ねこめ〜わく

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ねこめ〜わく』は、竹本泉による日本の漫画作品。

概要

宙出版が発行していた少女・女性向け漫画誌『アップルミステリー(1998年休刊)』の増刊誌である『アップルファンタジー』の読み切り作品として1991年に発表された。以後は連載形式ではなく、1話完結のシリーズ連作として、主にアップルミステリー本誌に掲載されていた。

『アップルミステリー』休刊後は、同社から発売された竹本泉の作品を集めた雑誌『ねこめ〜わく…とかいろいろ』で1本、猫を主題にしたアンソロジーコミック『ねこミックス』で3本、計4本が発表されたが、『ねこミックス』も3号で終了してしまった為、再度中断の憂き目にあう。 しかし、2004年4月、朝日ソノラマの『夢幻館』創刊に際し、連載作品として復活した。現在は、同誌休刊に伴い配信開始したウェブコミック誌『ホラー&ファンタジー倶楽部』で連載。朝日新聞出版のウェブコミックのハーレクインへの譲渡に伴い連載もねこめと改題して夢幻燈に移動。

初期の世界観を下敷きとしたシナリオによるドラマCD・『音盤ねこめ〜わく』が1994年に発売されている。(後述)

本作はアニメ化の候補になったものの、特撮テレビドラマ『ウルトラマンティガ』の企画に破れ、実現されなかった[1]

あらすじ

普通の女子高生だった村上百合子はある日、「どんどこどんどこ」という奇妙な太鼓の音とともに、別の世界に呼び出されてしまった。そこは2本足で立ち人間の言葉を話す進化したの世界だった。

もともとは人間の暮らす惑星であったようだが、人間は猫たちを進化させた後どこかへ去ってしまったらしい。その後、猫たちは人間時代の「遺跡」である国立国会図書館に保存されていた資料を元に、人間の文明(と、猫たちが思い込んでいるもの)を忠実に守って暮らしていた。

ある日、宇宙から1人の人間が降りてきた。ヘンリヒ・マイヤー宇宙軍少佐亜光速宇宙船のテスト・パイロットだったが、帰ってくるとウラシマ効果で5000年が経過しており、猫の惑星におけるたった1人の人間となってしまった。

そのヘンリヒは偏屈で小動物が苦手でさらに猫アレルギー。そんなヘンリヒは図書館を住居にして篭ってしまった。それまでは人間時代の資料を参考にしていた猫たちにとって、資料が自由に参照できなくなり困った猫たちは、魔術で別の世界の人間を呼び出すことにしたのである。そんな中で呼び出されたのが百合子だった。

登場人物

村上百合子
本作の主人公。ごく普通の女子高生。いつも間の悪いタイミングで猫たちに魔術で呼び出され、ヘンリヒのお守に、妙なことをしでかす猫たちへのお説教と、多忙な日々を送っている。百合子側からすれば、いつ猫たちに呼び出されるか判らないため、当初は大いに迷惑がっていたが、今ではそれにもすっかり慣れてしまい、逆にしばらく“呼び出し”がないと猫たちの世界がどうなっているのか不安でたまらなくなる。その後、猫たちがしょっちゅう呼び出すため成績が下がってしまい、とうとう浪人生になってしまった。
単行本5巻のあとがきによると、現在は浪人生を経て大学生(教育学部)になっている。その後、成人し酒は飲めるが酒には弱い模様。
ヘンリヒ・マイヤー
猫の世界に唯一だった人間。亜光速宇宙船のテストに飛び立ったが、ウラシマ効果で5千年が経過。戻ってきたら人間は1人もおらず、猫の世界になっていた。しかも当人は猫アレルギーのため、生活に難儀していた。
体質改善と称し、漢方薬と目される“異臭を放つ飲み物”を、百合子に勧められるなど百合子に強要されてアレルギーは改善されたものの、ひねくれた性格で、猫たちに理不尽な行いをしては百合子に怒鳴られている。それでも、猫たちにとってはのような存在で、猫たちが世話をしてくれることを良いことに、食っちゃ寝の生活をしている。宇宙飛行士のため運動神経抜群と本人は言い張っているが、普段怠惰な生活を送っているため、身体は一般人なみになまっている。
オスカの言によると、以前はこんなひねくれた性格ではなかったらしい。百合子に特別な感情を抱いているようだが、本人は否定しているがオスカにつっこまれている。ただし、毎日百合子と顔を合わせないと不機嫌になり、猫達に百合子の呼び出しを要求する。
シマシマ・ハヤカワ
シマちゃん。トラジマの猫。生後10ヶ月。弁護士ということだがいつ仕事をしているのかは不明。そもそもこの世界で裁判があるのかすら不明。性格はお人よし。猫たちのリーダー格だが、人間の文明を再現しようと時々突拍子もない事を思いついて実行する。
マーコいわく百合子に行動がバレるのは猫と人間という間柄だからではなく、単に彼らが単純な為。
クロフ・J・カーター
クロちゃん。黒猫。株式仲買人をしているが、「客に大損させたこともある」そうなので、シマシマより仕事が具体的。基本的に人間嫌いで、ヘンリヒには逆らうし、百合子にも100%気を許しているわけでもない。黒猫なのに黒の背広を着ているため、真っ黒。お菓子作りが趣味だが、甘いものが嫌い。現在既婚。
マーコ
三毛猫。新聞社に勤める女性記者。登場時はミーハーな一面もあり、無謀なこともしでかした。その時のエピソードで、クロフと結婚したらしい。最近になって再登場したときは、したたかな女性に変貌していた。
オスカ・ヨーリス
3巻から登場。ヘンリヒに続く亜光速宇宙船試作2号機のテスト・パイロット。やはりヘンリヒ同様、戻ってきたら猫の世界になっていた。
ヘンリヒとは異なり、楽天的な性格の上、可愛い物好きで猫の世界に馴染んでおりヘンリヒ曰く「退化している」。しかし、大声でドタバタと行動する上、いきなり猫を抱き上げたりするので、猫たちにとっては別な意味で苦手な存在。しかも、オスカ本人は自覚がない。
口元にひげがあるせいか若干年かさに見えるが、実際にはヘンリヒと同年代。ただし、オスカが出発した時点でヘンリヒから3年経過している為、その分ヘンリヒのほうが若く見えるとの説も。
マデリン・エンダゼン
6巻から登場。ヘンリヒ、オスカに続く亜光速宇宙船試作3号機のテスト・パイロット。登場の経緯も2人と同じである。
旧名をマデリン・コモン。オスカの元婚約者だが、彼がテスト飛行によって行方不明となり、4年後にハルセン・エンダゼンという同僚と結婚し、姓を改めた。ウラシマ効果によって夫と死別した代わりに、元婚約者と再会できたわけで、死亡したと思っていたオスカとの再会で気を持ち直すと同時に、やや気まずい感情を抱いていた。
真面目な性格で、当初は全状況が薬物などを用いた訓練の一環かと思い込もうとすらしていた。猫は嫌いではないが怖くて直視できなかったため、趣味に合わないドレスばかり誂えてきた猫たちを強く拒絶。百合子の世界から服飾のデータを持ち込むのも猫たちが日本文化の曲解で必ず脱線したがるため躊躇われ、結局、男装の麗人で落ち着く。

書誌情報

  • 宙出版ミッシィコミックス(絶版) 1-3巻
  • 朝日新聞出版
    • 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス 1-6巻
    • 朝日コミックス 7-8巻

ねこめ(~わく)

音盤ねこめ〜わく

キャスト 声優
百合子 平松晶子
ヘンリヒ 塩沢兼人
シマシマ 三田ゆう子
クロフ 松井摩味
ひろみ 中村尚子
ナレーション 屋良有作

余談

  • この世界で、出自も違うはずの各人(猫)たちの間で、なぜふつうに会話が成立するのか。マルチリンガルであるヘンリヒが最初に地球に降りたとき、その土地の猫たちが話していた言語がたまたまヤプラナ語(=日本語)であった。ヘンリヒがヤプラナ語を使って世界各地を回るうちに、「人間(ヘンリヒ)がしゃべる言語」が猫たちには「標準語」となり、言語が統一されたという。(ヘンリヒが降りる前、猫たちも多様な言語を持っていた)そしてなぜ猫たちが、ヤプラナ語(日本語)が通じる日本人(=百合子)を魔法で呼び出せるのかは、魔法という本来ありえない非科学的な猫たちの思い込みで呼び出しを行っているため、猫たちに一番都合の良い人間が自動的に選択されているのではないかと推察されている[2]

脚注

  1. ^ 「GENPの部屋」 Win&Mac『色数向上委員会アグライア』Vol.2、アーカムプロダクツ。
  2. ^ 「ねこめ~わくぺらぺら ~伝わる思い思い~」(『ねこめ~わく』第6巻)より

外部リンク