PAAMS

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代表的なPAAMS搭載艦であるホライズン計画艦。
前甲板にシルヴァーVLS、艦橋構造物上の塔状構造物にEMPAR多機能レーダーが設置されている。

PAAMS(Principal Anti Air Missle System)は、イギリスフランスイタリアによって共同開発された艦隊防空システム。

概要[編集]

PAAMSは、アスター艦対空ミサイルシルヴァー垂直発射装置VLS)、多機能レーダー(MFR)および戦術情報処理装置により構成される。また、公式にはPAAMSには含められないが、システムには長距離捜索レーダー (LRR) が連接される。

PAAMSはしばしば「ミニ・イージス・システム」と比喩されることがある。これは、このシステムがフェーズド・アレイ・タイプの多機能レーダーを使用して多目標対処能力を備えた、統合された防空システムであるためだが、PAAMSは広義のイージス・システム(イージス戦闘システム)とは異なり、データ・リンク装置やSSM装置などを含まない純粋の防空システムであるため、狭義のイージス・システム(イージス武器システム:通常はこれをイージスシステムと呼ぶ)と対比されるべき存在である。

また、イージス武器システムやNAAWSとは異なり、厳密には戦術情報処理装置はPAAMSには含まれず、イギリスはSSCS、フランスはSENITなど、自国がこれまで開発・運用してきたものの発展型を連接して使用している。

開発の進展[編集]

PAAMSの主契約社はEUROPAAMSで、これはEUROSAM(66%)とUKAMS(33%)との間の合弁会社である。EUROSAMはアスターSAMおよびそれを利用した一連の防空システム(PAAMSを含む)を開発・生産する合弁会社であり、現在の出資比率はMBDA社が66%,タレス社が33%である。UKAMSはMBDA社のイギリスにおける子会社で、現在のBAE Systems Insyte社である。

PAAMSの開発は元来、フランス・イタリアのSAMP/N (Sol-Air Moyenne Portee/Naval) 計画とイギリスのLAMS (Local Area Missile System) 計画が合流する形で、ホライズン計画艦に搭載される対空ミサイル・システムとして開始された。

1999年4月にはイギリスがホライズン計画から離脱したが、同国はPAAMS計画には残留した。

1999年8月、3カ国はEUROPAAMSとの間でPAAMS、および連接されるLRRについての開発および初期生産の契約を結んでいる。これには各国艦に搭載されるPAAMSおよびLRR各1セットの生産が含まれていた。

2003年には、イギリスは自国の45型駆逐艦に搭載するために、5セットのPAAMSおよびLRRを追加発注した。また同年には、フランスおよびイタリアも自国のホライズン計画艦に搭載するための2セットを追加発注した。

アスター艦対空ミサイルとシルヴァー垂直発射装置 (VLS)[編集]

アスター艦対空ミサイルには、個艦防空および区域防空に用いられるアスター15と、より長射程で広域防空にも運用されるアスター30がある。

アスターを運用するシルヴァー垂直発射装置は、アメリカMk 41と同様のホット・ローンチを採用しており、8セルが1モジュールを構成する。A43,A50,A70の3つのタイプがあって、それぞれの名称がコンテナの高さを表しており、例えばA43型の全高は4.3メートルである。A43型ではアスター15を運用可能であり、A50型はそれに加えてアスター30が、A70型ではさらにスカルプ・ナヴァル巡航ミサイルが運用される予定である。

また、将来的には全てのバージョンで個艦防空用のVL-MICA艦対空ミサイルが運用可能となる予定であるほか、A70型についてはトマホーク巡航ミサイルの運用にも対応可能であると主張されている。

多機能レーダー (MFR)[編集]

イギリスがホライズン計画より離脱した原因の主な一つとなったのが、多機能レーダーに対する要求における差異である。これによって、PAAMSには使用する多機能レーダーに対応する2つのヴァージョンが生じた。

  1. PAAMS (E) はフランス,イタリアによって運用され、多機能レーダーとしてEMPARを使用する。
  2. PAAMS (S) はイギリスによって運用され、多機能レーダーとしてSAMPSONを使用する。

いずれの多機能レーダーも共通のインターフェースを使ってPAAMSに組み込まれる。イージス・システムのAN/SPY-1や独伊のAPARなどが四面固定型であるのに対し、PAAMSに組み込まれるEMPAR,SAMPSONはともに回転式である。アスターSAMは終末誘導にアクティヴ・レーダー・ホーミングを採用しているため、艦艇の負担は比較的軽い。

EMPAR[編集]

軽空母カヴール」搭載のEMPAR

EMPAR(European Multifunction Phased-Array Radar)は一面回転式(60回転/分)のパッシヴ・フェーズド・アレイ・レーダーで、G (C) バンドで作動する。アンテナ面は垂直から約30度傾斜している。

送信機は進行波管(TWT)を使用し、アンテナ面には2,160個の送信管が配置されている。位相制御は4ビットのピン・ダイオード移相機によって行なわれる。ペンシル・ビームの幅は通常2.6度で、アンテナ面中心線に対して、方位方向で±45度、高角方向で±60度の空間を走査する事ができる。アンテナが回転しているので、方位方向には走査の必要がないように思われるが、空間のある一点を集中して捜索したい場合などに、アンテナの方向に関係なくビームを指向できるという利点がある。

最大出力は120 kW 程度と伝えられ、4~6 MWのAN/SPY-1と比べて格段に小さい。遠距離捜索モードにおいては、レーダー反射断面積(RCS)が10平方メートルと大型航空機サイズの目標を180 kmで探知し、0.1平方メートルと小型無人機サイズの目標は50 kmで探知する。通常モードでの探知距離は航空機サイズで90 km,ミサイル・サイズ(参考RCS値は不明)で40 kmであるが、低高度で飛来するミサイルに対しては23 kmまで低下する。

最大能力では、EMPARのレーダー時間のうち、75 %が新たな目標の捜索に当てられ、20 %が既知の目標の追尾に、5 %がミサイルへのアップリンクに用いられることになる。300の目標を同時に追尾でき、このうち12の目標と同時に交戦可能である。[1] なお、同時交戦数については50目標との情報もある。[2]

SAMPSON[編集]

45型駆逐艦のSAMPSON

SAMPSONは、イギリス国防省の研究開発評価局(DERA)が開発してきた実験アクティヴ・フェーズド・アレイ・レーダーであるMESAR (Multi-function Electronically Scanned Adaptive Radar) の実用機である。最大出力5~25 kWの送受信モジュールを4個組み合わされて送受信エレメントが形成され、2面でこれが計5200個配置されている。

送受信モジュールの最大出力が単一でないのは、低価格で効率よく電波ビームを形成するためである。アンテナは2面が背中合わせに配置され、1分間に60回転する。以前のアンテナ形状は正方形に近いものだったが、重量の軽減や耐風圧性の向上のため、最終的な形状は丸型に決定された。E/F (S) バンドで作動するので探知能力に優れ、最大出力がEMPARよりも小さいにもかかわらず、最大探知距離は250 kmあり、RCS 0.008平方メートルのハトを180kmの距離で探知できる。500~1,000の目標を同時に追尾でき、12の目標と同時に交戦可能である。

SAMPSONの特徴は、MESAR実験機時代より研究が重ねられた対電子妨害能力にある。実験では10方向以上からの模擬電子妨害に対して、妨害を受けにくくする波形を形成することに成功している。また将来の性能向上案として、IFFに依存しない敵味方識別を可能にするNCTR(Non-Cooperative Target Recognition)技術の適用も考えられている。

長距離捜索レーダー (LRR)[編集]

現在のPAAMSでは、多機能レーダーの捜索能力が不足であるため、これを補完するためにS1850M長距離捜索レーダーが連接される。これはBAE Systems Insyteおよびタレス社によって開発されたもので、独蘭のAPARシステム搭載艦が搭載するSMART-L広域捜索レーダーの改良型である。

S1850MはD (L) バンドで動作し、マルチ・ビーム方式(14ビーム)により、高角70度までの空間における三次元目標探知・追尾を実現しており、400kmの距離において1,000個の目標を追尾することができる。また、性能的にほとんど差が無いとされているSMART-Lレーダーは、0.01平方メートルの目標を65kmで探知・追尾したと伝えられている。巨大なアンテナを1分間に12回転させ、ロール角最大30度、ピッチ角最大15度までの船体動揺に対しては電子的なスタビライズによって対応できる。また、S1850Mレーダーは弾道ミサイルへの対処にも使用可能であろうと期待されている。

PAAMSを搭載した艦[編集]

PAAMS (E)

 フランス海軍

 イタリア海軍

PAAMS (S)

 イギリス海軍


脚注[編集]

  1. ^ http://www.eurosam.com/blocks/empar.htm の情報による。
  2. ^ 『世界の艦船』2003年2月号(通巻第607集)など。

参考文献[編集]

  • 岡部いさく「単機能から多機能へ 艦載レーダーの最新動向」『世界の艦船』2003年2月号(通巻第607集)、78-83頁
  • 多田智彦「世界の最新艦載レーダー」『世界の艦船』2003年2月号(通巻第607集)、84-89頁
  • 吉原栄一「2010年前後に登場する新型水上戦闘艦 - 45型〈イギリス〉」『世界の艦船』2003年12月号(通巻第619集)、84-87頁
  • 吉原栄一「2010年前後に登場する新型水上戦闘艦 - ホライズン型〈仏伊〉」『世界の艦船』2003年12月号(通巻第619集)、88-91頁

外部リンク[編集]