AIM-120 (ミサイル)
| 種類 | 視程外射程空対空ミサイル |
|---|---|
| 製造国 | |
| 設計 | ヒューズエアクラフト |
| 製造 | レイセオン |
| 性能諸元 | |
| ミサイル直径 | 0.18 m |
| ミサイル全長 | 3.7 m |
| ミサイル重量 | 152 kg |
| 弾頭 | 7.26 kg |
| 射程 |
AIM-120A 50–70km[1] AIM-120C 48km[2] AIM-120D 72km[3] |
| 推進方式 | 固体燃料ロケット |
| 誘導方式 | 中間指令・慣性誘導 終末 アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH) |
| 飛翔速度 | マッハ 4 |
AIM-120 AMRAAM (Advanced Medium-Range Air-to-Air Missile、アムラーム) は、アメリカ合衆国のヒューズ社が開発した中距離空対空ミサイルである。ヒューズ・ミサイル・システムズ社はレイセオン社に吸収合併されたため、AMRAAMはレイセオン社が生産している。
目次 |
[編集] 開発経緯
AMRAAMは1975年からAIM-7 スパローの後継として開発が開始された。1979年2月、アメリカ空軍は概念開発段階に提案していた5社のうちからヒューズエアクラフト社のヒューズ・ミサイル・システムズとレイセオン社を選定、概念実証段階に進んだ。概念実証段階では1981年12月までに両社は試作ミサイルを3発ずつ発射、その結果からヒューズエアクラフト社製のものが優れているとされ、1982年に全規模開発契約 (FSD) を結んだ。
この契約により、ヒューズエアクラフト社は100発弱の試験用AMRAAMを製造。1987年には低率初期生産 (LRIP) が認められ、1991年に空軍が初期作戦能力 (IOC) を獲得。1992年にフル生産が開始、1993年にはアメリカ海軍も初期作戦能力を獲得した。
1994年には誘導装置に改良がなされたAIM-120Bが、1996年にはF-22などのウェポンベイに収まるようAIM-120Bの前方のフィンを小型化したAIM-120Cが開発された。AIM-120Cはフィンを小型化した以外はAIM-120Bと同様であり、本来ではF-15やF-16などの非ステルス機にはAIM-120Bが使用され、F-22やF-35などのステルス機にはAIM-120Cが使用される予定であったが、ステルス機の配備・開発の遅れもあり、現在では非ステルス機でもAIM-120Cが使用されている。また現在は、目標情報のアップ・リンクに対応し、距離を延長する等の改良を施したAIM-120Dが開発され、実射試験を行っている。
AMRAAMの改良型については、2基のラムジェットエンジンを取り付けられているFMRAAM(Future Medium Range Air-to-Air Missile) が開発中である。FMRAAMは最大射程が100kmを越えると言われており、AMRAAMの倍近くとなっているものの、ラムジェットエンジンが搭載された以外は変更点は無いので、AMRAAMが搭載可能な機種であれば、改修を行わなくても搭載が可能となる。
また、高・中高度防空ミサイルに転用したSLAMRAAM(Surface Launched AMRAAM) も開発されており、地対空ミサイルシステムNASAMSに採用された。
[編集] 特徴
本ミサイルの主な特徴は「撃ちっ放し能力」(fire and forget) と「同時多目標攻撃能力」である。
[編集] 撃ちっぱなし能力・同時多目標攻撃能力
従来の中距離空対空ミサイルの主役であった旧型のスパロー・ミサイルは[4]、セミアクティブ・レーダー・ホーミング誘導方式であった。この方式は、飛翔時の誘導にミサイル外部の助けが必要であり、発射母機のレーダーから目標に対してレーダー波を放射し続け、ミサイルは目標からの反射波をレーダー・シーカーで捉える事で追尾を行い誘導される。発射母機はミサイルの発射後も敵に向けてレーダー波を放射し続け、ミサイルが外れるか衝突するまでその状態を維持しておく必要があった。従って自機のミサイルが飛翔中は、基本的に発射母機は回避行動が行えず、発射母機が誘導を継続する限り敵からの攻撃に対して脆弱になる。ミサイルの誘導も1発ずつしかできなかった。
AMRAAMは、レーダーに放射器まで搭載する事で、アクティブ・レーダー・ホーミング (Active Radar Homing; ARH) 方式、すなわちミサイル自身のレーダー放射による自律誘導を可能にした。これにより発射母機はミサイルを放った段階で回避行動が行える「撃ちっぱなし能力」が備わり、航空機の生存性が向上する。しかし、細いミサイルの弾頭部に内蔵されたレーダーはサイズの制約から性能が限られており、遠距離目標はレーダーの微弱な反射波が検出できないことで誘導不可能である。そのままでは実用上は短射程となるため、AMRAAMではアクティブ・レーダー・ホーミング方式に加え他の誘導方法も用いる事でその欠点を補った。すなわち、ミサイルを発射後、レーダー・シーカーが目標を捕らえる距離までは他の誘導方式で中間誘導を行い、目標接近後にアクティブ・レーダー・ホーミング方式で最後まで誘導する(終端誘導)というものである(LOBLとLOALも参照)。
AMRAAMでは、目標接近までの中間誘導を慣性誘導と指令誘導で行う。目標接近後はアクティブ・レーダー・ホーミングで終端誘導を行う。発射母機は終端誘導が開始された時点で回避行動に移る事ができる。短距離の発射では、中間誘導を行わずに発射前からミサイルのレーダーで終端誘導に入ることで、発射母機は発射直後に行動の自由を得ることができる。中間誘導時に発射母機が攻撃を受けた場合は指令誘導を中止して回避運動を取ることも可能であり、ミサイルは慣性誘導によって定められた方位角で飛翔を続け中間誘導を継続することでアクティブ・レーダーの覆域内(ボアサイト内)に目標を捕らえることを期待する。アクティブレーダーに検知されるとそのまま終末誘導へと切り替えて目標の撃墜を図る。このような慣性誘導だけの中間誘導では命中率が低下する。これらの誘導システムにより、AMRAAMは発射母機のFCS(火器管制システム)にもよるが複数目標に対する同時攻撃を行うことも可能とした。
このようにAMRAAMとスパローには能力差がある。[5]
[編集] その他の特徴
また、AMRAAMはECCM能力(対電子妨害対抗能力)にも優れており、仮に発射後ジャミング(電波妨害)を受けた場合、その電波の発信源へと誘導されるようになっている。またチャフによる妨害にも強いとされる。
他には、AMRAAMはスパローを超える射程を持ちながらも、弾体のサイズは一回り小型となり、重量も軽量化されている。そのため
- 機種によってはスパロー1発しか装備できなかったところに2発装備することが可能となり、ミサイルの搭載数が増える。
- 従来はサイズや重量の関係で短距離空対空ミサイルであるAIM-9 サイドワインダーしか搭載できなかった場所にも搭載できるようになる。
等の特長を持つ。特に後者については、これまでは対地攻撃などを行う際の自衛用のミサイルは短距離用のものしかなく頼りなかったのに対して、中距離ミサイルを装備できるようになり生存性を高めることとなった。
[編集] 名称
先述の通り、AMRAAMとはAdvanced Medium-Range Air-to-Air Missile(発展型中距離空対空ミサイル)の頭文字を取ったものであり、スパローやサイドワインダーといった通称とは趣旨が異なる。これはAMRAAMの計画から実用化までの期間が長く、その間呼び習わされたAMRAAMが通称として定着してしまっていたことによる。スラマー (slammer) という非公式な愛称を持つ。
[編集] 基本型・派生型
[編集] AIM-120A
AIM-120Aが最初の実用型であり、以後の改良された派生型の基本となったミサイルである。誘導装置にWGU-16/Bを用いた[6]。
[編集] AIM-120B
1994年から引渡しが始まった、AIM-120Bは、AIM-120AのWGU-16/Bに代えて、WGU-41/B誘導装置を用いた。WGU-41/Bは、EPROMによってプログラム変更を可能とし、プロセッサーもデジタル化された[6]。
[編集] AIM-120C
AIM-120Cは、事前計画製品改良 (P3I) プログラムによって、1991年より開発が始まった。誘導装置にWGU-44/Bを用い、F-22の兵器倉に3発収容可能とするために中央フィンと後部制御翼の先端を除いて小型化した。
AIM-120Cにはさらに細かな改良・派生型が存在する。それぞれ1つ前の型から各々の点で改良された。
- AIM-120C-4:弾頭威力増強型
- AIM-120C-5:推進ロケットモーターの大型化、誘導部の小型化、対電子対抗手段 (ECCM) をアップグレードした。
- AIM-120C-6:目標探知装置 (TDD) をアップグレードした。
- AIM-120C-7:新型レーダー・アンテナ、改良型シーカー・アッセンブリー、誘導電子機器の改良、慣性基準ユニットの装備、目標探知装置 (TDD) の強化、フレキブル・データリンクの装備、などを行った。
[編集] AIM-120D
2012年現在、開発中であり、主な向上目標を示す。
- 射程延伸:現状65km⇒目標100km(または165km)
- 電子防護機能強化
- GPS/IMU(衛星航法システム/慣性航法ユニット)の装備
- 双方向データリンクの装備
- 運動エネルギーの強化[6]
[編集] 生産と配備
[編集] 実戦使用
AMRAAMの初の実戦は、1992年12月でイラク軍のMiG-25が2機飛行禁止空域を越え南下してきたのに対して、米空軍のF-16が早期警戒管制機の支援を受けAIM-120Aを発射、MiG-25 1機を撃墜した。その後のユーゴスラビア紛争でも使用されている。
[編集] 輸出
AMRAAMは、当初からヨーロッパ諸国での使用も考慮されており、米国製の戦闘機以外にもイギリス・ドイツ・スペイン・イタリアで共同開発されたユーロファイター タイフーンや、スウェーデンで開発されたサーブ 39 グリペンなどにも搭載が可能である。
航空自衛隊については、飛行教導隊に44発のAIM-120B(及びC-5)が試験的に導入されたが本格的な導入はされず、AIM-7F/Mの後継としては国産の99式空対空誘導弾(AAM-4)が採用された。しかし、第4次F-Xで選定されたF-35戦闘機は、胴体内ウエポンベイのサイズが合わないなどの問題があり、レイセオンはF-35用にAIM-120の導入が望ましいとしている[7]。
[編集] 採用国
- ヨルダン空軍
- F-16
- モロッコ空軍
- F-16
- ノルウェー空軍
- F-16
- NASAMS
- オマーン空軍
- パキスタン空軍
- F-16
- ポーランド空軍
- F-16
- ポルトガル空軍
- F-16
- 中華民国空軍
- F-16
- スイス空軍
- F/A-18
- スウェーデン空軍
- JAS 39
- タイ王国空軍
- JAS 39
- F-16
- トルコ空軍
- F-4
- F-16
- アラブ首長国連邦空軍
- F-16
[編集] 脚注
- ^ M-120, Designation systems.
- ^ AIM-120C, Deagel.
- ^ , PR News wire, (2008-08-05), http://www.prnewswire.com/cgi-bin/micro_stories.pl?ACCT=149999&TICK=RTN&STORY=/www/story/08-05-2008/0004861926&EDATE=Aug+5,+2008[リンク切れ]
- ^ 青木、114頁
- ^ AMRAAMとスパローの能力差としては、例えば、スパローを使用する航空自衛隊とAMRAAMを使用する在日米軍が模擬戦闘訓練を行うと米側が優位となり、成績に大きな差が生じるという。[要出典]
- ^ a b c d 青木、114-115頁
- ^ 月刊「航空ファン」 2011年 5月号
[編集] 参考図書
- 青木謙知、「空中戦の革命! 視程外射程ミサイル」『軍事研究2012年1月号』、ジャパン・ミリタリー・レビュー、雑誌 03241-01、ISSN 0533-6716
[編集] 関連項目