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「ん」の筆順
「ン」の筆順
ん 、ン は、日本語 の仮名 の1つである。この音は、撥音 (はつおん、はねるおん)と呼ばれ、1モーラ を形成するが、通常は子音 であり、かつ、直前に母音 を伴うため、単独では音節 を構成せず、直前の母音 と共に音節を構成する。ただし、「ん?」などのように語頭にある場合は、母音に代わる音節の核、すなわち音節主音 として、単独で音節を構成する。したがって、鼻母音以外に発音される限り、すなわち子音である限り、「ん」は音節主音的 な子音である。「ん」は元来五十音 には現れないが、一般にわ行 の次に置かれる。
文字としての「ん」、「ン」を「ウン」と発音することもある[1] 。
音韻
現代標準語の音韻 : 日本語を母語とする日本語話者にとっては「ん」は1つの音、すなわち音素 /ɴ/ と認識される。しかし、実際の発音は次項で述べるように前後の音や速度、話者により、[ŋ] (IPA ) = [N] (X-SAMPA ), [n] (IPA ), [m] (IPA ), [ɴ] (IPA ) = [N\] (X-SAMPA )、その他鼻音 に関連した音が用いられる。どの発音を用いても意味上の違いは生じない。
例
ほんこう /hoɴkou/ [hoŋkoː]
ぼんたん /boɴtaɴ/ [bontaɴ]
はんのう /haɴnou/ [hanːoː]
かんぱん /kaɴpaɴ/ [kampaɴ]
てんまど /teɴmado/ [temːado]
しんいち /siɴiti/ [ɕiĩt͡ɕi]
音声学的記述
音声学 上の実際の発音:前項で述べたように「ん」は様々に発音される。
いずれも逆行同化 により、「ん」の調音位置と調音様式 は後続音の影響を受ける。
後続音のない「ん」は鼻音または鼻母音に発音され、口蓋垂鼻音 [ɴ] またはその調音位置の鼻母音である。
先行音も後続音もない単独の「ん」は口蓋垂鼻音 [ɴ] またはその調音位置の鼻母音である。
順序
五十音順 :厳密には、「ん」は五十音に含まれないが、通常は、「ん」を含めて五十音順とすることが多い。その場合には、「ん」は五十音の最後、第48位に置かれる。や行 い段 とえ段 のい とえ およびわ行 う段 のう を数に加えると51位、逆に現代仮名遣いで使われないゐ とゑ を除くと46位となる。
いろは順 : なし。第48位に「京」の代わりに置かれることがある。その場合には「す 」の次。
表記
語頭の「ん」
日本語の現代共通語 では基本的に「ん」より始まる単語が存在しない。ただし、くだけた口語や方言では「生まれる」「美味い」など語頭の「う」を鼻濁音 [ŋ] で発音することがあり、それを「ん」で表現することがある。1944年 に文部省 が制定した『發音符號』では、語頭の鼻濁音は「う゚ 」を使用するように定めたが、この表記はほとんど浸透せず、現在では語頭の鼻濁音と「う」を特に区別する場合、単に「ん」と表記されることが多い。
某という言い換えと同様に、内容をぼかす用法がある。例:数千円のことを「ン千円」と書くなど(ただし発音は通常「ウンゼンエン」とする。発音通り「ウン千円」などと表記することもある)。
琉球語 には「ン」から始まる単語が多数見られ、中でも宮古方言 の「んみゃーち(ようこそ、の意)」は有名。与那国方言などにもみられる。
本来「馬 」「梅 」は「ンマ [m̩ma] 」、「ンメ [m̩me] 」と発音されており、伝統的な東京方言 をはじめ、方言として残る地方もある。古典的仮名遣いでは、「馬」は「むま」と書かれた。また、これらはいずれも大陸からの移入種であり、遡れば中期漢語 の「マー」「メイ」という発音にたどり着くとされている。
東北方言 には、「んだ」(そうだ)、「んで」(それで)のように、そ系列の指示語 と助詞 の組み合わせの一部に「ん」から始まる文節がある。また東北方言以外でも、くだけた口語で「そんな」を「んな」と省略して発音することがある(用例:んな事あるわけ無いだろう)。文頭に「ん」が来ている例として指摘できる。
日本語以外の言語に於いても、「ン」から始まる言葉は少ない。外国語の単語を仮名表記する際、基本的には鼻音で始まり後続する音が母音でない場合に、「ン」で始まる言葉として表されることがある。ただし、外国語音を日本語でどう捉えるか、仮名でどのように表記するかという問題があるため、その多寡を単純には結論づけられない。
広東語 には [ŋ̍] および [m̩] という音節主音 が存在する。例えば漢姓 によくある「呉 」の発音は [ŋ̍] であり、香港の喜劇俳優「呉孟達」の名前を片仮名表記する場合「ン・マンタッ」と書く。
台湾語 (閩南語 )で「黄 」および「阮 」の発音は [ŋ̍] である(声調が異なる)。どちらも姓として使用する。
ベトナム で最もポピュラーな姓は「阮」 (Nguyễn) であるが、日本語では「グエン」と表記することが多い。
インドネシア バリ島 の玄関口であるデンパサール国際空港 の正式名称は、ングラライ国際空港 (Bandara Internasional Ngurah Rai / Ngurah Rai Airport) であり、これは独立戦争の英雄グスティ・ングラ・ライに因んでいる。ただしこれについては、「グラライ」の片仮名表記もまた存在する。
アフリカ ではンジャメナ 、ンゴマ 、ンゴロンゴロ 、キリマンジャロ (Kilima-Njaro)、ユッスー・ンドゥール など「ン」から始まる名前・単語が存在する。ただし「ン」の代わりに、「ウン」、「エン」、「ヌ」、「ム」に置き換えられることがある。(エムボマ 、エンクルマ 、ヌデレバ 、タボ・ムベキ )
「ん」という文字を表す目的で単独で使用されることがある。
いろは四十八組 に「ん組」は存在しなかった。最後に追加された48番目の組は「本組」と称した。
しりとり 遊びにおいては、次に繋げられないために、「最後に『ん』の付く言葉を言った者が負け」というルールになっていることが普通である。
発音が聞き取りにくいため、日本の自動車用ナンバープレート には「ん」が用いられない。
五味太郎 作の絵本 に「んんんん」という作品がある。
イタリアにはンドランゲタ ('Ndrangheta)という犯罪組織が存在する。
「ん」に関わる諸事項
な行 音などが「ん」に変化する(音便 )ことを、撥音便 という。
例:「〜なの です」→「〜なん です」、「ぼくの 家(うち)」→「ぼくん ち」、「せむ とす」⇒「せん とす」、「〜なる めり」⇒「〜なん めり」
方言の例:「あるの」→「あんの/あるん」、「あるので」→「あるんで/あんので/あんで」
「はねる音」「撥音」と呼ばれるのは、平仮名の「ん」、片仮名の「ン」ともに字形が「撥ねている」からであり、促音 (つまる音、『っ』)が音声上の特徴から命名されているのとは異なっている。
日本発祥の医薬品の多くに「ン」で終わる商品名が付けられる。これは西洋医学で用いられる化合物の名称が「ン」で終わることが多かったため。
「ん」が日本語に現れる時期
「ん」という文字が使われるようになったのは室町時代 頃とされるが、詳しい時期については分かっていない。したがって、それよりも前の時代には「ん」という文字はなく、「ん」と読む場合も文字上は表記されなかった。過去の書物では古事記 、日本書紀 、万葉集 には「ん」音を表記する文字(万葉仮名)は見当たらない[4] [5] 。また小倉百人一首 にも「ん」は現れない。このことから古代日本語には「ん」音はなかったと推定され、中国から経典などが輸入されたときに同時に「ん」音も移入されたと考えられる。平安時代 以降に撥音便 化した助動詞「む、なむ、けむ、らむ」などについては、「ん」と読む場合も「む 」がそのまま用いられた。また漢語に「ん」音がある場合その読みを「い」で代用することがあった(例:冷泉 (れいせん)→かな表記「れいせい」→現代の読み「れいぜい」)。
脚注
関連項目