重量ポンド

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じゅうりょうポンド
重量ポンド
pound-force
記号 lbf, lbf
FPS重力単位系
SI 4.448 221 615 2605 N、日本の計量法では(正確に)4.448 22 N
定義 質量1 lbの物体に対して標準重力加速度と同じ加速度を生じさせる力
由来 質量1ポンドの物体の地球上における重量
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重量ポンド(じゅうりょうポンド、: pound-force、記号: lbf, lbf)は、ヤード・ポンド法FPS単位系(英国工学単位系、英国重力単位系)で用いられるまたは重量の単位である[1]米国以外では、使われることがまれで、米国内でも公式には使われない。

定義[編集]

1重量ポンドは、質量1ポンド物体に対して標準重力加速度(9.806 65 m/s2、196 133/6096 ft/s2)と同じ加速度を生じさせる力と定義される。簡単に言えば、質量1ポンドの物体の地球上における重量である。

重量ポンドは18世紀ごろから使われ始めたが、重力加速度の値は場所によって異なるため、重量ポンドの値は厳密なものではなかった。1901年国際度量衡総会 (CGPM) において重量グラム、重量キログラムとともに標準重力加速度が定められた。その値をヤード・ポンド法に換算することで、重量ポンドの値を厳密に定めることができるようになった。

標準重力加速度の値を使うと、1重量ポンドは正確に4.4482216152605ニュートンとなる。英国では、この14桁の数値が公式の換算値である[2]。日本の計量法体系では、1重量ポンドは正確に4.44822ニュートンと定義されている[3]。これは、英国の公式換算値を小数5桁に丸めたものである。

FPS単位系[編集]

文脈によっては、「ポンド」という言葉を質量の単位ではなく力の単位として用いる。この場合、質量の単位には、lbf·s2/ftとして定義されるスラグ(slug)を用いる。ポンドを質量の単位として用いる場合でも、曖昧さを回避するために「質量ポンド」(pounds-mass、lbm)の語を用いることがある。

力学の単位の3つのアプローチ[4][5]
基本単位 力・長さ・時間 重さ・長さ・時間 質量・長さ・時間
(F) F = ma = wa/g F = ma/gc = wa/g F = ma = wa/g
重さ (w) w = mg w = mg/gcm w = mg
単位系 BG GM EE M AE CGS MTS SI(MKS)
加速度 (a) ft/s2 m/s2 ft/s2 m/s2 ft/s2 Gal m/s2 m/s2
質量 (m) slug slug lbm kg lb g t kg
力 (F) lb kgf lbF kgf pdl dyn sn N
圧力 (p) lb/in2 at PSI atm pdl/ft2 Ba pz Pa

英国工学単位系(EE)では、質量の単位に質量ポンド、力(重量)の単位に重量ポンドを用いる。地球上においては、1質量ポンドに働く重力は1重量ポンドにほぼ等しいので都合が良い。ただし、他の単位系のように、力の単位が質量の単位に加速度の単位[6]を掛けた物と等しくない。つまり、ニュートンの運動の第2法則 F = m·a を書き表すのに、1以外の比例定数が必要になる。その値は、標準重力加速度 gc = 32.174049 lbm·ft/lbf·s2 である。

英国重力単位系(BG)とFPS絶対単位系(AE)は、1以外の比例定数を必要としない一貫性のある単位系である。BGはポンドを力の単位とし、質量の単位にスラグを用いる。AEはポンドを質量の単位とし、力の単位にパウンダルを用いる。

出典[編集]

  • Obert, Edward F., “THERMODYNAMICS”, D.J. Leggett Book Company Inc., New York 1948; Chapter I, Survey of Dimensions and Units, pages 1-24.
  1. ^ The Engineering ToolBox
  2. ^ RELEVANT IMPERIAL UNITS, CORRESPONDING METRIC UNITS AND METRIC EQUIVALENTS The Units of Measurement Regulations 1995, pound-forceの欄
  3. ^ 計量単位令 別表第7 項番9、「力」の項、重量ポンド、「ニュートンの四・四四八二二倍」
  4. ^ Michael R. Lindeburg (2011). Civil Engineering Reference Manual for the Pe Exam. Professional Publications. ISBN 1591263417 
  5. ^ Wurbs, Ralph A, Fort Hood Review Sessions for Professional Engineering Exam, オリジナルの2011年8月15日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20110815173559/engineeringregistration.tamu.edu/tapedreviews/Fluids-PE/PDF/Fluids-PE.pdf 2011年10月26日閲覧。 
  6. ^ 長さの単位を時間の単位の二乗で除した物

関連項目[編集]

力の単位
変換後
ニュートンSI単位)
N
ダイン
dyn
重量キログラム
kgf
重量ポンド
lbf
パウンダル
pdl
変換前 1 N =1 kg·m/s2 =105 dyn ≈0.10197 kgf ≈0.22481 lbf ≈7.2330 pdl
1 dyn =10−5 N =1 g·cm/s2 ≈1.0197×10−6 kgf ≈2.2481×10−6 lbf ≈7.2330×10−5 pdl
1 kgf =9.80665 N =980665 dyn =gn·(1 kg) ≈2.2046 lbf ≈70.932 pdl
1 lbf =4.4482216152605 N ≈444822 dyn ≈0.45359 kgf =gn·(1 lb) ≈32.174 pdl
1 pdl =0.138254954376 N ≈13825 dyn ≈0.014098 kgf ≈0.031081 lbf =1 lb·ft/s2
重量ポンドの値は、公式には重量キログラムによって定義されている標準重力加速度 gn を用いて計算している。