しづくに濁る
しづくに濁る(しづくににごる)は、鎌倉時代に成立した擬古物語。作者不詳。 『しづくに濁る物語』とも。
題名は「むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人に別れぬるかな」(紀貫之・古今和歌集404)より、「あかぬ別れ」(名残惜しい別れ)を主題とした物語の内容による[1][2][3]。
成立年代は不詳だが、『風葉和歌集』に作中歌が収録されていることから文永8年(1271年)以前に成立したものと考えられる。冒頭部をはじめ散逸部分が多く、錯簡・欠脱もあり詳しい内容は完全には判明していない[4]。
粗筋
内侍督は帝の寵愛をもっぱらにして妊娠するが、中宮はじめ他の后妃たちの妬みを買う。内侍督に恋する中納言(中宮の兄弟)は、中宮と共謀して内侍督を誘拐する。内侍督は中納言のもとで若宮を出産するが、帝と中納言の板挟みに苦しみ死ぬ。内侍督を失った帝は退位して出家し、法華経法師品を読みながら即身成仏する。中納言は帝の怒りを恐れ、出仕しないで隠棲する。新しい帝には内侍督の産んだ若宮が立ち、内侍督の兄が関白となって一門は栄えた。
脚注
参考文献
- 大曾根章介ほか編『研究資料日本古典文学』第1巻、明治書院、1983年。
- 日本古典文学大辞典編集委員会編『日本古典文学大辞典』、岩波書店、1983年