SL銀河
SL銀河 | |
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SL銀河号(2014年6月1日 土沢 - 小山田間) | |
概要 | |
国 | 日本 |
種類 | 快速列車(臨時列車) |
現況 | 運行中 |
地域 | 岩手県 |
運行開始 | 2014年4月12日 |
運営者 | 東日本旅客鉄道(JR東日本) |
路線 | |
起点 | 花巻駅 |
終点 | 釜石駅 |
使用路線 | 釜石線 |
技術 | |
車両 |
キハ141系気動車(盛岡車両センター) C58 239(盛岡車両センター) |
軌間 | 1,067 mm |
電化 | 非電化 |
備考 | |
2014年6月現在のデータ |
SL銀河(SLぎんが)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が2014年(平成26年)4月12日から釜石線で運行しているジョイフルトレインである。
概要
東北地方の観光面からの復興支援と地域の活性化を目的として、岩手県盛岡市にある岩手県営運動公園内の交通公園に展示保存されていた蒸気機関車、C58形 (C58 239) を動態復元させ、釜石線を走行させるプロジェクトとして始まった[1][2]。2014年4月12日に運行を開始した[3]。
今回の復活に際して、計画を立ち上げた盛岡支社では、「SLえほん制作プロジェクト」と題して、子供たちやその保護者とともに、蒸気機関車への夢と希望を描いた作品を募集し、「SLぎんがくんのいちにち」が完成した。また、本列車の運行開始に合わせて、2014年4月から蒸気機関車にちなんだ駅弁4種類が新たに発売されている。
「SL銀河」の運行開始に先立ち、2014年3月7 - 8日にフジテレビの企画でSL銀河の車両を用いた団体臨時列車「みちのくSLギャラクシー」が釜石線釜石駅から東北本線経由で上野駅まで運転された。
さらに2015年8月6日に、フル編成仕様でプラレール化された[4]。
誕生までの経緯
そもそもの発端は、1989年から運行されている「SL銀河ドリーム号」(エスエルぎんがドリームごう、1995年にこの名称に変更)からである。釜石線は、岩手県生まれの作家・宮沢賢治が記した童話「銀河鉄道の夜」の舞台となり、それにちなんで「銀河ドリームライン」と名付けられたことから、蒸気機関車牽引列車による運行が開始された。当初は「ロマン銀河鉄道SL」(ロマンてつどうぎんがエスエル)という名前で登場し、高崎車両センターから借り受けたD51 498と12系客車を使用して、年に数日程度運行された。釜石線の名所となっている宮守川橋梁(通称・めがね橋)などでは多数の鉄道写真家やファン、家族連れで賑わった。
上りの陸中大橋から足ヶ瀬までの仙人峠越えは、長いトンネルがいくつもあって機関士が煙で窒息する恐れがあり、かつD51 498単独では力不足という理由で、2両のDE10形ディーゼル機関車を前補機として連結して運転された。
ただし、運転を重ねていくごとにファンや観光客のマナー悪化が目立ち始め、沿線から苦情が多発したため、2001年の運転をもって連続運行が終了し、2004年の臨時運行以来運転が行われてこなかった(2001年までは急行、2004年は快速扱い)。
それから8年後の2012年に、岩手デスティネーションキャンペーンの目玉イベントおよび2011年に発生した東日本大震災からの復興をめざして、特別に運行されている[5]。盛岡支社はこの運行の際に、沿線に対する想像以上の経済効果が得られたことに加え、地域住民の笑顔や震災からの復興に取り組む姿に感銘を受けたことがきっかけとなり、同年10月、釜石線でのSL列車の定期運行に踏み切った。
2013年11月6日に列車名を「SL銀河」と決定したことが発表された[6]。
運行概況
運行区間は釜石線(花巻駅 - 釜石駅間)で、2日で1往復、すなわち1日の内、釜石行きか花巻行きかのどちらかの方面へ行く運行内容とされている。原則として釜石行きが土曜日、花巻行きが日曜日に運行される。2014年は釜石行きと花巻行きがそれぞれ40日ずつ、ほぼ毎週運行され、合計年80日程度の運行となっている[7]。
機関車、客車とも盛岡車両センターに所属(機関車は盛岡駅構内の盛岡運輸区に隣接する蒸気機関車検修庫に収納)しているため、釜石線起点の花巻まで東北本線を回送する。釜石線が花巻駅の北側で分岐している配線事情や、花巻駅構内に転車台がないこともあり、機関車を進行方向とは逆向きの状態で客車最後尾に連結させての走行となる。回送時の制御は客車側の運転台で行う(詳しくはキハ141系700番台を参照)。
停車駅
花巻駅 - 新花巻駅 - 土沢駅 - 宮守駅 - 遠野駅 - 上有住駅 - 陸中大橋駅 - 釜石駅
使用車両
機関車
盛岡車両センターに所属する蒸気機関車C58 239が牽引する。岩手県盛岡市にある岩手県営運動公園内の交通公園に展示保存されていたものを動態復元した。
客車
盛岡車両センターに所属するキハ141系700番台が使用される。元々は北海道旅客鉄道(JR北海道)が50系客車(オハフ51形)を改造して製作した気動車であり、苗穂運転所に所属し、札沼線(学園都市線)で運用されていたが、同路線の電化に伴い余剰となった車両をJR東日本が購入し、郡山総合車両センターで再改造した。
機関車単機では、釜石線の勾配区間における牽引が困難であることから、動力装置は搭載したまま使用する。運転室は保安装置がJR東日本向けに取り替えられ、ATS-Ps形が設置された。また、防護無線装置はデジタル無線を導入した。C58 239牽引時、ブレーキ操作の取り扱いは行わないため、抜取の位置にしてブレーキハンドルを取り外した状態にし、運転士は機関車との無線連絡を通じてマスター・コントローラーによる動力装置の調整のみの操作を行う。なお、この改造は2014年1月下旬に完了し、同年2月よりC58 239による牽引のほか、単独での試運転も行われている。
編成は指定席車およびオープンスペース車からなる4両編成で、定員は180名[1]。指定席料金は大人820円・子供410円[9]。
内外装デザインは、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」と「東北の文化・自然・風景を通してイマジネーションの旅」をコンセプトとしている。デザインプロデュースは奥山清行が代表を務めるKEN OKUYAMA DESIGN[10]が、コンテンツプロデュースは作家・劇作家・演出家であるロジャー・パルバースがそれぞれ担当した。
外装は『銀河鉄道の夜』をイメージしており、4両ごとに半分ずつ、それぞれ異なる濃度の色合いを用いたグラデーションになっている。これは「夜が明け、朝へと変わりゆく空」を表現したものであり、花巻寄りの1号車の先端が明るい青色で、釜石寄りに進むにつれて色調が濃くなり、4号車の先端が濃紺色になっている。また、それぞれ星座や動物をシンボル化しているが、シンボル化された星座は真鍮による別貼り式となっており、「SL銀河」のロゴも含めて立体感を演出している。
客室の内装は、宮沢賢治が生きた大正・昭和の世界観をイメージし、ガス灯風ランプやステンドグラス風の飾り照明、南部鉄器風の荷棚を採用した豪勢な仕上がりとなっている。星座を意識したパーテーションで仕切りを設け、ブラインドをカーテンに変えるなど、非日常の空間を提供する。
- 編成表
- ← 花巻釜石 →
号車 1 2 3 4 車番 キハ142-701 キサハ144-702 キサハ144-701 キハ143-701 種車
カッコ内は50系客車時代キハ142-201
(オハフ51 30)キサハ144-103
(オハフ51 10)キサハ144-101
(オハフ51 7)キハ143-155
(オハフ51 27)外装シンボル さそり座 いて座 わし座 はくちょう座 車内設備 指定席
運転台側の半室に、小型プラネタリウムを用いての天体ルームを設置指定席 トイレ設置
車端部はフリースペースで、「銀河鉄道の夜」などに関連する資料を展示するギャラリー。指定席
車端部はフリースペースで、イーハトーブと宮沢賢治に関連する資料を展示するギャラリー。指定席・オープンスペース
車椅子対応のバリアフリートイレ、売店、ラウンジを設置。
車端部はフリースペースで、沿線ゆかりの作品を展示するギャラリー。
釜石線におけるSL運転実績
2012年まではいずれもD51 498牽引、客車は12系客車を使用。
- 1989年(平成元年)7月28 - 30日 - 「ロマン銀河鉄道SL'89」として、花巻 - 遠野間を運転。復路は逆機牽引。
- 1990年(平成2年)7月27 - 29日 - 「ロマン銀河鉄道SL'90」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 1991年(平成3年)8月2 - 4日 - 「ロマン銀河鉄道SL'91」として、花巻 - 釜石間を運転。2日1往復。
- 1992年(平成4年)7月30日 - 8月2日 - 「ロマン銀河鉄道SL'92」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 1995年(平成7年)12月23・24日 - 「SL銀河ドリーム号」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 1996年(平成8年)7月26 - 28日 - 「SL銀河ドリーム号」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 1997年(平成9年)8月1 - 3日 - 「SL銀河ドリーム号」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 1998年(平成10年)9月12・13日 - 「SL銀河ドリーム号」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 1999年(平成11年)9月11・12日 - 「SL銀河ドリーム号」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 2000年(平成12年)9月9・10日 - 「SL銀河ドリーム号」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 2001年(平成13年)9月8・9日 - 「SL銀河ドリーム号」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 2004年(平成16年)6月26・27日 - 「SL銀河ドリーム号」として、花巻 - 釜石間を運転。
- 2012年(平成24年)6月2・3・9・10・16・17日 - 「SL銀河ドリーム号」として、北上 - 釜石間を運転。2日1往復。
- 2014年(平成26年)
- 3月7日・8日 - フジテレビの企画で、「SL銀河」の車両を用いた団体臨時列車「みちのくSLギャラクシー」が運転される。
- 1日目は釜石線の釜石駅から花巻駅を経て、東北本線経由で郡山駅まで運転された。牽引は釜石 - 花巻間をC58 239、花巻 - 郡山間をED75形電気機関車が担当した。
- 2日目は郡山駅から尾久駅経由で上野駅まで運転された。牽引は郡山 - 尾久間をEF510形電気機関車、尾久 - 上野間をD51 498が担当した。
- このイベントではChayやももいろクローバーZなど多くのミュージシャンも参加した。
- 4月12日 - 「SL銀河」の運行を開始。
- 11月30日 - 「SL銀河」の2014年の運行が終了。
- 12月6日 - 「SL銀河ナイトクルーズ」を開催。花巻駅から遠野駅までの片道運行で夜間走行を実施。宮守川橋梁にてライトアップを行い、「銀河鉄道の夜」の世界観の再現に挑んだ。
- 3月7日・8日 - フジテレビの企画で、「SL銀河」の車両を用いた団体臨時列車「みちのくSLギャラクシー」が運転される。
- 2015年(平成27年)
- 4月25日 - 「SL銀河」の2015年度の運行を開始
- 2016年(平成28年)
- 4月23日 - 「SL銀河」の2016年度の運行を開始
- 2017年(平成29年)
- 2020年(令和2年)
脚注
- ^ a b “東北でSLが復活します!〜SL銀河鉄道(仮称)〜” (PDF). JR東日本 (2012年10月12日). 2013年6月28日閲覧。
- ^ C58 東北で「SL銀河鉄道」として復活へ - MSN産経フォト
- ^ “「SL銀河」運転開始日決定のお知らせ” (PDF). 東日本旅客鉄道盛岡支社 (2014年2月21日). 2014年3月10日閲覧。
- ^ 2015年5月に幕張メッセで開催されたプラレール博でも試作品が展示された。
- ^ “「いわてデスティネーションキャンペーン」開催について” (PDF). 東日本旅客鉄道 (2012年2月13日). 2012年3月22日閲覧。
- ^ “「東北で復活するSLによる新しい列車「SL銀河」” (PDF). 東日本旅客鉄道 (2013年11月6日). 2014年3月10日閲覧。
- ^ “「銀河」出発 被災地の希望のせて”. YOMIURI ONLINE (読売新聞). (2014年4月13日) 2014年4月15日閲覧。
- ^ “JR釜石線、「SL銀河」運転開始 上有住駅でも歓迎ムード”. 東海新報. (2014年4月13日) 2014年4月15日閲覧。
- ^ ただし、消費税増税に伴う鉄道運賃・料金の価格改定が実施される前日(2014年3月31日)までは、大人800円・子供400円で購入することが可能だった。
- ^ JR東日本 SL銀河鉄道 - KEN OKUYAMA DESIGN
- ^ "「SL銀河」4年目運行開始とプラネタリウム新プログラムの導入について" (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道 盛岡支社. 22 March 2017. 2017年6月19日閲覧。
- ^ "「『SL銀河』一般公開 in 釜石」実施のお知らせ" (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道 盛岡支社. 14 June 2017. 2017年6月19日閲覧。
- ^ "「のってたのしい列車」の運休について" (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道. 8 April 2020. 2020年4月8日閲覧。
- ^ "「のってたのしい列車」の運転再開について" (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道. 26 June 2020. 2020年6月26日閲覧。
関連項目
外部リンク
映像外部リンク | |
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SL銀河、42年ぶり出発進行 花巻―釜石間 YouTube:朝日新聞社が2014年4月12日にアップ |