コン・ティキ

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コン・ティキ
Kon-Tiki
監督 ヨアヒム・ローニング
エスペン・サンドベリノルウェー語版
脚本 ペッター・スカヴランノルウェー語版
アラン・スコット英語版
製作 ジェレミー・トーマス
Aage Aaberge
製作総指揮 クリストフ・ダニエル
Lone Korslund
マルク・シュミットハイニー
ペッター・スカヴラン
Johan Christopher Stenersen
ダリオ・ズーター
ピーター・ワトスン
Henrik Zein
ハラルド・ズワルト
出演者 ポール・スヴェーレ・ハーゲン英語版
アンドレス・バースモ・クリスティアンセン英語版
オッド・マグナス・ウィリアムソン英語版
アグネス・キッテルセン英語版
グスタフ・スカルスガルド
ヤーコブ・オフテブロ
トビアス・サンテルマン
音楽 ヨハン・セデルクヴィスト
撮影 ガイア・ハルトリ・アンドレセン英語版
編集 Per-Erik Eriksen
マーティン・ストルツ
製作会社 ノルディスク・フィルム英語版
配給 日本の旗 ブロードメディア・スタジオ
公開 ノルウェーの旗 2012年8月24日
日本の旗 2013年6月29日
上映時間 118分
製作国  ノルウェー
言語 英語
ノルウェー語
製作費 93,000,000クローネ
(約US$15,500,000[1]
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コン・ティキ』(Kon-Tiki)は、2012年ノルウェー歴史映画である。監督はヨアヒム・ローニングエスペン・サンドベリノルウェー語版であり、1947年のコンティキ号の航海を描いている。トール・ヘイエルダールを演じるのはポール・スヴェーレ・ハーゲン英語版である。2012年のノルウェー映画では最大のヒット作であり、同国史上最高の製作費がかけられている[2]

第85回アカデミー賞では外国語映画賞にノルウェー代表として出品され、ノミネートされた[3]。ノルウェー映画の同賞へのノミネートは、史上5例目である[4]。また、第70回ゴールデングローブ賞外国語映画賞にもノミネートされた[5]。ノルウェー映画がアカデミー賞とゴールデングローブ賞に同時にノミネートされるのは、史上初である[6]

キャスト[編集]

撮影[編集]

撮影はノルウェーマルタブルガリアタイアメリカ合衆国[7]スウェーデンモルディブ[8][9]で3か月半にわたって行われた[10]。映画製作者は海洋場面をセットではなく本物の海で撮影し、そして実際に海で撮ることによって発生する「独特の難問」が映画を良くすると主張した[11]

公開[編集]

2012年8月18日にハウゲスンの第40回ノルウェー国際映画祭英語版でプレミア上映された[12]

北米では第37回トロント国際映画祭で上映された[13]後、ワインスタイン・カンパニーが配給権を購入した[14]

受賞とノミネート[編集]

映画祭・賞 部門 候補 結果
アカデミー賞[15] 外国語映画賞 『コン・ティキ』 ノミネート
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞 『コン・ティキ』 ノミネート
ノルウェー国際映画祭英語版[16] 観客賞 『コン・ティキ』 受賞
サテライト賞[17] 外国語映画賞 『コン・ティキ』 ノミネート
音響賞 Baard H. Ingebretsen
Tormod Ringes
ノミネート

歴史的な正確さ[編集]

ストーリーの多くは歴史的に正確だが、脚本家のペター・スカヴランとヨアヒム・レニングは、2時間の長編映画のストーリーをよりエキサイティングにする必要性を感じて、改変を行っている[18][19]

映画の中の、架空の場面は批判をされている。映画評論家Andrew Barkerは以下のようにコメントした。「映画Kon-Tikiの最も驚異的で幻想的な場面は、検証が可能で、最も予測可能である「乗組員たちの日々の争い」が、完全にでっちあげられていることである」[20]

重要な不正確さとして、キャストに先住民のポリネシア人がいないことがあげられる。ヘイエルダールのFatu Hivaに関する経験を描写したシーンは、ネイティブ・ポリネシア人に似ていないタイのエキストラが登場しており、マルケサス諸島では典型的ではない槍を持っている[21]。また、旧フランス領ポリネシアには存在しない、植物や技術を使った藤かごを編んでいる[22]

この映画は、ポリネシアにペルーから移民がされたという、ヘイエルダールの理論に焦点を当てているが、ノルウェー人による自民族中心主義な思想を無視している。元来のKon-Tikiの航海は、赤い髪で、皮膚が白く、ひげのある人々によって行われたとされる。ヘイエルダールは、アステカやインカのようなアメリカ大陸の高度な文明は、コロンブス以前の初期のヨーロッパからの航海者によってもたらされた、高度な技術知識の助けを借りて生じたものであるとしている。ヘイエルダールは、これらの白人は最終的にペルーから追い出され、筏で西に逃げたと考えた[23]

この映画には、「ガラパゴス諸島の巨大渦巻」に吸い込まれることを心配している乗組員がいる。この渦巻はエドガー・アラン・ポーの短編小説「メエルシュトレエムに呑まれて」からイメージされている。9マイル離れた場所から聞こえる轟音の場面は、ポーの小説から直接取り上げられている。ヘイエルダールはガラパゴスの近くの「危険な渦」を知ってはいたが、彼の主な心配は「強い海流」が中米に向かって筏を送り込むことだった[24]

ノルウェーでは、筏の副隊長だったヘルマン・ワッツィンゲルの人物描写が論争を呼んだ[25]。彼の仕事仲間や親族は、この映画のワッツィンゲルは実際のワッツジンゲルと、肉体的にもまた行動においても、異なっていると語った。ワッツィンゲルを演じた俳優のバズモ・クリスチャンセンは、笑顔で肉体的な違いを認め「ワッツィンゲルは背が高く、日焼して、そして100メートル競走のノルウェーでのユース・チャンピオンだった。彼はまったく僕と違う」と語った[19]

この映画では、ワッツィンゲルはヘイエルダールの命令に反し、ボートの下のジンベイザメに小さな銛を投げるが、それは実際には、Erik Hesselbergが行ったことだった[26]

映画のワッツィンゲルは、縄のロープがバルサの丸太を結んでいる能力を心配し、泣ぎながらヘイエルダールに、鋼のケーブルを利用するように頼む。この映画でのワッツィンゲルは、自分の荷物の中にケーブルをこっそり持ち込んでいたが、ヘイエルダールの本にはそのような場面はない。ワッツィンゲルの娘は「私の父は信念を持った男でした。そして、彼はバルサの丸太とロープについては、まったく心配しなかったのです」と語った。ワッツィンゲルと仕事をしたことがあるThor Heyerdahl Jr.は、この映画のワッツィンゲルの描写に対する批判に同意した[19]

ヘイエルダールの原作からの他の小さな変更点として、この映画では、ペットのオウムがサメに食べられている(実際のオウムは、筏への大きな波でさらわれた)[27]

また、この映画では、ペルーに到着して筏を建造すると、クルーたちは簡単に米軍に接触して資材を手にいれている。ヘイエルダールは実際は、ペルーへの旅の前にペンタゴンを訪問し、装備を手配していた[28]

出典[編集]

  1. ^ KON-TIKI – Norges neste Oscarkandidat?”. Inmagasinet.no/ (2012年). 2012年8月22日閲覧。
  2. ^ Roxborough, Scott (2012年9月14日). “Norway Names 'Kon-Tiki' Oscar Entry”. 2013年1月13日閲覧。
  3. ^ Oscars: Hollywood announces 85th Academy Award nominations”. BBC News. 2013年1月10日閲覧。
  4. ^ ABC. “Foreign Language Film - KON-TIKI”. 2013年1月13日閲覧。
  5. ^ http://www.deadline.com/2012/12/golden-globe-awards-nominations-2013/
  6. ^ Ryland, Julie (2013年1月11日). “Norwegian film "Kon Tiki" nominated for Oscar”. The Norway Post. 2013年1月11日閲覧。
  7. ^ Screen reports Kon-Tiki shoot underway in Norway” (2011年5月24日). 2013年1月11日閲覧。
  8. ^ Ovations greet new ‘Kon-Tiki’ film”. Views and News from Norway (2012年8月19日). 2013年1月11日閲覧。
  9. ^ IMDB Filming Locations”. 2013年4月4日閲覧。
  10. ^ Cooper, Sarah. “It will be the world premiere of the Norwegian film about the real life Pacific expedition of 1947, directed by Joachim Rønning and Espen Sandberg.”. 2013年1月13日閲覧。
  11. ^ Trailer & Klipp - Blog 2”. Nordisk Film. 2013年1月13日閲覧。
  12. ^ Magnificent festival opening with Kon-Tiki”. 2013年1月13日閲覧。
  13. ^ Enk, Bryan. “Golden Globes: ‘Kon-Tiki’ emerges as this year’s unknown nominee … and dark horse contender”. Yahoo! Movies. 2013年1月13日閲覧。
  14. ^ Weinstein Company Acquires Rights To ‘Kon-Tiki’”. Deadline.com (2012年11月7日). 2013年1月11日閲覧。
  15. ^ The Nominees”. 2013年1月13日閲覧。
  16. ^ News”. The Norwegian International Film Festival. 2013年1月13日閲覧。
  17. ^ International Press Academy. “2012 Winners”. 2013年1月13日閲覧。
  18. ^ “Filmen er en krenkelse av enkeltpersoner”. VG. (2012年8月21日). http://www.vg.no/rampelys/artikkel.php?artid=10052525 2013年6月18日閲覧。 
  19. ^ a b c Furuly, Jan Gunnar (2012年8月19日). “Kon-Tiki gir et grovt uriktig bilde av min far”. Aftenposten. http://www.aftenposten.no/kultur/--Kon-Tiki-gir-et-grovt-uriktig-bilde-av-min-far-6969019.html 2013年6月18日閲覧。 
  20. ^ Barker, Andrew (2012年9月8日). “Review: "Kon-Tiki"”. Variety. https://variety.com/2012/scene/reviews/kon-tiki-1117948251/ 2013年6月19日閲覧。 
  21. ^ Linton, Ralph (1923年). “Material Culture of the Marquesas Islands”. Bishop Museum Press 
  22. ^ Arbeit, Wendy (1990年). “Baskets in Polynesia”. University of Hawaiʻi Press 
  23. ^ Heyerdahl, Thor (1950). Kon-Tiki. Chicago: Rand McNally. pp. 120–127 
  24. ^ Heyerdahl, Thor (1950) (English). Kon-Tiki. Chicago: Rand McNally. p. 73 
  25. ^ Oftestad, Eldrid (2012年8月20日). “Filmeksperter: Fritt frem for å ta seg friheter” (Norwegian). Aftenposten. http://www.aftenposten.no/kultur/Filmeksperter-Fritt-frem-for-a-ta-seg-friheter-6969640.html 2013年6月19日閲覧。 
  26. ^ Heyerdahl, Thor (1950). Kon-Tiki. Chicago: Rand McNally. p. 82 
  27. ^ Heyerdahl, Thor (1950) (English). Kon-Tiki. Chicago: Rand McNally. p. 133 
  28. ^ Heyerdahl, Thor (1950) (English). Kon-Tiki. Chicago: Rand McNally. pp. 27–30 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]