this (プログラミング)
thisは、自身の動いているオブジェクトを指す予約語。主にインスタンスメソッド内で使用される。thisの他にself、Meといった語を使う言語もあるが、言語を問わず概念は共通しているので、以下ではthisで代表させて記述することとする。
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概要 [編集]
thisは現在のオブジェクトを指した参照、あるいはポインタであり、たいていの場合は変更不可能である。
オブジェクトが生成すると、thisへの参照はつねに有効なものとなる。これは明示的に参照しなければならない言語もあれば、静的スコープで暗黙のうちに解決している言語もある。ただし、thisを暗黙のうちに解決する言語でも、明示的にthisを必要とする場面(ローカル変数で隠蔽されている同名のインスタンス変数を参照する場合や、自身への参照を返り値とする場合など)もある。
thisはインスタンスメソッドへの引数となっている。例えば、C++で書いた以下のようなメソッドは、
int foo::print (bar x)
本質的にはC言語での以下のような呼び出しに相当している。
int foo_print (foo *const this, bar x)
PythonやPerl 5など、言語によってはthisをメソッドへの1つ目の引数として明記する必要がある。この引数の名前をthisやselfとする必然性はなく、他の引数と同様にどんな名前を付けても文法上問題はない。ただし、通常の場合、PythonやPerlでは慣習的にselfが使われる。
GCCなど、一部のC++コンパイラでは、thisを引数に明示することで、その型を別なポインタに変えることができる[1]。
C++やJavaでの静的メソッドはインスタンスに対応せずクラスに所属するものであるため、thisは使えない。Python、Ruby、Smalltalk、Objective-Cなどでは、「クラスオブジェクト」のメソッド(クラスメソッド)となっていて、thisはクラスオブジェクトを指す。
言語ごとの事情 [編集]
C++や、記法がC++に由来する言語(JavaやC#、PHP)では、たいていthisが使われている。 SmalltalkやObject Pascal、Python、Ruby、Objective-Cではselfが使われている。 そして、Visual BasicではMeである。
C++ [編集]
初期のバージョンのC++ではthisを変更でき、メソッド内から動作するオブジェクトを切り替えることができたが、のちに不可能となり、thisは右辺値となっている[2]。
初期のC++には参照がなかったが、もし最初から参照があったとしたら、thisはポインタではなく参照となっていたであろう[3]。
C++では、delete thisとすることで、オブジェクトが自ら消えることができる。
Java [編集]
Javaでは、thisは現在のインスタンスを指すキーワードであり、クラスの値やメソッドを参照するのに用いられる。
Javaではインスタンスメソッドがすべて仮想メソッドなので、thisがnullとなることはない。
C# [編集]
C#のthisはJava同様、参照となっている。しかし、「Value type」のthisはかなり動作が異なり、代入式の左辺にも置きうる。
Dylan [編集]
Dylanでは多重ディスパッチが行われ、thisという概念がないが、メッセージをあるオブジェクトに送るという意識は文法に残っている。下に示した2つの記法は糖衣構文であり、同等に動作する。
object.method(param1, param2)method (object, param1, param2)
Python [編集]
Pythonでは、thisは文法上のキーワードではないが、自動的に対象となるオブジェクトが渡される、メンバ関数の1つ目の引数となっている。慣習的に、この引数の名前としてselfが使われる。classmethod修飾子を付けて定義されたクラスメソッドでは、1つ目の引数にクラスオブジェクトそのものが渡される。staticmethod修飾子を付けて作られた静的メソッドでは、1つ目の引数に何かが自動的に渡されることはない。
Self [編集]
Selfというプログラミング言語は、「self」が使われることが名前の由来となっている。
Xbase++ [編集]
この言語では、Self、あるいは短縮形の::が使われる。
JavaScript [編集]
プロトタイプベースオブジェクト指向言語であるJavaScriptでは、関数はオブジェクトに属している(メソッドである)ことも、属さないでいる(ただの関数である)こともできる。したがって、thisが何を指しているかは、関数の呼び出し方によって異なっている。
多くの場面では、クラスベースオブジェクト指向言語のthisと同じように使うことができる。たとえば、
object.notify = function () { alert (this); }; object.notify();
のように関数(object.notify)をメソッドとして呼び出した場合、thisはobjectを指す。また、
Counter = function () { this.counter_value = 0; }; c = new Counter();
のようにnewを付けて関数(Counter)をコンストラクタとして呼び出した場合、thisは新しく生成されるオブジェクトを指す[4]。
関数を単独で呼び出す場合は、thisはnullであるが、thisが何を指すかを個別に指定して呼び出すこともできる。(Function.apply) [5]。
脚注 [編集]
- ^ Bound member functions - Using the GNU Compiler Collection (GCC)
- ^ ISO/IEC 14882:2003(E): Programming Languages - C++. ISO/IEC. (2003).
- ^ Stroustrup: C++ Style and Technique FAQ
- ^ 山田祥寛 (2007年9月25日). “連載:Ajax時代のJavaScriptプログラミング再入門 第4回 JavaScriptでオブジェクト指向プログラミング Page1”. @IT. 2011年12月13日閲覧。
- ^ 太田昌吾 (2010年10月12日). “これでできる! クロスブラウザJavaScript入門 第16回 JavaScriptのthisとcall”. 技術評論社. 2011年12月16日閲覧。
外部リンク [編集]
- The Design and Evolution of C++ by Bjarne Stroustrup - Addison-Wesley Pub Co; 1st edition (March 29, 1994); ISBN 0-201-54330-3
- More Effective C++: 35 New Ways to Improve Your Programs and Designs by Scott Meyers -- (1995) ISBN 0-201-63371-X
- Java this