フラット (記号)

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変記号から転送)
{
\override Score.TimeSignature #'stencil = ##f
\relative c'' {
  \clef treble \key c \minor \time 4/4 des1
} }

フラット: flat)とは、西洋音楽五線記譜法による楽譜で用いられる変化記号」のこと。変記号(へんきごう)とも呼ばれ、半音さげることを表す。イタリア語ではベモッレ(bemolle)、フランス語ではベモル(bémol)、ドイツ語ではベー(b, Be)と呼ばれる。

形状[編集]

縦棒とその下端と中間を右側に引く曲線で構成される。音符の位置と曲線の位置が一致するように記述する。

ダブルフラット[編集]

ダブルフラットはフラットを左右に接して並べた記号で半音さげ、さらに半音さげる記号である[1][2]

{
\override Score.TimeSignature #'stencil = ##f
\relative c'' {
  \clef treble \time 1/1 beses1
} }

さらにフラットを並べた「トリプルフラット」もあり、結果として一全音半下げることになる。ニコライ・ロスラヴェッツの『ピアノソナタ第1番』(1914年)などで見られる。

ただし、一般にフラットを3つ以上使う意味はなく、別の表記を採用すれば済むのであって、このように3つ以上のフラットが書かれている場合は、そのような表記に妥当性が存在するかどうかの検討が必要である。


{
\override Score.TimeSignature #'stencil = ##f
\relative c'' {
  \clef treble \time 1/1 \tweak Accidental.stencil #ly:text-interface::print \tweak Accidental.text \markup { \concat { \flat \doubleflat }}beses1
} }

歴史[編集]

中世西洋音楽ではネウマ譜のほかにアルファベット1文字を使った音名が併用された。グイード・ダレッツォによる6音音階 (hexachordの理論は全音階に近かったが、ロ音(B)のみは半音低い変ロ音が存在し、高い方を「硬いロ」(ラテン語: B durum)、低い方を「柔らかいロ」(B molle)と呼んだ。記号として硬いロを角ばったbで、柔らかいロを丸みを帯びたbで表した。前者がナチュラル記号、後者がフラット記号として現在まで伝わった[3]。フラット記号を意味するイタリア語: bemolleフランス語: bémolなどはラテン語で柔らかいロ音を意味する「B molle」に由来する。

文字コード[編集]

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+266D 1-2-85 ♭
♭
フラット
music flat sign
𝄫 U+1D12B - 𝄫
𝄫
musical symbol double flat
𝄬 U+1D12C - 𝄬
𝄬
musical symbol flat up
𝄭 U+1D12D - 𝄭
𝄭
musical symbol flat down
𝄳 U+1D133 - 𝄳
𝄳
musical symbol quarter tone flat

脚注[編集]

  1. ^ 練習の手引き〜ダブルシャープ Archived 2013年1月20日, at the Wayback Machine.
  2. ^ ダブルフラットやダブルシャープの意味はなんですか?
  3. ^ Carl Parish (1959) [1957], The Notation of Medieval Music, W.W. Norton, pp. 27-28 

関連項目[編集]