BAC ジェット・プロヴォスト

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BAC ジェット・プロヴォスト

BAC ジェット・プロヴォストT.5A

BAC ジェット・プロヴォストT.5A

BAC ジェット・プロヴォストBAC Jet Provost、元々はハンティング・パーシヴァル社が製造)は、1955年から1993年にかけて英空軍(RAF)で使用された英国のジェット練習機である。

設計と開発[編集]

1950年代にRAFは新しい専用のジェット練習機の要求仕様を発行した。ハンティング社はレシプロ・エンジンのパーシヴァル プロヴォスト基本練習機を基にジェット・プロヴォストを開発した。1954年6月26日に試作機はディック・ウェルドン(Dick Wheldon)の操縦で初飛行を行った。英航空省は10機の「ジェット・プロヴォスト T.1」を、1957年6月にはアームストロング・シドレー ヴァイパー エンジン、射出座席、再設計された機体と強化された首車輪式降着装置を備えた40機の「ジェット・プロヴォスト T.3」を発注した。パーシヴァル社は開発段階における構造テスト用専用に1機を製作し、これは技術者が基本設計で達成できることを研究するために役立った。合計で201機のT.3が1958年から1962年に納入された。

1961年に新しいエンジンを搭載した「T.4」、1967年には与圧コックピットを採用した「T.5」が続いた。

「T.51」は2丁の7.7-mm (0.303-inch) 機関銃で武装した輸出仕様であり、セイロンクウェートスーダンに輸出された。「T.52」はT51と同じ武装を施した別の武装型輸出仕様であり、イラク南イエメン、スーダン、ベネズエラに輸出された。「T.55」は最後の輸出仕様で、スーダンに輸出された。

武装した派生型はBAC ストライクマスターとして開発された。

運用[編集]

編隊を組むレシプロエンジンのパーシヴァル プロヴォスト T.1とジェット・プロヴォスト T.5A

ジェット・プロヴォストは、T.1の評価が成功裏に終わると有能な練習機であることを証明した。RAFはこの型式を1957年に正式に採用した。より強力なヴァイパー エンジンを搭載したT.4とT.5の派生型は余剰推力を得たことでRAFにジェット・プロヴォストを基本訓練以外の幾つかの異なる役目に使用することを促した。最高速度440 mph、優秀な機動性、機械的信頼性や低運用コストといった点でジェット・プロヴォストはエアロバティック飛行、航空兵装や戦術兵器訓練と共に高等飛行訓練でも使用された。

RAFでの採用以外にジェット・プロヴォストは輸出市場でも成功を収めた。RAFの任務からは1990年代初めに退役し、ショート ツカノ T.1に代替された。愛好家の間では人気の機種であり、廉価なジェット機ということで多くが個人オーナーの所有となっている。その中には航空ショーで見かける機体もある。

派生型[編集]

モデル 生産機数 製造会社 備考
ジェット・プロヴォスト T.1 12機 ハンティング・パーシヴァル RAF向け初期量産バッチ
ジェット・プロヴォスト T.2 4機 ハンティング・パーシヴァル 開発用のみ
ジェット・プロヴォスト T.3 201機 ハンティング・エアクラフト RAF向け主量産バッチ
ジェット・プロヴォスト T.3A (70) 機 ハンティング RAF向け 改良型アビオニクス搭載のT.3の改良型
ジェット・プロヴォスト T.4 198機 BAC RAF向け より強力なエンジンを搭載した派生型
ジェット・プロヴォスト T.5 110機 BAC RAF向け 与圧コックピットを採用した派生型
ジェット・プロヴォスト T.5A (94)機 BAC 改良型アビオニクス搭載のT.5からの改装型
ジェット・プロヴォスト T.5B BAC 非公式の名称、基本的にT.5を改装し航法士の訓練に使用
ジェット・プロヴォスト T.51 22機 ハンティング・エアクラフト T.3の輸出仕様(セイロン向けに12機、スーダン向けに4機、クウェート向けに6機製造)
ジェット・プロヴォスト T.52 43機 BAC T.4の輸出仕様(イラク向けに20機、ベネズエラ向けに15機、スーダン向けに8機製造)
ジェット・プロヴォスト T.55 5機 BAC T.5の輸出仕様 オマーン向けに製造
BAC ストライクマスター 146機 BAC T.5の地上攻撃機仕様

運用[編集]

英国のフェアフォード空軍基地に着陸する元RAFのジェット・プロヴォスト T.5(2008年)
航空ショーで展示される元RAFハンティング・パーシヴァル製ジェット・プロヴォスト T.3A(2008年)
オーストラリアの旗 オーストラリア
  • オーストラリア空軍 - ただ1機のみが使用された。1機のジェット・プロヴォスト T.2が1959年の6カ月間だけ就役し、第1基本飛行訓練学校でテストと評価に使用された。
セイロンの旗 セイロン
イギリスの旗 イギリス
イラクの旗 イラク
クウェートの旗 クウェート
オマーンの旗 オマーン
ポルトガルの旗 ポルトガル
シンガポールの旗 シンガポール
南イエメンの旗 南イエメン
  • 南イエメン空軍
スーダンの旗 スーダン
  • スーダン空軍が4機のジェット・プロヴォスト T.51と8機のT52を受領。
ベネズエラの旗 ベネズエラ

要目[編集]

(T.5) Jane's All The World's Aircraft 1971-72 [6]

  • 乗員:2名
  • 全長:10.36 m (34 ft 0 in)
  • 全幅:10.77 m (35 ft 4 in)
  • 全高:3.10 m (10 ft 2 in)
  • 翼面積:19.80 m² (213.7 ft²)
  • 翼面荷重:160 kg/m² (32.7 lb/ft²)
  • 空虚重量:2,222 kg (4,888 lb)[7]
  • 全備重量:3,170 kg (6,989 lb)
  • 最大離陸重量:4,173 kg (9,200 lb)
  • エンジン:1 × アームストロング・シドレー ヴァイパー Mk-202 ターボジェットエンジン、2,500 lbf (11.1 kN)
  • 最大速度:708 km/h (382 knots, 440 mph)
  • 航続距離:1,450 km (780 nm, 900 mi)[8]
  • 巡航高度:11,200 m (36,750 ft)
  • 上昇率:20.3 m/秒 (4,000 ft /分)

武装

  • 機銃:2 × 0.303 in (7.7 mm) 機関銃 (Mark 55)
  • ロケット弾
    • 6 × 60 lb (27 kg)
    • 12 × 25 lb (11 kg)
    • 28 × 68 mm SNEB ロケット弾ポッド4基
  • 爆弾
    • 4× 540 lb (245 kg)

関連項目[編集]

出典[編集]

脚注
  1. ^ Warbird Alley entry
  2. ^ UK Civil Aviation Authority Aircraft Register - Entry for former Singapore AF Jet Provost T52 registered G-PROV
  3. ^ Andrade 1982, page 192
  4. ^ History of G-PROV
  5. ^ "Jet Provost T52 registered G-JETP." UK Civil Aviation Authority Aircraft Register. Retrieved: 3 July 2010.
  6. ^ Taylor 1971, p. 181.
  7. ^ "Hunting (BAC) Jet Provost" Warbird Alley. Retrieved 29 March 2009.
  8. ^ with tip tanks.
参考文献
  • Clarke, Bob. Jet Provost: The Little Plane With The Big History. Stroud, UK: Amberley Publishing Plc, 2008. ISBN 978-1-84868-097-5.
  • Taylor, John W.R. "Hunting Jet Provost and BAC 167." Combat Aircraft of the World from 1909 to the present. New York: G.P. Putnam's Sons, 1969. ISBN 0-425-03633-2.
  • Taylor, John W.R., ed. Jane's All The World's Aircraft 1971–72. London: Janes's Yearbooks, 1971. ISBN 0-354-00094-2.

外部リンク[編集]