かしま (練習艦)

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かしま
英国ポーツマス港に寄港した「かしま」
基本情報
建造所 日立造船 舞鶴工場
運用者  海上自衛隊
艦種 練習艦
艦歴
計画 平成4年度計画
発注 1992年
起工 1993年4月20日
進水 1994年2月23日
就役 1995年1月26日
要目
排水量 基準 4,050トン
全長 143.0m
最大幅 18.0m
深さ 12.3m
吃水 4.6m
推進 CODOG方式、2軸推進
三菱S16U-MTK ディーゼル × 2基
RRスペイ SM1C ガスタービン(27,000hp) × 2基
速力 最大速 25ノット
乗員 360名
兵装 62口径76ミリ単装速射砲 × 1基
68式3連装魚雷発射管 × 2基
搭載機 ヘリコプター発着甲板のみ
C4ISTAR OYQ-6C戦術情報処理装置
レーダー OPS-14C 対空
OPS-18 水上
OPS-20 航海
81式射撃指揮装置2型21F
ソナー OQS-8
電子戦
対抗手段
Mk 36 SRBOC チャフ発射機
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かしまローマ字JS Kashima, TV-3508)は、海上自衛隊練習艦[1]。艦名は鹿島神宮に由来し、旧海軍戦艦鹿島」、練習艦「鹿島」に続き日本の艦艇としては3代目。同型艦はない。

概要

練習艦「かとり」を更新する練習艦として建造された[1]

船体は、「かとり」と比較し、長船首楼型と呼ばれる前部から中部にかけ一層追加したような船型で幅は広く、逆に艦橋構造物は低くなっており、乾舷の高さがひと際強調されたような外観となっている。艦橋、CIC、機関制御室などは実習員の乗艦を考慮し護衛艦等と比較し広く設計されている。

教育訓練設備として、候補生170名を収容可能な実習員講堂が備えられている。実習員講堂の後部には、ヘリコプター甲板としても使用できる訓練甲板があり、レセプション会場としても使用できるよう引き込み格納式の天幕が備えられている。後部に配置された訓練甲板兼ヘリコプター甲板は中部甲板よりも低く、両甲板は「オランダ坂」と称されたような傾斜でつなげられている[1]

兵装は、前甲板の62口径76ミリ速射砲1基及び両舷の68式3連装短魚雷発射管2基のみと「かとり」と比較しても限定的であり、対空対艦ミサイル及びアスロックの発射訓練はCIC内のシミュレーターによって行われ、実際の発射機操作を伴う訓練に際しては随伴の護衛艦への移乗を必要とする。

機関は、近年の傾向を踏まえ、「かとり」の蒸気タービンからガスタービンとディーゼルの複合機関へと変更され、機関配置も抗堪性より実習効率を重視したものとなっている。

練習艦隊の旗艦として、毎年遠洋航海で諸外国を訪問するため、練習艦特有の装備として礼砲艦橋前部に2門有している[1]。艦内各公室は一般の艦艇より、「日本国の顔」として公式儀礼を行うのにふさわしい内装上の配慮がなされており、「かとり」同様特別公室を設置している。特別公室は、国家元首級の来賓を想定した内装となっており、「かとり」のものよりグレードが向上している。搭載艇に関しても、通常の11メートル作業艇2隻に加え13メートル将官艇1隻を装備している。将官艇は、「かとり」搭載艇が低速であったことに対する反省を踏まえ、速力向上が図られている。

設計段階より女性実習幹部の乗艦が考慮されており、女性専用の居住区が設けられている[1]

艦歴

「かしま」は、中期防衛力整備計画(平成3年度~平成7年度)に基づき、当初平成3年度で計画されていたが湾岸戦争協力金拠出の為1年遅れ、平成4年度計画4,000トン型練習艦3502号艦として、日立造船舞鶴工場で1993年4月20日に起工、1994年2月23日進水、1995年1月26日に就役の後、練習艦隊に編入された。(1994年遠洋練習航海では、護衛艦「ながつき」DDA-167が、礼砲の装備等を施し旗艦として行動した。)

2000年には、アメリカ独立記念日を祝う洋上式典に参加するためニューヨーク港を訪れていた際に、港内でクイーン・エリザベス2号に接触されたが大きな被害はなく、同船船長の代理で謝罪に訪れた乗組員の機関長と一等航海士に対し、(当時の)練習艦隊司令官の吉川榮治海将補は、「幸い損傷も軽かったし、別段気にしておりません。それよりも女王陛下にキスされて光栄に思っております」とウィットに富んだコメントを返し、『テレグラフ』紙[2]や『イブニング・スタンダード』紙でも報道され語り草となっている[3]

2005年にはトラファルガーの海戦200周年記念国際観艦式護衛艦むらさめ」、「ゆうぎり」の両艦と共に臨んでいる[4]

遠洋練習航海は毎年約150日間の日程で行われており、例えば2010年の場合、5月26日東京港・晴海埠頭から「やまぎり」、「さわゆき」と共に出発し、航路をハワイ、北米西岸、メキシコチアパスポルトガルトルコメルスィンジブチに取り、10月28日に帰国している[5][6]

2013年5月22日から10月30日、北米・欧州・インド洋・東南アジアの順で演習航海に出る[7]。8月7日にはポーランドグディニャ港に寄港し、同月10日には「TV-3517 しらゆき」、「DD-127 いそゆき」と共に両国初となる海上合同軍事演習を行う[8]

2015年度の遠洋練習航海として、旗艦かしま率いる練習艦隊は、その歴史に新たな勲章を刻む事となる。それは日本国所属の軍艦として明治初期から現在まで通して、つまり近代日本においても史上初となる南米マゼラン海峡通過に挑戦、無事にこれを達成した。同年の秋には、この記念すべき偉業を胸に練習艦隊と将来の国防を支える幹部候補生達は、中南米の各国と友好親善を深め、日本に帰国した。


歴代艦長

歴代艦長(特記ない限り1等海佐
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職 備考
1 加藤紀夫 1995.1.26 - 1995.12.17 防大15期 かしま艤装員長 さわかぜ艦長
2 山村洋行 1995.12.18 - 1996.9.29 防大13期 舞鶴地方総監部監察官 呉基地業務隊補充部付
3 武智公司 1996.9.30 - 1997.10.30 防大15期 はたかぜ艦長 第1術科学校
4 佐治正憲 1997.10.31 - 1998.9.29 防大15期 しらね艦長 あすか艦長
5 佐藤鉄夫 1998.9.30 - 1999.9.29 防大15期 くらま艦長  自衛艦隊司令部
6 上田勝恵 1999.9.30 - 2000.9.29 防大17期 しらね艦長 呉潜水艦基地隊司令
7 川井一志 2000.9.30 - 2001.9.19   ゆうだち艦長  第1練習隊司令
8 菊地英夫 2001.9.20 - 2002.9.19 防大19期 ひえい艦長 呉地方総監部監察官 
9 井崎秀則 2002.9.20 - 2003.9.18   しらね艦長 海上幕僚監部総括副監察官
10 林 宏之 2003.9.19 - 2004.9.29 防大21期 自衛艦隊司令部 呉地方総監部監察官
11 向井一馬 2004.9.30 - 2005.9.29 防大22期 阪神基地隊副長 呉海上訓練指導隊司令
12 佐々木俊也 2005.9.30 - 2006.9.19 防大23期 はたかぜ艦長 海上自衛隊幹部学校主任教官
13 落 修司 2006.9.20 - 2007.9.30 防大25期 第2護衛隊群司令部幕僚 海上訓練指導隊群司令部
14 横田文夫 2007.10.1 - 2008.9.30 大阪外大
33期幹候
さわかぜ艦長  
15 黒松 久 2008.10.1 - 2009.9.30 防大26期 くらま艦長 海上訓練指導隊群司令部
16 中尾博孝 2009.10.1 - 2010.12.19 防大27期 しらね艦長 第12護衛隊司令
17 柏原正俊 2010.12.20 - 2011.12.8 防大28期 統合幕僚学校教育課第1教官室 練習艦隊司令部
18 佐々木輝幸 2011.12.9 - 2012.12.6 防大29期 くらま艦長 練習艦隊司令部付   
19 大野敏弘 2012.12.7 - 2013.12.2 防大30期 第4護衛隊群司令部首席幕僚 自衛艦隊司令部   
20 森田哲哉 2013.12.3 - 2014.11.30 防大31期 こんごう艦長 護衛艦隊司令部    
21 小沢輝男 2014.12.1 - 2015.11.29 防大32期 統合幕僚学校教務課教務班長 護衛艦隊司令部付
22 中村譲介 2015.11.30 - 防大34期 ちょうかい艦長

その他

「かしま」の設計においては、幹部専門装備課程の第40期一般幹候出身者の意見が「最近遠航に行った実習幹部の意見」として聞き取られ、以下のような点が反映されている。

  • 船体を長船首楼型からオランダ坂構造に変更(艦上体育で艦の全周がランニングに利用できるよう)
  • 艦橋を半階層高い位置に変更(後方視界の向上および直下の司令官公室への足音防止)
  • レーダーの多重化(対水上レーダーと航海レーダーの機能体験のため。本当は方位測定機能も高い掃海艇用のレーダーも考えられた)
  • 「日常生活系」の100V60Hz電源系の新設(「かとり」では、115V系のみのため、変圧トランスを各員が持ち込んでいた)

最初の2項目は「かしま」の艦影を大きく変えることになり、特にオランダ坂は以降の護衛艦にも(本艦ほど明確ではないが)取り入れられている。また100V電源系は、その後おおすみ型輸送艦などでも115V系が廃止され採用されるに至っている。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク