キャスト・アウェイ

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キャスト・アウェイ
Cast Away
監督 ロバート・ゼメキス
脚本 ウィリアム・ブロイルズ・ジュニア英語版
製作 スティーヴ・スターキー
トム・ハンクス
ロバート・ゼメキス
ジャック・ラプケ英語版
出演者 トム・ハンクス
ヘレン・ハント
ニック・サーシー
音楽 アラン・シルヴェストリ
撮影 ドン・バージェス
編集 アーサー・シュミット
製作会社 ドリームワークス
20世紀フォックス映画
イメージムーバーズ
プレイトーン英語版
配給 アメリカ合衆国の旗 20世紀フォックス映画
日本の旗 ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ
公開 アメリカ合衆国の旗 2000年12月22日
日本の旗 2001年2月24日
上映時間 144分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $90,000,000[1]
興行収入 世界の旗 $429,632,142[1]
アメリカ合衆国の旗カナダの旗 $233,632,142[1]
日本の旗 33億円[2]
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キャスト・アウェイ』(Cast Away)は、2000年アメリカ合衆国サバイバルドラマ映画

監督・製作はロバート・ゼメキス、脚本はウィリアム・ブロイルズ・ジュニア英語版が務め、トム・ハンクスヘレン・ハントニック・サーシーが出演している。

フェデックスのシステムエンジニアを乗せた飛行機が太平洋で墜落し、無人島に辿り着いた彼が帰還するまでの4年間の姿を描いている。

興行収入は4億2960万ドルを記録し、主演のトム・ハンクスはアカデミー主演男優賞にノミネートされた[3]

ストーリー[編集]

撮影地のモヌリキ島
プロローグ
1995年12月。チャック・ノーランドトム・ハンクス)はフェデックス倉庫の生産性解決に世界中を飛び回るシステムエンジニアである。彼はテネシー州メンフィス在住のケリー・フレアーズヘレン・ハント)と長年付き合っている。
親族と過ごすクリスマスの最中、チャックはマレーシアでのトラブル解決のため呼び出される。ところが悪天候のため、彼の乗った貨物機太平洋に墜落してしまう。彼は沈みゆく機体からただ一人脱出し、緊急用救命ボートに乗り込み意識を失う。
序盤
一夜明け気付くと、チャックはある島の海岸に漂着していた。彼が島を探検すると、無人島であることが判明する。墜落機の積荷が何箱も海岸に漂着する。はじめは、救助信号を砂浜に描き、救命ボートの残骸で脱出を試みるが、高波に阻まれ失敗する。食料・水・住処となるべき場所を探し、荷物の箱を開封して使えそうな物を選り分ける。ただ一つ、天使の羽が描かれた箱だけは開けずにおく。
火を起こす時に手に負った怪我に怒り、ウイルソン製のバレーボールを投げつける。表面に付いた血痕を利用してボールに顔を描き、ウィルソンと名付け話友達とする。ある夜、自分が見つかるには救助機はテキサス州の2倍の広さを捜索する必要があると判明し、救出の希望を失う。
中盤
4年後。チャックは槍で魚を獲り火も使い慣れるなど、島の不便な暮らしに適応している。ウィルソンには絶えず話しかけ、時には当たり散らすなど、ボールが唯一の仲間となっている。
ある日、仮設トイレの板が流れ着き、それを帆にして筏を作ることを決める。航海に適した天候を見計らい、ウィルソンを従え島から脱出し、高波も突破する。しばらく漂流した後、暴風雨に襲われ筏は骨組みだけとなる。
翌日、眠っている間にウィルソンは海に落ち、筏から遠退いて行く。目を覚ましたチャックが後を追いかけるが、命綱の範囲では手が届かず救出を断念する。筏に戻りウィルソンを失ったことに慟哭する。その後、漂流中に通りかかった貨物船に発見され救出される。
終盤
元の社会に戻り、チャックは奇跡の生還者として周囲の祝福を受けるも、遭難中に自分が故人となっていたことを知る。親族は葬式を済ませ、ケリーはチャックの歯科医ジェリー・ロベット(クリス・ノース)と再婚し娘がいる。やがてケリーと再会し互いに愛を確かめるが、ケリーには新しい家庭があり、元の生活には戻れないことを知り、念を残しつ保管していた車を受け取り走り去る。後を追いかけてきたケリーを送り返す。
その足で同僚のスタン(ニック・サーシー)を訪れ、遭難からそれまでの経緯を語る。
エピローグ
しばらく後、チャックは別のバレーボールを手に入れ、天使の羽の箱を送り主ベッティーナ・ピーターソン(ラリ・ホワイト)に届けにテキサス州カナディアンに向かう。届け先不在のため、感謝するメモ書きを添えて戸口に箱を置いて去る。
十字路にて行き先に迷っていると、親切な女性が車を止め道案内をする。彼女が走り去る際、チャックは箱と同じ天使の羽が車の後部に描かれていることに気付く。一人になったチャックは各行き先を眺め、それから女性の車が走り行く方を見て穏やかに微笑む。

キャスト[編集]

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スタッフ[編集]

製作[編集]

撮影[編集]

私が『キャスト・アウェイ』を製作しようと思ったのは、食物・水・小屋・火・会社など生きるために必要なものが何もない状態という絶望的な4年間のコンセプトを検証してみたかったからです。ですが、その検証を実行するためのアライアンスを組むのには6年の歳月がかかりました。私もビル・ブロイルズ英語版も、それぞれ1/3ずつの資金しか持ち合わせていなかったのですが、ボブ・ゼメキスが合流して残りの1/3の資金を用意してくれたのです。この映画には原案があったのです。フェデックスの記事を読んでいたら、貨物を満載にした747が1日に3回も太平洋を横断していることが分かりました。そして、同時に「もし事故が起きたらどうなるだろう?」と思ったのです。
—トム・ハンクス、キャスト座談会にて(2017年)[4]

1999年1月18日から撮影がスタートするが、2か月後に撮影が中断した。2000年4月3日から撮影が再開され、1か月後に完了した。主演のトム・ハンクスは役作りのために体重を23キログラム増量し、撮影の大半が終了した後に「数年間無人島で暮らした姿」を作るために体重を減量し、さらに髪と髭を伸ばした。この役作りのために前述の通り撮影が一時中断された。また、最後の帰還シーンを撮影する前に4か月間撮影が中断されている。中断期間中、監督のロバート・ゼメキスは『キャスト・アウェイ』のスタッフを動員して『ホワット・ライズ・ビニース』を撮影した[3][5]。舞台となる無人島のシーンは、フィジーママヌザ諸島にあるモヌリキ島英語版で撮影された[6]

フェデックスは撮影に全面協力し、メンフィスロサンゼルスモスクワの貨物集積所での撮影を許可した他、飛行機・トラック・制服を撮影チームに提供した。『キャスト・アウェイ』はフェデックス社の飛行機で死亡事故が発生する描写があったが、同社の基本理念やグローバルな事業展開、為せば成るの精神などを強調した脚本が同社では評価された[7]。製作に関してフェデックスは2年以上にわたり関与しており、また製作側の依頼で同社CEOフレッド・スミス英語版が本人役で出演することになり[7]、メンフィス本社で撮影されたチャックの帰還セレモニーのシーンに登場している。フェデックスは作中のプロダクトプレイスメントについては金銭の支払いはしていなかったが[8]、映画公開後にアジア・ヨーロッパでのブランド認知度が上昇したという[9]

音楽[編集]

映画音楽の作曲はアラン・シルヴェストリが手掛けている。無人島のシーンでは音楽や鳥・虫などの鳴き声が挿入されていないが、ゼメキスによると、これはチャックの無人島における孤立感を強める意図があったという[10]。公式サウンドトラックは歴代のゼメキス作品、シルヴェストリ作曲作品を集めたアンソロジーCDとなっており、『キャスト・アウェイ』の楽曲はエンディングテーマのみが収録されている[11]

バレーボールのウィルソン[編集]

作中に登場するバレーボールのウィルソンは、チャックが作り出した擬人化イマジナリーフレンドであり、無人島での4年間の生活の中におけるチャックの相棒である[12][13][14]。ウィルソンはスポーツ用品製造企業ウイルソン・スポーティング・グッズにちなんで名付けられ、ウィリアム・ブロイルズ・ジュニアによって創造された。彼は脚本の構想を練る中で、サバイバル専門家に相談して1週間カリフォルニア湾の孤立した浜辺に自分を置き去りにしてもらい、一人で小屋を確保して水・食料を探す経験をした。その際、海岸に流れ着いたバレーボールを見てウィルソンのインスピレーションを得たと語っている。脚本上の観点からは、登場人物が一人しかいない状況で違和感なくチャックに台詞を言わせる役割を果たしている[15][16]

映画で使用したバレーボールはオークションに出品され、フェデックスオフィスの元CEOケン・メイ英語版が1万8500ドルで落札したと言われているが、これは事実ではない[17]。『キャスト・アウェイ』の公開後、ウイルソン・スポーティング・グッズは自社製品がトム・ハンクスと「共演」したことに着目したプロモーションを展開し、ウィルソンの顔を再現したバレーボールを販売した。このバレーボールは公開時に限定販売されたが、現在でも同社公式ウェブサイトで販売している[18]

評価[編集]

興行収入[編集]

『キャスト・アウェイ』は北米2774劇場で上映され、公開週末の興行収入は2890万ドル(1館平均1万412ドル)を記録した[19]。クリスマス休暇の4日間で3990万ドルの興行収入を記録している[20]。その後も好調な興行収入を維持し、最終興行収入は国内2億3360万ドル、海外1億9600万ドル、合計4億2960万ドルを記録している[1]

批評[編集]

Rotten Tomatoesには157件の批評が寄せられ支持率89%、平均評価7.4/10となっており、「欠点もあるが魅力的な『キャスト・アウェイ』は知的な脚本、ロバート・ゼメキスの最も成熟した演出、そしてトム・ハンクスの見せ場のある演技を提供している」と批評している[21]Metacriticでは32件の批評に基づき73/100のスコアを与え[22]CinemaScoreでは「B」評価となっている[23]

シカゴ・サンタイムズロジャー・イーバートは3/4の星を与えてトム・ハンクスの「『キャスト・アウェイ』の上映時間の2/3の時間を一人で担った素晴らしい仕事」を高く評価し、「決して無理をせず、あり得ないシチュエーションでも常に説得力があり、スクリーン上に誰もいない中で身振り手振りを通して私たちの共感を得た」と批評したが、一方で「強くてシンプルなストーリーが不必要で複雑な要素に囲まれ、ラストで期待を裏切り、無理矢理な気まぐれで終わるという欠点がある」と指摘している[24]

受賞・ノミネート[編集]

映画賞 部門 対象 結果 出典
第73回アカデミー賞 主演男優賞 トム・ハンクス ノミネート [25]
録音賞 ランディ・トムトム・ジョンソンデニス・S・サンズ英語版ウィリアム・B・カプラン英語版
第54回英国アカデミー賞英語版 主演男優賞 トム・ハンクス [26]
第6回放送映画批評家協会賞英語版 無生物賞 ウィルソン 受賞 [27]
第58回ゴールデングローブ賞 映画部門 主演男優賞 (ドラマ部門) トム・ハンクス [28]
2001年MTVムービー&TVアワード英語版 アクションシークエンス賞英語版 飛行機墜落シークエンス ノミネート
キス賞英語版 トム・ハンクス、ヘレン・ハント
デュオ賞英語版 トム・ハンクス、ウィルソン
演技賞 トム・ハンクス
第7回全米映画俳優組合賞 主演男優賞 [29]
第44回グラミー賞 最優秀インストゥルメンタル作曲賞英語版 アラン・シルヴェストリ「Cast Away End Credits」 受賞
第23回スティンカーズ最悪映画賞英語版 最も苛立たしいプロダクト・プレイスメント賞 フェデックスとウィルソン [30]

出典[編集]

  1. ^ a b c d Cast Away (2000)”. Box Office Mojo. 2009年12月1日閲覧。
  2. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)610頁
  3. ^ a b Kehr, Dave (2000年12月17日). “'Cast Away' Director Defies Categorizing”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2000/12/17/movies/film-cast-away-director-defies-categorizing.html 2012年10月18日閲覧。 
  4. ^ Galloway, Stephen (2017年11月30日). “Actor Roundtable: Tom Hanks, James Franco and More on 'Predators Everywhere' and Secrets of 'Legends'”. The Hollywood Reporter. 2018年10月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年12月8日閲覧。
  5. ^ Cast Away”. American Film Institute. 2021年3月26日閲覧。
  6. ^ Fiji. Korina Miller, Robyn Jones, Leonardo Pinheiro. Lonely Planet. (2003). p. 54. ISBN 1-74059-134-8. https://archive.org/details/fiji00kori_0/page/54 2021年9月14日閲覧。 
  7. ^ a b “'Cast Away' Delivers Goods For Fedex”. Chicago Tribune. (2001年). http://articles.chicagotribune.com/2001-01-08/features/0101080173_1_fedex-spokeswoman-product-placement-fedex-corp 2021年9月14日閲覧。 
  8. ^ “Stranded: Behind-the-Scenes of Cast Away, A comprehensive behind-the-scenes look at Cast Away”. Stumped Magazine. (2004年). オリジナルの2011年7月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110716160557/http://stumpedmagazine.com/Articles/stranded.html 2009年12月27日閲覧。 
  9. ^ “A look at some of the biggest hits in film and TV product placement”. The Hollywood Reporter. (2005年4月28日). オリジナルの2006年9月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20060903172648/http://www.hollywoodreporter.com/thr/film/feature_display.jsp?vnu_content_id=1000901395 2007年11月25日閲覧。 
  10. ^ Cast Away DVD director's commentary
  11. ^ Cast Away: The Films of Robert Zemeckis and the Music of Alan Silvestri”. allmusic. 2009年6月2日閲覧。
  12. ^ Cast Away lets Hanks fend for himself”. Detroit News. (2000年12月22日). http://nl.newsbank.com/nl-search/we/Archives?p_product=DTNB&s_site=detnews&f_site=detnews&f_sitename=Detroit+News%2C+The+%28MI%29&p_multi=DTNB&p_theme=gannett&p_action=search&p_maxdocs=200&p_topdoc=1&p_text_direct-0=0F7502916F603973&p_field_direct-0=document_id&p_perpage=10&p_sort=YMD_date:D&s_trackval=GooglePM 2008年11月26日閲覧。 
  13. ^ Nate Smith (2001年1月7日). Cast Away proves great films still exist”. Daily Gazette. http://nl.newsbank.com/nl-search/we/Archives?p_product=SDGB&p_theme=sdgb&p_action=search&p_maxdocs=200&p_topdoc=1&p_text_direct-0=1110F27098BA70F3&p_field_direct-0=document_id&p_perpage=10&p_sort=YMD_date:D&s_trackval=GooglePM 2008年11月26日閲覧。 
  14. ^ Vanneman, Alan. “The Volleyball in the Void”. Bright Lights Film Journal. 2013年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年11月26日閲覧。
  15. ^ Hepola, Sarah (2000年12月29日). “Lost at Sea and Back Again”. The Austin Chronicle. 2021年9月15日閲覧。
  16. ^ Natale, Richard (2000年12月20日). “Casting About”. Los Angeles Times. オリジナルの2015年4月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150418162919/http://articles.latimes.com/2000/dec/20/entertainment/ca-2136/2 2015年4月9日閲覧。 
  17. ^ VanHooker, Brian (2020年4月17日). “What Would Have Happened to Wilson After”. 2021年9月15日閲覧。
  18. ^ Wilson Cast Away Volleyball”. Wilson Sporting Goods. 2014年4月27日閲覧。
  19. ^ Weekend Box Office Results for December 22-24, 2000”. Box Office Mojo. 2015年4月9日閲覧。
  20. ^ Weekend Box Office Results for December 22-25, 2000”. Box Office Mojo. 2015年4月9日閲覧。
  21. ^ Cast Away (2000)”. 2021年9月15日閲覧。
  22. ^ Cast Away”. Metacritic. 2015年4月9日閲覧。
  23. ^ Find CinemaScore” (Type "Cast Away" in the search box). CinemaScore. 2020年7月25日閲覧。
  24. ^ (英語) Cast Away movie review and film summary (Roger Ebert), https://www.rogerebert.com/reviews/cast-away-2000 2021年6月14日閲覧。 
  25. ^ The 73rd Academy Awards (2001) Nominees and Winners”. Academy of Motion Picture Arts and Sciences. 2012年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年11月19日閲覧。
  26. ^ Wolf, Matt (2001年2月26日). “'Gladiator' Gets 5 British Awards”. Topeka Capital-Journal. Associated Press. オリジナルの2017年1月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170109184339/http://cjonline.com/stories/022601/new_britawards.shtml 2013年10月9日閲覧。 
  27. ^ The 6th Critics' Choice Movie Awards Winners and Nominees”. Broadcast Film Critics Association. 2012年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月15日閲覧。
  28. ^ Breznican, Anthony (2001年1月22日). “A 'Gladiator's' Triumph; 'Famous,' Tom Hanks, Julia Roberts Also Win Golden Globes”. The Washington Post. オリジナルの2013年11月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131105233324/http://www.highbeam.com/doc/1P2-426584.html 2013年10月9日閲覧。 
  29. ^ Schaefer, Stephen (2001年1月31日). “SAG might shake up Oscar field”. The Boston Herald. オリジナルの2013年11月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131111045122/http://www.highbeam.com/doc/1G1-69760225.html 2013年10月9日閲覧。 
  30. ^ 2000 23rd Hastings Bad Cinema Society Stinkers Awards”. The Envelope. 2007年1月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月25日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]