てんぐ巣病
てんぐ巣病(てんぐすびょう)とは植物病害の一種で、植物(多くは樹木)の茎・枝が異常に密生する奇形症状を示すものの総称である。高い木の上に巣のような形ができるためこの名がある。英語ではwitch's broom もしくはwitches' broom(魔女のほうき)という。
原因
直接の原因としては、植物ホルモンの異常が考えられる。通常は、頂芽から出るオーキシンがその下の腋芽の生長を抑えている(頂芽優勢)。しかしオーキシンに拮抗するサイトカイニンの量が多くなると、多くの芽が一度に生長することとなり、天狗巣症状が現れる。
これを起こす原因は様々で、菌類、昆虫、線虫、ファイトプラズマ、ウイルスなどがある。特に子嚢菌類タフリナ科に属するサクラのてんぐ巣病菌 (Taphrina wiesneri) がよく知られる。日本では、他にバッカクキン科の糸状菌・タケのてんぐ巣病菌 (Aciculosporium take) もタケノコの生産に支障をきたすために問題化している。
対処方法
一度発病した患部を元へ戻す有効な薬剤はなく、春先に黄粉が発生する前にてんぐ巣病の患部を切除、焼却することを優先する。切除後は、周囲に病巣が拡大しないようにボルドー液やダイセン水和剤などの殺菌剤を散布する。予防方法として、空気の流通不良の林分に発生することから、枝打ちや本数調整を行う[1]。
脚注
- ^ 伊藤一雄「アスナロ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p11 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行