のと鉄道七尾線

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七尾線
七尾線で使用される気動車NT200形
概要
起終点 起点:七尾駅
終点:穴水駅
駅数 8駅
運営
開業 1925年12月15日 (1925-12-15)
経営移管 1991年9月1日
所有者 鉄道省運輸通信省運輸省
日本国有鉄道(国鉄)→
西日本旅客鉄道(JR西日本)
(七尾 - 和倉温泉間は第1種鉄道事業者、和倉温泉 - 穴水間は第3種鉄道事業者)
運営者 のと鉄道(第2種鉄道事業者)
使用車両 使用車両を参照
路線諸元
路線総延長 33.1 km (20.6 mi)
軌間 1,067 mm (3 ft 6 in)
電化 直流1,500 V (七尾 - 和倉温泉間)
路線図
のと鉄道七尾線路線図
のと鉄道七尾線路線図
テンプレートを表示
停車場・施設・接続路線
JR西:七尾線
ELCl STR
↑JR西1種
ELCl BHF
0.0 七尾駅
ELCl STR
JR西1種・のと鉄道2種
ELCl WBRÜCKE
桜川放水路
ELCe BHF
5.1 和倉温泉駅
STR
↓JR西3種・のと鉄道2種
WBRÜCKE1
船尾川
WBRÜCKE1
川尻川
BHF
8.6 田鶴浜駅
WBRÜCKE1
大津川
BHF
12.7 笠師保駅
WBRÜCKE1
日用川
BHF
16.3 能登中島駅
WBRÜCKE1
熊木川
BHF
22.5 西岸駅
BHF
26.8 能登鹿島駅
TUNNEL2
志ヶ浦隧道
TUNNEL2
乙ヶ崎隧道
KBHFxe
33.1 穴水駅
exSTRq exABZrf
能登線
exAKRZu
能登有料道路
exWBRÜCKE1
小又川
exWBRÜCKE1
七海川
exTUNNEL2
第1此木隧道
exTUNNEL2
第2此木隧道
exTUNNEL1
exTUNNEL1
峠隧道
exTUNNEL2
新保隧道
exBHF WASSER
44.1 能登三井駅 /↑河原田川
WASSER+l exWBRÜCKE WASSERr
第2河原田川橋梁
WASSERl exWBRÜCKE WASSER+r
第3河原田川橋梁
exTUNNEL2
跡地山隧道
WASSER+l exWBRÜCKE WASSERr
第4河原田川橋梁
WASSERl exWBRÜCKE WASSER+r
第5河原田川橋梁
exBHF WASSER
49.1 能登市ノ瀬駅
WASSER+l exWBRÜCKE WASSERr
第6河原田川橋梁
WASSERl exWBRÜCKE WASSER+r
第7河原田川橋梁
exKBHFe WASSER
53.5 輪島駅 /↓河原田川

七尾線(ななおせん)は、石川県七尾市七尾駅と石川県鳳珠郡穴水町穴水駅を結ぶ、のと鉄道が運営する鉄道路線である。

概要

当路線は、1991年七尾線津幡駅 - 和倉温泉駅間の電化に際して、西日本旅客鉄道(JR西日本)が石川県に和倉温泉以北の路線を引き受けることを要求したために、能登線の運営を行っていたのと鉄道がその営業を引き継いだものである。転換にあたり、この路線が転換時に交付金等の支援が受けられる特定地方交通線ではなかったため、JR西日本から路線を買い上げるよりも借用が妥当と判断された[1]。そのため、線路等の施設はJR西日本がそのまま所有し、七尾駅 - 和倉温泉駅間 (5.1km) はJR西日本との共用区間となっている。

当初、七尾駅 - 輪島駅間が移管されたが、2001年に乗客減少の著しい穴水駅 - 輪島駅間が廃止された。さらに2005年には能登線が廃止されたことにより、当路線はのと鉄道唯一の営業路線となった。なお、七尾線は能登線と一体的に運行されていたにもかかわらず存続となったが、これは七尾線の輸送密度が能登線を上回っていたことのほかに、全線を廃止にした場合職員の雇用先の確保が難しいこと、北陸新幹線の開業による並行在来線の第三セクター転換に備えて県関連組織に鉄道運営のノウハウを確保することなどもその理由として挙げられている[2]

路線データ

  • 管轄・路線距離(営業キロ):全長33.1km
  • 軌間:1067mm
  • 駅数:8駅(起終点駅含む)
  • 複線区間:なし(全線単線
  • 電化区間:七尾 - 和倉温泉間(直流1500V)
  • 閉塞方式:特殊自動閉塞式

運行形態

のと鉄道の列車はすべて七尾駅発着で、夜間に区間列車が七尾駅 - 能登中島駅間に1往復運転されるほかは、すべて七尾駅 - 穴水駅間の列車となっている。普通列車のみの運転で、おおむね1時間に1本程度の運行になっている。JR西日本との共用区間である七尾駅 - 和倉温泉駅間には「能登かがり火」・「サンダーバード」などのJRの特急列車が運行されているが、JRの普通列車は運行されておらず七尾駅で乗り換えとなる。JRの特急が走行するため、七尾駅 - 和倉温泉駅間のみ電化されているが、のと鉄道の列車はすべてディーゼルカーによる運行となっている。列車は単行(1両編成)が基本で、朝夕には2両編成も運転されている[3]。以前は朝夕に3両編成や4両編成の運転もあった[4]。2015年3月14日現在、穴水駅の始発は6時15分、七尾駅の最終は22時である。2015年4月29日から観光列車として「のと里山里海号」が運行されており[5]、「のと里山里海号」の運行形態によっては、それと差し替えられる形で一部の普通列車が運休となる[6]

穴水駅から輪島・能登線珠洲方面への路線を有していた頃には、普通列車は七尾駅 - 輪島駅間と七尾駅 - 穴水駅間に能登線への直通を加えた3系統に分かれていた[4]。さらに、北陸本線金沢駅から直通する急行能登路」や、自社のパノラマ気動車NT800形を使用した急行「のと恋路号」が運転されており、JR同様急行料金が設定されていた(23キロまで100円、60キロまで310円、95キロまで520円)。しかし、輪島方面の急行は穴水 - 輪島間廃止に先立って2001年3月3日のダイヤ改正で廃止され、残る珠洲方面の急行についても、「能登路」は1年後の2002年3月23日のダイヤ改正で、「のと恋路号」はさらにその半年後の2002年10月21日に廃止された。現在はJRとのと鉄道とを直通する定期列車はないが、急行廃止後も両社間を直通運転する臨時列車が運転された実績がある。

使用車両

過去の車両

※転換後の使用車両

過去の乗り入れ車両

廃線区間(穴水 - 輪島間)

かつては穴水から輪島まで路線が延びていた。のと鉄道七尾線の一部で、輪島線[7]と称する区間である。廃止2年前の1998年には能登三井駅の交換設備が廃され、輪島 - 穴水間が1つの閉塞区間となって廃線を迎えた。

この区間の廃止が取り沙汰されるようになったのは、七尾線一部区間の引き受け後、のと鉄道が多額の赤字を計上しており、その大半を七尾線の赤字が占めていたためである[8]。この区間の赤字の要因の一つは乗客減であり、背景としてはモータリゼーションの加速が挙げられる。七尾線の穴水以北は簡易線の規格で建設されたために線形が悪く[1]、鉄道がスピードアップできない一方、鉄道に沿って能登有料道路を始めとする道路網が開通し、自動車は圧倒的に有利な状況にあった。例えば、金沢 - 輪島間には当時からJR七尾線・のと鉄道七尾線に平行して高速バス「奥能登特急」(現・輪島特急)が運転されていたが、このバスの所要が2時間で運賃が2000円であるのに対して、JR・のと鉄道経由では所要2時間50分で運賃2400円、急行「能登路」を利用しても所要2時間20分を要した[9]。また、七尾線の運行に関わる支出には、前述の経緯により、JR西日本に対する約1億3400万円にも上る線路・設備使用料が含まれており[10]、これが経営を圧迫したとも考えられている。

このように厳しい経営が予想される中、能登空港開港に伴う交通再編が想定されたこともあって[11]2000年3月に廃線が決定、2001年に廃止された。これは国鉄民営化後に第三セクターに移管された路線が廃止された初めての事例となった。廃止後、能登中央バスが代替バスの運転を開始し、運営主体が北鉄奥能登バスに変わって現在に至る。

廃線跡は全区間、レール枕木鉄橋が撤去され、トンネルは鉄板で塞がれている。跡地の一部は、石川県道1号七尾輪島線輪島道路)の道路用地や、住宅、駐車場などに利用されている。

歴史

七尾線自体は地元有志により設立された「七尾鉄道」を前身とするが、のと鉄道に転換された区間に限って言えば、すべて国有化後に国鉄(鉄道省)の手によって建設・開業された区間である。のと鉄道七尾線の原型となる七尾以北の路線が着工されたのは、津幡 - 七尾間の開業から26年経った1924年夏のことで、1935年に輪島まで全通となった。

七尾線一部区間ののと鉄道への転換が議論されるようになったのは、七尾線の電化に関する議論が本格化した1987年からで、1989年には七尾 - 輪島間ののと鉄道への運営方式の変更が運輸省に申請され、1991年には早くも転換された。特定地方交通線以外の路線が第三セクターに転換された初めての事例である。

年表

  • 1924年大正13年)夏 - 七尾以北の工事が着工
  • 1925年(大正14年)12月15日 - 国鉄 七尾線 七尾 - 和倉間延伸開業。和倉駅(現在の和倉温泉駅)開業
  • 1928年昭和3年)10月31日 - 和倉 - 能登中島間延伸開業。田鶴浜駅、笠師保駅、能登中島駅開業
  • 1932年(昭和7年)8月27日 - 能登中島 - 穴水間延伸開業。西岸駅、能登鹿島駅、穴水駅開業
  • 1935年(昭和10年)7月30日 - 穴水 - 輪島間延伸開業により全線開通。能登三井駅、能登市ノ瀬駅、輪島駅開業
  • 1972年(昭和47年)3月14日 - 列車集中制御装置 (CTC) を導入
  • 1976年(昭和51年)4月1日 - 穴水 - 輪島間の貨物営業廃止
  • 1980年(昭和55年)7月1日 - 和倉駅が和倉温泉駅に改称
  • 1984年(昭和59年)2月1日 - 七尾 - 穴水間の貨物営業廃止
  • 1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により、西日本旅客鉄道が継承
  • 1991年平成3年)9月1日 - のと鉄道七尾線 七尾 - 輪島間 (53.5km) 開業(第二種鉄道事業。和倉温泉 - 輪島間の経営を西日本旅客鉄道から移管)
  • 1998年(平成10年)12月8日 - 能登三井駅における閉塞の取扱を廃止
  • 2001年(平成13年)
    • 3月1日 - 急行「能登路」の輪島便を廃止
    • 4月1日 - 穴水 - 輪島間 (20.4km) 第二種鉄道事業廃止。同時に西日本旅客鉄道の第三種鉄道事業廃止
  • 2002年(平成14年)
    • 3月23日 - 急行「能登路」廃止
    • 10月21日 - 急行「のと恋路号」廃止。これをもって線内の急行列車が全廃となる
  • 2007年(平成19年)3月25日 - 能登半島地震により運休。30日始発から全線で運転再開

駅一覧・接続路線

全駅石川県に所在。

駅名 駅間キロ 七尾
からの
営業
キロ
津幡
からの
営業
キロ
接続路線 所在地
七尾駅 - 0.0 54.4 西日本旅客鉄道:七尾線 七尾市
和倉温泉駅 5.1 5.1 59.5 西日本旅客鉄道:七尾線
田鶴浜駅 3.5 8.6 63.0  
笠師保駅 4.1 12.7 67.1  
能登中島駅 3.6 16.3 70.7  
西岸駅 6.2 22.5 76.9  
能登鹿島駅 4.3 26.8 81.2   鳳珠郡穴水町
穴水駅 6.3 33.1 87.5  
廃止区間
能登三井駅 11.0 44.1 98.5   輪島市
能登市ノ瀬駅 5.0 49.1 103.5  
輪島駅 4.4 53.5 107.9  

過去の接続路線

運賃

会社記事を参照。

脚注

  1. ^ a b 所澤秀樹『鉄道地図の「謎」』、山海堂、2002年、223頁 - 226頁。ISBN 4-381-10423-4
  2. ^ 『北國新聞』2003年12月26日付朝刊
  3. ^ 『鉄道ジャーナル』2006年8月号、2006年、83頁。
  4. ^ a b 川島令三『全国鉄道事情大研究 北陸編(1)』、相思社、1995年、196 - 206頁。ISBN 4-7942-0616-X
  5. ^ 水戸岡デザインは古い?「観光列車」に新時代 | 鉄道最前線 - 東洋経済オンライン、2015年5月3日
  6. ^ のと鉄道『のと里山里海号』、金沢直通の可能性は? - レスポンス、2015年4月19日
  7. ^ 地域住民からみたのと鉄道輪島線廃線の影響に関する研究、土木学会中部支部研究発表会公演概要集、2004年3月
  8. ^ 平成8年度以降の赤字額は3億円前後で、七尾線の赤字がそのうちの2億円を占めていた(『鉄道地図の「謎」』223頁)
  9. ^ データはすべて2000年当時
  10. ^ 平成10年度のデータ(『鉄道地図の「謎」』224頁)
  11. ^ 宮脇俊三『鉄道廃線跡を歩くIX』、JTB、2002年、120頁。ISBN 4-533-04374-7

参考文献

  • 寺田裕一『日本のローカル私鉄2000』、ネコ・パブリッシング、2000年。ISBN 4-87366-207-9

関連項目

外部リンク