たばこ病
たばこ病（たばこびょう）は、タバコの喫煙・受動喫煙等により罹患する疾病の総称。
概要
慢性閉塞性肺疾患（COPD）は、通称「たばこ病」と呼ばれ[1][2][3][4]、「たばこ病」の主要な疾患である[5]。「たばこ病」は以前、慢性閉塞性肺疾患（COPD）の新たな名称の候補名であった[6]。2010年7月、厚生労働省の検討会において「COPDを初めとしたたばこ病」という位置づけで「たばこ病」が用いられる他、「COPD」は「たばこ病」と呼ぶという案が検討され、「いろいろなたばこ病があって、COPDがその中に1つある」という案も出された[7]。2010年11月には、「COPD」を医療機関向けの名称にして一般向けの名称は分かりやすくするために「肺たばこ病」にするという検討がなされた[8]。
特定非営利活動法人日本禁煙学会（JSTC）は2007年に日本政府へ提出した文書において、「たばこ病」としてがん、心臓疾患、循環器疾患、呼吸器疾患などを挙げている[9]。
FCTC推進国民会議代表加濃正人編集、医師松崎道幸とたばこ問題情報センター代表渡辺文学の監修による『タバコ病辞典』（実践社、2004年）においては「たばこ病」として260種類の疾患が研究に基づいて挙げられている[10]。『タバコ病辞典』は、厚生労働省「たばこ・アルコール対策担当者講習会」において引用されている文献である[11]。
タバコの喫煙により肺がん、肺気腫などの「たばこ病」に罹患した患者が起こした裁判がある（1998年たばこ病訴訟、2005年タバコ病をなくす横浜裁判）。
「たばこ病根絶」に関する請願が6件、2011年の第179回国会に付託されている[12][13][14]。
世界保健機関におけるたばこに関する疾患
世界保健機関（WHO）においては英語で「tobacco-related disease」[15][16]、「tobacco-related illness and death」[15]、「tobacco-related disease and death」[15]、「tobacco-related diseases and deaths」[17]、「tobacco-related deaths and disease」[18]という表現がある。世界保健機関（WHO）によると、タバコの使用は主要な予防できる死因であり、タバコに関する疾患（tobacco-related disease）は、心筋梗塞、がん、脳梗塞、肺気腫、肺疾患、その他の疾患などである[16][17][19]。
主要な疾患の一覧
「たばこ病」として挙げられている主要な疾患の一覧。
がん
- 肺がん[20][21][22][23][24][25]
- 鼻腔がん[20]
- 副鼻腔がん[20]
- 喉頭がん[20][21][23][24][25]
- 口腔がん[20]
- 咽頭がん[20]
- 食道がん[20]
- 胃がん[20]
- 肝臓がん[20]
- 膵臓がん[20]
- 白血病（血液のがん）[20]
- 腎臓がん[20]
- 腎盂がん
- 尿管がん[20]
- 膀胱がん[20]
- 子宮がん[20]
- がんの早期転移[20]
- 重複がん[20]
精神疾患
呼吸器疾患
- 慢性閉塞性肺疾患（COPD）[1][2][3][4][20][23]
- 呼吸機能低下[20]
- 気管支喘息[20]（喘息[23]）
- 風邪[20]
- 急性気管支炎[20]
- 肺炎[20][23]
- 好酸球性肺炎[20]
- 肺ランゲルハンス細胞肉芽腫症[20]
- 特発性間質性肺炎[20]
- 慢性喉頭炎[20]
- 声帯浮腫[20]
- 喉頭ポリープ[20]
- 呼吸細気管支炎[20]
- 気胸[23]（自然気胸[20]）
循環器疾患
- 不整脈[20]
- 血圧上昇[20]
- 動脈硬化[20][25]
- 狭心症[20][25]
- 心筋梗塞[20][23]
- 大動脈瘤[20]
- 大動脈解離[20]
- 閉塞性動脈硬化症[20]
- 閉塞性血栓性血管炎（バージャー病）[20]
脳・神経疾患
口腔疾患
消化器疾患
内分泌代謝疾患
血液疾患
代謝内分泌疾患
皮膚疾患
眼疾患
手術の失敗
女性の疾患
性機能疾患
妊婦の疾患
胎児・乳幼児の疾患
授乳による疾患
男性の疾患
性機能疾患
受動喫煙による主要な疾患
がん
呼吸器疾患
循環器疾患
妊婦の疾患
小児の疾患
- 呼吸機能低下[28]
- 気管支喘息[28]
- 慢性副鼻腔炎[28]
- 急性気管支炎[28]
- 喘息様気管支炎[28]
- 肺炎[28]
- 急性細気管支炎[28]
- 髄膜炎[28]
- 乳幼児突然死症候群（SIDS）[28]
- 中耳炎[28]
「たばこ病」の名称を用いた文献の一覧
- 山村雄一. タバコ病という疾病の提案 内科医の立場から. (掲載誌: 『自然』 喫煙と健康の問題 (特集), 中央公論社). 1967年4月.
- 平山雄. タバコ病の疫学. (掲載誌: 『診断と治療』 タバコと疾病(特集)). 1971年6月.
- 平山雄. これがたばこ病: 徹底取材! 男の家庭新書. 婦人生活社. 1976年.
- 平山雄. 徹底取材!! これが たばこ病. 婦人生活社. 1976年.
- 平山雄. 流行するタバコ病 日本民族は生き残れるか. 健友館. 1980年12月. ISBN 978-4874610282.
- 平山雄. 直接喫煙タバコ病と間接喫煙タバコ病--飲酒など他の要因との複合を含めた疫学的研究. (掲載誌: 『診断と治療』 酒, タバコと疾病<特集>). 1981年6月.
- 渡辺文学. タバコ病Q&A ヘルシーライフは禁煙・分煙から (QQ BOOKS). ラジオ技術社. 1990年8月. ISBN 978-4844309109
- 五島雄一郎, 富永祐民, 簔輪真澄 他. 座談会 わが国の喫煙の現状とたばこ病. (掲載誌: 『日本医師会雑誌』 特集 喫煙対策の実際). 1996年8月1日.
- 内田和仁. 胎児からはじまるタバコ病 家庭の医学や小児科の本にはかかれていないタバコ病のすべて. 築地書館. 1998年7月 ISBN 978-4806745426
- たばこ問題情報センター. 吸う人と吸わない人の「たばこ病」 あなたは大丈夫?. 実践社. 1998年10月. ISBN 978-4916043252
- 渡辺文学. 「たばこ病読本」 [禁煙・分煙のすすめ] (プロブレムQ&A). 緑風出版. 2000年8月. ISBN 978-4846100070
- 石川恭三. 楽楽・健康ノート (28) たばこ病. (掲載誌: 『食と健康』). 2002年11月.
- 足立満. 肺ガンより怖い新タバコ病撃退法 : セキ、タン、息切れは難病COPDの恐怖信号. マキノ出版. 2002年11月. ISBN 978-4837611707
- 伊佐山芳郎. たばこ病訴訟弁護団 公益訴訟の意欲は殺がれ、社会は閉塞する. (掲載誌: 『法と民主主義』 特集 そのとき、市民による法の創造は止まる--弁護士費用敗訴者負担制度 ; もし、弁護者費用が敗訴者負担であったなら). 2003年2月.
- 司法記者の眼 「たばこ病訴訟」で, 元喫煙者の患者側が全面敗訴. (掲載誌: 『ジュリスト』, 有斐閣). 2003年12月1日.
- 加濃正人 編, 松崎道幸・渡辺文学 監修. タバコ病辞典 : 吸う人も吸わない人も危ない. 実践社. 2004年5月. ISBN 978-4916043726
- 巽浩一郎. 中高年のたばこ病COPD (慢性閉塞性肺疾患) しつこい咳・息切れは要注意. 保健同人社. 2004年9月. ISBN 978-4832704190
- 津田敏秀. 行政の不作為とタバコ病 水俣病事件の教訓生かせ--裁判官の不勉強を憂う. (掲載誌: 『関西労災職業病』). 2004年11月.
- 井埜利博. 小児科医が見たタバコ病 : 喫煙と健康障害. 最新医学社. 2004年12月21日. ISBN 978-4914909321
- 宮島英紀. 恐怖のタバコ病COPD 530万罹患者の凄惨現場. (掲載誌: 『現代』 医療最前線レポート). 2005年7月.
- 穂積忠夫. 危険の引受--たばこ病被害は自業自得か. (掲載誌: 『NBL』). 2006年5月15日.
- D-マネジメント研究会. 在宅酸素療法という選択 賢者のためのCOPD「タバコ病」バイブル. 幻冬舎メディアコンサルティング. 2007年9月. ISBN 978-4344995970
- 巽浩一郎. 中高年のたばこ病COPD (慢性閉塞性肺疾患) 改訂新版. 保健同人社. 2008年10月. ISBN 978-4832703827
- 村井俊彦. タバコの煙よ、さようなら (後編) より徹底した「タバコ病対策」としての「全敷地内禁煙」. (掲載誌: 『看護学雑誌』). 2009年2月.
- 小川明. JMS Report 横浜たばこ病訴訟で喫煙の有害性と依存性認める--違法性は認めず患者の請求棄却 重要な判決、国民的議論と国会審議を提言. (掲載誌: 『Japan Medical Society』). 2010年3月.
- 塚崎朝子. からだチェック (63) 慢性閉塞性肺疾患--たばこ病とも. (掲載誌: 『エコノミスト』, 毎日新聞社). 2011年11月1日.
- COPD 死因9位の"たばこ病"に注意 即効型の登場で治療は充実へ. (掲載誌: 『週刊ダイヤモンド』 特集 クスリ激変! : 最新薬でここまで治る ; 開発競争続く注目の病気). 2012年.
脚注
- ^ a b 和歌山県立医科大学教授 一ノ瀬正和. “高齢者にしのびよるたばこ病 COPD”. 平成18年度「禁煙週間」の実施について. 厚生労働省. 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b 医学博士 西園寺克 (2003年3月6日). “COPD (慢性閉塞性肺疾患) は煙草病!”. All About. 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b “なぜ「たばこ病」と言われているのか?”. COPD（慢性閉塞性肺疾患）. healthクリック. 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b “慢性閉塞性肺疾患”. 環境用語集. 一般財団法人環境情報センター EICネット. 2012年5月7日閲覧。
- ^ “Vol.6 No.2” (PDF). 日本禁煙学会雑誌. 日本禁煙学会. p. 11 (2011年5月2日). 2012年5月7日閲覧。
- ^ マッキャンヘルスケア 石川晴巳 (2010年7月23日). “COPD普及・啓発の取り組みへの提言” (PDF). 厚生労働省. 2012年5月7日閲覧。
- ^ 健康局総務課生活習慣病対策室 (2010年7月27日). “第3回 慢性閉塞性肺疾患（COPD）の予防・早期発見に関する検討会 議事録”. 慢性閉塞性肺疾患（COPD）の予防・早期発見に関する検討会. 厚生労働省. 2012年5月7日閲覧。
- ^ 健康局総務課生活習慣病対策室 (2010年11月4日). “第5回 慢性閉塞性肺疾患（COPD）の予防・早期発見に関する検討会 議事録”. 慢性閉塞性肺疾患（COPD）の予防・早期発見に関する検討会. 厚生労働省. 2012年5月7日閲覧。
- ^ 日本禁煙学会理事長 作田学 (2007年5月1日). “「がん対策・喫煙率引き下げ目標」へのJT意見に対する学会声明および政府への是正指導要請”. ACTION. 日本禁煙学会. 2012年5月7日閲覧。
- ^ 加濃正人. “タバコ病辞典”. 加濃正人「タバコ病辞典サポートページ」. 2012年5月7日閲覧。
- ^ 大阪府立健康科学センター健康生活推進部 中村正和 (2010年2月22日). “最近の動向を踏まえた効果的なたばこ対策の推進方策”. たばこ・アルコール対策担当者講習会. 厚生労働省. 2012年5月7日閲覧。
- ^ “無煙社会を目指し、たばこ病根絶のためのたばこ規制に関する請願”. 第179回国会 財政金融委員会. 参議院. 2012年5月21日閲覧。
- ^ “無煙社会を目指し、たばこ病根絶のための禁煙教育・啓発の徹底に関する請願”. 第179回国会 文教科学委員会. 参議院. 2012年5月21日閲覧。
- ^ “無煙社会を目指し、たばこ病根絶のための対策に関する請願”. 第179回国会 厚生労働委員会. 参議院. 2012年5月21日閲覧。
- ^ a b c “Tobacco: Fact sheet N°339”. Media centre. 世界保健機関 (2012年5月). 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b “10 facts on gender and tobacco”. Fact files. 世界保健機関 (2010年10月). 2012年5月7日閲覧。
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- ^ “Working for health: An introduction to the World Health Organization” (PDF). About WHO. 世界保健機関. 2012年5月7日閲覧。
- ^ “World No Tobacco Day 2011”. Tobacco Free Initiative (TFI). 世界保健機関 (2011年1月13日). 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw bx by bz ca cb cc cd ce cf cg ch ci cj ck cl cm cn co cp cq cr cs ct cu cv cw cx cy cz 加濃正人. “能動喫煙によって起こる病気”. タバコ病リスト. 加濃正人「タバコ病辞典サポートページ」. 2012年5月7日閲覧。
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- ^ a b “たばこ病のない社会をめざして「たばこについての見解と政策要求」”. タバコ病をなくす横浜裁判原告団・応援団 (2005年1月). 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 水野雅信 (2005年9月21日). “陳述書” (PDF). タバコ病をなくす横浜裁判原告団・応援団. 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b c “タバコ対策”. 日本学校保健学会（JASH）「タバコのない学校」推進プロジェクト. 中京大学. 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “第33回 「タバコ病」”. 健康散歩. JA島根厚生連 (2006年5月). 2012年5月7日閲覧。
- ^ “[65] まだ たばこを吸っているあなたへ”. 循環器病あれこれ 循環器病全般. 国立循環器病研究センター. 2012年5月7日閲覧。
- ^ “未成年者を「たばこ病」から守ろう” (PDF). たばこ病をなくす応援団ニュース. タバコ病をなくす横浜裁判原告団・応援団 (2005年9月5日). 2012年5月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 加濃正人. “受動喫煙によって起こる病気”. タバコ病リスト. 加濃正人「タバコ病辞典サポートページ」. 2012年5月7日閲覧。
関連項目
外部リンク
- タバコ病辞典 - 加濃正人「タバコ病辞典サポートページ」
- タバコ病に関する論文・サマリー集 - 日本禁煙推進医師歯科医師連盟（禁煙医師連盟）
- 週刊 タバコの正体 第2話 (PDF) - 日本禁煙科学会（JASCS） 「喫煙者本人への影響」富永祐民: 日本医師会雑誌116（4）332, 1996. 日医ニュース第845号より
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