Lo-Fi

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Lo-FiLow-Fidelity)とは、音楽レコーディングの際の録音状態、録音技巧の一つで、極端に透過なものではない録音環境を志向する価値観。転じて、そういった要素を持った音楽自体を表す言葉。対義語はHi-Fi

Low-Fidelityの略を起源とするが、日本などで生まれた「略語」ではなく、英語圏でも同様にLo-Fiとして扱われる一つの独立した「用語」である。

再生環境について[編集]

Hi-Fiの場合は再生環境についても言及されることが多いが、基本的に「再生環境は透過であればあるほどいい」という当然の事実があるため、賛否が分かれ新たな価値観を表出させ得る録音環境の場合と違い、Lo-Fiの場合は再生環境について特段の言及はなされない事が多い。

概観[編集]

価値観の勃興[編集]

Lo-Fiという言葉がイギリスアメリカなどで一般的・重宝的となったのは1980年代である。それ以前も単に「音質、録音環境の悪い音楽」としてLo-Fiは使われていたが、基本的にはその音楽や録音に対する「録音環境が悪い」といった意味合いを持つ蔑称的なスラングとして扱われており、一般的に好意的に扱われ得る意味を持ち合わせてはいなかった。そもそも当時の録音環境はメジャーとインディーでそれほどの差が見られず、アンダーグラウンドの音楽シーンで、ロックジャズの実験的な音楽家を中心に一つの表現方法として注目されていた程度である。

しかし、1980年代に入って録音技術が格段の進歩を遂げるにつれ、メジャーシーンのダンスミュージックニューウェーブロック、ヘヴィメタルなどには、エコーエフェクトのかかり、またオーバーダブが顕著な、極端なHi-Fiサウンドが主流となる。それまでのポピュラー音楽は「現場の音をいかに正確に録音・パッケージングすることができるか」ということに焦点が当てられてきたものの、技術はそれを飛び越え、むしろ「実際にはアンプやスピーカーからそのような音は鳴らないが、いかにそれを越えたキャッチーな録音ができるか」ということに重点が置かれていく。

アメリカを中心としたアンダーグラウンドシーンやインディー・ロックの一部のミュージシャン達は、これらの現実感のないサウンドによる豪華主義・商業主義への反発を志向し、その流れの中でLo-Fiサウンドは見直されていくことになる。

経緯[編集]

これらの流れは、アメリカのロックシーンにおける、ヘヴィメタルなどに反発する流れであるオルタナティヴ・ロックと共振し、一躍それらの中で重要視され得る価値観として隆盛する。

特にノイズロックグランジなどにおいてはLo-Fiは音楽性の肝となる生命線になり、これらのジャンルを中心としてペイヴメントソニック・ユースナイン・インチ・ネイルズベックなど、一部のグループはLo-Fi志向を重視しつつもメジャーで一定のセールスを上げるいくつかの作品を発表した。またダイナソーJrと決別したルー・バーロウを中心に結成されたセバドービート・ハプニングなどもローファイの隆盛に大きく貢献した。

その後[編集]

母体となるオルタナティヴ・ロックが次第に形骸化する呼称になっていったのと同様、1990年代後期になると、Lo-Fiも以前ほどのポピュラー音楽における求心力はなくなる。しかしながらそもそもの起源であるアンダーグラウンド、インディーミュージックシーンにおいては、依然として一つの重視され得る価値観としての力を保ち続けており、メジャーシーンにおいても一つの指針として評論などにその影響力を与え続けている。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]