Lotus 1-2-3

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Lotus 1-2-3(ロータス ワン・ツー・スリー)は、ロータスソフトウェア(旧ロータス・デベロップメント、現在はIBM傘下)が開発・販売しているパソコン表計算ソフトである。

本ソフトウェアは、ロータス・デベロップメント社を代表する商品のひとつであった。日本においては単に「ロータス」または「1-2-3」(ワン・ツー・スリー、もしくは日本語でイチ・ニ・サン)と呼称されることも多い。一時期はジャストシステム社のワープロソフト 一太郎とともに日本におけるトップシェアを占めた時期があった。また、Mac版もあった。

名称の「1-2-3」は、1.表計算機能、2.グラフ機能、3.データベース機能 の3つの機能を併せ持つことに由来する。

Lotus 1-2-3は、MS-DOS用表計算ソフトの代名詞的存在となり、当時世界で最も売れたアプリケーションソフトウェアとなった。しかし、オペレーティングシステムMicrosoft Windowsへ移行するに従い、早期にWindowsに対応したMicrosoft Excelの攻勢の前に劣勢に立たされ、x86プラットフォームにおけるシェアを失った。

2006年12月時点での最終バージョンは「release 9.8」(日本では「2001」)であり、その後バージョンアップは行われていない。なおIBMは、当該製品(これを同梱するロータス・スーパーオフィス含む)はMicrosoft Windows Vista以降のWindowsに対応しておらず、今後も対応する予定がないことを明らかにしている(公式サイトでのアナウンス)。マイクロソフトによるMicrosoft Windows XPのサポート終了にともない、単品販売のMillennium Editionとスーパーオフィスは営業活動を2013年9月11日には終了し、2014年9月30日にサポートも終了することが発表された[1]

日本では、2003年10月よりソースネクストから価格を1980円に引き下げて販売されたが、2008年時点で既に単品販売は終了しており、その後はロータス・スーパーオフィスの形で2970円で発売されていた(サポートは引き続きIBMが行う)。

歴史[編集]

Lotus 1-2-3 は1983年ミッチ・ケイパーにより開発された。アメリカ合衆国においては、家庭におけるパソコンの用途のひとつとして、表計算ソフトが普及していた。Lotus 1-2-3(以下1-2-3)以前にはApple II等で利用できるビジコープ社の VisiCalc がベストセラーとなっており、16ビットパソコンであるIBM PCにおいても同様のアプリケーションが期待されていた。 MS-DOSを販売していたマイクロソフトはMS-DOS用アプリケーションとして Microsoft Multiplan を開発、販売しており、また8ビットパソコンにおいて人気のあった VisiCalc や SuperCalc などの移植なども行われていたことから、先行ソフトは既に存在していた。

ロータス・デベロップメント(以下ロータス)は先行ソフトに対し優位に立つ為、他を圧倒する性能を追求し、1-2-3を開発した。1-2-3は豊富な機能、高速な再計算、強力なマクロアドインによる拡張性をセールスポイントに掲げ、先行していた他の表計算ソフトを圧倒してMS-DOS用アプリケーションソフトウェアのスタンダードとなることに成功した。

同ソフトの人気はIBM PC/ATとその互換機の売り上げをも押し上げ、パソコン市場をIBM一色に塗り替えることに寄与した。高機能であるがゆえにメモリは256KBを要求されたが、1-2-3の人気はむしろ標準的なPC環境の高性能化を後押しした。マイクロソフトがIBM PCにバンドルされるOS「PC DOS」を自社ブランドの「MS-DOS」として市販したことから、互換機上でもMS-DOS + 1-2-3を使うことができた。MS-DOSがCP/M-86との競争に勝利した理由の一つには、間違いなく1-2-3の存在があった。また、1-2-3の人気は、IBM純正機よりも、互換機の売り上げをより押し上げ、IBMのシェアは徐々に低下していった。当時、「PC/AT互換機」よりも「1-2-3互換機」(1-2-3 compatible)という呼称の方が一般的であったほどである。

マイクロソフトは、米国市場におけるMultiplanの敗北(欧州市場ではMultiplanも一定のシェアを確保していた)の反省に立ち、新規デザインの表計算ソフト Microsoft Excel (以下Excel)を開発し、来るべきOS/2時代での捲土重来を期した。次期プラットフォームはOS/2ではなくMicrosoft Windows(以下Windows)となったが、ExcelはWindowsの普及と歩調を合わせて販売本数を順調に増やしていった。しかし、1-2-3はWindowsへの対応が遅れ、プラットフォームを移してからもExcelとの性能差は開き続けた。特に初期のWindows版(及びMacintosh版)は、一見するとGUIアプリケーションにも関わらず、マウスによる操作はほぼ行えず、キーボードによる操作を要求するなどの致命的な問題を抱えていた。そんな中、ロータスがグループウェア Lotus Notes を主力に据えたこともあり、Windows版1-2-3の開発は停滞、Macintosh版1-2-3の開発は中止と、Excelとの差は埋めようがないほどにまで広がっていった。

ロータスはMicrosoft Officeに対抗すべく、オフィススイート Lotus SmartSuite (日本国内向けは「スーパーオフィス」)をリリースしたり、価格を引き下げたりして対抗したものの、オープンソースや他社の安価なソフトとの狭間で埋没し存在感を出せず、2013年6月11日に販売が終了した。ただし、年間継続サポート用のパーツに関しては、2013年9月11日まで販売が継続される。また、2014年9月30日には全製品のサポートが終了することが発表されている。


特徴[編集]

MS-DOS時代においては、他のソフトに比べて先進的な機能を有していた。本項ではMS-DOS版のみについて述べる。

処理速度[編集]

処理速度を向上させる為、アセンブリ言語で作成されていた。アセンブリ言語は、個々のハードウェアへの依存度が高く扱いも難しいが、コードは小さく、処理は速くすることができる。互換機メーカーや周辺機器メーカーの方が1-2-3に合わせて設計を行い、むしろIBM純正機との互換性確保の基準として扱われたこともあり、機種依存はほとんど問題とはならなかった。

また、Multiplanは旧機種との互換性にこだわっていた分、性能が犠牲になっていた。1-2-3はPC/AT以降(日本市場では加えてPC9801)に特化することにより、描画スピードやメモリの利用効率の面で他の表計算ソフトを圧倒していた。特筆すべきは再計算の速さで、一説によると、環境にもよるがMultiplanの10倍程度であったともいわれている。

機能[編集]

本体のみでデータベース作成やグラフ描画が可能だっただけではなく、アドインにより様々な機能を追加することができた。文章の表示にも優れていたためワープロとしても使用可能で、表を含む様な文書の場合、ワープロより文書作成が楽な場合さえあった。また、強力なマクロ機能を有していた。ユーザーは、アドインとマクロにより独自の環境を構築することができ「1-2-3さえあれば他のアプリケーションは必要ない」とまで言われていた。後に1-2-3を模倣し、機能では上回っていたアプリケーションも現れたが、既に高い信頼を得ていた1-2-3の牙城を崩すには至らなかった。

インターフェース[編集]

基本的なインターフェースはVisiCalcを模倣していた為、VisiCalcのユーザーは、ルックアンドフィールの違いに戸惑うことなく利用することができた。ワンキーメニュー呼び出し、ポップアップメニュー、F1キーによるヘルプ呼び出しなど、他のアプリケーションの標準的な操作方法は1-2-3により固まったといってよい。また、グラフィック機能を積極的に利用し、グラフを美しく描画することができた。IBM標準のグラフィックカードは、高解像度だがテキストしか扱えないMDAと、カラーグラフィックを扱えるが解像度の低いCGAだったが、1-2-3を快適に利用する為、解像度の高いHerculesが広く利用されていた。

参考文献[編集]

  • ダニエル・イクビア/スーザン・L・ネッパー著、椋田直子訳(1992)『マイクロソフト-ソフトウェア帝国誕生の軌跡-』ISBN 978-4756101181 , アスキー
  • 相田洋、大墻敦著(1996)『新・電子立国 第3巻 世界を変えた実用ソフト』ISBN 978-4140802731, 日本放送出版協会
  • 脇英世(1994)『ビル・ゲイツの野望 マイクロソフトのマルチメディア戦略』ISBN 978-4062072618 , 講談社

脚注[編集]

関連項目[編集]