FFミッドシップ
FFミッドシップ(エフエフミッドシップ)は、本田技研工業が縦置きエンジンのFF車に採用した、エンジンと前輪駆動軸の配置方式である。
設計・開発段階ではより軽量な直列4気筒エンジンでも検討されていたが、最終的には直列5気筒またはV型6気筒エンジンと上級サルーンカーとの組み合わせになった。
解説
1989年9月13日発表の初代アコード・インスパイア及び3代目ビガーに採用された。同時に発表された4代目アコード/初代アスコットや、上級車の初代レジェンドが既存の横置きエンジンである中、あえてそれらとの部品共用が出来ないこのレイアウトを採った理由は、横置きエンジン特有のアイドル振動や変速ショックが他社FR上級車種に対して不利との判断から縦置きエンジンを採用する一方、直列5気筒エンジンのFFとして普通にフロントオーバーハングにエンジンを搭載した場合に生じる不都合[1]を避ける必要があったことによる。北米市場中心のアコードに比べ、当初日本国内向けとして設計されたインスパイア/ビガーは、走りの質と静粛性の一層の向上を目指しており、ハイソカーに対するホンダのチャレンジでもあった。
これにより、FF車ながらFR車のようなフロントオーバーハングが小さいスタイルや、横置きFF車のようにエンジンやトランスミッションに邪魔されず、大きなフロントタイヤの切れ角(ステアリング舵角[2])が取れ、さらに前部の重量軽減による回頭性の向上が実現できた。その反面、FR車と同様にトランスミッションが室内側に張り出すことで室内容積が削られる点や、滑りやすい路面や登り勾配ではトラクション不足が露呈する短所もある。
その後、直5エンジンの廃止や、V6エンジンがC型からJ型へ変更されたことに伴い、FFミッドシップは廃止された。
ホンダが採用するはるか以前からシトロエン・トラクシオン・アバンやルノー・4などのように、縦置きエンジンの前方にトランスミッションやデフを配置するFFミッドシップの例は存在する。ホンダの場合、トランスミッションをエンジン後方、デフをエンジン横に置き、駆動軸(ドライブシャフト)をオイルパンに貫通させているため、直列5気筒の場合エンジンの重心位置は前車軸のわずかに後方であり、上記のフランス車のように大きく後退はしていない。
トヨタ自動車のiQはデフ位置を反転させエンジンを車軸の後ろ側に配置したエンジン横置きFFミッドシップレイアウトを採用している。これはフロントタイヤをなるべく前に出して、ホイールハウスによるペダルレイアウトへの影響をなくすためである。
採用車種
- アコード・インスパイア及びインスパイア(初代)/ビガー(3代目)
- インスパイア(2代目)/セイバー(初代)/アキュラ・TL(初代)
- レジェンド(2代目・3代目)/アキュラ・RL(初代)
- アスコット(2代目)/ラファーガ(初代)