アグスタウェストランド AW101
アグスタウェストランド AW101
アグスタウェストランド AW101 (AgustaWestland AW101) は、イギリスのウエストランド社とイタリアのアグスタ社が共同開発した汎用ヘリコプターである。両社は2000年に合併し、現在はアグスタウェストランド社が販売と製造を請け負っている。イギリス海軍における呼称はコチョウゲンボウを意味するマーリン (Merlin)[1]。
目次 |
[編集] 設計
大量の機材と長大な航続距離を求めた結果、3発のエンジンと巨大な床下燃料タンクを搭載する大型機となったが、オプションのテール及びローター折り畳み機構によって艦載機としての運用を可能としている。
巨大な機内空間は左舷にステップ付きドア、右舷にスライド式カーゴドア、後部にランプ・ドアを備え、民間輸送型で30人を乗せる事ができる。
5枚のメインローターはウエストランド社がリンクスで取り組んだBERPブレードを採用し、特徴的な外見を備えている。
[編集] 各仕様と装備品
- 早期警戒 AEW:全周監視レーダー、双方向データリンク、統合作戦システム
- 対潜哨戒 ASW/ASuW:ディッピングソナー、ソノブイ、統合作戦システム、魚雷等
- 捜索救難 SAR:自衛機材、防御火器
- 空中掃海 AMCM:掃海器具、AMCM
- 要人輸送 VIP:振動緩和システム、追加装備(厨房、トイレなど)
- 警察型:サーチライト、画像伝送装置、暗視装置
[編集] 派生型
- EH101:原型、民間販売用もこの名称。
- マーリン HM.1:イギリス海軍向け対潜哨戒機。
- マーリン HC.3/HC.3A:イギリス空軍向け輸送型。
- EH101 ASW:イタリア海軍向け対潜哨戒機。
- CH-148 ペトレル:カナダ軍が発注した当初の名称。後に中止。
- CH-149 コルモラント(CH-149 Cormorant):カナダ空軍向け捜索救難機。
- MCH-101:海上自衛隊の掃海・輸送用機。11機導入予定。
- CH-101:日本の南極観測船(砕氷艦)「しらせ(二代目)」の艦載機。3機導入。
- VH-71 ケストレル(VH-71 Kestrel):アメリカ海兵隊の次期大統領専用機「マリーンワン」(旧名称US101)。27機導入予定だったが、2009年6月に開発契約を破棄。
[編集] 各国での採用
[編集] 日本
海上自衛隊では、AW101を掃海・輸送ヘリコプターMCH-101と呼称し、掃海機および輸送機として運用する[2]。2011年3月末時点のMCH-101の保有数は4機[3]。
ローターと尾部に自動折り畳み機能を持ち、艦載機としての運用性を持たせている[4]。また、自動飛行制御装置 (AFCS) 、能動制振装置 (ACSR)といった電子機器を搭載しており、飛行性の向上と機体への負担を軽減している[5]。
海上自衛隊では、掃海機MH-53Eの減勢にともなう後継機として、護衛艦へ発着可能で掃海具の小型化に対応した新型ヘリコプターを必要とし、2003年(平成15年)予算で新掃海・輸送ヘリコプターとして初めて1機が取得された[6]。MCH-101の初号機は完成品輸入として2006年(平成18年)に納入された[4]。2号機は川崎重工業によりノックダウン生産、3号機以降はライセンス生産が行われる[4]。2003年の防衛力整備では、MH-53Eの事故による損耗分を含めた11機の取得が必要だと予算要求された[7]。
MCH-101は平成16年度防衛白書において、ひゅうが型護衛艦に輸送ヘリとして搭載、運用することが示唆されている[8]。
三代目南極観測船「しらせ(初代)」艦載機のS-61A-1の後継として、四代目南極観測船「しらせ(二代目)」用に3機のCH-101が文部科学省予算で調達され、海上自衛隊によって運用されている。CH-101はその任務上極寒冷地対応とされており、所定の追加装備が施されているが、外観上の変化は僅かである。
2007年5月にCH-101初号機がライセンス生産により川崎重工業から「しらせ飛行科」へ納入され、岩国基地の第111航空隊支援の下で試験と訓練を経て、2009年10月に「しらせ(二代目)」に搭載された[9]。しらせ配備機は、部品調達の関係から今後も第111航空隊の支援を受ける。
| 予算計上年度 | 調達数 | 予算計上年度 | 調達数 | 予算計上年度 | 調達数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 平成15年度(2003年) | 1機 | 平成19年度(2007年) | 0機 | 平成23年度(2011年) | 2機 |
| 平成16年度(2004年) | 1機 | 平成20年度(2008年) | 3機 | ||
| 平成17年度(2005年) | 0機 | 平成21年度(2009年) | 0機 | ||
| 平成18年度(2006年) | 0機 | 平成22年度(2010年) | 0機 | 合計 | 7機 |
[編集] イギリス
哨戒ヘリコプターとしてイギリス海軍で44機が発注された。当初は、マーリン HAS.1と命名されたが、すぐマーリン HM.1(Merlin HM Mk. 1)に変更された。1997年5月17日にイギリス海軍へ納入され、2000年6月2日に運用が開始された。コーンウォールのRNAS カルドローズに4個飛行隊が編成された。23型フリゲートやインヴィンシブル級航空母艦を始め、イギリス海軍の艦艇で作戦行動に従事した。
2004年にテール・ローターの破損で事故を起こし、運用が中止された。その後、テール・ローターハブに製造欠陥が確認され、翌年に運用が再開された。カリブ海では、麻薬取締やハリケーンの救済活動を行い、テリック作戦(イラク戦争)に揚陸ヘリ空母「オーシャン」ともに参加した。
輸送機用としてイギリス空軍も1995年に22機を発注した[10]。マーリン HC.3と命名され、2001年1月に部隊編成が行われた。HM.1との違いは、空中給油機構の装備、燃料タンクの拡張、複列車輪が採用されていることである。
HC.3の初任務は、平和安定化部隊の支援であった。その後、HM.1同様にテリック作戦にも参加した。2007年にデンマークへ引き渡される予定であった6機を購入した[11]。マーリン HC.3Aとして追加導入し、空軍参謀総長のグレン・トーピー大将はアフガニスタンやイラクでの運用を加速できると発言した[12]。
[編集] 性能・主要諸元
- 主回転翼直径:18.6 m
- 尾部回転翼直径:4.0 m
- 胴体長:19.5 m
- 胴体幅:4.6 m (テールフィン除)
- 全長:22.8 m (テールローター含、メインローター除)
- 全高:6.63 m (テールローター含)
- 空虚重量:10.5 t
- 有効積載量:5.443 t
- 最大離陸重量:15.6 t
- 発動機(民間用):GE CT7-6A (2,000軸馬力(shp)) ターボシャフトエンジン 3基
- 発動機(軍事用):GE T700-T6A1 (2,145軸馬力(shp)) または R&R/チュルボメカ RTM322 (2,263軸馬力(shp))
- 超過禁止速度:311 km/h
- 巡航速度:280 km/h
- 乗員3名+乗客30
[編集] 年表
- 1977年にイギリス国防省はウエストランドでライセンス生産されていたシーキングに代わる新型対潜ヘリコプターの研究が開始された。この候補としてウエストランドはWG.34を提案した。一方、イタリアでもアグスタでライセンス生産されていたシーキングの代替機を構想しており、イギリス国防省が国際協同開発の可能性を考慮して委員会を設けた
- 1979年にイギリス、イタリアの2か国で開発協定が締結された。
- 1980年にはイギリス海軍とイタリア海軍の次期対潜哨戒ヘリコプターとして提案すべく、ウエストランド、アグスタ両社の出資によってEHインダストリーズ(EH Industries、EHI。ユーロ・ヘリコプター・インダストリー(Euro Helicopter Industries)とも)が設立された。
- 1987年にイギリスは、大型で汎用性の高いEH101(本機の旧名)の採用を決定したため、海軍向け中型汎用ヘリNFH90の生産プログラムから脱退している。
- 1981年に9機の試作機製造が発注された。EHIでは、WG.34という土台があったため開発は進んでいたが、イギリスとイタリアが望む能力を保持しつつ多用途で運用できる可能性が認められ、旅客輸送や兵員輸送能力を満たす大型汎用ヘリコプターの開発に軌道修正された。
- 2000年にウエストランドとアグスタが合併してアグスタウェストランドとなる。
- 2004年にはEHインダストリーズがアグスタウェストランドに吸収合併された。
[編集] 出典
- ^ “RAF - Merlin”. Royal Air Force. 2011年3月9日閲覧。
- ^ "平成20年度における防衛力整備の主要事項について". 防衛省. 2010年5月13日閲覧。
- ^ 平成23年度防衛白書 資料16 主要航空機の保有数・性能諸元
- ^ a b c “海上自衛隊向けMCH-101掃海・輸送ヘリコプターの初号機を納入” (日本語). KHI 川崎重工業株式会社 (2006年3月3日). 2010年2月11日閲覧。
- ^ "ヘリコプター". 丸紅エアロスペース株式会社. 2010年9月1日閲覧。
- ^ "平成15年度 防衛力整備と予算の概要 防衛庁". 防衛省. 2010年5月13日閲覧。
- ^ "2 次期掃海・輸送ヘリコプター". 平成14年度 事前の事業評価. 防衛省. 2010年8月4日閲覧。
- ^ "平成16年度防衛白書". 2章3節.
- ^ “南極観測隊砕氷艦搭載ヘリ2機 海自岩国で訓練終え出発” (日本語). 山口新聞. (2009年10月7日) 2010年2月11日閲覧。
- ^ “Merlin HC Helicopter Mk3” (英語). Fact Sheets. Ministry of Defence (Updated on 16 July 07). 2008年...閲覧。
- ^ “More Merlins boost helicopter force” (英語). Defence News. Ministry of Defence (Released on 25 January 2008). 2008年...閲覧。
- ^ Ministry of Defence (2007年6月29日). “Arrival of Danish Merlin helicopters increases UK fleet”. European Archive. 2011年3月9日閲覧。
- ^ AGUSTAWESTLAND
- ^ “Rotorcraft Report: AgustaWestland” (英語). Rotor & Wing. Access Intelligence, LLC (Released on 1 August 2007). 2008年...閲覧。 “The company re-branded its medium-lift EH101 transport the AW101 to reflect...the full integration of its Agusta and Westland...”
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- AgustaWestland (英語)
- 海上自衛隊 - MCH-101 - CH-101
- 自衛隊装備品図鑑
- 丸紅エアロスペース - EH101
- 川崎重工業 航空宇宙カンパニー - 回転翼機
|
||||||||||||||