BMW・M3

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M3は、ドイツの自動車メーカー・BMWが製造・販売しているセダン型のスポーツカーである。

3シリーズをベースに、BMWのレース部門およびモータースポーツ関連の研究開発を担当する子会社であるBMW Mチューニングしたモデルである。

初代 E30(1985年 - 1990年)[編集]

E30型M3 ドイツツーリングカー選手権(DTM) 1989年シリーズチャンピオンマシン
E30型M3
E30型M3 カブリオレ

1985年に発表され、1986年3月から1991年6月にかけて17,086台の2ドアセダンと786台の2ドアカブリオレが生産された。左ハンドル仕様のみで、右ハンドル仕様は存在しない。

E30型3シリーズ(2ドアセダン)をベースとしながらも、ボディ剛性や空力性能を高めるため大幅な変更が加えられており、12箇所のボディパネルが専用品で、より大きく太いホイールを装着するためにブリスターフェンダーを採用し、結果的に標準の3シリーズと共通のボディパネルはボンネット、ルーフパネル、サンルーフ、ドア内部パネルのみとなった。ホイールベアリングとフロントブレーキキャリパーは上級の5シリーズ(E28型)と共用しており、標準型の3倍ものキャスター角がつけられている。このためホイールは標準型の4穴・PCD100から、5穴・PCD120に変更されている。その他、空力改善のためCピラーやリアウィンドウの角度が見直され、トランクをハイデッキ化し、大型のリアウィングなどを標準装備としている[1]

エンジンはM1M635CSiなどに搭載されたM88型 3.5LDOHC直列6気筒エンジンから2気筒を切り取った2.3L直列4気筒エンジンで、ZF製ノーマルパターンもしくはゲトラグ製レーシングパターンの5速MTが組み合わせられる。

E30型M3で特筆すべき点は、レース界の血統が息づいていることである。これは当時、ラリーやツーリングカーレースなどで台頭してきたプロドライブシュニッツァーへのBMWからの回答ともいえる。レースに勝つために設計されたM3は彼らの期待に応え、欧州各地のツーリングカー選手権で数多くのタイトルを獲得した。BMWがM3を販売した理由は、第一にグループAレースのホモロゲーション取得のためであったが、もうひとつの理由として、同じくグループAレースへのホモロゲーション取得のため1983年に登場したスポーツセダン、メルセデス・ベンツ・190E 2.3-16への対抗意識があった。M3と190Eは1980年代後期から1990年代初頭にかけて、ドイツツーリングカー選手権(DTM)において両者一歩も譲らない激闘を繰り広げた。

1987年からBMW JAPANを通じて日本にも正規輸入された。日本での新車販売価格は658万円。

主なモデル[編集]

  • M3(1985年 - 1990年)
2.3L 直列4気筒DOHC4バルブエンジン(195PS/23.4kgf·m)、5速MT。全長4,360mm、全幅1,675mm、全高1,365mm、ホイールベース2,562mm、1,200kg。欧州では1989年まで触媒なし仕様(200PS)も併売され、触媒なし仕様の廃止と同時に改良を施しチェコット仕様と同じ215PSエンジンへ変更した。なお、日本に正規輸入されたE30型M3はこのモデルが唯一である。
  • M3カブリオレ(1988年 - 1991年)
機構的にはM3と同様。カブリオレという構造上、幌の収納のためトランクリッドのみE30型3シリーズ・カブリオレと同様のものを採用しており、その関係でリアスポイラーも非装着となっている。M3の豪華版と位置づけられていたため、オールレザー内装や油圧電動ソフトトップを標準装備している。生産台数は786台。
  • M3ヨーロッパマイスター (1988年)
ヨーロッパ・ツーリングカー選手権制覇を記念して製作された限定モデル。レザー内装を装備し、ロベルト・ラバーリアのサインが入ったコーションプレートが与えられた。生産台数は148台。
  • M3エボリューション(1987年)
E30型M3 Sport Evolution
1987年に発売されたホモロゲーションモデル。大型フロントスポイラーやリアウイング下にリップスポイラーが付加されている。エンジンは改良されて210PSを発生。生産台数は505台。
  • M3エボリューションII(1988年)
1988年に発売されたホモロゲーションモデル。220PSまでチューンアップされ、エンジンは白をベースに3色のMストライプを配した専用結晶塗装が施される。生産台数は500台。
  • M3チェコット/M3ラバーリア(1989年)
BMWのツーリングカーレーサー、ジョニー・チェコットおよびロベルト・ラバーリアの名を冠した限定モデル。215PSのエンジンを先行採用し、専用ボディカラー、サイン入りコーションプレートなどが与えられた。外装はエボリューションIIに準ずる。チェコットの生産台数は505台。ラバーリアは基本的にチェコットと同一であるが、25台がイギリスで販売されたのみである。
  • M3スポーツエボリューション(1989年 - 1990年)
DTMのレギュレーション変更(排気量2.3L→2.5L)にあわせて生産されたホモロゲーションモデル。エンジンブロックに手が加えられ、2.3Lから2.5Lへと排気量アップされた。外装はフロントおよびリアのスポイラーが専用品となる。生産台数は601台で、内訳は2ドアセダン600台、カブリオレ1台。[2]

モータースポーツ[編集]

2代目 E36(1993年 - 1998年)[編集]

E36型M3
E36型M3 Limousine(4ドアセダン)

初代の生産が終了した1990年以降、M3はラインナップから消えていたが、新たにE36をベースとするM3が1992年に発表された。先代とは異なり、S50B30型 3.0L 直列6気筒エンジンを搭載する。

当初は2ドアクーペのみの設定であったが、1994年より4ドアセダン(Limousine)とカブリオレが追加された。4ドアセダンは、1995年から1998年までベースモデルのフルモデルチェンジに伴い生産休止となっていたM5サルーンの代替モデルとしての役割も与えられていた。

先代では派手なエアロパーツを身に纏い、一目で「M3」とわかるルックスを持っていたのと対照的に、E36型M3の外装は極めておとなしいものであり、一見するとノーマルの3シリーズクーペと見分けがつかないほどである。これを逆手に取り、BMWジャパンで販売された最終型の3シリーズクーペは全車にM3と共通のエアロパーツを装着し販売していた。

1995年、クーペとセダンがマイナーチェンジ。新たに3.2LのS50B32型直列6気筒エンジンを搭載し、リッターあたり100PSを超える321PSを達成。トランスミッションも6速となる。同時に前後のウインカーレンズがホワイト化された。なお、カブリオレは1年遅れて1996年に3.2L化された。

1997年、トランスミッションに6速SMG(セミAT)を追加。BMWフォーミュラ1で培った技術をフィードバックしたトランスミッションであるが、市販車への搭載はM3が初めてであり、故障が頻発した。

1998年、生産終了。

主なモデル[編集]

日本導入モデル
グレード 製造年 車両形式 排気量 エンジン 最高出力/最大トルク 変速機 駆動方式 備考
M3 1993年-1995年 E-M3B 2,990cc 直列6気筒DOHC 286PS/32.7kgf·m 5速MT FR 日本発表当初の価格は730万円であった。
M3 1995年-1998年 E-M3C 3,201cc 321PS/35.7kgf·m 6速MTまたは6速セミAT 日本での価格は733万円。
1997年に追加されたSMGは通常モデルより40万円高の773万円であった。

以下の車両は日本に正規輸入されていない。

  • M3 GT(1994年)3.0L 直列6気筒DOHCエンジン(295PS)、5速MT、FR駆動。
E36型M3 GT
FIA GT2、IMSA GTレースのホモロゲーション取得のために生産された限定車(356台)。ボディカラーはブリティッシュ・レーシング・グリーンに塗装され、専用フロントスポイラーとリアスポイラーが与えられた。
  • M3 GT2(イモラ・インディビデュアル)(1998年)
イモラ・レッドボディカラーを与えられた最終限定車。機構的には3.2LのM3後期型を踏襲するが外装は前記GTと同様のエアロパーツが与えられた。
  • M3 コンパクト(1996年)
ドイツの老舗自動車雑誌「アウト・モトール・ウント・シュポルト」の創刊50周年を記念してワンオフで製作された。コンパクト(E36/5ボディ)に3.2LのM3エンジンを搭載するスポーツ・コンパクト。ボディカラーは赤であった。
  • M3 USスペック(1994年-1995年)3.0L 直列6気筒DOHCエンジン(243PS/31.1kgf·m)、5速MTまたは5速AT、FR駆動。
北米では1994年より販売が開始された。現地の嗜好やガソリン事情を配慮して出力が大幅に落とされている。また特筆すべき点として5速オートマティック・トランスミッションが選択できることが挙げられる。クーペ/セダン/カブリオレいずれも用意された。
  • M3 USスペック(1995年-1999年)3.2L 直列6気筒DOHCエンジン(243PS/32.6kgf·m)、6速MTまたは5速AT、FR駆動。
北米向けモデルも1995年にマイナーチェンジでエンジン換装を行うが、排気量が欧州向けと若干異なっているのが特徴。クーペ/セダン/カブリオレが設定され、ATも引き続き選べた。

3代目 E46(2000年 - 2006年)[編集]

E46型M3
E46型M3 CSL
S54B32型エンジン

1999年8月、フランクフルトモーターショーで発表[3]。2000年に欧州で発売された。

搭載されるエンジンは6連スロットルを備えたS54型 3.2L直列6気筒エンジンで、先代から出力、トルクともに向上した[3]。インマニの形状にはF1で培った技術が用いられ[3]、排気系はダブルフロー構造のオールステンレス製である[3]

トランスミッションはゲトラグ製の6速MTと6速SMGII(セミAT)の2種類が設定された。SMGは先代の失敗を受けてかなりの改良が加えられ、名称も「SMGII」となった。

前後のトレッド幅がベースモデルから大幅に拡大され、シャシーには追加の補強が行われた。フロントサスペンションはシングルジョイントのストラット式ながら、鍛造アルミ製コントロールアームや新規開発の入力分散式アスクスサポートベアリングが投入され、ジオメトリの見直しも行われた[3]。リアサスペンションには、改良されたセントラルアーム式サスペンションが採用され、こちらでもアーム類のアルミ化が図られた[3]。ボンネットはアルミ製でパワーバルジが設けられた[3]。LSDにも効果が変化するバリアブルMディファレンシアルロックが投入された[3]。フロントタイヤ後方の車体側面にはエンジンの熱気を排出するエアアウトレットが設けられた[3]

2001年1月、日本発売(価格は893万円)。左右ハンドルの選択が可能であった。

2003年から2004年にかけて、外装の一部変更、SMGのコンピューター変更、フォグランプの意匠変更、キーレスが赤外線式から電波式に変更、フロントタワーバーの標準化、ドライカーボン製のフロントレインフォースメントの採用といった改良が順次導入され、これを境として前期型と後期型に大別される。

2006年、生産終了。

E46 M3 CSL[編集]

2001年9月、フランクフルトモーターショーで軽量化モデルのCSL(CSL:Coupe Sport Lightweight)が発表された[4]。装備の簡素化、遮音材とサイドエアバックの撤去、カーボン製ルーフパネルの採用、電動シートの廃止、フォグランプの撤去などにより、約110kgの軽量化がなされた[4][5]。軽量化のため、ナビゲーションやオーディオ、エアコンは未装着であったが、希望すれば無料でオーディオとエアコンは装備されて出荷された[4]。リアウィンドウもガラスの薄い製品が採用された[4]。その他、ブレーキはフロントのローターをM5に使用されているフローティングタイプの345mmに変更、リアは大径ピストンに変更、専用サスペンション、専用前後スポイラー、専用19インチホイール、中空スタビライザー、バケットシートが与えられた[4][5]。リアディフューザー、リアスポイラー、インナードアパネル、センターコンソールにもカーボン素材が使用され[5]、トランクルームの底にはハニカム構造の複合材が使用された[5]。ステアリングのギヤレシオはよりクイックに変更され、ステアリングホイール自体もクルーズコントロール機能を廃止するなどして軽量化されている[5]

エンジンは、標準モデルの343馬力から17馬力増となる360馬力のS54B32HP型エンジンが搭載された[4]。エンジンのECUユニットは記憶容量が2倍となり、処理速度が3割増となった。SMGIIにも専用プログラムが搭載され、シフトスピードが改善されている[5]。姿勢安定制御機能のソフトウェアも変更を受け、姿勢制御の介入が遅くなるようになった[5]。トランスミッションはSMGIIのみの設定。

CSLの総販売台数は1,383台で、そのうち1,000台がドイツ国内で販売され、残りが欧州と日本で販売された。日本での販売価格は1,150万円。ボディーカラーはシルバーグレーメタリックとブラックサファイアメタリックの2種類のみの設定だった[4]

主なモデル[編集]

グレード 製造年 排気量 エンジン 最高出力/最大トルク 変速機 駆動方式
M3 2000年-2006年 3.2L 直列6気筒DOHC 343PS/37.2kgf·m 6速MTまたは6速セミAT FR
M3 CSL 2003年 360PS/37.7kgf·m 6速セミAT
M3 GTR 2001年 4.0L V型8気筒DOHC 380PS/39.8kgf·m 6速MT
  • M3 GTR
「M3 GTR」はBMWアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)に参戦する際、ホモロゲーションを取得するために開発されたモデルである。通常モデルとは異なり、4.0L V8のP60B40エンジンを搭載する。このエンジンはドライサンプ仕様で、レースバージョンの449馬力から387馬力にデチューンされて販売された。ミッションは6速MTのみ。屋根、リアウィング、フロントバンパーとリアバンパーはカーボン複合材製で、車重は1,350kg。欧州で2001年に10台限定で販売され、価格は25万ユーロであった。

4代目 E90/E92/E93(2007年 - 2014年)[編集]

BMW・M3(第4世代)
E90/E92/E93
E92型M3 クーペ
E90型M3 セダン
E93型M3 カブリオレ
概要
販売期間 2007年3月 -
ボディ
乗車定員 クーペ・カブリオレ4名/セダン5名
ボディタイプ セダン
2ドアクーペ、2ドアカブリオレ
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン 4.0L BMW S65B40A V8
最高出力 420PS/8,300rpm
最大トルク 40.79kgf·m/3,900rpm
変速機 7速AT、6速MT、7速DCT
車両寸法
ホイールベース 2,760mm
全長 クーペ、カブリオレ:4,620mm
セダン:4,585mm
全幅 クーペ、カブリオレ:1,805mm
セダン:1,815mm
全高 クーペ:1,425mm
セダン:1,435mm
カブリオレ:1,397mm
車両重量 1,630kg
系譜
後継 M4(クーペ、カブリオレ)
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モデルコードはセダンがE90、クーペがE92、カブリオレがE93

クーペ[編集]

2007年3月、サロン・アンテルナショナル・ド・ロトで量産型に近い「M3 コンセプト」が発表され、同年4月、ドイツで発売された。

先代よりも一回りボディが大きくなったが、2代目M6クーペと同様のカーボンファイバールーフを採用し、各パーツにアルミニウムを使用するなど軽量化が図られ、車両重量は先代の80kg増の1,630kgに抑えられている。サイズは全長4,620mm×全幅1,805mm×全高1,425mm、ホイールベース2,760mm。

エンジンは排気量を4.0Lまで拡大したV型8気筒エンジン(S65B40型)が搭載され[6]、従来の直列6気筒エンジンは設定されない[6]。圧縮比は12.0、レブリミットは8,400回転、92mmのボアと75.2mmのショートストローク設定で、高回転型の設計がなされている[6]。ダブルVANOS 可変バルブタイミングシステムが採用され、各気筒独立の8連スロットル仕様となっている[6]。基本的な構造は同時期のM5およびM6用のV型10気筒エンジンと共通である[6]。エンジンブロックはアルミ鋳造で、シリンダー壁は結晶化シリコンで強化されている[6]。加速時にはオルタネーターの電磁クラッチが切られるなど、エンジン性能を高めるために様々な工夫がなされている[6]。組み合わせられるトランスミッションは6速MTまたは7速DCTで、0-100km加速は4.8秒。

セダン[編集]

2007年10月、東京モーターショーで発表された。基本的に通常の3シリーズセダンと共通のエクステリアを持つが、クーペと同じV型8気筒エンジンが搭載され、基本的なメカニズムもクーペのそれに準ずるため、フロントノーズはクーペと同様のデザインが採用されている。ただし、クーペに採用されたカーボンファイバールーフの採用は見送られている。車両重量はクーペよりわずかに重い1,640kgで、0-100km加速は4.9秒。

サイズは全長4,585mm×全幅1,815mm×全高1,435mm、ホイールベース2,760mm。

E90型M3セダンは、ドイツツーリングカー選手権(DTM)のレギュレーションにほぼ合致していた(2011年シーズンまで参加車両は4ドアセダンに限定されていた)ことから、発売当初よりBMWはDTMへこのモデルで参戦するのではないかと噂された。しかし、たびたび参戦を噂されながらも参戦に踏み切らないまま、DTMのレギュレーションがGrand-AMSUPER GTと歩調を合わせる方向で変更され、2012年シーズンよりDTMの参加車両は再び2ドアクーペに統一されることになった。BMWはE92型M3クーペをベースとするレース用車両の「M3 GT4」で、2012年シーズンからDTMに参戦している[7]

カブリオレ[編集]

2008年1月に発表され、3月のジュネーブショーで初公開された。3シリーズカブリオレにも搭載された電動油圧式リトラクタブル・ハードトップを備えており、クーペとカブリオレを融合したスタイルとなるクーペカブリオレ方式のリトラクタブル式ルーフを採用した。車両重量は1,885kgとクーペやセダンより重くなるが、0-100km加速は5.3秒でクーペ比+0.5秒に留まり、ソフトトップであったE46型M3カブリオレよりも高性能である。

サイズは全長4,620mm×全幅1,805mm×全高1,397mm、ホイールベース2,760mm。

カブリオレの発表と同時に、従来型の6速セミATであるSMG IIに代わり、7速のM・DCT(ダブル・クラッチ・トランスミッション)が発表された。このM・DCTは1、3、5、7の奇数段と2、4、6の偶数段の2つのクラッチを持つ変速機で、シフトチェンジの高速化を狙っている。同様の機構としてはフォルクスワーゲングループが採用しているDSGがある。このM・DCTはドイツ本国ではクーペ、セダン、カブリオレの全車種で選ぶことができるようになった。

M3カブリオレは日本市場へは未導入である。

M3 GTS[編集]

2009年11月に発表された特別仕様車[8]。エンジン排気量が4.0Lから4.4Lに拡大され、最高出力450馬力を発生する[8]。樹脂製リアウインドウを採用するとともに、エアコン、オーディオ、ナビゲーション、リアシートを省略することにより、車重は140kg軽量化されて1,490kgとなった[8]。チタン製エキゾーストシステムやロールバー、消火器が装備され、ブレーキは前6ピストン、後ろ4ピストンの大型のものが採用する[8]。トランスミッションは7速DCTのみ[8]

2010年5月からドイツでの販売が開始され、同年夏頃には他国への出荷が始まった[8]。ドイツでの価格は11万5,000ユーロ。合計135台が生産された。

日本市場での歴史[編集]

  • 2007年9月15日、M3クーペを発売[9]
  • 2008年3月18日、M3セダンを発売[10]
  • 2008年6月16日、7速M・DCTを追加[11]
  • 2010年4月15日、M3クーペの特別仕様車「Special Edition(スペシャルエディション)」を発売。12台限定[12]
  • 2010年10月7日、M3の誕生25周年記念モデル「M3クーペコンペティション」を発売[13]
  • 2011年11月1日、M3クーペの特別仕様車「Frozen Silver Edition(フローズン・シルバー・エディション)」を発売。30台限定[14]
  • 2013年4月28日、M3クーペの特別仕様車「DTMチャンピオンエディション」を発売。世界限定54台。うち日本市場は右ハンドル5台、左ハンドル5台の10台限定[15]

5代目 F80(2014年 - 2020年)[編集]

BMW・M3
F80
F80 M3 Sedan
概要
販売期間 2014年 - 2020年
ボディ
乗車定員 5
ボディタイプ 4ドアセダン
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン 3.0L直列6気筒ガソリン
変速機 7DCT
車両寸法
ホイールベース 2,810mm
全長 4,685mm
全幅 1,875mm
全高 1,430mm(ベースモデル)
車両重量 1640kg
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2013年12月に発表された[16]。3シリーズの2ドアモデルが「4シリーズ」として独立したため、5代目M3は4ドアセダンのみの展開となり、クーペおよびカブリオレは「M4」に移行した[16]

先代のV型8気筒エンジンから直列6気筒エンジンに回帰し、M3としては初めてターボエンジンが搭載された[17]。直列6気筒ツインターボエンジンの「S55B30A」型は最高出力431馬力、最大トルク56.1kgmを発生し、先代と比較して燃費も大幅に改善された[16]。ターボ化により最大トルクは先代と比較して5割増しとなる一方[17]、燃費は排気量の縮小により25-30%改善し、ユーロ6排ガス規制をクリアしている[17]。軽量化のためにカーボン製のルーフやタワーバー、プロペラシャフトが採用された[16][17]

5代目M3の開発で強く意識されたのは『サーキットでの走行性能の向上』であった[17]。開発には2012年DTMチャンピオンのブルーノ・スペングラーら、BMWのワークスドライバーが深く関与している[17]。サーキット走行に耐えるために、メインラジエーターとは別にサイドラジエーターが装備され[17]、ターボチャージャーの軸受けには電動クーラントポンプで冷却液が循環されている[17]

ホイールは標準が18インチであるが、オプションで19インチホイール(27万8,000円)も設定された[17]。また、110万円でカーボンセラミック製ブレーキシステムを搭載できた[17]

2017年11月生産分から、車体フロア下面への排気微粒子除去装置の装着のために、カーボン製プロペラシャフトがスチール製に変更となる[18]

日本での販売[編集]

  • 2014年2月19日、M3セダンがBMW JAPANにより発売開始[19]
  • 2016年4月18日、Competition Packageを設定。[20]
  • 2016年9月30日、初代BMW M3の登場から30年を記念した特別限定車 「30 Jahre M3」を導入[21]
  • 2017年5月9日、4シリーズのLCIに伴いM3/M4もLCIを実施。ヘッドライトデザイン等を一新。[22] テールランプは3シリーズのLCIが実施された際に後期仕様が装着される形となったため、一時的にヘッドライトが前期・リアテールが後期という仕様が存在する。(2015年7月-2017年3月生産分が該当)
  • 2017年12月25日、M3セダン/M4クーペCompetitionの限定モデル「M Heat Edition」を発表[23]
  • 2018年2月20日、M3 CSを発表。日本国内は限定30台での販売[24]
グレード 製造年 エンジン型式 エンジン 排気量 最高出力/最大トルク 変速機 駆動方式 ハンドル位置
M3 セダン(7DCT) 2014年2月 - S55B30A 直列6気筒 ツインターボ 2,979cc 431ps/56.1kgm 7速 M DCT Drivelogic 後輪駆動
M3 セダン
Competition(7DCT)
2016年4月 - 450ps/56.1kgm
M3 セダン CS(7DCT) 2017年 直列6気筒 ツインターボ
(ウォーターインジェクション)
460ps/61.1kgm

6代目 G80(2021年 - )[編集]

BMW・M3
G80
G80 M3 セダン
概要
販売期間 2021年 -
ボディ
乗車定員 5(G80)
ボディタイプ 4ドアセダン
5ドアステーションワゴン
駆動方式 FR/AWD
パワートレイン
エンジン 3.0L直列6気筒ガソリン
変速機 8AT
車両寸法
ホイールベース 2,855mm
全長 4,805mm
全幅 1,905mm
全高 1,435mm
車両重量 1740kg
その他
最小回転半径 5.2m
テンプレートを表示

2020年9月23日に新型M3が発表され、同時に2021年3月発売予定と報じられた[25]。モデルコードはG80

前後のタイヤおよびホイールは異径サイズであり、フロント18インチに対してリア19インチ、フロント19インチに対してリア20インチと、フロントに対してリアは1インチ大きいサイズが設定される。

2022年6月23日にはM3史上初となるツーリングモデル(ステーションワゴン)が発表された。グレードはCompetition M xDriveのみで、トランスミッションは8速ステップトロニックのみの設定となる。日本導入は2023年を予定。

日本仕様[編集]

2021年1月26日、BMW JAPANはG80型M3およびG82型M4の日本正規導入モデルを発表した[26]。駆動方式は当初FR(後輪駆動)のみで、4輪駆動(xDrive)モデルについては2021年9月3日に追加導入を発表し、同年9月末以降順次納車とした[27]。トランスミッションは8速ステップトロニック(トルクコンバータ式オートマチック)のみで、6速MTは日本仕様には導入されない。ハンドル位置は右側のみとなる。

グレード構成としては、サーキット走行などを見据えて一部の運転支援装備を非装着とし、代わりにMカーボン・セラミック・ブレーキ、Mカーボン・バケット・シートなどを装備した「Track Package」が用意される。

2022年5月24日からBMWオンラインストア限定で、BMW Mの50周年を記念した限定モデルとして、M3の6速MT仕様車に特別装備を施した「M3 M 50th Anniversary Limited」が50台限定で抽選販売された。

2022年7月以降、FRモデルおよび「Track Package」モデルが販売終了となり、「M3 Competition M xDrive」のみの単一グレード展開に変更された。また、同時期にマイナーチェンジを実施した3シリーズ同様にカーブド・ディスプレイが採用されるなど、内装を中心としたリファインが行われた。


スペック(日本仕様)[編集]

グレード 製造年 エンジン型式 エンジン 排気量 最高出力/最大トルク 変速機 駆動方式 ハンドル位置
M3 Competition 2021年3月-2022年6月 S58B30A 直列6気筒 ツインターボ 2,993cc 510ps/650Nm 8速 M Steptronic 後輪駆動
M3 Competition Track Package
M3 Competition M xDrive 2021年9月-(Track Packageは2022年6月まで) 四輪駆動
M3 Competition M xDrive Track Package

レース[編集]

  • 日本ではスーパー耐久などに出走。E46型が2007年のスーパー耐久第2戦鈴鹿にて優勝するなどの成績を納めている。
  • 欧州ではDTMなどでの活躍があるほか、ニュルブルクリンク24時間レースでE46 M3 GTRが、2004年および2005年に連続優勝している。アメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)でもE46 M3 GTRが2001年のGTクラスタイトルを獲得している。E92型は「M3 GTR ALMS」がアメリカン・ル・マン・シリーズに、欧州では「M3 GT4」がニュルブルクリンク24時間などの耐久レースに参加している[8]
  • 2021年のMotoGPでは、M3コンペティションがセーフティカーに使われている[28]

脚注[編集]

[29]

  1. ^ 80年代輸入車のすべて- 魅惑の先鋭 輸入車の大攻勢時代. 三栄書房. (2013). pp. 73. ISBN 9784779617232 
  2. ^ BMW M3 specs”. www.auto-data.net. 2019年1月22日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i BMW mag Vol.1 辰巳出版 (2001/8/1) ISBN 978-4886416360
  4. ^ a b c d e f g BMW「E46型 M3 CSL」今後の値上がりは必至か!? Carnnyマガジン 2017年9月5日閲覧
  5. ^ a b c d e f g BMW M3 CSL Performance”. Automobile Magazine. 2009年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年7月10日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g なぜM3(E92型)のエンジンは8,400回転も回るのか? CarMe 2017年8月31日閲覧
  7. ^ BMW M3に DTMレーサー…第1号車を公開 - response.jp・2012年2月3日
  8. ^ a b c d e f g BMW M3 GTS 発表…4.4リットルV8は450ps Responsejp 2017年9月8日閲覧
  9. ^ 新型「BMW M3」は4リッターV8で、996万円”. 2013年5月5日閲覧。
  10. ^ 420psの「BMW M3セダン」、販売開始”. 2013年5月5日閲覧。
  11. ^ 「BMW M3」にツインクラッチ式トランスミッション搭載”. 2013年5月5日閲覧。
  12. ^ 「BMW M3クーペ」に12台限定の特別仕様車”. 2013年5月5日閲覧。
  13. ^ 「BMW M3」誕生25周年記念モデル「M3クーペコンペティション」の受注を開始”. 2013年5月5日閲覧。
  14. ^ 「BMW M3クーペ」に30台限定の特別仕様車”. 2013年5月5日閲覧。
  15. ^ 「BMW M3クーペ」に10台限定のDTM優勝記念モデルが登場”. 2013年5月5日閲覧。
  16. ^ a b c d BMWが新型「M3」「M4」を世界初公開”. 2014年2月20日閲覧。
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  18. ^ BMW、「M3」と「M4」のカーボンファイバー製ドライブシャフトを間もなく廃止 2017年9月8日閲覧
  19. ^ BMW、新型「M3セダン」「M4クーペ」を受注開始”. 2014年2月20日閲覧。
  20. ^ BMW M3セダンおよびM4クーペの圧倒的なパフォーマンスを更に引き上げる「コンペティション・パッケージ」をオプション設定”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  21. ^ 初代BMW M3の登場から30年を記念した特別限定車 「30 Jahre M3」を導入”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  22. ^ 新型BMW M3ならびに新型BMW M4を発表”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  23. ^ サーキットで卓越した走行性能を発揮するBMW M3セダン/M4クーペCompetitionの限定モデル「M Heat Edition」を発表”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  24. ^ 圧倒的なサーキット・パフォーマンスと、4ドア・モデルとして日常走行への適合を高次元で両立させたBMW M3 CSを発表”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  25. ^ The new BMW M3 Sedan and BMW M3 Competition Sedan. The new BMW M4 Coupé and BMW M4 Competition Coupé.” (英語). www.press.bmwgroup.com. 2021年1月28日閲覧。
  26. ^ Mハイ・パフォーマンス・モデル「BMW M3」および「BMW M4」が誕生”. www.press.bmwgroup.com. 2021年1月28日閲覧。
  27. ^ Mハイ・パフォーマンス・モデル「BMW M3セダン」および「BMW M4クーペ」に4輪駆動モデルが誕生”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  28. ^ BMW M3 セダン新型、MotoGPのセーフティカーに…510馬力ツインターボ搭載”. レスポンス(Response.jp). 2021年12月14日閲覧。
  29. ^ Bmw 325is hp EVO II 2021年3月26日取得.

関連項目[編集]

  • BMW
  • 3シリーズ
  • M4
  • BMW M
  • ウサイン・ボルト - 本人の身長(196cm)に合わせて改造した特別仕様車を贈呈された。このことから身長が190cm後半の人が快適に乗るには、メーカー側での調整が必要と思われる。後に事故を起こし廃車となった。
  • 加藤大治郎 - 全日本ロードレース参戦時代にE36型を愛用していた。
  • Need For Speed: Most Wanted(2005及び2012) - E46型のM3 GTRがストーリー序盤と終盤に登場する。カバーにも出ている同作を代表する車両。2012のリブート版にもレジェンドDLCの中の1台として収録されている
  • Need For Speed: Carbon(2006) - 上記の作品の終盤で取り返すがストーリー序盤で事故に逢い大破してしまう
  • Need For Speed: Shift(2009) - E92型M3クーペが収録されている
  • Need for Speed(2015) - デジタルデラックス版の特典としてE46型 M3 GT-Rが収録されている
  • Need for Speed: Heat(2019) - M3 E46 GT-R Legends Editionとして収録されており、ストーリー終盤で登場する

外部リンク[編集]