MIVEC

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

MIVEC(マイベック、Mitsubishi Intelligent&Innovative Valve timing&lift Electronic Control system:ミツビシ・インテリジェント&イノヴェイティヴ・バルブタイミング&リフト・エレトクロニック・コントロール・システム)は、三菱自動車工業が開発した可変バルブタイミング・リフト機構総称名である。

三菱・ギャランフォルティスの 4B11 DOHC16バルブ MIVECエンジン
三菱・アウトランダーの 6B31 V6 SOHC24バルブ MIVECエンジン
三菱・グランディスの 4G69 SOHC16バルブ MIVECエンジン

概要[編集]

レシプロエンジンは、ピストンの上下動にともなう吸入・排気の気体流速に合わせ、低回転時はバルブの開く間隔を短くし、高回転時はバルブの開く間隔を長くすると効率が良くなる。MIVECはバルブの開閉の長さと時期をエンジンの回転数に応じて変化させる技術である。

三菱自動車が開発した、可変バルブタイミング機構のMIVECは、ホンダVTECトヨタVVTなどの様に数種類のタイプが存在するが、記号などで分類しておらず、三菱では後述のMIVEC-MDを除きすべてMIVECと表記する、そのため混同されやすく注意が必要である。

主なMIVECの種類[編集]

DOHCカム切り替えタイプ[編集]

ホンダVTECと同じく、1本のカムシャフトに低回転用と高回転用の2つのカムを搭載し、ある一定の回転数でこの2つが切り替わり、吸排気バルブのタイミングとリフト量を変化させる。VTECが3つのカムプロフィール(低速:2 高速:1)を持つのに対してMIVECでは低速・高速1つずつの計2つのカムプロフィールとなる。ロッカーアームを介する油圧を用いたカム切替機構はVTECと同様だが、分割された1本のスライドピンにより低速と高速のロッカーアームを一括して結合するVTECに対し、MIVECではバルブを押すT字型レバーに低速と高速のロッカーアームが独立して取り付けられ、それぞれに結合を行う制御ピストンがあるなど切替機構の内容は異なる。

最初に出たMIVECはこのタイプであり、その後にランサーがランサーセディアとして発売されるまで、改良は加えられているものの基本的にこのタイプをベースにして他のMIVECが作られた。

MIVECに限らずVTECも同様だが、2つの異なるタイプのカムを使い分ける方式は、機構的にはそこまで複雑になるわけではないが、2つのカムが切り替わる際にトルクの「谷間」があるのが欠点。

カム切り替え・気筒休止タイプ[編集]

MIVEC-MD(Modulated Displacement 可変排気量)は、カム切り替えに加え、気筒休止をさせる構造で、MIVECで唯一記号で区別されている。 気筒休止エンジンにも分類される。 上で述べているように初期のMIVECは低速と高速のロッカーアームがそれぞれ独立してT字型レバーへ結合する形となっているため、低速・高速の結合を両方とも解除することでロッカーアームをフリーとする事が出来る。これによりカムからバルブへの力の伝達はなされず気筒休止が行える。

当時の風潮に押されて低燃費を謳っており、ランサーエメロードなどに搭載されたものの、実際はそれほど燃費が伸びるわけでもなく、結局短命に終わった。

カム位相タイプ[編集]

VVT-iのように、クランクシャフトに対してカムを位相変化させ低回転時と高回転時でバルブタイミングを変化させる。負荷状態でも位相を変化させるが、バルブの開いている間隔とバルブリフト量の変化は無い。現在でも小排気量車はこの方式が主流である。

両側カム位相タイプ[編集]

DUAL VVT-iと同じように吸気側、排気側両方を位相制御する。

SOHCカム切り替えタイプ[編集]

SOHCで吸気側のみカム切替を行う方式[1]。カムシャフトのカムローブは端から中リフト-排気カム-高リフト-排気カム-低リフトと5つ設けられている。ロッカーアームの形状はやや複雑だが、大きく分けると3つのアームにわかれており、それぞれ低・中・高リフトカムに接する。左右に低・中リフトカムに接するアームがあり、中央に高リフトカムと接するアームが配置される形となっている。中央アームの上部と左右の各アームの上部との間には遊びとなる隙間があり高リフトカムが中央のロッカーアームを押し上げても接触すること無く空振りする。これにより低回転時には低・中リフトカムが左右それぞれのアームを押し上げ吸気バルブを作動させる形となる。2つの吸気バルブ間でリフト差を設けているのは筒内流動を強化し燃焼安定性を向上させるためである。 高回転では左右の各アーム上部の遊び部分が油圧でせり上がったピストンにより塞がれる。中央のアームの上部はT字型のレバーとなっており、この部分が左右のアーム(遊びを塞いだピストン)と接触することで、高リフトカムの力を左右のアームに伝達し両バルブを高リフトで開閉する。

次世代MIVEC(連続可変バルブリフト・カム位相タイプ)[編集]

2005年東京モーターショーで技術展示され、バルブリフト量を連続可変することで、スロットルバルブを使わずに出力を制御するエンジンで、BMWバルブトロニックやトヨタのバルブマチックなどと同じ様に連続可変バルブリフト制御するが、三菱ではDOHCではなく、SOHCで作動させている。

吸気バルブを位相変化を伴う連続可変リフトとし、リフト量の増大に連動し遅角する。それとは別にカムシャフトの位相変化を行なっている。 開発時はリフト量と共に位相が変化する事からカム位相変化機構が不要になるというメリットを謳っていたが、投入にあたってはカム位相変化機構を併用する形になった。 SOHCではカム位相を変化させても吸気と排気の位相が同時に変化しオーバーラップは変わらず得られるメリットが少ない。このため一般的にSOHCエンジンではカム位相可変機構は利用されず、本タイプのMIVECのようにSOHCながらカム位相変化機構を持つは珍しい形式といえる。 カム位相変化によるオーバーラップ等の変化はないが、下記の様な作用が得られるため併用する形になっている。

吸気バルブはリフト量が大きくなるほど遅角する。これにより低負荷の低リフト時では吸気は早閉じとなり、さらにカム位相も進角することで早閉じミラーサイクルとして作用し吸気ポンプ損失を低減、また連動して排気も早開きとなるため排出ポンプ損失が低減する。中負荷時は高リフトとなると共に遅角、さらにカム位相も遅角する事で遅閉じミラーサイクルとして作用し吸気ポンプ損失を低減、排気も遅開きとなり膨張エネルギーを最大限回収する形となる。 またリフト量増大によるオーバーラップ拡大と排気遅閉じにより排気を再導入することで内部EGRとしても作用する。このため本タイプのMIVECを採用した4J10エンジンのベースになった4B10エンジンで使用されていたEGR装置は4J10では省略されている。

なお完全なスロットルレスではなくアイドル時の燃焼安定やブレーキサーボやブローバイガス吸引の負圧を発生させるためなどにスロットルバルブは残され、フェイルセーフも兼ねている。

三菱可変バルブ機構の歴史[編集]

  • 1982年、日本初の気筒休止エンジン直列4気筒SOHC1400オリオンMDエンジンを発売、当時キャブレター使用で気筒休止していた。
  • 1984年、気筒休止技術を応用し、日本初の可変バルブタイミング・リフト機構シリウスDASH3x2を発売、この当時はMIVECとは呼ばれておらずターボ専用エンジンであった。
  • 1992年、ランサーMRミラージュサイボーグ、VR の4G92エンジンに初搭載され、FTOギャランの6A12,ディアマンテ(6G72),パジェロエボリューション(6G74)など順次ラインナップを拡充していった。後にバルブタイミング機構を気筒休止に応用し、高出力と低燃費の両立を謳ったMIVEC-MD(Modulated Displacement 可変排気量)もギャラン、ミラージュ・ランサー用に発表された。
  • 1990年代後半から主力エンジンがMIVECからガソリン直噴エンジンのGDIに移り変わっていき、ランサーがランサーセディアとして売り出された際に完全にMIVECからGDIに移り変わり、MIVECは一時姿を消した。
  • 2002年10月、コルトの4G15にMIVECが搭載され、これによってMIVECが復活する。しかしこのMIVECは制御するのはバルブタイミングのみであり、以前のMIVECと名前は同じであるが動作は違う。これ以降、排出ガス規制の問題で、リーンバーンでの排気ガス清浄化が難しいGDIに代わり、MIVECを搭載するエンジンが増えてきた。
  • 2003年5月、グランディスにSOHCカム切替タイプのMIVECが搭載される。MIVECは吸気側のみとなる。
  • 2005年、アウトランダー4B12に吸・排気連続可変バルブタイミング機構が搭載されて発売される。
  • 2011年10月、マイナーチェンジしたRVRギャランフォルティス(スポーツバック含)に連続可変バルブリフト・位相変化タイプMIVECとなる4J10を搭載。
  • 2012年、10年ぶりにブランド復活したミラージュ[2]にMIVEC付の3A90が搭載。機構自体は吸気のみの連続可変バルブタイミングであり新しいものではない。

採用状況[編集]

なお、ここでは、日本車には搭載されていないエンジンも含む。

  • 4G92 1,597cc 直列4気筒1992年 - 2000年)DOHC切り替えタイプ
  • 6A12 1,998cc V型6気筒1994年 - 2000年)DOHC切り替えタイプ
  • 4G15 1,468cc 直列4気筒(2003年 – 現行) 
  • 4G69 2,378cc 直列4気筒(2003年 - 現行) SOHC切り替えタイプ
  • 4A90 1,332cc 直列4気筒(2004年 - 現行)
  • 4A91 1,499cc 直列4気筒 (2004年 - 現行)
  • 3B20 659cc 直列3気筒2005年 – 現行)※日産・デイズ用を含む
  • 3B21 999cc 直列3気筒(2008年 - 現行)※スマート・フォーツー(2代目)専用
  • 4G63 1,997cc 直列4気筒(2005年 - 2007年) 位相タイプ
  • 6G75 3,828cc V型6気筒(2005年 - 現行) SOHC切り替えタイプ
  • 4B12 2,359cc 直列4気筒(2005年 - 現行) 両側位相タイプ
  • 4B11 1,998cc 直列4気筒(2007年 - 現行)両側位相タイプ
  • 6B31 2,998cc V型6気筒(2007年 - 現行)SOHC切り替えタイプ
  • 4J10 1,798cc 直列4気筒(2011年 - 現行)連続可変バルブリフト・位相タイプ
  • 3A90 999cc 直列3気筒(2012年 - 現行)※ミラージュ(6代目)専用

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

[編集]

  1. ^ 三菱テクニカルレビュー2003(PDF)61ページ
  2. ^ 派生車種のミラージュディンゴ以来となる。