2S7ピオン 203mm自走カノン砲

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2S7ピオン
203mm 自走カノン砲
性能諸元
全長 13.12 m
車体長 10.50m
全幅 3.38 m
全高 3.0 m
重量 46.5 t
速度 50 km/h
行動距離 650 km
主砲 2A44 52口径203mmカノン砲
装甲 最大10mm
エンジン V-46-I
4ストロークV型12気筒液冷スーパーチャージドディーゼル
750hp
乗員 3+4名
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2S7ピオン 203mm 自走カノン砲(2S7ピオン 203ミリじそうカノンほう、ロシア語: 2С7 «Пион»)は、ソビエト連邦が開発した自走砲。開発時の計画では原子砲としての使用も意図されていた。軍名称はSO-203、NATOコードネームM1975。ピオンとはシャクヤクのことである。生産工場はレニングラードのキーロフ工場。

概要[編集]

1967年12月から射程が25km以上の自走砲として開発が開始され、1975年に部隊配備が始まった。

2S7ピオンの搭載する2A44カノン砲は、射程は通常弾(ZOF-40榴弾)使用の時最大で37.5 km、RAP弾(ロケット推進弾)(主にZOF-43榴弾)使用の時47.5~55.5 kmとなり、この距離は野砲の中では最大級である。この長大な射程を生かして敵野砲の射程外から攻撃出来るうえ、敵が攻撃に気づく前に移動の準備をすることも出来る。砲口初速は最大960m/s、砲身寿命は約450発である。

車内には4発の砲弾しか搭載されていない。弾薬輸送にあたり専用に開発された給弾車はなく、随行するトラックなどが輸送する。

通常の榴弾の他にもクラスター弾、対コンクリート砲弾、化学砲弾も発射可能である。計画通り核砲弾も発射可能で原子砲の役割も果たすことが出来る。また、与圧式NBC防護装置を搭載しており、NBC汚染環境下でも行動は可能だが、砲撃準備は外で作業しなければならないため、汚染環境下での操砲は不可能である。

1,000門超が生産され、各国において現役で使用されている。

2S7ピオンは、ソ連時代には、実戦で一度も使用されず、主に東ドイツ配属のソ連軍の部隊を中心に配備されていた。ヨーロッパ通常戦力条約(CFE)締結後、本土に配備替えされた。

2S7ピオンが初めて実戦で使用されたのは、2008年南オセチア紛争で、グルジア軍が2S7ピオンを6門使用していた。

2022年ロシアのウクライナ侵攻にも、2S7のどの型かは不明だが、ロシア軍・ウクライナ軍双方において使用されている。

構造[編集]

車体後部

車体後部に2A44カノン砲を外装している。この砲は俯仰角0~60度で動力は水圧、旋回角は左右各15度で電動。装填補助装置を搭載している。緊急時の手動装填も可能。

後部にブルドーザーの排土板のような形をした油圧駆動の駐鋤を装備しており、これで車体を固定する。また、補助の24馬力ディーゼルエンジンが電力供給用に搭載されている。

乗員は前部コンパートメントに車長、運転手など3名、エンジンルームを挟んで後部コンパートメントに操砲要員4名が搭乗する。前後のコンパートメント間の通信用のシステムが搭載されている。なお操砲には7名必要なため車内に搭乗できない3名は別の車両などで随行しなければならない。前部コンパートメントのフロントガラスはシャッター型装甲で覆うことが可能。また、潜望鏡が搭載されている。暗視装置も搭載されてはいるがドライバー専用で砲撃の際に使用するものではない。

発射の際に砲手は砲の左側に配置する。照準にはパノラマ式照準器を使用。直接照準用の照準器も搭載されている。

発射速度は最大で1分あたり1.5発。ただし、発射には下の5つの形式がある。

  • 5分で8発
  • 10分で15発
  • 20分で24発
  • 30分で30発
  • 1時間で40発

共通性[編集]

車両の部品のうち相当数がT-80と共通であると言われている。また、トランスミッションT-72と共通である。車両はS-300V(SA-12)地対空ミサイルのMT-T装軌車と同じであるとの情報もある。

派生型[編集]

2S7N
後期生産型
2S7M「Malka」
最新型。脆弱だった通信機能が強化されており、8発の砲弾を搭載可能。新型の装填装置も搭載されている。また、1分あたり2.5発まで発射可能。エンジン出力も840hpまで向上されている。1983年に出現。

採用国[編集]

退役国

登場作品[編集]

ゲーム[編集]

コンバットチョロQ
アリーナのボスクラスの10番目に登場。ただし、名前は「ピオーン」となっている。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • [1]
  • [2] (英語)
  • [3] (英語)
  • [4](写真) (英語)
  • [5](写真) (英語)