プロ野球を10倍楽しく見る方法

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プロ野球を10倍楽しく見る方法』(プロやきゅうをじゅうばいたのしくみるほうほう)は、1982年1月にKKベストセラーズから発売された元プロ野球選手江本孟紀の著書。

概要[編集]

前年の1981年8月に「ベンチがアホやから野球がでけへん」発言をきっかけに現役を引退した直後の江本孟紀が、現役時代に見聞きした球界の裏話をまとめた書籍[1]プロ野球暴露本の草分けとしてベストセラーになり、100万部以上を売り上げ1982年の年間2位の売上を記録した[1]。江本は「野球に関する報道は今まで偏ったものが多かった、変な衣で包まれたように伝わっている部分がある」といった思いのもと「野球選手も普通の人間だという面白みを知りたい欲求が強かったのでは」とヒットの原因を考察している[2]

KKベストセラーズの担当編集者は、細木数子の「六星占術シリーズ」なども手がけた名編集者の寺口雅彦。寺口は「最初江本があの発言(ベンチがアホやから野球がでけへん)をした時、社長(KKベストセラーズ創業者の岩瀬順三)から江本のところに行って来いと言われた」「他のマスコミは江本に球団の悪口を言わせたがっていたが、私はプロ野球の面白い話を書いてもらいたかった」「江本の東映フライヤーズ時代のことを覚えていたので、その点を話したら気に入られた」「『10倍楽しく見る方法』というタイトルは実は岩瀬が以前から温めており、誰に書かせるかは分からないが先に何本もタイトル案をストックしており、この本はタイトルと内容が見事にはまった」と述懐している[3]

本作のヒットを受け同年9月発売の『プロ野球を20倍楽しく見る方法』(同じくKKベストセラーズ)から[2]2005年11月発売の『プロ野球を10倍楽しく見る方法〈2006年版〉』(日本文芸社)まで発行元を変えながら、続編本が発売された。

この著書発売以降、野球に限らず各分野で「○倍楽しく見る方法」「○倍面白く見る方法」といった書籍が次々と出版された。

書籍シリーズ[編集]

※一部サブタイトル付きで表記(「―」(ダッシュ)以下に表記)。

KKベストセラーズより発売。
『ベストセラーシリーズ(ワニの本)』レーベルで発売。
  • プロ野球を10倍楽しく見る方法 ―抱腹絶倒! - 1982年1月
  • プロ野球を20倍楽しく見る方法 ―痛快無類! - 1982年9月
  • 帰ってきたプロ野球を10倍楽しく見る方法 ―もっと抱腹!さらに絶倒! - 1988年5月
『ワニ文庫』レーベルで発売
  • プロ野球を10倍楽しく見る方法 ―18回裏まで抱腹絶倒! - 1990年3月
日本文芸社より発売。
  • プロ野球を10倍楽しく見る方法〈2002年版〉 - 2002年3月
  • プロ野球を10倍楽しく見る方法〈2003年版〉 - 2002年12月
  • プロ野球を10倍楽しく見る方法〈2004年版〉 ―堀内巨人が浮上するための絶対条件 - 2003年12月
  • プロ野球を10倍楽しく見る方法〈2005年版〉 - 2004年12月
  • プロ野球を10倍楽しく見る方法〈2006年版〉 ―原第二次政権誕生で野球人気回復なるか - 2005年11月
徳間書店より発売。
  • 変革の檄文!プロ野球を100倍楽しくする方法 - 2018年9月

映画版[編集]

1983年1984年にかけて、上記の本などを原作とし、フィルムリンク・インターナショナルフジテレビジョンなどの製作によって映画化された。全2作で、配給は東宝東和。タイトルは『プロ野球を10倍楽しく見る方法』『プロ野球を10倍楽しく見る方法PART2』であった(後にそれぞれVHSソフトがポニー〔現:ポニーキャニオン〕から発売された)。

映画版は、当時の日本プロ野球アメリカ大リーグ珍プレー・好プレー映像集と『がんばれ!!タブチくん!!』(著:いしいひさいち)を原作とした日本プロ野球のギャグアニメ(キャラクター原案もいしいが担当)で構成されていた。

また、原作の江本も2作目のアニメパートにおいて本人役(中継番組の解説者)として登場している。当時のプロ野球ニュースを描いたシーンもあり、キャスターとして佐々木信也が、リポーターとしてみのもんたがそれぞれ登場している。

なお、タブチ(田淵幸一)役は『タブチくん』シリーズの西田敏行ではなく、増岡弘が担当している。

第1作目にはオートラマが協賛しているため、アニメシーンの随所(球場フェンスなど)にオートラマの広告がみられる。

テレビ放送での視聴率(ビデオリサーチ調べ)は第1作目(1984年4月6日『金曜ファミリーワイド』枠で放送)が21.2%[4]、第2作目(1985年4月11日放送)が13.0%[4]を記録した。

第1作[編集]

プロ野球を10倍楽しく見る方法
監督 鈴木清
芝山努(アニメーション)
小林治(作画)
脚本 石原純一岩井田利治
製作 山本又一朗
フィルムリンク・インターナショナル東和プロダクションフジテレビジョン(提携)
製作総指揮 鹿内春雄
出演者 佐々木信也みのもんた玉置宏(声の出演)
音楽 大谷和夫
主題歌 浅沼友紀子「憧れはオクターブハイの空へ」
撮影 長谷川肇小林健一[要曖昧さ回避]
編集 鶴渕允寿高橋和子
配給 東宝東和(提供)
公開 日本の旗 1983年4月29日
上映時間 97分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 10億8000万円[5]
次作 プロ野球を10倍楽しく見る方法PART2
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第1作の構成[編集]

声の出演[編集]

アニメパート
実況アナウンサー(いずれもニッポン放送アナウンサー)
ナレーター

スタッフ[編集]

オープニングでのクレジット
エンディングでのクレジット

協力[編集]

※エンディングのクレジットより参照。

第2作[編集]

プロ野球を10倍楽しく見る方法PART2
監督 鈴木清
出崎哲(アニメーション)
脚本 石原純一岩井田利治
製作 山本又一朗
フィルムリンク・インターナショナルフジテレビジョンニッポン放送(共同製作)
東和プロダクション東宝東和(提供)
製作総指揮 鹿内春雄
出演者 江本孟紀佐々木信也みのもんた玉置宏(声の出演)
音楽 馬飼野康二
主題歌 オープニング:南こうせつ「ワイルド・ワン」
エンディング:南こうせつ「ナイス・ゲーム」
撮影 大岡新一石渡均中津伸治
編集 小倉昭夫田口秀夫井上和夫
配給 東宝東和
公開 日本の旗 1984年4月21日
上映時間 105分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 3億3200万円[6]
前作 プロ野球を10倍楽しく見る方法
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基本的に第1作目と同じ構成である。1983年当時の日本プロ野球関連の映像を中心に構成された。また、先述のように江本が(エモト役として)アテレコ参加したのをはじめ、声優陣が若干変更されている。江本の他に南海のアナブキ監督役を俳優でレポーターの村上不二夫がアフレコをしている。前作のエモト役の羽佐間は西武ライオンズのヒロオカ(広岡達朗)監督役として出演。実写パートでの広岡の抗議シーンでも声を当てている。また、アニメパートのエモトの顔も変更されている。ちなみに当時のヤクルトスワローズのヤスダ(安田猛)コーチは前作のたてかべ和也から青野武に変更。ナレーションは中江真司。スペシャルゲストには「1回オモテ…陽気なアメリカン」と「5回オモテ…海を越えたファイターたち 」のナレーションにはDJで国際タレントの小林克也、「8回ウラ…燃えよ!パシフィック」には芸人でタレントのレオナルド熊が出演する。アニメーション制作は第1作目の東京ムービー新社からマジックバススタジオ・ルックに変更された。深澤弘監修。

第2作の構成[編集]

  • 1回オモテ…陽気なアメリカン
    • メジャーリーグベースボールの珍プレー・好プレー映像集。スペシャルゲストの小林克也がナレーションを担当。
  • 2回ウラ…プロ野球ニュース(アニメ)
    • プロ野球ニュースのパロディ。3編のショートギャグエピソードで構成されている。レポーターはみのもんた。 
    • 「ドラフト」ドラフト会議で指名順位1番手を抽選で獲得した阪神タイガースだったが、指名したのは…。
    • 「ナカハタとコマダ」ナカハタが若手でポジションが同じ一塁手の若手コマダにライバル意識を燃やすが、阪急ブレーブスとのオープン戦中に、ナカハタが暴走し、コマダへの妨害行為が試合を目茶苦茶にしてしまう。
    • 「鉄人キヌガサ」キヌガサが人間離れした身体の丈夫さを見せつけるが、思わぬ弱点があった。
  • 3回オモテ…ゆかいなスーパーヒーローたち
    • 日本プロ野球の珍プレー・好プレー映像集。
  • 4回ウラ…ザ・マンボスペシャル(アニメ)
    • チョンボ(ミス)をテーマにしたショートギャグ集。
    • 「崩れ去るエガワ」エガワが、やる気のないシノヅカハラのエラー、逆にやる気のあり過ぎるナカハタの守備によって、ノックアウトされてしまう。
    • 「ベジタリアンヒロオカ」表向きには菜食主義者で通しているヒロオカが、自宅ですき焼きを食べようとした所に、タブチがやってくる。
    • 「タケガミの苦悩」低迷を極めていたヤクルトスワローズに監督のタケガミが頭を悩ませる。
  • 5回オモテ…海を越えたファイターたち
    • 日本プロ野球外国人選手の珍プレー・好プレー映像集。この回のナレーションも小林克也が担当。
  • 6回ウラ…激突!セントラル(アニメ)
    • セントラルリーグ選手のギャグエピソード。
    • 「マツモトを止めろ!」俊足のマツモトの盗塁を阻止するため、隠し球作戦を行うウノだが、空回りに終わってしまう。
    • 「カケフの不思議なバット」自分のバットに話しかけるカケフに、エガワはカケフのバットが生き物なのではないかと疑い始める。
    • 「ポジティブナカハタ」凡打に倒れてもエラーをしても、チーム(巨人)が惨敗しても異常に前向きで明るいナカハタに、タシロを始め大洋ナインは困惑する。
  • 7回オモテ…マイクロフォン野球
    • 選手にマイクロフォンをつけてもらい、その会話を交えながら試合の模様を送る。試合は横浜スタジアムでの横浜大洋ホエールズ対ロッテオリオンズオープン戦。実況・ナレーターは前作に引き続き、ニッポン放送アナウンサーの深澤弘。試合は22対4でロッテの圧勝であり、特にロッテの6回表の攻撃は1イニング13得点(オープン戦新記録)となった。大洋の守備陣にミスが相次ぎ、前年わずか盗塁1個の袴田英利がこの試合だけで3盗塁をマークする等、ひたすらロッテの攻撃と大洋の守備のシーンのみであった。
  • 8回ウラ…燃えよ!パシフィック(アニメ)
    • 西武ライオンズの独走状態に対し打倒西武に苦闘する西武以外のパシフィックリーグ5球団を描く。この回は南海のアナブキ監督が中心の話で西武以外のパシフィックリーグの他球団のトレーニング方法や作戦や打法などの視察と研究し、他球団の試合方法と作戦と戦いを観戦し、それでも苦戦し、くじけずに打倒西武を目指す様子を描く。アナブキ、ウエダオカモトイナオウエムラの5監督が在京テレビ局の番組に出演した帰り道に出会った、(ナンバ球場の花売り娘、川崎球場のたこ焼き屋のおじさんと共にセ・リーグの球場へ引っ越すという)カワチ球場の靴磨き少年の父親役としてレオナルド熊(容姿は本人似)が出演している。
  • 9回オモテ…1983神話

声の出演[編集]

実況アナウンサー(いずれもニッポン放送アナウンサー)
ナレーター
スペシャルゲスト

スタッフ[編集]

オープニングでのクレジット
エンディングでのクレジット

協力[編集]

※エンディングのクレジットより参照。

備考[編集]

当シリーズ公開から10年後の1994年TBS製作により、当シリーズのテーマをプロサッカーJリーグに置き換える形で『Jリーグを100倍楽しく見る方法!!』が公開された。この作品でも、いしいのキャラクター原案によるアニメが制作された。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 昭和56年~"ブロックバスター"は何処へ - 塩澤実信「定本ベストセラー昭和史」(Discover21 2022年)
  2. ^ a b 著者とその本「プロ野球を10倍楽しく見る方法」の江本孟紀氏 - 新刊展望1982年9月号(日本出版販売
  3. ^ 「プロ野球を10倍楽しく見る方法」の編集者・寺口雅彦氏(東京都在住)に聞く - にいがた経済新聞
  4. ^ a b 週刊東洋経済』1986年8月2日号、122頁。
  5. ^ 1983年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  6. ^ 「邦画フリーブッキング配収ベスト作品」『キネマ旬報1985年昭和60年)2月下旬号、キネマ旬報社、1985年、119頁。 

外部リンク[編集]