GDPデフレーター

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1995年から2008年の日本のGDPデフレーター前年同四半期増加率(%)。

経済学において、GDPデフレーター(GDP deflator)とは、ある国(または地域)の名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数である[1]。名目GDPと実質GDPはそれぞれ物価変動の影響を排除していないGDPと排除したGDPであるため、その比にあたるGDPデフレーターは、物価変動の程度を表す物価指数であると解釈される。従ってGDPデフレーターの増加率がプラスであればインフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせる。

算出[編集]

国民経済計算における計測[編集]

ほとんどの国民経済計算の体系において、GDPデフレーターは名目(nominal)GDPと実質(real)GDPの比を計測する。次の計算式が用いられる。

\operatorname{GDP\ deflator} = \frac{\operatorname{Nominal\ GDP}}{\operatorname{Real\ GDP}}\times 100

名目GDPをGDPデフレーターで割って100倍する(デフレートする)と実質GDPの価額になる。[2]

日本の内閣府国民経済計算では、GDPデフレーターを直接作成するのではなく、構成項目ごとにデフレーターを作成して実質値を求め、(名目値)/(各構成項目の実質値の合計)として逆算する。このようにして算出されたデフレーターをインプリシット・デフレーター(Implicit Deflator)と呼ぶ。[3]例として、ある支出項目の個別品目iの基準年におけるデフレーターをPiとして、品目iの名目値をXiとする。 当該支出項目の名目値(X)は、ΣiXiとなり、 実質値(XR)は、ΣiXi/Piとなる。 当該支出項目のデフレーター(P)はX/XRとして求められることになる。[3]

GDPの下位範疇として、ある品目の今年の価格と基準年の価格の比としてインプリシット・デフレーターを考えると有用である。基準年の価格は100に正規化される。 たとえば、ある特定の水準の処理能力、メモリー容量、ハードディスク容量等の性能を持ったコンピューターハードウェアを「単位」として定義する。デフレーターが200になるということは、今年のコンピューターの価格が基準年の2倍になることを意味する(インフレーション)。デフレーターが50なら、今年の価格は基準年の半値である(デフレーション)。公式の統計では物価の下落を示していても、実際には変化がないという状況があり得る。例として新しいコンピューターの価格が同じままで計算能力が年々倍になるとする。デフレーターは50になるが、消費者は同じ金額を支払うことになる。このような考え方で品質変化が盛り込まれた指数をヘドニック指数と呼ぶ。

種々のサービスのそれぞれの購入数量をセットにまとめたものをバスケット英語版と呼ぶが、いくつかの物価指数と違ってGDPデフレーターのバスケットは固定されておらず、人々の消費や投資のパターンの変化と共に変わる。GDPの各年のバスケットは国内で生産された全ての財のセットで、各財の総消費量の市場価値で重み付けされる。人々が価格の変動に対応して、最新の支出パターンがGDPデフレーターに表れるという理論がある。たとえば、牛肉の価格と比べて鶏肉の価格が上がると、人々は牛肉の代わりに鶏肉によりお金を遣うようになるとされている。

先進国の政府は、財政政策金融政策の立案、給付金額、社会保障制度などに物価指数を活用しているので、わずかなインフレーションの尺度の違いであっても歳入や歳出が大きく変わることがある。

統計[編集]

GDPとGDPデフレーターの発表元:

日本: 内閣府
アメリカ: アメリカ合衆国商務省経済分析局 (BEA).
イギリス: en:Office for National Statistics.[4]
カナダ: en:Statistics Canada.[5]

景気との関係[編集]

GDPデフレーターは、GDPの価格であり、マクロ経済全体の物価の動向を知る上で重要な指標である[6]。GDPデフレーターが低下しているとき(デフレ)は不況となる一方で、インフレについてはこの逆の因果によって好況となる[7]

日本[編集]

日本のGDPデフレーター増加率の経年変化[編集]

消費者物価指数との乖離[編集]

GDPデフレーターと統計局が試算している消費者物価指数の動きを比較すると、大きく異なっている[8]。この乖離については、対象の違いによる要因、算式の違いなどの要因が考えられている[8]。内閣府は、2004年7-9月期分から連鎖方式(基準年を毎年更新)に変更している[9]

消費者物価指数とGDPデフレーターの大きな違いは、消費者物価指数は原油などの輸入原材料価格の影響を大きく受けるのに対し、GDPデフレーターはそうならないという点である[7]。また、GDP統計が3カ月に一度しか集計されていないため、毎月発表される消費者物価指数を加工したもので代用することがあり理解しづらくなっている[7]

消費者物価指数とGDPデフレーターを比較すると、2000年以降、概ね消費者物価指数はデフレーターの上方に位置している[10]。また、2007年7-9月期以降消費者物価指数が上昇(下落)する一方で、デフレーターは下落(上昇)するなど、異なる動きを示している[10]。両統計の乖離は、リーマンショック前後の一時期を除けば、概ね消費者物価指数の変化率は±1.0%の範囲で推移している[10]

脚注[編集]

  1. ^ デフレーター(Deflator))”. 内閣府 経済社会総合研究所. 2011年5月23日閲覧。
  2. ^ Concepts and Methods of the U.S. National Income and Product Accounts”. Bureau of Economic Analysis (2008年7月). 2011年5月10日閲覧。
  3. ^ a b インプリシット・デフレーター(Implicit Deflator)”. 内閣府 経済社会総合研究所. 2011年5月23日閲覧。
  4. ^ National Statistics Online
  5. ^ Statistics Canada: Canada's national statistical agency / Statistique Canada : Organisme statistique national du Canada
  6. ^ 岩田規久男 『スッキリ!日本経済入門-現代社会を読み解く15の法則』 日本経済新聞社、2003年、213頁。
  7. ^ a b c インフレになるとデフレになるの怪ワイアードビジョン アーカイブ 2008年2月2日
  8. ^ a b 消費者物価指数に関するQ&A(回答)統計局ホームページ
  9. ^ 神樹兵輔 『面白いほどよくわかる 最新経済のしくみ-マクロ経済からミクロ経済まで素朴な疑問を一発解消(学校で教えない教科書)』 日本文芸社、2008年、70頁。
  10. ^ a b c CPIとGDPデフレーターにおける乖離について-家計消費デフレーターとCPI-ニッセイ基礎研究所 2014年7月3日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

データ[編集]