あさきゆめみし

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あさきゆめみし』は、大和和紀による日本漫画。『源氏物語』を漫画化したもの。月刊『mimi』(講談社)で1979年12月号から不定期に連載され、のち『mimi Excellent』に移って同誌27号(1993年)で完結した。

単行本(講談社コミックスmimi、全13巻)をはじめとして、大型版(全7巻)、文庫版(全7巻)、完全版(全10巻)が出版された。ポストカードカレンダー等多くのグッズが派生したが、現在は手に入りにくいものが多い。累計売り上げは1700万部を超えている。海外でも各言語に翻訳されている。

子供向けに青い鳥文庫から『宇治十帖』を除く部分が小説として出されている(全5巻)。2000年宝塚歌劇団の出演で映像化され、舞台化もされた。2013年にはUULAにて漫画に音声・特殊効果を加えたムービーコミックが配信されている。

概要

  • 『宇治十帖』を含む『源氏物語』54帖がおおむね忠実に描かれており、平安朝の生活様式などを詳細に調べて漫画化している。古典の中でも特に著名な『源氏物語』の世界を漫画という形で平易に視覚的理解を助け、古典への興味を持たせた功績は今なお大きい。大手予備校の書棚に置かれるなど特に受験生必携の書ともなっており、『源氏物語』現代語訳を手がけた瀬戸内寂聴も高く評価している。
  • 全体の筋はほぼ原作どおりであるが、読者に『源氏物語』を少女漫画として読ませるため、出だしは桐壺帝桐壺更衣の馴れ初めからオリジナルとして描かれている。それは少女漫画の読者に『源氏物語』を難しいと決めつけられないため、原作を知らない人にもこれは面白いかもしれないという導入部が必要だったためであるが、他にも光源氏と幼い紫の上の出会いや空蝉の結婚の経緯、朝顔の姫君の母の逸話など、原作や当時の常識とはかけ離れた独自のエピソードもある。また逆に、『宇治十帖』では玉鬘の後日談(「竹河」)や女一宮を巡る話など、いくつかのエピソードが省略されている。
  • 花散里が原作では痩せてみすぼらしいと表現されているのにかかわらず、非常に豊満な女性として描いたのは、現代ではスレンダーであることがスタイルが良いというプラス評価となったため、ちょっと格好の悪い相手というイメージを出すには逆に太らせた方が良いと判断したことによる(平安時代はむしろふくよかな方が美しいとされた)。

漫画化にあたって作者が苦労した点

  • 原作には「源氏が女君のところに行ってあれこれした」というように、表現があいまいにしか書かれていない。そのため、読者や訳者が曖昧な部分を具体的に考える必要があった。また、連載開始当時参考になったのは国宝源氏物語絵巻くらいで、まだ資料が少なかった。実際に京都御所に行って写真を撮ったりはしたが、現代の御所は書院造りになっているなど当時とは異なる上に、几帳や建物の実際の大きさや十二単の動きなどもわかり辛く、絵にするのはアシスタントと共に苦労した。

連載当時に比して徐々に資料が増えたことで新たに明らかになった箇所もあり、後年次々と発行された単行本類では、場所や人物の呼称など、セリフの一部が修正されている。

  • 人物についても、事細かに人物の風貌に関する描写があるのは空蝉や末摘花くらいで、美人についての詳細な表現は少ない(誰かに似ているか、または「いとし」「なつかし」と簡単な形容ですまされている)。『源氏物語』は、光源氏が亡き母に似る藤壺を慕う想いからその女性遍歴が始まったので、当然桐壺と藤壺、紫の上は似ている。さらに同じ血を引く光源氏と夕霧冷泉帝も似ている。しかも、源氏と藤壺は姉弟のように似ていると書かれている。またこの他、夕顔・玉鬘は母子、『宇治十帖』の大君中君浮舟は姉妹で皆似ているという設定と、全体的に登場人物が同じ血縁関係の似た者ばかりとなっている。しかも、現代と違って髪型や服装のバリエーションが少ない。そのため、場面が変わるごとに、なるべく科白の最初に「葵の上」「紫の上」と呼びかけを入れるようにしたが、読者からは「顔が皆同じに見え、わかりにくい」という指摘も多かった。

実写映像化・舞台化

2000年に宝塚歌劇団NHKエンタープライズにより映像化された。NHK BS2にて同年3月19日に放送された。テレビで放送されたが映画(『源氏物語 あさきゆめみし Lived in A Dream』)としても扱われている。

幻のテレビアニメ化

2009年1月よりノイタミナ枠にてテレビアニメ化が企画されたが、『源氏物語』自体を原案とするオリジナル作品(『源氏物語千年紀 Genji』)に企画変更となった。

ムービーコミック化

2013年UULAにて配信された。キャストは光源氏が中村悠一、藤壺と紫の上がゆかな、弘徽殿が横尾まり、葵の上が牧野芳奈、朧月夜と夕顔が桃森すもも、ほかとなっている。主題歌は森恵の「彼方-Piano version-」。

参考文献

  • あさきゆめみし Perfect Book 宝島社