EMドライブ
EMドライブ(EmDrive - Electromagnetic Drive)は、イギリスの航空宇宙技術者のRoger Shawyerが考案した宇宙機の推進方法[1]。ロケットエンジンなどの既存の推進機関とは異なり、推進剤なしで推力を生み出すとされている[1]。EMドライブは、Satellite Propulsion Research Ltd (SPR) 社により2001年に発表された[2]。
概要
EMドライブは、マイクロ波を密閉容器内で反射させるという機構からなるシステムである[1]。その原理は2015年現在解明されていないが、既存のロケットエンジンやイオンエンジンが推進剤を出力する反動で加速するのとは異なり、またソーラーセイルやテザー推進のように外部とのエネルギーのやり取りをせずに、推進力が得られるとしている[1]。これは、太陽電池などで電力を確保できれば、半永久的に加速が続けられることを意味しており、実現するのであれば画期的な推進機関になると考えられている[1]。
一方で、外部とのやり取りをせずに推進力を得られるという主張に対しては、運動量保存の法則に反しているとの激しい批判も寄せられている[3]。永久機関などの疑似科学の一種だとする科学者も多く、英国政府の援助も打ち切りとなっている[3]。
EMドライブの追試は、複数の研究機関により試みられている。中国西北工業大学の研究チームは2010年、2.5kWの電力を使用したシステムで720mNの推力を生み出すことに成功したと発表した[4] [2]。2014年、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のEagleworksチームは、同様のエンジンで実験を行った結果、中国チームの1000分の1以下ではあるが、30~50μNの推力が発生したことを発表した[5][1]。2015年には、真空チェンバー内でも推力が発生したことが報道されている[6][2]。
脚注
- ^ a b c d e f “「ありえない」半永久エンジン、NASAの研究で動く”. ギズモード (2014年8月4日). 2015年6月14日閲覧。
- ^ a b c “NASA: 推進剤を必要としない宇宙船用新推進機関の実験に成功”. businessnewsline (2015年5月). 2015年6月14日閲覧。
- ^ a b “中国の研究者チーム、「不可能」とされてきた電磁推進の成功を主張”. WIRED (2008年9月29日). 2015年6月14日閲覧。
- ^ Yang Juan; Yang Le; Ma Nan (12 2010). “Applying Method of Reference 2 to Effectively Calculating Performance of Microwave Radiation Thruster” (PDF). Journal of Northwestern Polytechnical University (Satellite Propulsion Research Ltd.) 28 (6) .
- ^ “Anomalous Thrust Production from an RF Test Device Measured on a Low-Thrust Torsion Pendulum”. アメリカ航空宇宙局 (2014年7月28日). 2015年11月9日閲覧。
- ^ “Evaluating NASA’s Futuristic EM Drive”. NASASpaceFlight.com (2015年4月29日). 2015年11月9日閲覧。