頭として、遠く隔たっていた様々な文化が融合し、新たな文化が生み出される文化交流の基盤にもなっている。

WWWが発明された1990年から2010年までの20年間に、インターネットは学術ネットワークから日常生活のインフラへと変革を遂げたと言っても過言では無くなっている。

情報格差

世界的に常時接続環境が提供されているのは都市部が中心で、山間部や離島などとの情報格差が問題になっている。その都市部や先進国でも当初、パソコンが高価だったことや、操作体系が複雑だったことから、アルビン・トフラーは、パソコンスキルの有無や経済力で情報格差が生じると予想していた。だが後に「誤算があった」として、パソコンの低価格化などにより、誰にでも広く普及すると発言を修正した。また操作方法も、インターネットに対応したフィーチャーフォン(3G携帯)、スマートフォンタブレット端末、或いはスマートテレビなどの登場で、かつてのパソコンと比べ格段に容易になり、ネットアクセスに高度なスキルが余り必要とされなくなったこともあり、操作スキルの有無による格差も以前ほど生じにくくなっている。

発展途上国では多くの国民にとって端末のパソコンが高価であり通信料金も高いため、インターネットカフェがインターネットの普及を支えているが、近年は途上国向けの格安パソコンや格安スマートフォンが徐々に普及しつつある。

またインターネットに繋がっている事を前提とした情報発信などが非常に増え、情報格差を生む要因にもなっているものの、一方で上述のような理由で、誰でもネットを始めやすい環境も生まれている。

脚注

  1. ^ アメリカ英語発音: [ˈintərˌnet]イギリス英語発音: [ˈɪntənɛt]
  2. ^ 「inter-state」が「州間高速道路」、「inter-national」が「国際」を意味するのと同様。インターネットの原型となったARPANETは、研究機関の間のネットワークであった。この意味を明示的に表す場合は「an internet」と呼ぶ場合もある。
  3. ^ この意味を明示的に表す場合は「The Internet、The Net」と呼ぶ場合もある。
  4. ^ "国际互联网の意味-中国語辞書-Weblio日中中日辞典". (Weblio). 2016年2月25日閲覧。
  5. ^ "互联网络の意味-中国語辞書-Weblio日中中日辞典". (Weblio). 2016年2月25日閲覧。
  6. ^ Man-Computer Symbiosis 「人間とコンピュータの共生」 1960年3月
  7. ^ インターネットが40周年 最初に送られたメッセージは「LO」 - ITmedia News
  8. ^ 40th Anniversary of the Internet / UCLA Spotlight
  9. ^ インターネット 歴史の一幕:JUNETの誕生 - JPNIC ニュースレターNo.29
  10. ^ "BATTLE FOR THE SOUL OF THE INTERNET". TIME, 1994年7月25日。

関連項目

基本
接続
利用
サービス
セキュリティ
ブロードバンド・クラウド・ユビキタス
現象
その他

外部リンク