Apache OpenOffice

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Apache OpenOffice
Apache OpenOffice Writer 4.0.0
開発元 Apacheソフトウェア財団
リポジトリ ウィキデータを編集
プログラミング
言語
C++, Java
対応OS Windows, macOS, Linux
プラットフォーム クロスプラットフォーム
サポート状況 開発中
種別 オフィススイート
ライセンス Apacheライセンス[1]
公式サイト www.openoffice.org
openoffice.apache.org
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Apache OpenOffice(アパッチ・オープンオフィス)は、OpenOffice.orgの後継プロジェクトの一つとしてオープンソースで開発されるオフィススイートである。 プロジェクトとしては、IBM Lotus Symphonyの後継プロジェクトでもあり、分派したLibreOfficeNeoOfficeとは親戚関係にあたる。 プロジェクトは開発者不足などの原因により、2014年からほぼ停止状態に陥りメジャーリリースができない状態となっている。これにより、同時に分派したLibreOfficeからは機能面で大きく引き離された状態となっている。

概要

Apache OpenOficeは、ワープロ(Writer)、表計算(Calc)、プレゼンテーション(Impress)、ベクタードローツール(Draw)、データベース(Base)、数式エディタ(Math)から構成される。

Apache OpenOfficeの標準ファイル形式は、ISO/IECの国際標準であるオープンドキュメント形式(ODF)を使用する。 また、標準形式としてサポートしないファイル形式は、変換を伴うインポート、エクスポートフィルターにより対応するが、LibreOfficeとは異なりMicrosoft Office形式のファイルはOffice 2007以降で使用されるOffice Open XML書き出しには対応しておらず、読み込みのみが可能である。

Apache OpenOfficeは、Linux, macOS, Windows向けに開発されているが他のオペレーティングシステム向けにも移植されている。ライセンスは、Apache License[1]の元にリリースされる。最初のリリースは2012年5月8日にリリースされたバージョン 3.4.0で、新機能が追加された最新リリースは2014年にリリースされたバージョン4.1である。以後、バグ修正と辞書のアップデート、まれに機能改善を含むマイナーアップデートをリリースしている。

プロジェクトの歴史

OpenOffice.orgを管理していたサン・マイクロシステムズを買収したオラクルは2011年4月15日に、非営利団体が管理するのが望ましいと声明を発表し[2]、2011年6月1日に、Apacheソフトウェア財団に、ソースコードの提供を提案した[3]

Apacheソフトウェア財団は投票を行い、2011年6月13日の開票結果を受けてApacheのインキュベータープロジェクトとして承認した[4]。これによりApache OpenOfficeプロジェクトが開始された。その後、Apache財団の規定に沿うようにソースコードの確認や改修が行われた。

2011年7月14日、IBMはLotus SymphonyのソースコードをApache OpenOfficeプロジェクトへ寄贈することを発表[5]し、2013年の初頭にはLotus Symphony使用者に同ソフトへの移行を促す計画がされている[6]

2011年11月17日、正式なブランド名についての投票結果により「Apache OpenOffice」と決定された[7]。そして2012年5月8日に、Apache OpenOffice最初の正式版3.4.0の提供が開始された[8]

StarOfficeとOpenOffice.orgの主な派生品のタイムライン。水色で示されているのがApache OpenOfficeである。

開発の停滞

Apache OpenOfficeプロジェクトは、プロジェクト存続に必要な開発者を確保できない状況が慢性的に続いている。2015年1月には、開発者がおらずソースコードの追加、修正もできない状況が報告された[9] 。 これにより開発の遅延も恒常化しており、脆弱性の修正にも迅速に対応できない状況にも陥っている[10][11][12][13][14][15]。 ソフトウェアのダウンロードについても2013年がピークとなり1日あたりの平均ダウンロード数は14万8000弱あったが、2019年第2四半期には5万未満まで落ち込んでいる[16]

2016年9月1日には、プロジェクト終了の提案がなされ[17]、これによりプロジェクトの存続が危機的状況にあることがメディアで報じられた[11]

そもそも前身のOpenOffice.orgがサン・マイクロシステムズのもとにあった頃から、コミュニティメンバーは企業の意向に左右される開発方針に不満を持っており[18][19][20]、一部の開発者はOpenOffice.orgからフォークしたGo-oo(旧Go-Open Office)やNeoOfficeをリリースしていた。そしてオラクルによるサン・マイクロシステムズの買収を機にコミュニティの不満が爆発して、OpenOffice.orgプロジェクトの主要メンバーらが離脱。離脱した主要メンバーらによりThe Document Foundationが設立され、OpenOffice.orgからフォークしたLibreOfficeの開発が行われることになった[21]。そのためApache OpenOfficeプロジェクトは、立ち上げ当初から開発者が不足していたからである。


バージョンアップ履歴

バージョン リリース年月日 特徴
3.4.0 2012年5月8日 ソースコードの改修、パフォーマンスの改善、ODF1.2の暗号化のサポートと強化、CSVエクスポートの改善 その他
3.4.1 2012年8月23日 追加言語のサポート、バグ修正、パフォーマンスの向上、Windows 8の互換性の強化
4.0.0 2013年7月23日 サイドバーの追加、他
4.0.1 2013年9月29日 追加言語の翻訳、バグ修正、パフォーマンスの向上、Windows 8の互換性の強化など
4.1.0 2014年4月29日 新機能の追加、追加言語のサポート、バグ修正
4.1.1 2014年8月21日 バグ修正、カタルーニャ語をサポート
4.1.2 2015年10月28日 バグ修正、WebDAVサポートの強化、ファイルロックのサポート、PDFエクスポートダイアログのデザイン見直し
4.1.3 2016年10月16日 2015年10月20日に報告された脆弱性の修正
4.1.4 2017年10月19日 不具合やセキュリティ問題の修正など[11]
4.1.5 2017年12月30日 バグ修正、英語辞書のアップデート
4.1.6 2018年11月18日 バグ修正、ライブラリのアップデート[22]
4.1.7 2019年09月21日 AdoptOpenJDKのサポート、セキュリティ更新[23]

脚注

  1. ^ a b Licenses”. Apache Software Foundation. 2019年1月3日閲覧。
  2. ^ Oracle Announces Its Intention to Move OpenOffice.org to a Community-based Project
  3. ^ Statements on OpenOffice.org Contribution to Apache
  4. ^ Accept OpenOffice.org for incubation
  5. ^ IBM Donates Lotus Symphony Source Code to the Apache OpenOffice Project” (英語). IBM Corporation (2011年7月14日). 2011年8月17日閲覧。
  6. ^ Buzzmaster1 (2012年2月3日). “IBM's plans for the future of Lotus Symphony combining the best of Lotus Symphony with the new Apache OpenOffice Project.” (英語). 2012年2月19日閲覧。
  7. ^ Branding Planning - Apache OpenOffice Community - Apache Software Foundation
  8. ^ 1年4か月ぶりのリリースとなる「Apache OpenOffice 3.4」登場”. SourceForge.JP Magazine (2012年5月9日). 2012年5月13日閲覧。
  9. ^ The Apache Software Foundation Board of Directors Meeting Minutes January 21, 2015”. Apache Software Foundation (2015年1月21日). 2020年1月3日閲覧。
  10. ^ Liam Tung「Onetime MS Office challenger OpenOffice: We may shut down due to dwindling support」『ZDNet』 CBS Interactive、2016年9月5日
  11. ^ a b c 樽井秀人 (2016年9月5日). “「Apache OpenOffice」プロジェクトが人員不足で終了の危機”. 窓の杜. 2017年10月20日閲覧。
  12. ^ Corbet, Jonathan (2015年7月8日). “OpenOffice and CVE-2015-1774”. LWN.net. 2020年1月3日閲覧。
  13. ^ Edge, Jake (2016年7月27日). “Apache OpenOffice and CVE-2016-1513”. LWN.net. 2020年1月3日閲覧。
  14. ^ Claburn, Thomas (2017年4月28日). “Apache OpenOffice: Not dead yet, you'll just have to wait until mid-May for mystery security fixes”. The Register. 2020年1月3日閲覧。
  15. ^ Claburn, Thomas (2019年2月4日). “LibreOffice patches malicious code-execution bug, Apache OpenOffice – wait for it, wait for it – doesn't”. The Register. 2020年1月3日閲覧。
  16. ^ Apache OpenOffice Download Statistics” (2018年1月3日). 2019年7月29日閲覧。
  17. ^ Dennis E. Hamilton「[DISCUSS] What Would OpenOffice Retirement Involve? (long)」『openoffice-dev mailing list archives』 2016年9月1日、Apache Software Foundation
  18. ^ OpenOffice.org と LibreOffice が内紛してる件(MSOfficeの敵は内部抗争中)」『firstlightのルドビコ式ウェブログ』 firstlight、2011年4月4日
  19. ^ The Document Foundationができた。よりよいcommunityを目指して」『中田真秀(なかたまほ)のブログ』 中田真秀、2010年9月29日
  20. ^ Scott Merrill「LibreOfficeとOpenOffice.org: 決別から1年後の現況」『TechCrunch Japan』Verizon Media Japan 、2011年10月8日
  21. ^ 末岡洋子「オープンソースプロジェクト成功の秘訣--「LibreOffice」のThe Document Foundationに聞く」『TechRepublic Japan』 朝日インタラクティブ、2015年9月16日
  22. ^ 末岡洋子 (2018年11月20日). “「Apache OpenOffice 4.1.6」が公開、11か月ぶりのポイントリリース”. OSDN Magazine. 2019年1月5日閲覧。
  23. ^ 樽井秀人 (2019年10月17日). “「Apache OpenOffice」v4.1.7で修正された脆弱性は1件 ~マクロ実行のブロックが迂回される可能性”. 窓の杜. 2019年10月19日閲覧。

関連項目

外部リンク