MONSTER (アルバム)

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MONSTER
B'zスタジオ・アルバム
リリース
録音
  • 2005年11月 - 2006年
ジャンル
時間
レーベル VERMILLION RECORDS
プロデュース 松本孝弘
専門評論家によるレビュー
  • cdjournal.com[1]
チャート最高順位
  • 週間1位(オリコン[2]
  • 2006年7月度月間1位(オリコン)[3]
  • 2006年度年間20位(オリコン)
  • ゴールドディスク
  • ダブル・プラチナ(日本レコード協会[4]
  • B'z アルバム 年表
    • MONSTER
    • (2006年)
    『MONSTER』収録のシングル
    1. OCEAN
      リリース: 2005年8月10日
    2. 衝動
      リリース: 2006年1月25日
    3. ゆるぎないものひとつ
      リリース: 2006年4月12日
    4. SPLASH!
      リリース: 2006年6月7日
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    MONSTER』(モンスター)は、日本音楽ユニットB'zが、2006年6月28日にリリースした15作目のオリジナル・アルバム

    概要[編集]

    前作『THE CIRCLE』より1年2か月ぶりのオリジナル・アルバム[5]

    B'zはあまりコンセプトなどを固定してアルバムを作ることは少ないが、本作ではレコーディングの初頭から『MONSTER』というキーワードがあり[注 1]、稲葉はそれを意識して作詞をしていった[6]。本作発売後に、ライブツアー『B'z LIVE-GYM 2006 "MONSTER'S GARAGE"』が敢行された[7]

    ロックからポップな曲、バラード、はたまたレゲエ調、ブルース調など幅広くバラエティ豊かな曲構成をしている[8][5]。また、近作である『BIG MACHINE』や『THE CIRCLE』のシンプルなバンド志向とは異なり、打ち込み音やキーボードストリングスブラスコーラスなどを多用している。本作では、珍しくコーラスにサポートメンバーの声を使っている。近年ではほとんどなかったフェードアウトの曲も3曲ある。

    制作は日本と自身のスタジオがあるロサンゼルスを何度も往復しながら行われた[9]

    ジャケット写真は、黒い背景にカラフルなメンバーの写真などのコラージュというデザイン。これは「タイトルから直接的に想像できるイメージとは逆に、ポップでライトな感じ」というテーマで制作された[10]

    前後の作品同様デジパック仕様だが、プラスチック製のスリーブケースが付属するほか、歌詞カードは通常のブックレット式ではなく、屏風式となっている[注 2]

    初回限定盤には、9月1日になんばHatchで開催されたリリース記念を兼ねた完全招待制ライブ『B'z NETWORK LIVE in Japan』の応募抽選ハガキが封入されている[11][12]

    アレンジャー徳永暁人がアルバム全般の楽曲制作に参加した最後の作品であり、次作『ACTION』は一部の楽曲のみ参加、それ以降はB'zの楽曲制作にまったく関与していない[注 3]

    シングル曲が4曲以上オリジナル・アルバムに収録されるのは、11thアルバム『ELEVEN』以来である。

    オリコンチャートではグループ及び男性アーティストでは初となる通算20作の首位獲得となった[13]

    2018年に結成30周年記念として『DINOSAUR』までのオリジナル・アルバムと共にアナログレコード化された[14]

    収録曲[編集]

    CD
    全作詞: 稲葉浩志、全作曲: 松本孝弘、全編曲: 松本孝弘・稲葉浩志・徳永暁人
    #タイトル作詞作曲・編曲時間
    1.「ALL-OUT ATTACK」稲葉浩志松本孝弘
    2.SPLASH!稲葉浩志松本孝弘
    3.ゆるぎないものひとつ稲葉浩志松本孝弘
    4.「恋のサマーセッション」稲葉浩志松本孝弘
    5.「ケムリの世界」稲葉浩志松本孝弘
    6.衝動 〜MONSTER MiX〜」稲葉浩志松本孝弘
    7.「無言のPromise」稲葉浩志松本孝弘
    8.「MONSTER」稲葉浩志松本孝弘
    9.「ネテモサメテモ」稲葉浩志松本孝弘
    10.「Happy Birthday」稲葉浩志松本孝弘
    11.ピエロ稲葉浩志松本孝弘
    12.「雨だれぶるーず」稲葉浩志松本孝弘
    13.「明日また陽が昇るなら」稲葉浩志松本孝弘
    14.OCEAN 〜2006 MiX〜」稲葉浩志松本孝弘
    合計時間:

    楽曲解説[編集]

    1. ALL-OUT ATTACK
      「アルバムの1曲目を創ろう」という意識で制作された[15][6]。タイトルは英語で「総攻撃」を意味する。
      プログレッシブ・ロック調の楽曲で、異なる3曲が1つにまとめられている[1]。そのため、B'zの楽曲にはあまりなかったCメロが存在しており、セクションによってビートが変わっている。
      PVは、ライブハウスに男性限定でエキストラを募集し、ライブ形式で収録されている。このPVは「純情ACTION」のPVに一部流用された。
      ベスト・アルバムB'z The Best "ULTRA Treasure"』の収録曲を決める際のファン投票では中間発表時の結果では31位で、最終的に収録となる30位以内には入れなかった。
      2006年10月13日放送の『ミュージックステーション 20周年記念スペシャル』ではライブ形式で披露された[16]
    2. SPLASH!
      42ndシングル。
    3. ゆるぎないものひとつ
      41stシングル。
    4. 恋のサマーセッション
      レゲエ調の楽曲で[1]、松本はレゲエのリズムと夏というテーマでメロディーを作った[17]。しかし、普段レゲエを聴かないためボブ・マーリーベスト・アルバムを購入したという[6]
      また、女性のコーラスがあったほうが良いとのことで久々に女性コーラスが入っている[6]
      作詞の際に“夏期講習”という言葉を思いついたので辞書で調べると“サマーセッション”だったためタイトルに採用している[17]。稲葉曰く「“夏期講習”自体は歌いたい言葉だったんで、変えたくなかった」という理由で、歌詞中では“恋の夏期講習”と歌われている[17]
      この曲もPVが制作されており、街の通りの店舗で二人で演奏していると、外国人の男性エキストラがサビの一部を歌いながら二人の前に乱入して去っていくという内容。
      ライブでは松本がストラトキャスターを使用し、ダンサーが登場した[18]
    5. ケムリの世界
      ライブドア事件村上ファンド事件耐震強度問題における証人喚問などの一連の事件を暗喩するような、社会風刺の歌詞を持つロックンロール調の楽曲[1]。歌詞はL.A.へ行く飛行機内で書かれた[6]
      歌詞の「イコール」の部分は徳永暁人が叫んでいる[6]
      2番が終わると転調し、ラストのサビでテンポアップする。
    6. 衝動 〜MONSTER MiX〜
      40thシングル。
      本作にはアルバムバージョンとして収録されており、アコースティック・ギター以外のギターのパートの他、ボーカルやコーラスも一部が録り直された[19]
    7. 無言のPromise
      稲葉は歌詞について「太い絆で繋がっている人は、物理的に別れたりとかしても、もう1回会うっていう約束を無言でしてるんだ、っていうのがテーマ」とコメントしている[20]
      間奏には、GOWによるタガログ語での語りがある。女性が歌詞部分にメインで声を入れているのは「WILD ROAD」以来。語りに使用する言語として普段あまり馴染みのない言葉という理由からフランス語スペイン語が候補に挙がっていたが、GOWがタガログ語も話せるため試したところ、一番良かったため採用された[6]
      ストリングスは稲葉のソロ曲「遠くまで」のように弦楽四重奏となっている。
      「80年代のメタルバラードにならないようにしないといけないな」[6]という松本の話もあり、大サビまでエレクトリック・ギターが出てこない。
      「ケムリの世界」と本曲はフェードアウトである他、いずれもライブ未演奏となっている。
    8. MONSTER
      本作の表題曲であるハードロック・チューン[1]
      リフ先行で作られた曲で、ストリングスを使用している。アルバムタイトル決定後、イントロ以外のリフが制作された[21]
      PVが存在しており、CMにも映像が使用された。
    9. ネテモサメテモ
      松本曰く「かなりチャレンジな楽曲」。
      ブルースロック調の楽曲で[1]、メロディとリフは別々に存在していたものをくっつけたという[20]
      ブルースハープは稲葉が担当[6]
      日本テレビ1億3000万人が選ぶ!ベストアーティスト2006』で披露された。
    10. Happy Birthday
      B'z初のバースデイソング
      B'z LIVE-GYM 2005 "CIRCLE OF ROCK"』で未発表曲として演奏されており、その際はイントロにピアノメロディが存在した。
      松本は「こういった曲は音源化すると旬じゃなくなってしまうから、大切にしていきたい」という旨の発言もあったが、松本曰く「自然の流れ」で本作に収録された[6]
      『B'z LIVE-GYM 2005 "CIRCLE OF ROCK"』のツアー中にジャムセッションをしながら固めていったアレンジだっため、そのままではアルバムへの収録は厳しいと判断し、一部歌詞の追加や大幅なアレンジが行われた[6]
      PVが存在しており、『B'z LIVE-GYM 2005 "CIRCLE OF ROCK"』での演奏時の映像とそのリハーサルの映像が使用されている。
      『B'z LIVE-GYM 2006 "MONSTER'S GARAGE"』では、松本と稲葉、増田隆宣シェーン・ガラース、徳永暁人、大田紳一郎の6人によるアコースティック・ギター主体のバージョンで演奏された[18]
    11. ピエロ
      41stシングル『ゆるぎないものひとつ』2nd beat
      2nd beatがオリジナル・アルバムに収録されるのは珍しいが、周囲からの評判がよく、アルバムの構成として悪くならなければいいという事で収録された[6]
    12. 雨だれぶるーず
      タイトルはなかなか決まらなかったとのこと[6]
      稲葉の「マイナーのブルースがやりたい」というリクエストの下、ロサンゼルスでメンバー同士のジャム・セッションを中心に制作され、帰国してからブラスを加えて完成した[22][6]
      Aメロ部分は元々メロディーがなく、稲葉の作詞に合わせ形を作っていった[6]
      稲葉は「非常にバランスが難しい曲」と評しており、歌うのは難しいと思ったがあえてチャレンジしたいなと語っている[6]
      B'zでは珍しくコーラスパートが一切ない。稲葉によると、当初はコーラスは入っていたが、リアリティに欠けており必要ないと感じたため[6]
      演奏時間は6分17秒と長め[注 4]
    13. 明日また陽が昇るなら
      本作の制作過程で最初に制作が開始された楽曲(M-1)で、元々は「OCEAN」と同時期に制作に入っていたが[6]なかなか完成せず、結局は本作のレコーディング終盤に完成した[22]
      アレンジの段階で、イントロが違うものやリズム・パターンが違うものなど様々なパターンを試している[22]
      曲順についても試行錯誤しており、レコーディングの当初は1曲目にする予定であったが[22]、「雨だれぶるーず」の後にすることで繋がった感じがあり現在の曲順になった[6]。また、松本は「ちょっと最後(の曲)っぽい」とも語っており[6]、アルバムツアーでは本編ラストに演奏された。
      歌詞は、ライブが終わった後、観客と別れるときの気分で書いたと語っている[6]
      本曲もPVが制作されている。
    14. OCEAN 〜2006 MiX〜
      39thシングル。
      本作にはアルバムバージョンとして収録されており、シングルバージョンよりもエレクトリック・ギターが強調されている[1]。またシングルバージョンではミキシングを小林が担当したが、アルバムバージョンではジェイが担当した。
      本作の制作開始前に完成していた楽曲ではあるが、松本は「最後に入れて、アルバムがすごく締まったなっていう感じがする」と語っている[6]。 
      ちなみに、年をまたいでオリジナル・アルバムに収録されたシングルは「ultra soul」以来である[注 5]

    参加ミュージシャン[編集]

    ライブ映像作品[編集]

    シングル曲については各作品の項目を参照

    ALL-OUT ATTACK

    恋のサマーセッション

    MONSTER

    ネテモサメテモ

    Happy Birthday

    雨だれぶるーず

    明日また陽が昇るなら

    関連項目[編集]

    脚注[編集]

    注釈[編集]

    1. ^ 松本が、稲葉に「MONSTER」のモチーフをメールで送った。
    2. ^ 折りたたみ式だったデビューアルバム『B'z』を除き、他のCDアルバムの歌詞カードは全てブックレット式である。
    3. ^ ただし、2014年には稲葉のソロアルバム『Singing Bird』、2016年には稲葉のソロシングル『』の製作に参加している。
    4. ^ 1995年以降、6分を超える曲は「Raging River」(『ELEVEN』収録、7分32秒)、本曲、「Rain & Dream」(『NEW LOVE』収録、6分18秒)の3曲のみとなっている(リメイク作品・ライブ音源除く)。
    5. ^ ちなみに、「ultra soul」もアルバムバージョンだった。
    6. ^ a b 「OCEAN」(#14)については本作では表記されていないが、シングル盤で表記されている。

    出典[編集]

    1. ^ a b c d e f g B'z / MONSTER [デジパック仕様]”. CDJournal. シーディージャーナル. 2020年7月19日閲覧。
    2. ^ MONSTER | B'z”. ORICON NEWS. オリコン. 2020年8月1日閲覧。
    3. ^ “速報!7月度 月間アルバムランキング~B'z首位、アンジェラ健闘!”. ORICON NEWS (オリコン株式会社). (2006年8月2日). https://www.oricon.co.jp/news/30236/full/ 2021年12月15日閲覧。 
    4. ^ Gold Album+...認定 2006年6月度」『The Record』第561号、日本レコード協会、2006年8月、14頁。 
    5. ^ a b 『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories II』エムアールエム、2013年、89頁。 
    6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 『be with!』第70巻、B'z Party、2006年6月。 
    7. ^ B'z『まさに“モンスター”級のアルバムが完成!』”. ORICON STYLE. オリコン株式会社. 2006年6月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月8日閲覧。
    8. ^ B'z 〜ニュー・アルバム『MONSTER』”. Music Freak Magazine. エムアールエム. 2019年11月23日閲覧。
    9. ^ B'z『[https://web.archive.org/web/20120307011332/http://smash.music.yahoo.co.jp/pow_dtl/itv/powyjm00097/ B'z まさに『MONSTER』! B'zの比類なき可能性]』(インタビュアー:住田理恵)、ヤフー株式会社、2006年7月6日。 オリジナルの2021年11月10日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20120307011332/http://smash.music.yahoo.co.jp/pow_dtl/itv/powyjm00097/2021年11月8日閲覧 
    10. ^ 『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories II』エムアールエム、2013年、139頁。 
    11. ^ “B'z、アルバム先行試聴開始!”. BARKS (ジャパンミュージックネットワーク株式会社). (2006年6月27日). https://www.barks.jp/news/?id=1000024903 2019年11月23日閲覧。 
    12. ^ 新アルバム特典でB'zと一緒にあなたも世界配信”. SANSPO.COM. 株式会社産業経済新聞社. 2006年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月7日閲覧。
    13. ^ “B'z、グループ、男性初のアルバム首位20作目到達!”. ORICON NEWS (オリコン株式会社). (2006年7月4日). https://www.oricon.co.jp/news/26898/full/ 2021年12月15日閲覧。 
    14. ^ “B'z、アルバム全20作品をアナログ化。大型エキシビションで販売”. rockin'on.com (ロッキング・オン). (2018年3月22日). https://rockinon.com/news/detail/174432 2018年11月10日閲覧。 
    15. ^ 佐伯明 2008, p. 287.
    16. ^ 出演者ラインナップ|ミュージックステーション”. テレビ朝日 (2006年10月13日). 2019年11月23日閲覧。
    17. ^ a b c 佐伯明 2008, p. 288.
    18. ^ a b B'z 〜 LIVE DVD「B'z LIVE-GYM 2006“MONSTER'S GARAGE”」”. Music Freak Magazine. エムアールエム. 2019年12月8日閲覧。
    19. ^ 『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories II』エムアールエム、2013年、91頁。 
    20. ^ a b 佐伯明 2008, p. 290.
    21. ^ B'z『[https://web.archive.org/web/20120307011332/http://smash.music.yahoo.co.jp/pow_dtl/itv/powyjm00097/3/ B'z まさに『MONSTER』! B'zの比類なき可能性]』(インタビュアー:住田理恵)、ヤフー株式会社、2006年7月6日。 オリジナルの2021年11月10日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20120307011332/http://smash.music.yahoo.co.jp/pow_dtl/itv/powyjm00097/3/2021年11月8日閲覧 
    22. ^ a b c d 佐伯明 2008, p. 292.

    参考文献[編集]

    • 佐伯明『B'z ミラクルクロニクル 1988-2008』ソニー・マガジンズ、2008年。ISBN 978-4-7897-3328-1 

    外部リンク[編集]