会社法第28条

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法学民事法商法コンメンタール会社法第2編 株式会社 (コンメンタール会社法)第2編第1章 設立 (コンメンタール会社法)

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条文[編集]

定款の記載又は記録事項)

第28条
株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第26条第1項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
  1. 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第32条第1項第1号において同じ。)
  2. 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
  3. 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
  4. 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

解説[編集]

株式会社の定款に記載又は記録する変態設立事項についての規定である。以下の記載・記録がある場合には第33条(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)により、裁判所に対し、検査役の選任の申立てを行い、当該事項を調査・裁判所に対する報告をさせなければならない。

  • 1号 現物出資
  • 2号 財産引受けに関する規定。
  • 3号 発起人が受ける特別の利益
  • 4号 株式会社の負担する設立費用
    金額が過大でなく、会社に損害を与えるおそれがないと以下の「法務省令で定めるもの(設立費用; 会社法施行規則第5条)」を除く
    1. 定款に係る印紙税
    2. 設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みの取扱いをした銀行等に支払うべき手数料及び報酬
    3. 法第33条第3項の規定により決定された検査役の報酬
    4. 株式会社の設立の登記の登録免許税

関連条文[編集]

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 土地建物返還並不動産所有権移転登記請求(最高裁判決 昭和28年12月03日)商法第168条1項6号,商法第246条
    1. 定款に記載のない財産引受に対する株主総会の承認決議の効力
      定款に記載のない財産引受は、たとえ会社成立後株主総会が特別決議をもつてこれを承認しても、有効にはならない。
    2. 財産引受の無効は譲渡人も主張することができるか
      財産引受が無効である場合には、会社側だけでなく、譲渡人もその無効を主張することができる。
  2. 土地所有権確認等請求(最高裁判決 昭和36年9月15日)
    株式会社設立発起人組合代表者が設立後の会社の営業準備行為としてなした土地の買入れ行為と商法第168条第1項第6号による定款の記載。
    株式会社設立発起人組合の代表者が、設立後の会社の営業の目的たる映画館の敷地とするため土地を買入れる契約は、商法第168条第1項第6号にいう「会社ノ成立後ニ譲受クルコトヲ約シタル」場合に当り、原始定款に記載がなければ設立後の会社に対して効力を有しないと解するを相当とする。
  3. 不当利得返還請求(最高裁判決 昭和38年12月24日)
    1. 債務引受と財産引受との関係
      発起人が会社の成立を条件としてなした法律行為のうち、単純な債務引受は財産引受にあたらないが、積極消極両財産を含む営業財産を一括して譲り受ける契約は、財産引受にあたる。
    2. 開業準備行為と発起人の権限
      発起人は、会社設立自体に必要な行為のほかは、開業準備行為といえども原則としてこれをなしえず、ただ、原始定款に記載されその他法定要件を充した財産引受のみを例外的になしうるものと解すべきである。
  4. 建物所有権保存登記抹消登記手続等請求(最高裁判決 昭和41年12月23日)
    創立総会による変態設立事項の変更
    創立総会において決議することができるいわゆる変態設立事項の変更は、その縮小または削除に限られ、あらたに変態設立事項に関する定めを追加し、または既存の規定を拡張することは許されない。
  5. 自動車譲渡代金請求(最高裁判決 昭和42年09月26日)商法第168条1項6号,民法第117条
    1. 定款に記載のない財産引受と追認の許否
      定款に記載のない財産引受は、成立後の会社が追認しても、有効とならない。
    2. 定款に記載のない財産引受と発起人等の権利義務
      発起人または発起人組合は、特約の存する場合、民法第117条の類推適用により履行の責に任ずべき場合等の特別の事情の認められないかぎり、定款に記載のない財産引受に基づいて、財産引受により会社に帰属すべきものとされた契約上の権利を取得し、またその契約上の義務を負担するものではない。
  6. 売掛金(最高裁判決昭和61年9月11日)商法第245条
    1. 商法245条1項1号の営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合と譲受人がする右の無効の主張
      商法245条1項1号の営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合には、譲受人もまた右の無効を主張することができる。
    2. 営業譲渡契約が譲受会社にとつて商法168条1項6号にいう財産引受に当たるのに原始定款に記載しなかつたことにより無効であるとの主張が信義則に反し許されないとされた事例
      営業譲渡契約が譲受会社にとつて商法168条1項6号にいう財産引受に当たるのに、これを譲受会社の原始定款に記載しなかつたことにより無効である場合であつても、譲渡人が営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行済みであり、譲受会社も営業譲渡契約が有効であることを前提に譲渡人に対し自己の債務を承認して譲受代金の一部を履行し、譲り受けた製品、原材料等を販売又は消費し、しかも、譲受会社は契約後約9年を経て初めて右の無効の主張をするに至つたもので、その間、譲受会社の株主や債権者等が営業譲渡契約の効力の有無を問題にしたことがなかつたなど判示の事情があるときは、譲受会社が営業譲渡契約の無効を主張することは、信義則に反し、許されない。
    3. 商法245条1項1号の営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効であるとの譲受人の主張が信義則に反し許されないとされた事例
      商法245条1項1号の営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合であつても、譲渡会社が営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行済みであり、譲受人も営業譲渡契約が有効であることを前提に譲渡会社に対し自己の債務を承認して譲受代金の一部を履行し、譲り受けた製品、原材料等を販売又は消費し、しかも、譲受人は契約後約20年を経て初めて右の無効の主張をするに至つたもので、その間譲渡会社の株主や債権者等が営業譲渡契約の効力の有無を問題にしたことがなかつたなど判示の事情があるときは、譲受人が営業譲渡契約の無効を主張することは、信義則に反し、許されない。

前条:
会社法第27条
(定款の記載又は記録事項)
会社法
第2編 株式会社

第1章 設立

第2節 定款の作成
次条:
会社法第29条
(定款の記載又は記録事項)
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