Javadoc

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Javadocとは、サン・マイクロシステムズが開発したコンピュータソフトで、JavaのソースコードからHTML形式のAPI仕様書を生成するものである。

JavadocはJavaクラスの仕様書の標準の書式であり、多くのIDEは自動的にJavadoc HTMLを生成する機能を備えている。

なお、HTML形式は標準の書式であり、カスタマイズにより変更可能である。

Javadocのタグ[編集]

開発者はソースコードにコメントを記述する時に、ある程度の決まった形式の文章とJavadocタグを使用する。ソースのコメントの内、/**で始まるものが、生成されたHTMLに含まれることになる。Javadocタグは、頭に"@" 記号が付く。いくつかのタグはテーブル用のものである。

タグ 記述内容
@author 開発者名を記述する。
@deprecated 廃止されたクラスメソッドに付けられる。コンパイル時にこれがつけられたメソッドを使用すると警告を発する。IDEによっては、このマークがつけられたメソッドを使用したコーディングをした場合、警告を発する。Java SE 5以降からは、@Deprecatedアノテーションを用いて同様のことができるようになっている。
@exception メソッドが投げる例外クラスとその説明を記述する。— @throwsも参照。
@param メソッドの引数や総称型のパラメータを記述する。引数の数だけ記述する必要がある。引数名と引数の概要を記述する。
@return メソッドの戻り値を記述する。戻り値がvoidの時は記述しなくて良い。
@returns @returnと同じ。
@see 関連する他のメソッドまたはクラスを記述する。このタグの内容は自力で記述するのは大変なのでIDEなどで自動生成すると良い。
@since クラスまたはメソッドの導入されたバージョンを記述する。IDEなどの自動生成ツールでここに日付やバージョン番号などの情報をわりあてることができる。
@throws メソッドが投げる例外を記述する。@exceptionと同義。Javadoc 1.2で追加された。
@version クラスまたはメソッドのバージョンを記述する。バージョン管理システムを用いてこのバージョン番号割り当てを自動化することができる。
{@link} 標準テキストのラベルとインラインリンクを挿入する。{パッケージ名.クラス名#メソッド名 label}という方式で記述。labelの文法は@seeと同じ。
{@docRoot} 生成されたドキュメントのルートディレクトリを基点とする相対パスを表す。
@serial デフォルトで直列化可能フィールドのdocコメントで使用する。このタグの後に説明を入れる。これは直列化形式ページの生成に使われる。
@serialField SerializableクラスのObjectStreamField コンポーネントをドキュメント化する。各 ObjectStreamField コンポーネントに対して @serialField タグを 1 つ使う必要がある。このタグの後に、順番にフィールド名、フィールドの型、フィールドの説明を記述する。
@serialData データの型と順序を直列化形式でドキュメント化。このデータには、特に writeObject メソッドによって書き込まれる任意指定のデータ、および Externalizable#writeExternal(ObjectOutput) メソッドによって書き込まれるすべてのデータが含まれる。@serialData タグは、writeObject(Object)readObject()writeExternal(ObjectOutput)、および readExternal(ObjectInput)の各メソッドの doc コメントで使用できる。 このタグの後に説明を記述する。

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Javadocの使用例。(サンプルには英語が含まれているが、日本語の使用も可能)。

 /**
  * クラスの説明.
  * <pre>
  * ピリオド(.)または句点(。)で終わるところまでが、
  * クラス一覧の概要に説明されるところであり、
  * ピリオド以降は説明の概要には含まれず、クラスの説明に含まれる。
  * このように、JavadocにはHTMLタグを使用することができる。
  * </pre>
  * @param <T1> 総称型パラメータの説明
  * @param <T2> 総称型パラメータの説明
  * @author Wikipedian
  * @author Second author
  * @version 1.6
  * @since 1.0
  */
 public class JavadocSample<T1, T2 extends List> {
 
   /**
    * @serial 直列化可能データの説明
    */
   private int x;
 
   /**
    * Validates a chess move.
    * @author John Doe
    * @param theFromFile File of piece being moved
    * @param theFromRank Rank of piece being moved
    * @param theToFile   File of destination square
    * @param theToRank   Rank of destination square
    * @return true if a valid chess move or false if invalid
    */
   boolean isValidMove(int theFromFile, int theFromRank, int theToFile, int theToRank)
   {
      //...
   }
 
   /**
    * 非推奨メソッド。
    * @deprecated このメソッドは非推奨です。
    * @param t 説明
    * @throws SomeException 例外の説明
    */
   String deprecatedMethod() {
     //...
   }
 
   /**
    * メソッドの説明。
    * @param t 説明
    * @throws SomeException 例外の説明
    * @throws Exception 例外の説明
    * @return String型の値
    * @since 1.5
    * @see "関連"
    * @see <a href="http://www.example.com/">Example</a>
    * @see String#equals(Object) equals
    */
   String add(T1 t) throws SomeException, Exception {
     
   }
 }

ドキュメント生成[編集]

ドキュメント生成には、これらのJavadocコメントのほかに、パッケージやAPI全体の概要を説明するコメントファイルや画像ファイルを参照することができる。

概要コメントファイル[編集]

ドキュメント全体の概要を示す概要コメントファイル (overview.html) を記述する。これらの文法は以下のような簡単なHTMLとなる。

<html>
  <body>
    ここに概要コメントを記述する。
  </body>
</html>

概要コメントファイル (overview.html) はJavadocコマンド実行時に-overviewオプションでディレクトリパスを指定するか、または、パッケージを置いているソースツリーのルートにoverview.htmlファイルを置くことでドキュメントに含められる。

パッケージコメントファイル[編集]

package-info.javaというファイルにコメントを記述する。JDK 1.4 までは package.html に記載した。これは以下のように、クラスやメソッドなどに記述するJavadocコメントと同じ要領で済む。ただし、packageキーワードを用いてパッケージ宣言しなければならない。

/**
 * ここにパッケージの概要を記述する。
 * @since 1.5
 */
package com.example.wikipedia;

この記法は、Java SE 5から登場したアノテーションには、パッケージにも指定できるものがあるために用意された。これにより、package-info.javaにはアノテーションも保存でき、たとえばパッケージに対して@Deprecatedアノテーションを指定できるようになった。package.htmlではアノテーションが使用できないため、package-info.javaの使用はpackage.htmlよりも推奨されている。

未処理ファイル[編集]

Javadocで生成するドキュメンテーションには画像やJavaソースコードなどを含めることもできる。画像を置くには 画像を表示したいクラスがあるディレクトリに doc-filesという名前のディレクトリを作成し、そこに画像をコピーする。そしてこの画像のリンクを実際に張るには以下のようにJavadocコメントに明示的に記述する必要がある。

 /**
  * 画像ファイル 
  * <img src="doc-files/image.gif" />
  */

Javadoc生成を容易にするツール[編集]

Javadocの生成は、そのままでは複雑なコマンドラインを必要とする。とくに設定を細かくすると、バッチファイルシェルスクリプトとして記述するだけでも膨大なものになる。そこでNetBeansEclipseなどのIDEApache AntのようなビルドツールやApache Mavenのようなプロジェクト管理ツールを使うことが薦められている。

Doclet[編集]

JavadocにはJavadocのタグを自作できる機能Docletがある。これを用いて、Apache Tomcatの設定ファイルweb.xmlの内容をJava ServletソースコードのJavadocコメント上に記述してXDocletを用いてweb.xmlを自動生成するといったことが可能になる。このほかにも、Javadocコメントから他のJavaソースコードやデータベーススキーマやUMLのクラス図を自動生成するといったことが可能になり、開発効率が飛躍的に向上する。

これはEnterprise JavaBeansApache StrutsUMLHibernateJBossなどにも使われている。ただし現在では、これらの多くがJavadocによる自動生成の代わりに、Java SE 5から登場したアノテーションで代替することが可能になった。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]