ラージプート級駆逐艦

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61-ME型大型対潜艦から転送)
ラージプート級駆逐艦
ラージプート級駆逐艦5番艦「ランヴィジャイD55」
ラージプート級駆逐艦5番艦「ランヴィジャイD55
基本情報
艦種 ミサイル駆逐艦
建造所 61コムナール記念造船工場
運用者 インド海軍
就役期間 1980年 -
同型艦 5
建造数 5
前級 -
次級 15型 (デリー級)
要目
基準排水量 4,025 t
満載排水量 4,905 t
全長 146.11 m
15.81 m
吃水 6.83 m
機関方式 COGAG方式
主機 M-8Eガスタービンエンジン×4
推進器 スクリュープロペラ×2
出力 18,000 shp
最大速力 30 ノット
航続距離 3,800 nmi (18kt巡航時)
航海日数 10 日間
乗員 士官 33 名+水兵 279 名
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ラージプート級駆逐艦(ラージプートきゅうくちくかん、英語: Rajput class destroyer)は、インド海軍駆逐艦ミサイル駆逐艦)の艦級。ラージプートの名称は、サンスクリット語の「王子」を意味する"rajaputra"に由来する。ソビエト連邦海軍が運用していた61型大型対潜艦(カシン型)をもとに、インド海軍の要請に応じた改正を加えた派生型であり、ソビエト連邦の設計番号としては61ME型、またNATOコードネームではカシンII級(Kashin-II class)と呼ばれた。

概要[編集]

建造[編集]

対潜艦の61-ME型は、61型の輸出向けプランとして立案された。その重武装から、61-ME型はソ連で建造された最初の重武装艦に数えられる。

1950年代後半以来、ソ連海軍では任務ごとに専門の艦艇を整備してきたが、1970年代末になると、61型をもとに艦対艦ミサイルを搭載した61-M型および61-MP型が事実上の多用途艦として認められるようになっていた。61型は成功した計画のひとつで、戦術的にも技術的にも重要な計画となった。

この艦に関心を寄せたのがインドであった。1974年、インドはセヴァストーポリへ視察団を送り、黒海艦隊の61-M型を見聞した。そして、61-M型こそが自国海軍にとって必要欠くべからざる原型艦であるという結論を出した。インド海軍の要求に対し61-M型に不足していたのは艦載ヘリコプター用の格納庫と強力な火砲であった。審議の結果、艦尾部分に搭載する76.2 mm自動砲AK-726と戦闘統禦装置「トゥレーリ」各1基を廃止し、代わって同所にヘリコプター格納庫とヘリコプター甲板を設けることとなった。また、艦首部分に搭載するAK-726は100 mm両用砲のAK-100に換装することが予定された。

この新しい派生形は、「輸出型」(Экспортный)を意味する「E」(Э)を加えて61-ME型Проект 61-МЭ)と呼ばれることになった。原型となった61-M型との相違点は、搭載する艦対艦ミサイルがソ連国内向けのP-15M「テルミート」から輸出型のP-20「テルミート」に変更された点が挙げられた。一方、予定された100 mm砲の搭載は、AK-100の製造工場が造船所から遠かったことが原因で見送られた。この他、多用途艦として重要な装備である艦対空ミサイルは、改良型のM-1「ヴォルナーP」が搭載された。このシステムは、欺瞞対抗力を向上したV-601を運用できた。この他、対潜装備としてRBU-6000「スメールチ2」、533 mm魚雷発射管近接防空火器としてラージプートからランジートまではMR-104「ルィーシ」射撃管制レーダーによって統禦されるAK-230対空機関砲が、ランヴィールランヴィジャイにはMR-123「ヴィーンペル」射撃管制レーダーによって統禦されるAK-630対空多銃身機関砲が搭載された。

艦の建造は、すべてウクライナ・ソビエト社会主義共和国ニコラーエフ61コムナール記念造船工場で実施された。まずはじめに3隻が起工され、続いて2隻が建造された。海上公試のために一時的にソ連海軍へ編入され、のちソ連海軍を除籍の上、 発注元のインド海軍へ引き渡された。1番艦が引き渡されたのは、1980年5月4日で、最終艦の引き渡しが完了したのは1988年のことであった。

幾度の近代化改修[編集]

インドへ引き渡されたラージプート級は、駆逐艦として海軍で運用されている。ラージプート級は、その長年に亙る運用の中でインド海軍の事情に合わせて幾度かの改修を受けた。まず、1993年から1994年にかけてイタリアセレニア社製の新しい戦術情報処理装置IPN-10を装備した。改修作業は、当初はウクライナの支援の下での実施が検討されていたが、最終的にインドはロシアとの協力体制に切り替えられた。

1番艦ラージプートは、インドとロシアが共同で開発を進めている新型巡航ミサイルの発射実験の試験艦に選ばれている。2003年2月12日11月23日2004年11月3日2005年4月15日の4度に亘って実施された発射実験では、ラージプート艦上より標的艦目掛けてPJ-10「ブラモス艦対艦ミサイルが発射された。標的艦は破壊され、実験は成功裏に終了したと報告された。この試験のため、ラージプートはP-20用の円筒形の単装発射機4基の内1基を下ろし、代わりに箱型の連装発射機1 基を搭載した。その後、2007年3月にはさらに改修が施されたラージプート艦上よりプリットヴィーIIIミサイルの発射実験が成功裏に実施されている。また、4番艦ランヴィールは後部M-1「ヴォルナーP」艦対空ミサイル発射機を撤去しPJ-10「ブラモス」用のVLSを搭載した。

対空装備の改修としては、2番艦ラーナと3番艦ランジートは近接防空火器をAK-230対空機関砲からAK-630対空多銃身機関砲へ換装し、4番艦ランヴィールと5番艦ランヴィジャイはAK-630対空多銃身機関砲を2基撤去し、イスラエル製「バラク」艦対空ミサイルのVLSを搭載した。これら改修に併せレーダーも一部国産ないしイスラエル製へ換装されている。

この他、小さな変更としては、搭載機が当初のKa-25PLからKa-27PLの輸出型であるKa-28に変更されている。

活動[編集]

2003年6月23日には3番艦ランジートは、スカーニャ級哨戒艦スヴァルナとともにモザンビークを訪れ、外交上の任務に従事した。その後、モザンビーク海軍の訓練に協力した。

この他、ラージプート級は国内外でインド海軍が行う演習やパレード、外国への親善訪問へ積極的に送り出されており、ランヴィジャイ日本にも来航している。

兵装・電装要目表[編集]

D51 D52, 53 D54, 55
武装 AK-726ドイツ語版ロシア語版 76.2 mm連装両用砲×1 基
(弾薬 1,200発)
AK-230 30 mm連装機関砲×4基 AK-630 30mmガトリング砲×4基 AK-630 30mmガトリング砲×2基
M-1 ヴォルナSAM連装発射機×2基(D54 1基)
V-601ミサイル×32発; D54は16発)
バラク 短SAMVLS(8セル)×4基
PJ-10 SSM用VLS(8セル)×1基(D54のみ)
P-20 SSM単装発射機×4 基
RBU-6000 12連装対潜ロケット発射機×2基
(RGB-60ロケット弾192 発)
PTA-53-61 5連装魚雷発射管×1 基
艦載機 Ka-25PLOまたはKa-28×1 機
C4ISR プランシェート61戦術情報処理装置
4R-90「ヤタガーン」(ZIF-101用FCS)×2 基(D54は1基)
MR-105「トゥレーリ」主砲用FCS)×1 基
MR-104「ルィーシ」またはMR-123「ヴィーンペル」
EL/M-2221 STGR(バラク用FCS)×2 基
MR-310「アンガラーA」低空警戒/対水上用 EL/M-2238 STAR
MR-500またはバーラト RAWL-02 (シグナール LW-08) 対空捜索用
ヴォールガ水上捜索照準用
バーラトFT13-S/M 戦術航法装置
「プラーチナ」ソナー
電子戦 電子戦対抗装置「ザリーフ」×1 基
電子戦対抗装置「クラープ11」×2 基
電子戦対抗装置「クラープ12」×2 基
デコイ発射機PK-16×2 基

同型艦[編集]

# 艦名 建造所 起工 竣工 就役 退役 配備先
D51 ラージプート
INS Rajput
61コムナール記念造船工場 1976年
9月11日
1979年
11月30日
1980年
9月30日
2021年
5月21日
除役
D52 ラーナ
INS Rana
1976年
11月29日
1981年
9月30日
1982年
6月28日
就役中 ヴィシャーカパトナム
D53 ランジート
INS Ranjit
1977年
6月29日
1983年
7月20日
1983年
11月24日
2019年
5月6日
除役
D54 ランヴィール
INS Ranvir
1981年
10月24日
1985年
12月30日
1986年
10月28日
就役中 ヴィシャーカパトナム
D55 ランヴィジャイ
INS Ranvijay
1982年
3月19日
1987年
10月15日
1988年
1月15日
就役中

脚注[編集]

出典[編集]

外部リンク[編集]