東京湾炎上

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東京湾炎上
  • CONFLAGRATION[1]
  • THE EXPLOSION[2]
監督 石田勝心
脚本
原作 田中光二 『爆発の臨界』
製作
出演者
音楽 鏑木創
撮影 西垣六郎
編集 小川信夫
製作会社
配給 東宝[3][4]
公開 日本の旗 1975年7月12日[出典 1]
上映時間 100分[出典 2][注釈 1]
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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東京湾炎上』(とうきょうわんえんじょう)は、1975年昭和50年)7月12日に公開された日本特撮映画。制作は東宝映画・東宝映像、配給は東宝[2]。カラー、シネマスコープ[3][4]。同時上映は『がんばれ!若大将[2]

解説[編集]

石油を満載したタンカーシージャックしたテロリストやその脅威にさらされた乗組員たちの人間模様と、事態を秘密裏に解決するために情報操作を行う政府関係者を描いた、パニック映画である[7]

劇場公開当時は『日本沈没』や『ノストラダムスの大予言』などのパニック映画が流行していた[8]うえ、前年に発生した第十雄洋丸事件などの石油タンカー爆発事故が相次いでいたため、これらに影響を受けて制作された[9]。原作者の田中光二は、本作品の原作である『爆発の臨界』の取材のために『ノストラダムスの大予言』の特撮撮影現場を訪れており、東宝映像社長の田中友幸はその当時から映画化を検討していたという[10]

ヒロイン役の金沢碧は、本作品が映画初出演であった[1]

あらすじ[編集]

原油を満載して帰国の途についたマンモスタンカーのアラビアンライト号[注釈 2]浦賀水道を航行中、石油メジャー排除と資源ナショナリズムを主張するテロ集団にシージャックされる。テロ集団は、日本人のムンクを介してタンカーの原油タンクに時限爆弾を仕掛け、喜山CTS[注釈 3]を爆破したうえで、その様子をテレビ中継しなければ、東京湾の中央に停泊させたアラビアンライト号を爆破すると要求する。要求が事実である証拠に、24時間後に石油タンカーのうちの1隻が爆発すると予告する。

もしもアラビアンライト号が爆破されれば、積載された原油の気化で沿岸部のコンビナートも誘爆し、発生した有毒ガスで首都圏の住民はもちろん、行政・産業・交通も全滅する。一方、要求どおりに喜山CTSを爆破した場合は、アラビアンライト号の数十倍の原油によって鹿児島湾が死の海になると予測される。政府はすべての石油タンカーの洋上退避を指示し、人質解放の交渉のために時間を稼ぐが、その間に脱出を図った乗組員は射殺され、厨長の寺田の死と引き換えにテロ集団のメンバーの一部を拘束に成功する。そんな中、予告どおりに清水港のタンカー「さうじ丸」が爆破される。一向に進行しない事態に、対策本部長の葛城は、現地からの映像に特撮の爆破映像を合成してテロ集団を欺くことを提案する。喜山CTS附近を立ち入り禁止区域にし、映画監督を対策本部に招く。膠着した船内でも、拘束されたメンバーと人質の一部が交換され、テロ集団内に対立が深まりだす。

そして、ついに要求どおりに喜山CTS爆破の特別番組の放送が始まり、現地からの映像でも戦闘機の爆撃で石油タンクが次々と爆発していく。それは既存のパニック映画の映像を現地からの映像に合成した放送であり、葛城は作戦の成功を確信するが、現地で雨が降り出したことから、映像が合成であることがテロ集団に知られてしまう。リーダーのシンバは時限爆弾を起動させ、乗組員たちに退船するよう命じる。ところが、日本人に両親を虐殺されたメンバーが反発し、メンバー同士の銃撃戦になる。その最中に乗組員たちは反乱を起こし、テロ集団を全滅させる。

シンバが必死に隠滅しようとしたメモから、乗組員たちは仕掛けられた時限爆弾を撤去していくが、1個だけが外れて原油タンク内に落ちてしまったことが判明する。そこへ、万一に備えて液体内で行動できる特殊潜水服とソナーを持ち込んでいた、海上自衛隊特殊部隊が乗船してくる。潜水服を着た館は原油タンク内に潜り、時限爆弾を探し始める。残された時間は10分。はたして時限爆弾は見つかるのか。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

参照[3][4][8]

撮影[編集]

特撮映画であるがミニチュア撮影のシーンは少なく、炎上する東京湾のシーンは実景にセットで撮影した炎を合成したものである[10]。一方、メインの舞台となるアラビアンライト号は、特殊美術スタッフの井上泰幸によって全長7.2メートルの巨大なミニチュアが制作され[出典 6][注釈 10]、航行シーンはワイヤーを装着したトラックで牽引している[14][10]。井上は当初8メートルを要望していたが、制作部長からは2メートルと指示され、プロデューサーの田中友幸が間を取って4メートルで決着をつけたが、井上はこれを無視して7.2メートルで制作した[12][13][注釈 11]。井上は、水はごまかしが効かないため主役は大きくしないと画が保たないと述べており、実物を見た田中は意外に大きくなかったという感想であったという[12][13]

また、コンビナートや喜山CTSの爆発シーンでは、特技監督の中野昭慶が粘着性のある爆発にこだわり、石油タンクのセット内にさまざまな化学薬品や火薬を調合して仕込み、派手な大爆発を撮影している[10]。中野は、赤い炎では力感が生まれないが、実際に高温のように色のない炎ではかえってリアリティが出ないため、中間の色を意図したことを語っている[14]

アラビアンライト号の甲板・船内シーンの撮影には、山下新日本汽船のタンカーである山菱丸と若鶴丸を使用している。シージャッカー襲撃シーンの撮影は石油積載状態で行うと危険であるため、鉱石運搬兼用船の若鶴丸が鉱石のみを積んで停泊している2日間に集中して撮影された[10]

映像ソフト[編集]

  • VHS 品番 TG4536S[15]
  • DVD
    • 2005年11月25日、DVDが発売された。
    • 2013年11月8日、期間限定プライス版として再発売された。
    • 2015年8月19日、東宝DVD名作セレクションとして再発売された。

サウンドトラック[編集]

関連作品[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 東宝公式サイト映画資料室では、「87分」と記述している[3]
  2. ^ 本来は国際石油市場における中東産軽質原油のブランド名。
  3. ^ モデルとなったのは鹿児島県喜入町(現・鹿児島市)にある日本石油基地
  4. ^ 東宝公式サイト映画資料室では、石動達也と記述している[3]
  5. ^ 東宝公式サイト映画資料室では、広報官と記述している[3]
  6. ^ 東宝公式サイト映画資料室では熊本新報の記者[3]、書籍『東宝特撮映画全史』では鹿児島の記者[11]、書籍『東宝特撮映画大全集』では南国新報記者[8]と記述している。
  7. ^ 書籍『東宝特撮映画大全集』では、坂田機関士と記述している[8]
  8. ^ 書籍『東宝特撮映画大全集』では、テレビ局・技師と記述している[8]
  9. ^ 書籍『東宝特撮映画大全集』では、岩動を捕まえる刑事と記述している[8]
  10. ^ 資料によっては「10メートル」と記述している[6]
  11. ^ 減らした80センチメートルは田中への敬意であったという[13]

出典[編集]

  1. ^ a b c d ゴジラ画報 1999, p. 190, 「東京湾炎上」
  2. ^ a b c d e 東宝特撮映画大全集 2012, p. 188, 「『東京湾炎上』」
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2022年2月23日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g 東宝特撮映画全史 1983, p. 549, 「東宝特撮映画作品リスト」
  5. ^ a b c 動画王特別編集ゴジラ大図鑑 2000, p. 143, 「1970年代 東京湾炎上」
  6. ^ a b 東宝写真集 2005, p. 104, 「東京湾炎上」
  7. ^ GTOM vol.0 2022, p. 31, 「東京湾炎上」
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac 東宝特撮映画大全集 2012, p. 189, 「『東京湾炎上』作品解説/俳優名鑑」
  9. ^ 東宝特撮映画大全集 2012, p. 190, 「『東京湾炎上』兵器図録/資料館/撮影秘話-特別編-」
  10. ^ a b c d e 東宝特撮映画大全集 2012, p. 191, 「『東京湾炎上』撮影秘話/川北監督に訊く」
  11. ^ a b c d e f g h i j 東宝特撮映画全史 1983, p. 538, 「主要特撮作品配役リスト」
  12. ^ a b c 「COLUMN もうひとつの大セット主義」『平成ゴジラ大全 1984-1995』編著 白石雅彦、スーパーバイザー 富山省吾双葉社〈双葉社の大全シリーズ〉、2003年1月20日、67頁。ISBN 4-575-29505-1 
  13. ^ a b c d 東宝特撮メカニック大全 2003, p. 320, 「INTERVIEW 井上泰幸 髙木明法
  14. ^ a b 東宝特撮映画全史 1983, pp. 398–399, 「東宝特撮映画作品史 東京湾炎上」
  15. ^ 日本特撮映画図鑑 1999, p. 142, 「東宝特撮作品 ビデオLDラインナップ 特撮シリーズ」
  16. ^ 「平成ゴジラバーニング・コラム NO.010 平成ゴジラのライブフィルム」『平成ゴジラパーフェクション』監修:川北紘一、アスキー・メディアワークス〈DENGEKI HOBBY BOOKS〉、2012年2月10日、148頁。ISBN 978-4-04-886119-9 

出典(リンク)[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]