VSS (狙撃銃)

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VSS
VSS Vintorez 51st Airborne Regiment 106th Airborne Division.jpg
VSS
VSS
種類 軍用狙撃銃
製造国 ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
設計・製造 デジニトクマッシ
年代 現代
仕様
種別 セミオートマティックライフル
口径 9mm
銃身長 200mm
ライフリング 4条右回り
使用弾薬 9x39mm弾
装弾数 10発/20発
作動方式 ガス圧作動、ロータリーボルト
全長 894mm
重量 2,600g
弾薬とPSD-1スコープ込みで3,410g
発射速度 800-900発/分
銃口初速 290m/秒
有効射程 400m
歴史
配備期間 1987年-
関連戦争・紛争 南オセチア紛争 (2008年)
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VSS: Винтовка Снайперская Специальная : Vintovka Snayperskaya Spetsialnaya 日本語訳:特殊用途狙撃銃)は、1987年に開発された半自動消音狙撃銃。7.62x39mm弾をベースに作られた9x39mm SP-5, SP-6という専用の亜音速弾を使用する。愛称はヴィントレス(Vintorez : Винторез, : thread cutter(糸鋸)。

概要[編集]

1980年代、当時のソ連冷戦の真っ只中であり、アフガニスタンチェチェンなど、多数の戦場を抱えており、特殊部隊スペツナズ)の隠密潜入作戦やゲリラ作戦用消音銃の開発は急務であった。当初はAKMAK-74AKS-74Uサプレッサーを取り付けて使用したが、初速が音速を超えることで衝撃波を発生させる小口径高初速の5.45x39mm弾ではサプレッサーの効果は薄く、無理に装薬を減らせば射撃精度が著しく不安定になってしまうことがわかった。

そこでソ連軍は、銃そのものを消音化するだけでなく、専用の弾薬も含めた狙撃システムの開発に着手した。ソ連は当時の西側諸国のように、既存のライフルの精度を高めつつ消音加工を施すことに限界を感じ、まったく異なるアプローチを開始したのである。開発にはヴォログダ州キリロフ地区の特殊研究所デジニトクマッシ(TsNIITochMash:: Центральный научно-исследовательский институт точного машиностроения : Central Scientific Institute for Precision Machine Building 中央科学精密機械建造研究所)のペテロ・セルジェコフバルディミール・クラスコフが設計を担当し、AS Valとほぼ同時期の1987年に完成、テューラ工場が製造している。

特徴[編集]

作動機構はガス圧利用式でボルトを回転させ、銃身とロックするターン・ロッキングが組み込まれている。ボルト本体の仕組みや構造はAK-74と共通点が多いなど、構造的にはAK-74を踏襲している。先端左右にはロッキング・ラグを持つ。

AK-74でいうマガジンの直前まで全長を切り詰めている。後述するバリエーションを見ればわかる通り、レシーバーはもちろんバレルも非常に短く、全長の殆どは大型のサプレッサーと木製のストックで構成されている。通常10連ショートマガジンを使うが、弾数の多い20連マガジンも使用出来る。ハンドガードやマガジンはプラスチック製にして軽量化しており、バレルを覆うような大型のサプレッサーはバレルそのものよりも長いほどである。固定式の照準装置や大きく肉抜きされた木製ストック、スコープの取り付け方法など、SVDを参考にしたと思われる部分が多く見られる。スコープはPSO-19x39mm弾仕様でレティクルなどが異なるPSO-1-1が使用される。サプレッサーとストックをレシーバーから取り外せば、アタッシュケースなどに収容可能である[1]

開発時に提示された性能が「400m以内から敵の防弾チョッキを貫通する完全消音狙撃銃」であったため、長距離での精密狙撃ではなく、中距離から短距離の狙撃、並びに近距離での銃撃戦を前提に設計されている[2]。そのため、銃身長は比較的短く、20連マガジンを使ってのフルオート射撃も可能である。

9×39mm SP-5, SP-6[編集]

VSSの最大の特徴は、使用する弾薬にある。VSSで使用される9x39mm弾は、ライフル弾でありながら銃口初速が音速を超えず、衝撃波が発生しないため、ソニックブームによる断続的な音波が生じない。この弾薬と消音器を組み合わせることによって驚異的な消音効果が発揮され、排莢口の真横に立っていない限り、ボルトが動作して弾薬を排莢する際の金属音しか聞こえなくなる。

銃声というものは、通常二種類の音で構成される。火薬の燃焼による炸裂音と、弾丸音速を超える際のソニックブームである。多くの軍用ライフル弾は、弾丸を音速まで加速させることで貫通力、破壊力を生み出している。しかし、たとえ小さな弾丸といえども、物体が大気中で音速の壁を突破すれば強烈なソニックブームが発生する。このような弾丸では、サプレッサーを使用しても消えるのは火薬の炸裂音であって、ソニックブームによる音を完全に消すことは出来ない。

これまでは、最初から初速が音速を超えない.45ACPや.22LRといった拳銃弾か、音速を超える弾薬から装薬量を減らすなどして亜音速に変えたものを使うしかなかった。そこでソ連は、一定の威力を維持した亜音速弾を作るため、大口径の弾丸を従来型のライフルカートリッジで撃ち出すという方法を考え付いた。

9x39mm弾は、5.45x39mm弾をベースとしてボトルネックではない(実際にはボトルネックはほんの僅かに残されている)ケースに、全長はそのままに口径が9mmまで大型化、重量は二倍に増した弾頭を装着している。装薬量(とそこから生じる発砲時の運動エネルギー)はライフル弾に匹敵するが、弾頭重量が大幅に増加しており、銃口初速が音速を超えないように調節されている。

カタログ上の有効射程は400mとなっているものの、通常のライフル弾を使った狙撃以上にその弾道は遠方に行くほど落ち込む(弾道低落量の大きい)軌道を描くことになる。同時にその運動エネルギーが一定値まで維持出来る間に限り、風などの影響を受けにくくなっている。また、弾頭が重い上に口径も大きいため、標的に命中すれば通常のライフル弾以上のダメージを与えられる。

こうして、「初速は遅いが射程内なら一定以上の威力を維持出来る亜音速弾薬」が完成した。具体的な数値でいうと、銃口初速が290m/s、エネルギー値は516ft·lbfとなる。参考までに、5.45x39mm弾は初速が940m/sでエネルギー値は971ft·lbf、9x19mm弾は初速が350m/sでエネルギー値は394ft·lbfである。

また、弾頭や用途に応じて幾つかのバリエーションが存在している。

  • SP-5 - 通常のボール弾(被覆鋼弾)。弾頭前部がスチール、後部がレッド()で、これを銅のジャケットが完全に覆うフルメタルジャケット弾。
  • SP-6 - 徹甲弾(アーマーピアシング)。ホローポイントのように貫通したレッドの弾頭の中心にスチール削り出しの弾芯を差し込み、レッドの側だけを銅のジャケットで覆っている。レッドで弾頭重量を稼ぎ、頑丈なスチールが対象を貫通する。500mで6mmのスチール板を、200mなら2.8mmのチタニウムか三十層のケブラーを貫通することができるとされる。
  • PAB-9 - SP-6の廉価版。削り出しだったスチールをプレス製に変え、生産性を増したことで単位辺りのコストを低下させている。しかし、プレス加工の精度が低かったため、射撃時の精度にもバラつきが生じ、バレルの磨耗も早くなるなどの事態が発生したため、既に生産は中止されている。

現在はSP-5とSP-6を中心に、狙撃銃以外のカービンサブマシンガンといった同型弾薬を使用する銃の種類を増やすことで需要を増やし、消費量と生産頻度を上げてコストを減らそうとしている。

バリエーション[編集]

VSS以外にも、同じ9x39mm弾を使用する銃器が多数存在する。

AS Val
VSSとほぼ同じ構造を持つ消音自動銃。むしろVSSのアサルトライフル版であり、開発時期や配備状況なども同一である。ストックIMI ガリルのようなサイドスイング式になり、スコープが省略された他に、VSSとの違いはない。
SR-3 Vikhr
AS Valからサプレッサーを外し、ハンドガードを若干大型化、ストックをサイドスイングからアッパーレシーバーへ折り畳む方式に変更したもの。コンパクトアサルトライフルと呼ばれるが、実質サブマシンガンである。
9A-91
SR-3 Vikhrの構造を更に簡略化したコンパクトアサルトライフル。1991年に開発された。レシーバーとマズルガード、ハンドガード、グリップなどの形状が変更され、これまで曲がっていたマガジンも直線に改められている。9A-91をベースにVSK-94が製造された他、その内部構造は後のKBP A-91に引き継がれた。
VSK-94
9A-91をベースとする狙撃銃1994年に開発。VSSの廉価版と考えるとわかりやすい。9A-91からの変更点は、マズルにサプレッサーを捩じ込み、グリップをストックと一体化したものに交換、VSSと同じ標準的なPSO-1スコープを取り付けただけと、非常に手軽な改造で狙撃銃にされている。
KBP A-91
9A-91とOTs-14をベースに開発されたアサルトライフル。使用弾薬は9x39mm弾ではないが、作動機構は9A-91が参考にされている。また、ブルパップ構造はOTs-14から継承されたものである。

参考・脚注[編集]

  1. ^ 床井雅美『軍用銃事典 改訂版』並木書房 233頁 ISBN 9784890632138
  2. ^ 笹川英夫『最新・最強GUNカタログ』竹書房 2010年 ISBN 978-4-8124-4305-7

登場作品[編集]

映画
漫画
奥村 雪男がクラーケンの狙撃に使用。ただし、その際サプレッサーをつけずに狙撃を行っていた。
ホール長(妙子)が店内に猫が入ってきた時などに使用。
ホテルモスクワの構成員が使用。
アニメ
クルツ・ウェーバーと風間信二が使用。
ゲーム
ゲーム内兵科である「スナイパー」のメイン武器として登場。
テロリストが使用する。
キャンペーン"EW"では主人公が使用する。
スナイパーライフルとして登場。
「Vintar BC」という名称で登場する。
湾岸戦争を題材にしたMOD「Desert Combat」にてイラク軍武装キットとして登場する。
偵察兵(狙撃兵)のメインアームとして登場。
スナイパーライフルとして登場。
主人公の使用武器として登場。
スナイパーライフルとして登場。
主人公の使用武器として登場。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]