666 (HYDEのアルバム)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
666
HYDEスタジオ・アルバム
リリース
録音 2003年
ジャンル ロック
時間
レーベル HAUNTED RECORDS
Ki/oon Records
プロデュース HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
チャート最高順位
  • 週間2位(オリコン
  • 登場回数11回(オリコン)
ゴールドディスク
  • ゴールド(日本レコード協会
  • HYDE アルバム 年表
    ROENTGEN
    2002年
    ROENTGEN english version
    (2002年)
    ROENTGEN.english
    2004年
    666
    (2003年)
    FAITH
    (2006年)
    『666』収録のシングル
    1. HELLO
      リリース: 2003年6月4日
    2. HORIZON
      リリース: 2003年11月6日
    テンプレートを表示

    666』(シックス・シックス・シックス)は、日本ロックバンドL'Arc〜en〜Cielのボーカリスト、HYDEの2枚目のアルバム2003年12月3日発売。発売元はKi/oon Records内の自身の主宰レーベルHAUNTED RECORDS

    解説[編集]

    前作『ROENTGEN』以来1年9ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバム。前作とは180度異なる<>をコンセプトに作られたハードかつヘヴィなロックアルバム[1]

    アルバムタイトルは、ホラー映画好きのHYDEのために、スタッフが『KSCL-666』という初回盤の規格品番を用意したことがきっかけで、HYDEがそれをそのままタイトルに冠したという[2]。ちなみに、ホラー映画『オーメン』において6月6日6時6分に生まれた、頭に666の刻印を持つ悪魔の子が登場するシーンがあったり[2]、『666』は新約聖書ヨハネの黙示録において獣の数字とされ「悪魔の数字」とも呼ばれているが、タイトルを決めるうえでは直接的な関係はなく、前述のエピソードから決定したものある[2]

    HYDE曰く「前作はアルバム制作に集中しており、ライブをする気は最初からなかった」という。ただ、前作の完成後に「前作が出てから半年以上ステージに立ってないなと思って。だったら考え方を変えてライブができる様なアルバムを作って、みんなに会いに行きたいなあって気持ちになった[3]」といい、ライブで盛り上がるような、自身が好んで聴いてきたメロディアスなハードロックの曲を制作する方向にシフトすることとなった。また、HYDEは本作について「ここからがソロとしての本格的なスタート[4]」と捉えており、「実質的には『ROENTGEN』が初のソロ・アルバムだけど、自分の中では今回が1stだって意識が強いですね[5]」と述べている。

    上記のように活動方針をアルバム制作中心の<静>の姿勢から、ライブ活動中心の<動>の姿勢に転換させ、2003年4月27日から同年5月15日にかけて、kenL'Arc〜en〜Ciel)が前年に結成したロックバンド、SONS OF ALL PUSSYSの主宰する対バンライブツアー「BUBBLE FESTiVAL」に参加。この対バンツアーでは当時未発表だった本作の収録曲を初披露している。さらに、同年8月1日には野外ロック・フェスティバルROCK IN JAPAN FESTIVAL 2003」にシークレットゲストとして初出演するなど[6]、精力的にライブ活動を展開した。そのため、本作に収録されたいくつかの楽曲は、これらのライブで披露された楽曲となっている[2]

    収録曲には、シングルとしてリリースされた「HELLO」や「HORIZON」を含め全10曲が収録されている。いずれもハードでありながらもメロディアスな楽曲となっているが、収録曲についてHYDEは「僕の中で何かしらメロディアスだったり、キャッチーだったりする要素が含まれてないと、よい曲の基準に達さないっていうハードルがあるんですよ[2]」と述べており、自身の音楽制作の志向が多分に反映されていることを示唆している。また、HYDEのボーカルは、L'Arc〜en〜Cielで発表したアルバム『REAL』に引き続き、低音域の声が生かされており、楽曲もその声域を想定し制作されたものとなっている[5]。さらに、これまでになかったシャウトをするような楽曲も多数収録されている[5]。HYDEは歌い方について「比較的、自分が好きな中・低域の声を想定して作曲してますね。高い声の場合も歪んだ歌い方なので、そういう点でこれまでと印象はかなり違うかもしれないですね[5]」「こういう歌のアプローチはしたことがないのに等しいから、ラルクやってたら、こんな歌い方はしてなかったかもしれない。ソロだからこそ、気づいた声だし、チャレンジできた。ラルクにも生かされると思いますよ[5]」と述べている。

    本作のレコーディングは、KAZOblivion Dust、ex.Spin Aqua)を共同プロデューサーとして迎えて行われた。HYDEは「完全にKAZのセンスを信頼していた[5]」と述べており、サウンド・ディレクションやHYDEのギタープレイのディレクションはほぼ全てKAZが指揮をとっている。そのため、セルフプロデュースだった前作の制作方法と異なり、本作の制作ではHYDEはギターフレーズを細かく考えず、全体の曲の表情が出来たら、その大まかなデモをKAZがアレンジし、2人で最終的に調整するという方法をとっている[2][7]。HYDEは本作のアレンジの方向性について「今回はライブで演奏することを考えて、あまりダビングしたくないなとは考えてましたね[7]」と述べている。また、ベースとドラムは、HIROKI(ex.media youth、ex.KILLERS)とFURUTON(ex.SPACE COWBOY、ex.Oblivion Dust、ex.BUG)がそれぞれ担当している。2004年から開催したソロ名義初のライブツアー「2004 FIRST TOUR 666」では、この2人とともにHYDE BANDというスリーピースバンドの形態で全国を廻っている。また、英語詞を手掛ける際は、訳詞家のリン・ホブデイやANIS(MONORAL)とディスカッションしながら行っている。

    ちなみに、2枚目のアルバムとしては当初、前作『ROENTGEN』の続編となるような弦楽器管楽器を多用したアンビエント色の強いアルバムを構想・制作していたという。ただ、前述のようにライブを中心とした活動にシフトしようと心境が変わり、本作のようなハードロックなアプローチで制作にされることとなった。なお、2005年に発表されたL'Arc〜en〜Cielのアルバム『AWAKE』に収録されている自作曲「My Dear」と「Ophelia」は、この当初のコンセプトでデモが制作されていた楽曲である。

    初回限定盤 (CD+DVD) と通常盤 (CD) の2形態で発売されており、初回盤にはシングルの表題曲2作のミュージック・ビデオが収録されたDVDが同梱されている。

    評価[編集]

    • 音楽ライターの森朋之はAmazon.comのレビューにて、「00年代のロック・シーンのメインストリームの中心である“モダン・ヘビィ”の要素を取り入れたサウンド・メイキングは、HYDEの時代を読みとる鋭敏な感度を証明している。<いま、鳴らされるべき音>を素早く察知し、それを<どんな人にでもわかるポップ・ミュージック>として再構築するセンスには、本当に驚かされる[8]」「また、HYDEのギターを軸としたオーソドックスなバンド感も新鮮かつ魅力的。マニアックなロックファンが聴いても十分に楽しめる、優れたロック・アルバムだ[8]」と評している。
    • 音楽ライターの土屋京輔はCDジャーナルのレビューにて、「幻想的な世界観でゆったりとした耽美空間を作り出した前作『ROENTGEN』とは、まったく異なるアプローチを提示した。もちろん、彼独特の声色やメロディ・ラインは散見されるが、特徴的なのはヘヴィなサウンドで全体を彩ったことだろう。それに同調しながら、荒々しい息遣いまで残す歌唱で挑む姿も印象的だ[9]」「先行シングルは一つの断片でしかない。厭世的な雰囲気が漂うのは時代性だが、その問いかけは普遍性を持つ。感情が放出された後に形作られるのは、決して空虚感ではないはずだ[9]」と評している。

    収録曲[編集]

    1. SWEET VANILLA
      本人出演のdwangoいろメロミックスCMソングに起用されている。
      太くうねるグルーヴと低音域を意識したボーカルが特徴で[10]L'Arc〜en〜Cielとは異なるアプローチで仕上げたロックナンバー。
      HYDEはアルバム発売時のインタビューで「サウンドも含めて今の自分を象徴している代表曲[5]」としてこの曲を挙げている。
    2. HELLO (Album Mix)
      • 作詞:HYDE・Lynne Hobday / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      4thシングルのアルバムバージョン。本人出演のdwango「いろメロミックス」CMソングに起用されている。
      激しいメロディーディストーションが用いられているメロディアスなハードロックな楽曲となっている。
      ハードでありながらキャッチーさも兼ね備えており、HYDEは「自分はアンダーグラウンドなものだけでなく、そこにメロディアスさがあることで魅力を感じるからだと思う[11]」と語っている。また、シングルバージョンに比べアウトロフィードバックが若干長い。
    3. WORDS OF LOVE
      • 作詞:HYDE・ANIS / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      HYDE曰く「セクシャルな感じをテーマに詞を書いた[10]」という。歌詞の中に<Let's play six six six>というフレーズが存在しており、アルバムタイトルの"666"が唯一使われた楽曲となっている[10]。ちなみに、このフレーズは、アルバムタイトルが『666』に決まった後に、歌詞を変更した際に取り入れられたもので、歌詞の変更に伴いボーカルを録り直している。また、サックスとして武田真治が参加している。
    4. HORIZON
      • 作詞:HYDE・Lynne Hobday / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      5thシングル。東映配給映画『スカイハイ 劇場版』主題歌。
      共同プロデューサーのKAZは、この曲について「広大な世界観と繊細な部分を共存させたかったので、アコースティック・ギターとエレキ・ギターを織り交ぜて、レコーディングでは、"風"が感じられるサウンドづくりを目指した[10]」と述べている。
    5. PRAYER
      • 作詞:HYDE・Lynne Hobday / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      重厚なサウンドと憂いを帯びたメロディーが特徴的なゴシック・ロックの影響が感じされる楽曲[10]
      共同プロデューサーのKAZは、この曲のデモ音源を聴いて「荒廃した大地をイメージした[10]」という。歌詞は、HYDE曰く「現代の世界の矛盾と、人間が生きているうえでの矛盾、戦争が歌詞のテーマ[10]」だという。また、HYDEは当初この曲を1曲目にしようと思っていたほど、気に入っていた曲だという[10]
    6. MASQUERADE
      • 作詞:HYDE・Lynne Hobday / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      松竹配給映画『CASSHERN』挿入曲。
      共同プロデューサーのKAZ曰く「デモ・テープの時点からあったグランジの要素に、近未来的な要素をプラスした[10]」という。
      間奏には、ANIS(MONORAL)によるスピーチが入っている[10]
      2004年4月に発売された、上記映画のサウンドトラック『OUR LAST DAY-CASSHERN OFFICIAL ALBUM-』に収録されている。
    7. MIDNIGHT CELEBRATION
      • 作詞:HYDE・ANIS / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      ライブでの盛り上がりを意識したアグレッシブなナンバーで、ドラムンベーステクノの感覚にも似たダイナミックな展開が特徴[10]。ソロ名義のライブに限らず、2008年にHYDEとKAZが結成したロックユニット、VAMPSのライブも含め、ライブ本編のラストナンバーで演奏されることが多い楽曲。
      この曲の制作について、HYDEは「この曲は当初、アルバムの中で一番ハード・コアだと思ってたんですけど、完成させるときににこの曲をどうやってキャッチーに聴かせるかずっと考えてた[2]」という。
      2018年に発表した8thシングル「WHO'S GONNA SAVE US」には、新たにnishi-kenによるアレンジを施したバージョンの「MIDNIGHT CELEBRATION Ⅱ」が収録されている。さらに、2019年に発表した4thアルバム『ANTI』では再度リアレンジし、「MIDNIGHT CELEBRATION II anti mix」として収録している。
    8. SHINING OVER YOU
      • 作詞:HYDE・ANIS / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      ニンテンドーゲームキューブ専用ゲームソフト『バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』CMソング。
      曲後半に向かうにつれて広がっていく曲の世界観をストリングスのコードの変化で演出した楽曲[10]
      HYDEは「L'Arc〜en〜Cielに通じるメロディーの曲[2]」と表現している一方、「基本的にはふだん世の中で流れるような音楽ではないと思う[2]」とも述べている。
    9. FRUITS OF CHAOS
      • 作詞:HYDE・ANIS / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      ルーズなギターのカッティングが印象的なミディアムな楽曲[10]。共同プロデューサーのKAZ曰く「サビのシャープで繊細な雰囲気を表現するために、かなり時間を費やした[10]」という。作曲者のHYDEは、ライブをイメージして盛り上げる曲として書いたという[10]
    10. HIDEAWAY
      • 作詞:HYDE・Lynne Hobday / 作曲:HYDE / 編曲:HYDE & KAZ (from Spin Aqua)
      アルバムの最後を飾るメロ・コア系のパンクナンバー[10]、HYDE曰く「一つだけ感じが違う曲を最後に入れるのも手だな」と思い収録された。
      HYDEは「ストリート感を残して終わりたかった[10]」と述べており、カラッとしたL.A.サウンドを意識してアレンジされている[10]。日本語歌詞の一部が、英語に聞こえるように書かれている。

    初回限定盤特典DVD[編集]

    1. HELLO
      ディレクター:小島淳二、河野良武
    2. HORIZON
      ディレクター:辻川幸一郎

    参加ミュージシャン[編集]

    • HYDE:ボーカルギター
      • HIROKI:ベース
      • FURUTON:ドラム
      • KAZ (from Spin Aqua):アディショナルギター、シンセサイザープログラミング
      • 斎藤仁:シンセサイザープログラミング、プリプロダクション
      • 武田真治サクソフォーン(#3)
      • ANIS:スピーチ(#6)、イングリッシュディレクション(#1,#3~#10)
      • Stephan McKnight:イングリッシュディレクション(#2)
      • 比留間整:レコーディング、ミックス(#1~#4,#8,#9)
      • エリック・ウェストフォール:レコーディング
      • ジョシュ・ウィルバー:ミックス(#5~#7,#10)
    • [Produce & Mastering]
      • HYDE:プロデュース
      • KAZ (from Spin Aqua):プロデュース
      • ブライアン・ガードナー:マスタリング

    脚注[編集]

    1. ^ 『CDでーた』、p.5、角川書店、2003年12月20日号 vol.15 No.20
    2. ^ a b c d e f g h i 『CDでーた』、p.7、角川書店、2003年12月20日号 vol.15 No.20
    3. ^ NHKBShi番組『スーパーライブ HYDE ソロライブ in 武道館 ~2004 FIRST TOUR 666~』
    4. ^ 『別冊カドカワScene07』、株式会社KADOKAWA、p.19、2021年7月5日発行
    5. ^ a b c d e f g 『CDでーた』、p.9、角川書店、2003年12月20日号 vol.15 No.20
    6. ^ ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2003 QUICK REPORT”. RO69 (2003年8月1日). 2014年7月24日閲覧。
    7. ^ a b 『CDでーた』、p.6、角川書店、2003年12月20日号 vol.15 No.20
    8. ^ a b 666 (初回限定DVD付)- HYDE
    9. ^ a b 『CDジャーナル』、音楽出版社、2004年
    10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 『CDでーた』、p.10、角川書店、2003年12月20日号 vol.15 No.20
    11. ^ テレビ東京系番組『JAPAN COUNTDOWN2003年5月31日放送

    参考文献[編集]

    • CDでーた』、角川書店、2003年12月20日号 vol.15 No.20
    • 『別冊カドカワScene07』、株式会社KADOKAWA、2021年7月5日発行