アルバロ・デ・バサン級フリゲート

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アルバロ・デ・バサン級フリゲート
F-102 アルミランテ・ファン・デ・ボルボーン
艦級概観
艦種 フリゲート
艦名 人名
建造期間 1997年 - 建造中
就役期間 2002年 - 就役中
前級 サンタ・マリア級フリゲート
次級 最新
性能諸元
排水量 満載:6,250t
全長 147m
全幅 18.6m
吃水 4.75m
機関 CODOG方式(最大 47,000馬力)
キャタピラー3600ディーゼルエンジン 2基
GE LM2500ガスタービンエンジン 2基
推進器(5翼, 可変ピッチ) 2軸
電力 MTU 12V-396TE54 ディーゼル
速力 最大29kt
航続距離 4,500海里 (18ノット)
乗員 240名(うち士官35名)
兵装 Mk.45 mod.2 54口径5インチ単装砲 1基
FABA メロカ 20mm CIWS 2基
Mk.41 mod.12 VLS (48セル)
スタンダード SAM
ESSM 短SAM
を発射可能
1基
ハープーンSSM 4連装発射筒 2基
Mk.32 mod.9 連装短魚雷発射管 2基
艦載機 SH-60B シーホークLAMPS III 1機
C4I NTDS (リンク 4A/11/14/16)
Mk.7 AWS+Mk.34 GWS
レーダー AN/SPY-1D 多機能型
AN/SPS-67(V)4 対水上用
タレス スカウト 航海用
AN/SPG-62 イルミネーター 2基
FABA DORINA 射撃指揮用 1基
ソナー ENOSA-レイセオン DE 1160LF(I)
電子戦
対抗手段
SLQ-380 ESM/ECM装置
Mk 36 SRBOC 4基

アルバロ・デ・バサン級フリゲート (Fragatas Clase Álvaro de Bazán) は、スペイン海軍フリゲートF-100級フリゲートとしても知られている。

概要

イージスシステム搭載艦としてはアメリカ海軍タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の両クラス、海上自衛隊こんごう型ミサイル護衛艦に続くこのクラスは、スペイン海軍の艦船、その中でも戦略任務の中核を担う軽空母プリンシペ・デ・アストゥリアス」に強力な艦隊防空の傘を提供するために計画された。

元々はオランダ(デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲート)やドイツ(ザクセン級フリゲート)と共に、三国共同フリゲート(TFC:Trilateral Frigate Cooperation)の一つとして計画されたが、APARSMART-Lレーダーシステムのコスト面を含む諸般の理由で同計画からは脱退。技術としての歴史がより古く価格のこなれているアメリカ合衆国イージスシステムを採用した。

ネームシップの「アルバロ・デ・バサン」は、2002年9月18日に就役。艦名は、スペイン無敵艦隊の創設者、サンタ・クルス侯アルバロ・デ・バサンに由来する。スペインのIZAR造船所で建造され、建造費は3億8,500万ユーロ

また、トマホーク巡航ミサイルを搭載する予定であり、その暁にはこのクラス自身もスペインの戦略任務を担うことになる。

設計

イージス艦防空艦としての性能は世界の一級品ではあるが、その建造費がどうしても高くつくものであったため、スペイン海軍は本級の設計にあたって建造費の低減を重視したものと思われる。

アーレイ・バーク級をタイプシップとして基本的な構造を大きく変えず設計された日本のこんごう型(及びそれに続くあたご型)とは異なり、船型と排水量の縮小を目的にAN/SPY-1Dを搭載する艦橋構造物の構造を一から見直したことや、主機をガスタービンエンジン4基によるCOGAGから、ガスタービンエンジンとディーゼルエンジン2基ずつによるCODOGに改めたこと、ミサイル管制レーダーAN/SPG-62を前後各1基ずつで計2基とし、艦橋の前方に集約されたMk.41 VLSも48セルのみとしたこと、などがその一例である。ディーゼルエンジンの振動、騒音については、特殊な素材と構造を用いて、艦体への振動伝播の遮断が徹底されている。

また、このクラスは排水量と建造費の圧縮を図った一方で、CIWSにはMk15ファランクスに代えてスペイン国産のメロカを採用したり、アーレイ・バーク級フライトI・IIやこんごう型が持っていないヘリコプター格納庫を備え、ヘリ1機を搭載するなど、その設計には独自の工夫が見られる。

こうしたアーレイ・バーク級に迫る水準の装備を圧縮搭載した手際に評価がある一方、それでも艦型規模に比して重装備に過ぎ、一部専門家からはトップヘビーが指摘されている。

このクラスの最終的なシステムインテグレーションはアメリカ海軍ロッキード・マーティンの主導で行われた。ノルウェー海軍フリチョフ・ナンセン級フリゲートオーストラリア海軍ホバート級駆逐艦の設計にあたっては、このクラスを基礎としている。

兵装

本級は、中核的な武器システムとしてイージス武器システム(AWS)を装備する。その中核となる戦術情報処理装置には、国産のSCOMBA(Sistema de COMbate de los Buques de la Armadaを搭載する。SCOMBAの開発に当たっては、AWSの指揮決定(C&D)システムディスプレイ・システム(ADS)ソースコード開示を受けたとされている[1]

艦首部にMk.41VLSを48セルを備え、その中に艦対空ミサイルスタンダードSM-2ESSMを装備している。スタンダードを誘導するAN/SPG-62は主マスト前方直下とヘリコプター格納庫上に1基ずつ2基を装備している(タイコンデロガ級は計4基、アーレイ・バーク級・こんごう型・あたご型は計3基)。

対艦目的にハープーンの4連装発射筒を2基搭載している。対潜目的には魚雷発射管を備えるほか、搭載するSH-60Bも対潜能力の重要な部分である。

搭載砲としては、艦首部にMk.45 mod.2 54口径5インチ砲を1基備える。CIWSはスペイン国産のメロカを2基、艦の前方と後方とに持っている。

スペイン国防省はアメリカに対し巡航ミサイルトマホーク60基の購入を申し入れ、アメリカ当局はこの申し入れに対し許可を与えた。スペイン国防省はトマホークをこのクラスへ搭載することにしている。

艦歴

このクラスのネームシップであるアルバロ・デ・バサン(F101)は、2005年の遅くに「セオドア・ルーズベルト空母戦闘群(現 空母打撃群)の一員となるべくペルシア湾に派遣されている。アルバロ・デ・バサンはこの海域でイラクの目標に対するアメリカ軍の攻勢作戦に支援を与えていたという話もいくつかあるが、これは当時のアスナール政権がイラク戦争に対して取っている公的姿勢と相容れないものであり、公式には否定されている。

2008年8月、アルバロ・デ・バサン級フリゲート2番艦のアルミランテ・ファン・デ・ボルボーンは、アメリカ海軍オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートテイラー」、ドイツ海軍ブレーメン級「リューベック」、ポーランド海軍のO.H.ペリー級「ゲネラウ・カジミェシュ・プワスキ」のNATO所属艦艇と共に、黒海での演習のためにボスポラス海峡を通過した。これらは2007年10月時点で既に予定されていた演習だが、南オセチア紛争の当事者であるロシアが情勢への影響に対して懸念を表明した[2]

同型艦

# 艦名 造船所 起工 進水 就役
F-101 アルバロ・デ・バサン
SPS Álvaro de Bazán
IZAR
フェロル造船所
1999年
6月14日
2000年
10月31日
2002年
9月19日
F-102 アルミランテ・ファン・デ・ボルボン
SPS Almirante Juan de Borbón
2000年
10月27日
2002年
2月28日
2003年
12月3日
F-103 ブラス・デ・レソ
SPS Blas de Lezo
2002年
2月28日
2003年
5月16日
2004年
12月16日
F-104 メンデス・ヌーニェス
SPS Méndez Núñez
2003年
5月16日
2004年
11月12日
2006年
3月21日
F-105 クリストーバル・コロン
SPS Cristóbal Colón
ナバンティア
フェロル造船所
2007年
6月29日
2010年
11月4日
2012年
10月23日
F-106 フアン・デ・アウストリア
SPS Juan de Austria
計画中止

参考文献

  1. ^ Revista General de Marina” (PDF) (スペイン語) (2008年). 2012年9月3日閲覧。
  2. ^ Russia queries necessity of U.S. humanitarian operation in Black Sea
  • 「スペイン海軍初のイージス艦「アルバロ・デ・バサン」のハードウエア」『世界の艦船』第603号、海人社、2002年11月、96-99頁、NAID 40005452783 

準同型艦

関連項目

外部リンク