1997年イギリス総選挙

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
英国議会議事堂(ビッグベン

1997年イギリス総選挙(1997ねんいぎりすぎかいそうせんきょ、英語:United Kingdom general election, 1997)は、イギリス議会(正式名称:グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国議会)の議員を選出するために1997年5月に行われたイギリス庶民院総選挙である。

新首相に就任した労働党首トニー・ブレア

概要[編集]

1994年労働党の党首に就任したトニー・ブレアの下で党への支持を拡大しつつあった労働党が保守党から政権を奪回できるか否かが、注目された。選挙の結果、労働党は地滑り的な大勝利を収め、18年ぶりに与党の座に返り咲いた。

基礎データ[編集]

政権の座を退くことになったジョン・メージャー(保守党)
  • 議会構成上院貴族院)と下院庶民院)の二つから構成されるが、貴族院議員は世襲貴族や一代貴族などから選出され、選挙で選ばれないため、下院議員だけが総選挙で選出される。
  • 選挙権を有している人:18歳以上の英国籍を有する男女及び英連邦市民、アイルランド共和国市民で一定の欠格要件(刑務所に服役中等)に該当しない市民で、居住している自治体に選挙人登録した者
  • 被選挙権を有している人:21歳以上の英国籍を有している男女及び英連邦市民、アイルランド共和国市民で、一定の欠格要件(貴族院議員であること等)に該当しない者
  • 下院議員任期:議員の任期は5年であるが、任期満了前に総選挙となることが多い(前回は1992年)。
  • 定数:659議席
  • 選挙制度:各選挙区内で最多得票を獲得した候補者一名のみが当選する完全小選挙区制
  • 投票日1997年5月1日
第3党である自由民主党党首(当時)のアッシュ・ダウン(写真の左側の人物)

選挙日程[編集]

選挙の争点[編集]

選挙を目前にした4月上旬に各党はそれぞれ、マニフェスト(選挙綱領)を発表した。保守党の選挙綱領は減税や雇用、経済対策に重点を置き、対する労働党の選挙綱領は教育や雇用、地方分権に重点を、第3党の自民党の選挙綱領は教育や経済、環境、コミュニティなどを中心としたもので、教育や雇用、減税などを争点に争われた。政権獲得を狙う労働党は、18年間の保守党政権は失敗であったと規定した上で「イギリスはもっとより良い生活を受けるに価する」というキャンペーンを展開し、変化を訴えた。対する保守党は経済状態が良好であることを強調し、「イギリスは景気づいている。労働党がそれを吹き飛ばそうとしている」と応じた[1]

選挙結果[編集]

  • 投票率:71.4%
  • 有効投票数:31,286,284票
  • 候補者数:3,724名
  • 当選者数:659名
党派別議席数と得票数・率
党派 当選 候補者 得票数 %
労働党
Labour Party
418 639 13,518,167 43.2
保守党
Conservative Party
165 648 9,600,643 30.7
自由民主党
Liberal Democrats
46 639 5,242,947 16.8
アルスター統一党(UUP) 10 16 258,349 0.8
スコットランド国民党(SNP) 6 72 621,550 2.0
プライド・カムリ(PC)[2] 4 40 161,030 0.5
社会民主労働党(SDLP) 3 18 190,814 0.6
シン・フェイン党(SF) 2 17 126,921 0.4
民主統一党(DUP) 2 9 107,348 0.3
英国連合党(UKUP) 1 1 12,817 0.0
議長(speaker)[3] 1 1 23,969 0.1
その他 1 297 159,639 0.5

出典:英国下院資料“GENERAL ELECTION RESULTS,1 MAY 1997”より引用して作成した。なお、当選者がなかった政党については省略。

選挙の結果、労働党は結党以来最高となる議席数を獲得し、1979年の総選挙で敗北したことで政権を失って以来、18年ぶりに与党となった。反対に保守党は、現職閣僚7名が落選、ウェールズスコットランド両地域で全議席を失った他、都市部でもロンドンバーミンガムの一部選挙区を除いて全敗、過去最低の議席数で惨敗し、野党に転落した。第3党の自民党は、得票率は前回並みであったが、労働党との戦略投票によって議席数を前回より大幅に増やし、結党以来最高の議席数を得ることができた。この主要3政党以外のウェールズやスコットランド及び北アイルランドなどの地域政党も健闘した。

女性議員の増加[編集]

労働党の大勝以外に、もう一つ特徴的なこととして、女性議員の大幅な増加が挙げられる。前回の総選挙における女性当選者は60人で下院全体の9%あまりに留まっていたが、本選挙でほぼ倍増の120名が当選し、下院全体の18%が女性で占められることとなった。特に労働党のみで見た場合は102名が当選、当選者全体の24%、女性当選者全体の8割以上を占めたが、これは当選可能性が高い接戦選挙区に女性候補者を積極的擁立した措置によるものが大きいといえる。

本選挙における女性候補者と当選者、
当選者全体に占める女性当選者の比率
党派 候補者 当選者
(a)
党全体の
当選者
(b)
(a)/(b)
労働党 156 102 418 24.4
保守党 66 13 165 7.8
自由民主党 139 3 46 6.5
その他の政治勢力 311 2 30 6.0
全体 672 120 659 18.2
出典:「英国総選挙におけるジェンダー状況。党主導による女性候補者登用策の合法化とその問題点」6頁の“表1英国下院女性候補者と女性議員の数1918-2005年”より引用して作成。

出典[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 谷藤悦史「1997年イギリス総選挙に関する分析」、日本選挙学会年報『選挙研究』No13、1998年、190頁右側
  2. ^ PCの正式名称は“Plaid Cymru”でウェールズ語の表記である。英語では“The Party of Wales”で直訳すれば「ウェールズの党」。
  3. ^ 引用した資料では“speaker”議長となっていたので、議長として記述する。

関連項目[編集]