MiG-31 (航空機)

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Flag of the Soviet Union (1955-1980).svg MiG-31 / МиГ-31

ロシア空軍のMiG-31

ロシア空軍のMiG-31

MiG-31(ミグ31、ロシア語:МиГ-31 ミーク・トリーッツァチ・アヂーン)はソ連ミグ設計局防空軍向けに開発した迎撃戦闘機である。MiG-25の大幅な改良型で、高高度・高速の航空機の迎撃に特化したMiG-25に対し、低空進入する巡航ミサイル攻撃機への対応能力を持った迎撃機である。ソ連にとっては、最初の第4世代戦闘機であった。北大西洋条約機構(NATO)の使用するNATOコードネームフォックスハウンド (Foxhound)。

開発経緯[編集]

MiG-25はXB-70爆撃機(開発中止)やSR-71偵察機のような高高度をマッハ2を大きく超える速度で侵入する超音速機の迎撃に特化した迎撃機であったが、大陸間核弾道弾の大幅な進歩もあって、高高度を超音速で進入するような爆撃機・攻撃機による核攻撃は時代遅れとなり、代わって核を搭載した巡航ミサイルや攻撃機がレーダー覆域の下を地面すれすれの低高度で進入する方法が取られるようになっていった。低空・亜音速での燃費が悪いターボジェットを搭載し、自機より低高度で地面を背景にした目標を探知・攻撃する能力(ルックダウン・シュートダウン能力)の良くないレーダーを搭載したMiG-25はこのような目標の迎撃には不向きであり、改良が望まれていた(皮肉な事だが、低高度侵入の有効性と、ルックダウン能力に劣る戦闘機の問題点を浮き彫りにしたのは、1976年に当のMiG-25による「ベレンコ中尉亡命事件」であった)。そこでMiG-25をベースに大幅に改造され作られた機種がMiG-31である。

その開発は1968年に着手され、1975年9月16日には初飛行を果たした。1977年には生産が開始され、3シリーズ合わせて11 機の先行量産機が製造された。これらは、各種試験に供せられた。1980年には国土防空軍に配備され、従来のSu-15およびTu-128の置き換えを開始した。1983年9月に極東サハリンに配備された。1995年までに、500 機を超えるMiG-31/Bが生産された。

超高速を実現するため、チタン合金を採用していると西側では予測していたが、実際のところ鋼材とのハイブリッド使用によって超高速時の機体の耐熱限界温度の向上に成功している。翼面荷重は同じ第4世代戦闘機の大型機で同様の任務を持つF-14よりも大きく、世界最大の旋回半径を持つ戦闘機とも呼ばれる。

特徴[編集]

MiG-31Eの「ザスローン」レーダー
R-33ミサイルを搭載した初期型MiG-31

MiG-31の基本的な外形はMiG-25と似ているが、改良点は多岐に渡っている。その中でも主なものは、

  • エンジンを燃費の良いターボファンに換装した。その分高高度性能、高高度での高速性能は抑えられている[1]
  • 主翼の後退角を減らしたうえ、胴体も延長して燃料搭載量を増やし、エンジンの換装と合わせて長時間の空中哨戒を可能にした。
  • 機体構造へのの使用割合を抑え、チタンアルミニウムの使用を増やし、軽量化を図った。
  • 世界初の戦闘機用パッシブフェーズドアレイレーダーRP-37 N007「ザスローン英語版」を搭載してルックダウンシュートダウン能力を強化し、探知距離も延伸され同時多目標対処能力をも獲得した。
  • レーダーを補完するため、引き込み式のSTP/TP-8 IRST(赤外線捜索追尾装置)を搭載した。
  • 新開発の長射程空対空ミサイルR-33(NATO名AA-9)を胴体下面に4 発搭載可能とした。また、短射程空対空ミサイルとして従来のR-40Tに加えて小型のR-60も搭載可能になった。これにより、短射程ミサイルの搭載数が倍増した。
  • 作戦任務での作業量を減らすため、タンデム複座として後席にレーダー操作員を載せるようにした。後席での操縦は緊急時のみ可能である。
  • 格闘戦用に23 mm機関砲GSh-6-23)を装備した。もっとも、MiG-31の荷重制限は5Gに過ぎず、一般の戦闘機にくらべ機動性能は劣っている。

などである。

設計[編集]

機体[編集]

ホチロヴォ基地のMiG-31B

一見MiG-25に近い外形をしているMiG-31であるが、構造的な変更も多い。使用材料の見直しを図り、MiG-25の構造重量で80%あったスチールを50%まで減らし、反対にチタンは8%から16%、アルミニウムは11%から33%に増やし、速度面である程度妥協して機体を軽量化している。胴体の大型化と、垂直尾翼内へ燃料タンクを設けたことなどにより燃料搭載量は1割ほど増して16,350kgになっている。主翼は構造が強化され、前縁フラップを新たに設けるとともに後縁フラップも自動制御となり、機動性能の向上に貢献している。主翼付け根前縁にはストレーキがあり、MiG-31M/F型では円弧を描く形状に変更されている。 機動性が良くなったとはいえ、超音速での荷重は5Gに制限されている。

降着装置、前輪は後ろ引き込み式に変更、主脚はダブルタイヤとなり40tを超す重量を支える。滑走路への影響を考えて主脚輪は轍が重ならないようになっている。

エンジン[編集]

MiG-31はアビアドビガーテル(旧ソロヴィヨフ)D-30F-6ターボファンエンジンを搭載する。アフターバーナー全開時で15,500kgの出力を発揮し、MiG-25のR-15に比べて4000kgほど向上している。大型化したエンジンに合わせノズル形状も変更されている。初期型ではノズルは可動式だったが、1984年の生産型から非可動になっている。胴体の幅が広げられたので2つのノズルは接触していない。MiG-31Mでは機体重量の増加に合わせて、エンジンも出力向上を施されたD-30F-6Mを搭載している。

電子機器[編集]

MiG-31のデータリンクの構想図

レーダーはチホミーロフNIIPロシア語版ザスローン英語版パッシブフェーズドアレイレーダー(NATOコード:フラッシュダンス)を搭載する。探知距離は200km、追尾距離は120kmに及ぶ。10目標同時追跡が可能で、R-33の搭載能力によるが4目標同時交戦も可能であるようだ。捜索範囲は左右各70度(モードによっては各120度)、上方70度、下方60度とかなり広い。

MiG-31Mの搭載する「ザスローンM英語版」はRCS0.95m2 程のAWACS機などの目標なら400kmの距離で探知できる能力を有し、24目標同時追尾、6目標同時交戦が可能。素子面直径は1.4mと「ザスローン」よりさらに大きい。

MiG-25になかった赤外線捜索追尾装置(IRST)を機首下に収納装備しており、使用時のみ機体の外にせり出して作動する。また、レーダーとの併用が可能である。MiG-31Mでは同様の場所に固定装備され、能力が向上しているとされる。

MiG-31はRK-RLDNとAPD-518という2種類のデジタルデータリンクシステムを備えている。前者は地上の管制所と情報を交換するためのシステムで、ソ連の防空戦闘機は地上からの誘導に従って行動するのを原則としていたので、交戦指示などを受けるためにこの能力を持っていた。後者は他のMiG-31との情報交換用のもので、個々のレーダーで得た情報を共有することができた。こちらは、例えばMiG-25のような古い味方機でもMiG-31側のサポートで情報共有を可能にしていた。

MiG-31MではECMポッドの搭載も検討されており、MiG-31Mの7号機が、Ye-155P3~11がつけていたような三角のフィンを持つECMポッドを翼端に装備した。

電子機器全般について述べれば、MiG-25のような真空管などは用いられておらず、完全にソリッドステート化されている。

コクピット[編集]

MiG-31はタンデム式に前後席を配し、前席にパイロット、後席にWSO(ウェポン・システム・オペレータ)が乗る。前席には3色カラー表示のHUDが装備され、後席には大型の戦術状況ディスプレイやIRST用の角型ディスプレイが装備されている。レーダーの操作は後席でのみ行えるようになっている。後席にも操縦装置が備えられているが、これは緊急時への配慮というより、練習機としての使用目的があったものと思われる。

MiG-31Mでは後席にCRT多機能ディスプレイ3基が装備され、前席もHUD下にスコープがついた。キャノピーのふくらみが増され枠も減ったため視界はかなり向上している。後席のCRTについてはMiG-31F、MiG-31BMでも同様であるが、MiG-31BMでは前席のスコープが無くなり、液晶多機能ディスプレイが1つ追加されている。多くの対地兵装を扱うために改良が加えられ、レーダーモードの追加や、HOTAS概念の導入もなされている。

兵装[編集]

GSh-6-23の砲身。
MiG-31BMの胴体下部。R-33、脚部構造などがわかる。

固定兵装としてGSh-6-23 23mmガトリング砲を右胴体下に装備している。弾倉などは胴体内に収めているが、砲身のみを機外に取りつける形をとっている。MiG-31Mでは機銃は取り外されている。Su-24での事故を受けてロシア空軍は現在この機関砲の実用を禁止しているので、搭載している機でも弾薬は積んでいない。

MiG-31は胴体下に4発のR-33を搭載でき、胴体下面の形状もこれに合わされている。前の2発は半埋め込み式で搭載される。このミサイルはアメリカ軍のAIM-54フェニックスと似た運用思想を持つ。誘導方式はセミアクティブレーダー誘導か、慣性誘導ののち終末誘導でセミアクティブレーダー誘導に切り替わるモードを選択できる。射程距離は160km、飛翔速度はM4.5。MiG-31Bの製作に合わせてR-33Sに改良され、射程が228kmに延長された。さらにMiG-31Mは6発のR-37を半埋め込み式で搭載できる。こちらは制御翼面を折り畳むことができ、R-33と同様にAWACSなど大型の目標を狙うためのもので、射程距離は300kmを超える。1994年4月に行われたMiG-31Mの試験飛行では実際に300km先の標的を撃墜した。

MiG-31は翼下のパイロンにR-40R-60R-73を搭載できる。短射程ミサイルについては軽量なため専用のアタッチメントをパイロンに取りつけることで各2発装備できる。MiG-31MではR-77を4ヶ所の翼下パイロンに各1発ずつ装備できる。これはMiG-31BMでも同様。

MiG-31BMはマルチロール機として計画されたため、各種対地兵装を装備できる。Kh-31P対レーダーミサイルを始め、Kh-25MP対レーダーミサイルKh-29Tテレビ誘導ミサイル、Kh-59画像・データリンク誘導ミサイルなどを運用でき、爆弾ならKAB-1500英語版を3発まで、KAB-500ポーランド語版を6発まで装備できた。

派生型[編集]

MiG-31BM
MiG-31E
MiG-31M。前席キャノピー上に桁があるがこれは間違い。

MiG-31は、搭載レーダーの情報がスパイによって西側に漏れたため、各種の変更・改良を行ったMiG-31Bが量産の主力となった。

1990年代には大幅な能力向上型のMiG-31Mが完成された。「ザスローン-A」より大型のチホミーロフNIIP「ザスローン-M」を大型化したレドームに搭載し、R-33の代わりに発展型のR-37長距離ミサイルを胴体下に6発、R-77中距離ミサイルを主翼下パイロンに4発搭載できるようになった。アビオニクスも能力向上が図られ、コクピット後席はCRTを3基備えグラスコックピット化されている。キャノピーも枠が減り大型化、視界が改善されている。機首プローブは右側へ移り、胴体右の機関砲は廃されている。主翼付け根のストレーキ形状が他の型と異なる。翼端にはECMポッドを装備できた。これらの機体重量増加に合わせて、エンジンはパワーアップ型のD-30F-6Mが搭載されている。既存のMiG-31に前部胴体を移植した機を含め7機が完成したのみで、当時財政難であったロシアには採用されなかった。

この機体のアビオニクスをMiG-31Bに搭載したMiG-31BMは外見上MiG-31Bと変わりないが、コクピット後席はMiG-31Mに準じ、前席にも1基CRTがある。さらに対地攻撃能力を付与され、Kh-59対レーダーミサイルなどを運用できるマルチロール機として完成された。さらにレーダーなどを改良した型が、2011年の契約で60機が改修されている。

ミグでは対地攻撃性能を持たせる等したいくつかの輸出型を提案しているが、現在のところ輸出には成功していない。通常の輸出型のMiG-31Eは完成され長らく飛行状態にあるが、やはり機体が性能に比例して高価であるため発注は取れていない。一時期イラン中華人民共和国が関心を寄せていたが、経済性や政治的な問題から売買契約は締結されなかった。

Ye-155MP

MiG-31の原型機。製品83。主翼付け根のストレーキが無く、前縁フラップも無い。また、エアブレーキを兼ねる主脚扉の形状も異なっている。1975年9月16日に初飛行。2機製作された。

MiG-31

初期生産型。1979年に量産開始。この型の情報が西側に漏れたと言われる。

MiG-31DZ

空中給油用のプローブを機首左に備えたMiG-31。

MiG-31B

西側への情報漏洩を受けて各種改良が行われた型。ECCM性能を高めた「ザスローン-A」レーダーを搭載し、給油プローブも標準装備されている。改良型のR-33Sを搭載でき、全体の戦闘能力は30%も高まった計算になるという。

MiG-31BS

既存のMiG-31(初期生産型)をMiG-31B相当に改修した型。

MiG-31D

対衛星ミサイル搭載のためか、胴体下4基のハードポイントがカバーされ単一のハードポイントが設けられている。主翼付け根はMiG-31Mと同じ形状になっている。1987年に2機が試作された。

MiG-31A

MiG-31Dに準ずる商業用衛星打ち上げ母機。単体で100kg、「イシム」固体燃料ブースター装備で160kgまでの小型衛星を低軌道に乗せられる能力を持った[2]。計画のみ。

MiG-31E

ECM機材の性能を引き下げるなど、輸出用にダウングレードされた型。既存の機体を改造してテストを行った。

MiG-31F

MiG-31Bをベースに対地攻撃能力を付与された型で、1995年のパリ航空ショーでミグ設計局によって存在が明らかにされた[3]。この型の技術はのちのMiG-31BMに吸収された。

MiG-31FE

MiG-31Fの輸出型。中国、イラク、リビア、アルジェリアに提案された。

MiG-31M

1985年に原型機が初飛行した大幅な能力向上型。

MiG-31BM

1999年に公開デモンストレーションが行われた。MiG-31MのアビオニクスをMiG-31Bにフィードバックして改修されたマルチロール型。

配備状況[編集]

ホチロヴォ基地のMiG-31B

MiG-31は特殊かつ高度な性能を持った迎撃機であるため、ソ連防空軍にのみ配備された。ソ連崩壊後、それらのMiG-31はロシア防空軍カザフスタン防空軍に引き継がれ、現在でも迎撃能力のかなりの部分を担っている。ロシア防空軍機は、同軍の廃止に伴い空軍へ移管された。ロシアに関しては「ロシアの空はMiG-31とSu-27が半分ずつ守っている」(前線戦闘機であり要撃任務には用いられないMIG-29を「守っている」数には含めていない)と喩えられることもあるほど重要な位置にある。極東方面では、択捉島に展開し、樺太に前進基地を有している。 2011年時点で約170機[4]、2013年には122機と配備機数は減少しているが、既に改修された60機に加えてさらに50機のBM型への改修を国防省では要求している[5]

カザフスタンでの運用は長らく情報が公開されていなかったが2006年には運用機が一般に公開され、2007年現在も運用が継続されている。この他、シリアでもMiG-31Eが導入されているという情報があるが、実態は不明である。

スペック[編集]

MiG-31.svg

MiG-31B

  • 乗員:2 名
  • 全長:22.668 m(機首プローブ含む)
  • 全幅:13.456 m
  • 全高:6.15 m
  • 翼面積:61.60 m²
  • 翼面荷重量:665.0 kg/m²
  • 空虚重量:21,820 kg
  • 通常離陸重量:41,000 kg
  • 最大離陸重量: 46,220 kg(R-33×4、増槽×2)
  • 発動機:ソロヴィヨーフ D-30F-6 ×2
  • 推力重量比:0.85
  • 最大速度:マッハ 2.83 (3,000km/h)
  • 最大巡航速度:マッハ 2.35
  • 経済巡航速度:マッハ 0.80
  • 航続距離:720km (M2.35、R-33×4)
1,200km (M0.80、R-33×4)
1,400km (M0.80、R-33×4、増槽×2)
2,200km (同上、空中給油1回)
  • フェリー航続距離:3,300 km
  • 上昇率:208 m/秒(12,480m/分)/10, 000mまで7.9分
  • 実用上昇限度:20,600 m
  • 着陸速度:260km
  • 離陸滑走距離:1,200m
  • 着陸滑走距離:800m
  • 武装

運用国[編集]

Mikoyan MiG-31 Operators.png
ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
防空軍
ロシアの旗 ロシア
防空軍
空軍
カザフスタンの旗 カザフスタン
防空軍
シリアの旗 シリア
空軍 (発注中[6])

登場作品[編集]

  • ストラトス・フォーアドバンス - 作中で登場する対隕石迎撃機として使用されているTSR-2MSの次世代機としてMiG-31MSが登場した。
  • エースコンバットシリーズ - いくつかの作品において操縦可能な戦闘機として登場。実機同様に加速性能はトップクラスであるが、旋回性能が著しく低い機体として描かれ、ファンの間では「直線番長」というあだ名で呼ばれることもある。
  • 凱歌の号砲 エアランドフォース』 - 日本を占拠したロシア軍の機体として登場。プレイヤーも購入して使用できる。

参考[編集]

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  1. ^ MiG-31もMiG-25もカタログスペック上の最高速度は時速3,000km(約マッハ2.83)であり、全く同じであるが、この最高速度は機体の耐用限界である。そしてMiG-25はしばしば耐用限界を越えた速度で運用されており、中東上空にてマッハ3.4を記録している(出典『ミグ戦闘機―ソ連戦闘機の最新テクノロジー メカニックブックス』原書房から)。MiG-31については少なくとも現在まで、そのような高速での飛行事例は存在しない。
  2. ^ http://www.vectorsite.net/avmig25_2.html
  3. ^ http://www.vectorsite.net/avmig25_2.html
  4. ^ ロシア空軍近代化、2000機調達計画 小泉悠 軍事研究 2011年3月号 P60-69 ジャパン・ミリタリー・レビュー社
  5. ^ 軍事研究 2013年11月号ミリタリーニュース P184 ジャパン・ミリタリー・レビュー社
  6. ^ 『戦闘機年鑑 2009-2010』 イカロス出版 ISBN 978-4-86320-157-6 p.162

関連項目[編集]