イナンナ
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イナンナ(シュメール語: 𒀭𒈹、翻字: DINANNA、音声転写: Inanna)は、シュメール神話の金星の女神で、ウルク文化期(紀元前4000年-紀元前3100年)からウルクの守護神として崇拝されていたことが知られている(エアンナ寺院に祭られていた)。夫にドゥムジをいただく。
呼称
その名は「天の女主人」を意味するとされている[1]。 アッカド帝国(en)期には「イシュタル」(新アッシリア語: )と呼ばれた。イシュタルは南アラビアのアスタル神やシリアの女神アスタルテと関連し、古代ギリシアではアプロディーテーと呼ばれ、ローマのヴィーナス(ウェヌス)神と同一視されている[2]
神話のなかのイナンナ
メソポタミア神話において、イナンナは知識の神エンキの誘惑をふりきり、酔っ払ったエンキから、文明生活の恵み「メー」をすべて奪い、エンキの差し向けたガラの悪魔の追跡から逃がれ、ウルクに無事たどりついた。エンキはだまされたことを悟り、最終的に、ウルクとの永遠の講和を受け入れた。この神話は、太初において、政治的権威がエンキの都市エリドゥ(紀元前4900年頃に建設された都市)からイナンナの都市ウルクに移行するという事件を示唆していると考えられる。
イナンナは系譜上はアンの娘だが、月神ナンナ(シン)の娘とされることもあり、この場合太陽神ウトゥ(シャマシュ)とは双子の兄妹で、冥界の女王エレシュキガルの妹でもある[3]。
イナンナとフルップ(ハルブ)の樹
ある日、イナンナはぶらぶらとユーフラテス河畔を歩いていると、強い南風にあおられて今にもユーフラテス川に倒れそうなフルップ(ハルブ)の樹を見つけた。あたりを見渡しても他の樹木は見あたらず、イナンナはこの樹が世界の領域を表す世界樹(生命の樹)であることに気がついた。
そこでイナンナはある計画を思いついた。
この樹から典型的な権力の象徴をつくり、この不思議な樹の力を利用して世界を支配しようと考えたのだ。
イナンナはそれをウルクに持ち帰り、聖なる園(エデン)に植えて大事に育てようとする。
まだ世界はちょうど創造されたばかりで、その世界樹はまだ成るべき大きさには程遠かった。イナンナは、この時すでにフルップの樹が完全に成長した日にはどのような力を彼女が持つことができるかを知っていた。
「もし時が来たらならば、この世界樹を使って輝く王冠と輝くベッド(王座)を作るのだ」
その後10年の間にその樹はぐんぐんと成長していった。
しかし、その時(アン)ズーがやって来て、天まで届こうかというその樹のてっぺんに巣を作り、雛を育て始めた。
さらに樹の根にはヘビが巣を作っていて、樹の幹にはリリスが住処を構えていた。リリスの姿は大気と冥界の神であることを示していたので、イナンナは気が気でなかった。
しばらくの後、いよいよこの樹から支配者の印をつくる時が来た時、リリスにむかって聖なる樹から立ち去るようにお願いした。
しかしながら、イナンナはその時まだ神に対抗できるだけの力を持っておらず、リリスも言うことを聞こうとはしなかった。彼女の天真爛漫な顔をみるみるうちに失望へと変わっていった。そして、このリリスを押しのけられるだけの力を持った神は誰かと考えた。そして彼女の兄弟である太陽神ウトゥに頼んでみることになった。
暁方にウトゥは日々の仕事として通っている道を進んでいる時だった。イナンナは彼に声をかけ、これまでのいきさつを話し、助けを懇願した。ウトゥはイナンナの悩みを解決しようと、銅製の斧をかついでイナンナの聖なる園にやって来た。
ヘビは樹を立ち去ろうとしないばかりかウトゥに襲いかかろうとしたので、彼はそれを退治した。ズーは子供らと高く舞い上がると天の頂きにまで昇り、そこに巣を作ることにした。リリスは自らの住居を破壊し、誰も住んでいない荒野に去っていった。
ウトゥはその後、樹の根っこを引き抜きやすくし、銅製の斧で輝く王冠と輝くベッドをイナンナのために作ってやった。彼女は「他の神々と一緒にいる場所ができた」ととても喜び、感謝の印として、その樹の枝と根を使って「プック(Pukku)とミック(Mikku)」(輪と棒)を作り、ウトゥへの贈り物とした。
イナンナの冥界下り
天界の女王イナンナは、冥界を支配した姉であるエレシュキガルと対決するため、冥界に下降する決心をした。行く前にイナンナは七つの神力を象徴する飾りなどで身を着飾って、自らの忠実な従者であるインシュブルに、3日経っても帰ってこなかったら知識の神エンキに助けを求めるように言い渡す。
冥界の門を到着するイナンナは、冥界の門番であるネティに冥界の門を開くように命令することで、エレシュキガルを探す。エレシュキガルは不快になることであり、イナンナが冥界の七つの門の一つを通過する時に身につけた飾りの一つを取り下げるように要求した。イナンナが最後の門を通過した時には全裸になってしまう。神力を失ったイナンナは死刑判決を受け、エレシュキガルによって殺害されて冥界に囚われる。
王権を授与する神としてのイナンナ
イナンナ神は外敵を排撃する神としてイメージされており、統一国家形成期には王権を授与する神としてとらえられている。なお、それに先だつ領域国家の時代、および後続する統一国家確立期においては王権を授与する神はエンリル(シュメール語: 𒀭𒂗𒇸)であり、そこには交代がみられる[4]。
ウルクの大杯
高さ1m強、石灰岩で造られた大杯。ドイツ隊によって発見され、イラク博物館に展示されていた[5]。最上段には都市の支配者が最高神イナンナに献納品を携え訪れている図像が描かれ、最下段にはチグリスとユーフラテスが、その上に主要作物、羊のペア、さらに逆方向を向く裸の男たちが描かれている[6]。図像はイナンナとドゥムジの「聖婚」を示し、当時の人々が豊穣を願う性的合一の儀式を国家祭儀にまで高めていた様子を教えている[7]。
脚注
出典
- 前田徹『メソポタミアの王・神・世界観-シュメール人の王権観-』山川出版社、2003年10月。ISBN 4-634-64900-4