システムインテグレーター

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システムインテグレーター(英語:System Integrator)は、個別のサブシステムを集めて1つにまとめ上げ、それぞれの機能が正しく働くように完成させるという「システムインテグレーション」を行なう、特別な人や企業のことである。システムインテグレーターは多くの分野で存在するが、この用語は一般には情報技術産業や軍需産業といった業界で用いられる。

以下に、情報システム(情報技術産業、IT業界)、軍需産業のそれぞれについて節を分けて説明する。

目次

[編集] 情報システム

情報システムにおけるシステムインテグレーターとは、情報システムの開発において、コンサルティングから設計開発、運用・保守管理までを一括請負する情報通信企業である。SIer(エスアイアー)とも呼ばれる。

[編集] 概説

情報システムにおける元々のシステム・インテグレーターは、複数のベンダから汎用のパッケージソフトウェアやハードウェアなどの完成品を購入して、1つのシステムとして組み合わせる事業に特化した企業のことを言う[1]

日本におけるシステムインテグレーターはアウトソーシングの一環として流行った業態である。システム開発を、システムのオーナーとなる会社(クライアント)から一括請負して、完成までの責任を負う主契約の相手(プライム)になる。プライムは個々の作業を副契約の会社(サブコントラクター、サブコン)に発注する[2]

日本において、システムインテグレーターはパッケージソフトウェアやSaaSの販売、アプリケーションサービスプロバイダなどを行う場合もあるが、フルオーダーメイドの受託開発が圧倒的に多い[3]。つまり下請けを組み合わせて1から作るのが、日本のシステムインテグレーターである。

システムインテグレーターの隆盛は、日本特有の現象である(後述)。ITゼネコンの問題もある。

[編集] システムインテグレーターの分類

この分類はあくまで目安に過ぎない。コンサル系という分類が加えられる場合もある[4]。得意としている分野や注力している業務は出自・沿革に応じて企業毎に大きく異なる。

メーカー系
富士通NEC日立製作所東芝三菱電機などのコンピュータメーカーの情報処理部門から独立した会社、またはそのメーカー傘下に入った会社。メーカー製品と組み合わせたソリューションの提案に強みがある。主に親会社から、開発案件を元請額の八掛け程度の額[要検証]で受注して開発を行う。70年代からバブル期にかけての過剰な雇用によって後年、技術者のだぶつきが発生し、こうした社員への業務をあてがう目的で日経BPアイティメディアなどの情報媒体を利用し「システムインテグレーターもエンジニアの業務」、「情報産業の花形」と業界ぐるみで盛り立て、モチベーションを維持する手法が取られている。
上述の企業はシステム構築のプロジェクトにおいて商流の上位に位置する傾向が高く、そうした経緯であてがわれてきた、本来行き場の無かった社員が進行の指揮を執るケースも少なくなく、しばしばプロジェクトの破綻をきたしているのが実情である。
(例)日立システムアンドサービスNECソフト富士通ビジネスシステムなど。
ユーザー系
金融会社や商社などの情報システム部門が、コストセンターからプロフィットセンターに転じる目的で独立した会社。主にグループ企業の案件を受注してシステム構築を行う。親会社の案件への依存度が低く、他の顧客の案件を積極的に受注する企業もある。
(例)伊藤忠テクノソリューションズ新日鉄ソリューションズ住商情報システム三菱総研DCSなど。[5]
独立系
親会社を持たない資本的に独立した会社。独立系の会社の子会社も独立系と呼ばれる。メーカーや他のSIerからの下請け業務を行うこともある。
(例)富士ソフト大塚商会CSKオービックTISソランインテックキューブシステムDTS内田洋行日本システムディベロップメントシーエーシーなど。
システムインテグレーターを自称した中小・零細企業および(事実上の)人材派遣会社
主に上記3形態のシステムインテグレーターからの二次請け、あるいはそれ以上の商流で業務を請け負う。また、自社では一切のセールスや一次請け開発を行わず事実上二次請け、孫受けによる業務を社員に担当させることのみで売り上げをなしている企業も多い。こうした企業では従業員をアウトソーシングの名の下に、特定企業に派遣するケースがきわめて多い。人材派遣会社との相違点は、人材派遣を主な事業として行っていることを隠蔽し、あたかもIT企業かのように振る舞い経営を行っていることである。
中小零細企業に多い傾向がある。

[編集] 歴史

システムインテグレーターが登場する以前は、クライアントの情報システム部門が主導してシステム開発を指揮していた。1990年代、これを外部のシステムインテグレーターにアウトソーシングする流れが起きた[2]

第1に都市銀行の第三次オンライン・システムなどシステムが巨大化・高度化した。経済性や技術面、標準化、社会的なシステムの構築などの面から、個々の企業には手におえなくなってきた。第2に企業内の情報システム部門は収益を上げる製造営業部門から離れた間接部門であり、バブル後の不況によって経費削減が迫られた。第3に米国でアウトソーシングが流行していた。特に1989年コダックIBMのアウトソーシング契約は「コダック・エフェクト」として話題になった。このような、情報システムの業務を社外の専門会社に一括委託するアウトソーシングが日本国内でも多くの企業で合理的であると判断され、外部委託と共に無用となった情報システム部門の子会社化や売却も多数行なわれた。

しかしシステムインテグレーターの隆盛は、日本特有の現象である。実は米国のユーザー企業は独自のシステムを開発する場合は、システムを内製する傾向が強い。情報システム部門がエンジニアを抱えて、社内でシステム開発から運用までを行なう[6]、インハウス開発である。コダックのような一括請負のフル・アウトソーシングは特例的なもので、システム等管理運営受託が多い[7]

これに対して、日本のユーザー企業はクライアントとしてシステム開発を外注・丸投げする傾向が強い。特に政府調達においては丸投げは顕著で、一部のシステムインテグレーターがITゼネコン化する弊害が出ている[8]。また民間でも、情報システム部門の弱体化による企画力や発注能力の低下が問題になっている[9]。2009年4月1日から強制適用される工事進行基準[10]や政府調達制度の改革により、過度の丸投げを抑制しようという動きが進んでいる。

なお「エスアイアー」や「エスアイヤー」は和製英語である[11]。日本のシステムインテグレーターを英語で説明する場合は、ITサービス会社(information technology services company)と説明した方が分かりやすい。例えばNTTデータは「It offers a broad range of IT services including consulting, systems integration and IT outsourcing.」[12]のように説明される。

[編集] 受託開発

日本のユーザー企業は、フルオーダーメイドのソフトウェアの開発をIT企業に発注する傾向が強い。汎用のパッケージソフトを導入する場合でも、カスタマイズ比率が高い。よって日本のIT企業のビジネスモデルは、ユーザー企業の自前主義に対応して、受託開発が中心になっている[13]

受託開発におけるIT企業の役割は、ユーザー企業の提示する要件に基づいて、仕様書を作成しプログラムを記述し、情報システムを構築する事である。これを行うのがシステムエンジニアである。

受託開発は収益性が低い。八尋俊英は情報サービス業の市場規模と比べて、日本のIT企業は収益性が低い。欧米のIT企業だけでなく、インドのIT企業にも負けている。その原因は受託中心と多重下請けである[7]と主張している。受託開発によって作成されたソフトウェアは、外販されることが少ない。また知的財産権がユーザー企業に帰属する契約となっていることが多く、IT企業は過去の成果物を再利用して、生産性を上げる事が出来ない[13]。受託開発を担うシステムインテグレーターの隆盛は、日本の国際競争力を下げている[7]

法令の遵守が徹底されていない。受託開発は労働集約的で、多重型の受注構造が取られている。それに伴い、技術者の手配に際して偽装請負が常態化している。システムインテグレーターから業務を受注した企業が、それ以下の商流にある企業(中小・零細企業を含む)との間で偽装請負を行っているケース、または上述のシステムインテグレーター自身が企業ぐるみで偽装請負を行っているケースもあるため、システムインテグレーター利用者は、業務に当たる労働者の原籍確認や労災保険の有無を確認するなどの注意が必要である。

受託開発はユーザーの指示通りに作るだけなので、差別化が図り辛い。外販もされず地味である[13]。多重型の受注構造の原因となり、労働条件も悪い。受託開発を担うシステムインテグレーターの隆盛は、若者のIT業界離れの一因になっている[7]

情報処理に対して理解の乏しいユーザに過剰に不安感を煽り、本来不要なシステムを提案したり、高度な機器を購入させるという構図が存在している。日経BPアイティメディアなどの書籍・Web情報媒体との連携によって業界ぐるみで悪質リフォームと同様の行為が行われているという批判もある。

[編集] 軍需産業

兵器を製造する軍需産業の分野では、古くは帆船蒸気機関を搭載し、トラクター機関銃を備えた砲塔を搭載するシステムインテグレーターの黎明期を経て、第二次世界大戦以後の冷戦期に、大陸間弾道弾や軍事衛星、レーダー誘導ミサイル等の高度な制御が求められる兵器の登場によって、本格的なサブシステムの統合能力が求められるようになった。

軍事分野での代表的なシステムインテグレーターに、米ボーイング社や米ロッキード・マーティン社、米ジェネラル・ダイナミクス社、英BAEシステムズ社、蘭EADS社、仏タレス・グループ等がある[14]

軍需産業も参照下さい。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

[編集] 脚注

[編集] 外部リンク