魔界転生

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魔界転生』(まかいてんしょう)は、山田風太郎の伝奇小説、これを原作とする日本映画・演劇・オリジナルビデオアニメ漫画ゲーム作品の総称。

小説は『大阪新聞』に1964年12月から1965年2月まで連載され、この時の題名は『おぼろ忍法帖』(おぼろにんぽうちょう)。1967年講談社で単行本化、角川文庫富士見時代小説文庫講談社文庫で再刊されている。題名は作中に登場する秘術の名でもある。

1981年の映画は主演:千葉真一沢田研二、監督:深作欣二によって製作され、日本では観客動員数200万人・配給収入10億5000万円を記録した[1]

その後は演劇・漫画・オリジナルビデオ・映画・アニメ・ゲームと、次々にメディアミックスが展開された。

山田自身も一番好きな作品と語っており[2][3]、その雄大な構想と奇抜な展開で、数多い『忍法帖シリーズ』の中でも最高傑作と云われている[4]

小説[編集]

概要(小説)[編集]

作品名は連載時に『おぼろ忍法帖』、次に『忍法魔界転生』、そして『魔界転生』と変遷[5]1981年の映画化の際に山田自身が改題した。

森宗意軒という怪老人と出会った由比正雪は、紀州徳川頼宣とともに江戸幕府、将軍徳川家光の天下を奪わんとする企てを進めていた。森宗意軒は自らが編み出した忍法、“魔界転生”によって、剣豪たちを意のままになる部下として生まれ変わらせてゆく。これは人並みはずれた技量と、死の直前になっても自分の人生に悔いを残している強烈な生の欲求を持つ人間が、死の直前に心から愛しいと思う女と交わることにより、新たな肉体と生前より優れた技量を持って生まれ変わる忍法であった。

“魔界転生”で蘇る剣豪達は転生衆、あるいは魔界衆と呼ばれる。天草四郎時貞荒木又右衛門居合田宮坊太郎宝蔵院流槍術宝蔵院胤舜、尾張柳生流柳生如雲斎、江戸柳生流の柳生宗矩、二天一流兵法の宮本武蔵ら名だたる剣豪たちが転生した。しかし、森宗意軒にはもう一人、どうしても魔界転生させたい男がいた。その男こそ柳生十兵衛である。ところが十兵衛は宗意軒の意に反し、関口柔心の息子、関口弥太郎などとともに転生衆と戦うことを選ぶ。

転生衆に倒された剣豪には、田宮平兵衛・関口柔心・木村助九郎がおり、彼らの娘や孫娘を救う、仇をとるというのが十兵衛の動機の一つになっている。小説中では十兵衛が自分一人の力で敵を倒すことはほとんどなく、誰かしらの力を借りているのも特徴である。

1981年の映画で天草四郎を魔界衆の総大将として描いてから[注釈 1]、後の映画・演劇・漫画でもこの設定が踏襲された。原作では宗意軒の愛弟子ではあるものの転生衆の1人に過ぎず、中盤で十兵衛によって倒されており、漫画版の一部を除き、派生作品のほとんどが脚色されている。

登場人物[編集]

柳生衆[編集]

  • 柳生十兵衛三巌(やぎゅう じゅうべえ みつよし) - 柳生宗矩の嫡男。
  • 磯谷千八(いそや せんぱち) - 柳生十人衆の一人。
  • 逸見瀬兵衛(へんみ せへえ) - 柳生十人衆の一人。
  • 伊達左十郎(だて さじゅうろう) - 柳生十人衆の一人。泣き顔。
  • 北条主税(ほうじょう ちから) - 柳生十人衆の一人。激怒や感激など感情を露わにする。
  • 小栗丈馬(おぐり じょうま) - 柳生十人衆の一人。精悍無比な雰囲気を持つ。
  • 戸田五太夫(とだ ごだゆう) - 柳生十人衆の一人。地味な三十男。
  • 三枝麻右衛門(さえぐさ あさえもん) - 柳生十人衆の一人。朴訥な性格。
  • 小屋小三郎(こや こさぶろう) - 柳生十人衆の一人。最年少の17歳。
  • 金丸内匠(かなまる たくみ) - 柳生十人衆の一人。最年長で40代前半。
  • 平岡慶之助(ひらおか けいのすけ) - 柳生十人衆の一人。のんき者。

魔界衆[編集]

  • 森宗意軒(もり そういけん) - 小西行長の遺臣。
  • 天草四郎時貞(あまくさ しろう ときさだ) - 魔界衆の一人。
  • 宮本武蔵(みやもと むさし) - 魔界衆の一人。剣豪。
  • 荒木又右衛門(あらき またえもん) - 魔界衆の一人。鍵屋の辻での仇討ちで知られる。
  • 柳生利厳(やぎゅう としよし) - 魔界衆の一人。尾張柳生の開祖。
  • 田宮坊太郎国宗(たみや ぼうたろう くにむね) - 魔界衆の一人。柳生宗矩の弟子。
  • 柳生但馬守宗矩(やぎゅう たじまのかみ むねのり) - 魔界衆の一人。徳川家の剣術師範。
  • 宝蔵院胤舜(ほうぞういん いんしゅん) - 魔界衆の一人。槍術の達人。宝蔵院流の2代目。

キリシタンくノ一[編集]

  • クララお品(くらら おしな) - 宗意軒に仕える切支丹くノ一。
  • ベアトリスお銭(べあとりす おせん) - 同じく切支丹くノ一。
  • フランチェスカお蝶(ふらんちぇすか おちょう) - 同じく切支丹くノ一。

忍法“魔界転生”[編集]

森宗意軒が西洋の黒魔術と日本の忍法を混合させ編み出した秘術。呪術者が切り落とした自身の手の指1本ずつを生贄の女性の子宮に宿させたもの(忍体と呼ばれる)を素体に、死の淵に瀕した武芸者を新たな肉体を持った魔人として再誕させる外道の法である。

死の直前になっても自分の人生に悔いを残している、強烈な生の欲求を持つ武芸者を忍体と交合させる。すると忍体は武芸者そのものを身籠り、忍体自体が武芸者の再生のための蛹のような状態となる。再生する武芸者は1か月弱の期間を経て母胎を溶かしながら成長を続け、やがて忍体を押し破り、新しい体を持った本人が生前と同一の姿で再生を遂げる。

魔界転生を遂げた人物は生前と同一の姿、同一の剣技を持ちながら、理性の箍が外れた残忍な人格に変貌し、元がどれほど慈愛ある人格者であっても破壊と陵辱の限りを尽くす魔人と化す。小説における転生衆の顔ぶれは、天草四郎時貞荒木又右衛門田宮坊太郎宝蔵院胤舜柳生如雲斎柳生宗矩宮本武蔵の7名。これに加えて、未遂となった徳川頼宣、そして柳生十兵衛、最後に森宗意軒自身の合計10名が、森宗意軒の10本の指と10人の忍体を介して魔界転生を果たす予定だった。

オマージュ・パロディ小説としての『魔界転生』[編集]

小説『魔界転生』には、吉川英治宮本武蔵』、五味康祐柳生武芸帳』などの先行する有名な剣豪小説、『寛永御前試合』、ほか立川文庫の講談などのオマージュパロディ要素がふんだんに盛り込まれていることが、数多くの文芸評論家、文学研究者によって解説されている。

特に本作の宮本武蔵に纏わる描写には、“吉川武蔵”のパロディ、オマージュとされる要素が多分に含まれている。

小説『魔界転生』は主人公・柳生十兵衛と最強にして最後の転生衆・宮本武蔵の舟島の決闘とその決着を描く最終章「魚歌水心」でフィナーレを迎えるが、この「魚歌水心」という章第は“吉川武蔵”最終巻、武蔵と佐々木小次郎の舟島の決闘とその決着を描く最終章「魚歌水心」と、章第や舞台の地名が同一、かつ勝者と敗者が“吉川武蔵”と完全に裏返しの構図になっている[6]

文芸評論家の細谷正充は『魔界転生』を「吉川英治の代表作への最高に皮肉で、最高に素晴らしいオマージュ」と評価している[7]牧野悠は「柳生十兵衛が頭上から振り落とされる木剣ごと宮本武蔵を両断する趣向は、章題「魚歌水心」とともに、パロディの意図が明瞭である[8]」と言及している。

また、『魔界転生』で武蔵が連れている弟子の少年「伊太郎」の名と立場が、“吉川武蔵”で武蔵が連れ歩いた2人の少年「伊織」と「城太郎」の名前を合体させパロディ化したものと指摘し、『魔界転生』の宮本武蔵は「(“吉川武蔵”で描かなかった)巌流島後の武蔵を語るところから始めた吉川版武蔵のパロディ」と指摘する論もある[9]など、”吉川武蔵”が確立した正統派ヒーロー然とした宮本武蔵像に対するアンチテーゼとして、”魔界転生”は「巌流島での佐々木小次郎との死闘を人生の頂点」とし、悪鬼外道の類に堕してでも強敵との戦いを渇望するダークヒーローヴィランとしてのそれから」の宮本武蔵像を世に提示する側面があった。

宅和宏は、本作の登場人物のうち荒木又右衛門と田宮坊太郎を立川文庫、宮本武蔵と宝蔵院胤舜を“吉川武蔵”、柳生但馬守宗矩と柳生兵庫介利厳を『柳生武芸帳』からの登場人物と紹介し[6]、パロディの中でもいわゆるドリームマッチ物、当世風に言えばクロスオーバー二次創作の分類で『魔界転生』を解説している。宅は「そう、これは剣豪小説のパロディなのです。それもかなり上質のもので、柳生の高弟の木村助九郎や田宮平兵衛が七人と対決するくだりは『柳生武芸帳』の五味康祐の文体にそっくり、ラストの船島での十兵衛と武蔵の決闘は吉川『武蔵』の有名なクライマックスに瓜二つでしかも完全な裏がえし、とくるのだからケタケタ笑ってしまう[6]」と、『魔界転生』本文には既存作品の展開の踏襲・キャラクターや章題のネーミング被せなどのわかかりやすいオマージュのみならず、文体模写などの高度なテクニックが含まれることを指摘し、『魔界転生』のパロディ要素を大いに賞賛している。

『魔界転生』に先行する著名剣豪集合作品に、講談『寛永御前試合』(1895年、求光閣)を背景にした柴田錬三郎『赤い影法師』(『魔界転生』と共通する剣豪は柳生十兵衛、柳生但馬守、柳生兵庫介(如雲斎)、宮本武蔵、荒木又右衛門等が挙げられるが、『寛永御前試合』に見られる由比正雪と柳生十兵衛の対決というモチーフは、『魔界転生』でも拾われている[9]

後世への影響(小説)[編集]

剣豪小説パロディの側面を持って誕生したが[6]高木彬光が「およそ時代小説を書こうとした作家が一度は夢に見て、しかもどのような鬼才怪筆の持ち主でもとうてい実現不可能とあきらめていたはずの見果てぬ夢[10] 」と評した、没した時代や全盛期が異なる名だたる剣豪たちを心身ともに全盛期の状態で蘇らせ、夢の対決を行う本作の革新的な発想は、小説の誕生から50年以上が経過した現在もなお多彩な媒体でフォロワー作品を生み出し続けている。

時代伝奇小説家荒山徹は、陰陽師山田一風斎の秘術「擬界転送(まがいてんそう)」によって蘇った12人の幕末志士が明治政府を狙う筋書きの、『魔界転生』とクトゥルフ神話をミックスしたパロディ伝奇小説『大東亜忍法帖』[11]、森宗意軒率いる「神聖ハポン騎士団」の七剣士に柳生十兵衛が挑む『柳生黙示録』、動物に生まれ変わった人間を前世の姿に戻す「前世逆生」という朝鮮妖術が登場し、『魔界転生』や『柳生忍法帖』などと世界観を一にし、またも荒木又右衛門が復活する『竹島御免状』などの『魔界転生』オマージュ作品を上梓している。

柳生宗矩を主人公とした近衛龍春の時代伝奇小説『柳生魔斬刀』は、「平成の魔界転生」というキャッチコピーで出版されている。

魔界から蘇った天草四郎が徳川幕府への怨恨と魔王サタンならぬ「邪神アンブロジァ」の導きによって世界を破滅に導こうと暗躍する、島原の乱から150年後の島原の地を舞台に12人の剣士が戦いを繰り広げる和風格闘ゲーム『サムライスピリッツ』シリーズ(SNK)、歴史や伝説に名を残す英雄の写し身を召喚して戦う伝奇ファンタジー『Fate』シリーズ(TYPE-MOON)などのサブカルチャーにも影響を与えている[12][13][14]。漫画原作者七月鏡一は、黄泉還った由比正雪を黒幕にした『サムライスピリッツ』本編の前日譚『サムライスピリッツ 魔界武芸帖』は『魔界転生』のオマージュ作品であると公表している[13]。『Fate』シリーズの原作者奈須きのこは「『Fate』はもともと、『魔界転生』のオマージュです[15]」と言及しており、シリーズの原点『Fate/stay night』の製作動機に、学生時代に読んで衝撃を受けたという石川賢の漫画版と[14][16] 、山田風太郎の原作[15]、原作と漫画両方の『魔界転生』を挙げている。『Fate』派生作東出祐一郎の小説『Fate/Apocrypha』の黒幕として『Fate』シリーズに天草四郎が初登場するのも「Fateの更なる源流に「魔界転生」があるのなら、天草四郎を登場させるのはどうか」という着想に由来する[14]

せがわまさき作画による漫画『十 〜忍法魔界転生〜』単行本1巻発売時に、奈須は冲方丁貴志祐介とともに販促宣伝文を寄稿し、せがわはFateシリーズの看板ヒロイン・アルトリアを忍法魔界転生させた「魔界版セイバー」イラストを[17] 、添えた『十 〜忍法魔界転生〜』サイン本を奈須に贈っている[18]

書誌情報[編集]

  • 「おぼろ忍法帖」講談社(上中下三巻)、1967
  • 「忍法魔界転生」角川書店(上下二巻、角川文庫)、1978
  • 「魔界転生」角川書店(上下二巻、角川文庫)、1981 - 映画化タイトルに合わせる。

映画[編集]

1981年[編集]

魔界転生
Samurai Reincarnation
監督 深作欣二
脚本 野上龍雄・石川孝人・深作欣二
原作 山田風太郎
製作 角川春樹
出演者 千葉真一
沢田研二
佳那晃子
緒形拳
室田日出男
真田広之
丹波哲郎
若山富三郎
音楽 山本邦山菅野光亮
撮影 長谷川清
編集 市田勇
製作会社 角川春樹事務所 / 東映
配給 東映
公開 日本の旗 1981年6月6日
上映時間 122分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
製作費 日本の旗 5億円[注釈 2]
配給収入 日本の旗 10億5000万円[1]
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1981年日本映画。主演:千葉真一沢田研二監督深作欣二製作角川春樹事務所東映。カラー・ビスタビジョン、122分。英語タイトルは『Samurai Reincarnation 』。

ストーリー[編集]

寛永15年のキリシタン弾圧に端を発する島原の乱で、天草四郎時貞を始めとする2万人近い信者が惨殺された。しかし悪魔ベルゼブブの力により蘇った四郎は、徳川幕府に復讐するべくグリモワールを身につけ、「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり (Eloim, Essaim, frugativi et appelavi)」と唱えながら、自分と同じく現世で無念の死を遂げた者たちを魔界衆に引き入れていく。愛していた夫の細川忠興から、火の海に取り残される仕打ちを受けた細川ガラシャ柳生新陰流、特に将軍家剣法指南の柳生但馬守宗矩と嫡男・柳生十兵衛光厳[注釈 3]、この二人を倒すことが悲願だった宮本武蔵。女性への煩悩を断ち切れぬ己を恥じ、自ら命を絶った宝蔵院胤舜。甲賀組頭・玄十郎と甲賀衆伊賀の隠れ里を奇襲攻撃され、一族もろとも殺された伊賀の霧丸。彼ら4名が次々と四郎の手で現世に蘇った。

久々に霧丸に会おうと伊賀の隠れ里を訪れた十兵衛は、甲賀衆による襲撃により焼き尽くされた里と多くの伊賀衆の亡骸を目の当たりにし、茫然としていた。それでも霧丸ら生存者がいないか探し続ける十兵衛の前に、ただならぬ妖気を放ち、馬にまたがる5人が突如現れる。彼らは四郎が率いる魔界衆であった。その1人である胤舜は駆け出し、馬上から槍で十兵衛に襲いかかる。しかし聳える巨樹に素早い跳躍で躱す十兵衛。胤舜だけでなく、霧丸や先年亡くなったはずの武蔵がこの集団に居たので、十兵衛は驚愕した。四郎はそのまま江戸へ向かうことを十兵衛に宣言し、5名は駆け去っていった。異様で不穏な雰囲気を感じ取った十兵衛は、書状で直ちに宗矩へこの異常事態を伝える。

巫女に化けたガラシャは、日光東照宮に参詣した四代将軍徳川家綱に見初められて大奥入りを果たし、側室・お玉の方となる。だが、お玉の身元に不信を抱いた松平伊豆守は、玄十郎にお玉を暗殺するよう指示するが、その密談の場に四郎と霧丸が突如現れる。霧丸は伊賀の里の復讐として玄十郎を、四郎は島原の乱で命を落とした女たちの髪で編んだ鞭・伴天連秘法髪切丸を武器に、島原の乱鎮圧の総大将だった伊豆守を、それぞれ惨殺し共に遺体を江戸城内に晒した。

やがて、その美貌・肢体と妖しい色香を纏うガラシャに籠絡された家綱は、次第に政に無頓着となっていく。家綱のあまりの変わり様に老中たちが危機感を募らせる中、お玉が魔界衆と睨んだ宗矩は、刀匠村正にお玉を斬るための妖刀を依頼。不治の病に冒されていた宗矩は、次男・柳生左門友矩に、嫡男・十兵衛と連携して魔界衆を倒すことを指示。自らは妖刀を携え、命と引き換えに、乱心を装ってお玉の方を斬ろうと江戸城へ向かう。

入れ代わりに武蔵が柳生家へ現れ、佐々木小次郎を倒したを手にし、宗矩か十兵衛との決闘を望む。柳生家次男である左門が対したものの、武蔵は左門を「未熟」と言い放ち、一撃で頭を叩き割り、撲殺した。一方江戸城へ向かう宗矩の前に胤舜が立ちはだかる。宗矩は胤舜の槍を巧みに躱しながらも僅かな隙をついて一刀のもとに胤舜を切り捨てるが、その直後に吐血し死地を彷徨う。四郎は宗矩を魔界へ誘うが「生涯に悔いなし」と拒む。しかし十兵衛を息子というよりも天才的な剣豪として愛していた宗矩は、一介の剣士として十兵衛と戦いたいという望みを四郎に見透かされてしまった。宗矩は魔界衆への転生を受け入れる。

柳生屋敷へ戻ってきた十兵衛は、遺体となった左門に対面。弟の前頭部がぐしゃぐしゃに粉砕されていることに気づき、宗矩に城内で何があったのかを尋ねるが、背を向けた宗矩は理由を聞きたくば側へ来いと手招きするのみで不審に思った十兵衛が様子を伺っていると宗矩がおもむろに振り向く、その尋常ならざる雰囲気と面相に異常を察した十兵衛はたまたま現れたもう一人の弟で三男・柳生又十郎宗冬に至急柳生の庄へ帰る様に指示する。宗矩は不気味な笑みを浮かべると同時に十兵衛に苦無を放ち斬りかかってきた。素早く躱し、屋敷から離れる十兵衛は、宗矩までもが魔界衆に加わったことに衝撃を受けていた。

十兵衛は宗矩と武蔵を倒すため、村正の元へ訪れる。そして宗矩と同じく、魔界衆を斬れる妖刀を打ってもらうよう依頼する。だが村正は、宗矩に渡した妖刀で精根を使い果たしており、一旦断る。その時、武蔵が十兵衛と決闘しようと、不意に村正の家へ乗り込む。妖刀もない十兵衛は危機に瀕するが、村正の養女となっていた2代目・おつう(武蔵の恋人・お通の姪)が、村正の指示で笛を奏でると。かつてのお通との思い出が蘇った武蔵は、戦意喪失し、引き上げていく。村正はあのような化物を斬るには自分の刀しかないと考え直し、刀を打つ。そして妖刀の完成と共に、村正は息を引き取ってしまうのだった。

四郎は霧丸を連れ、天領である佐倉の農村で呪詛を行ない、徳川の世を混乱に陥れようと画策。その結果、作物は立ち枯れ凶作になったが幕府は年貢の取り立てを止めようとはしなかった。農民たちは幕府に対し不満と怒りを募らせるが代表者として数名が鹿狩り中の家綱に年貢の免除を直訴するものの捕らえられたうえ磔にされ公開処刑された。四郎は処刑場で彼らの死を悼む農民らを扇動し一揆を起こす。一揆は瞬く間に広がり無数の農民を率いて江戸城へ向かう。この間、霧丸は農民の少女・お光と心を通わせ、悪に染まり切れず苦悩していた。その時、十兵衛と再会し人として生きるように諭された霧丸は、本来の優しさを取り戻しお光と共に脱走を図る。だがそこに、裏切りを知った四郎が立ちはだかり、霧丸はお光の眼前で四郎に鞭で絞殺されてしまう。

十兵衛はおつうやお光と共に、一揆で命を落とした多くの農民や霧丸を葬っていた。四郎たちを倒すことを改めて誓っていた十兵衛は武蔵から決闘を申し込まれ、村正最後の妖刀を身に帯び、舟島へ向かう。おつうは武蔵に優しさを思い出させようと笛を奏でるが、かつてのような動揺はしない。十兵衛と武蔵の戦いが始まった。お互い浜辺を走り回り、幾度となく剣を交え、戦い続ける。そして十兵衛は、武蔵が振り下ろす櫂を躱して、高く飛び上がり、空中から脳天割りで武蔵を叩き斬った。

急ぎ江戸城へ向かう十兵衛。城内では相変わらず家綱がガラシャの元に入り浸っていた。ところがガラシャは寝言で忠興の名を口にしたため嫉妬した家綱ともみ合っているうちに行灯を倒したことで出火し寝所は瞬く間に炎に包まれる。かつて忠興から与えられた打掛が燃え上がるのを見たガラシャは哄笑し錯乱状態となり、火から逃れようとする家綱を忠興と思い込んですがりつく。大奥から城全体に火の手がまわる中、薙刀を振り回し家綱を連れまわすガラシャに誰も対処できず騒然となるなか、突如現れた宗矩が騒ぎに気付いて駆けつけた老中達を切り捨て周囲の旗本達と斬り合いとなる。その隙にお玉は家綱と共に天守へと消えていく。二人きりの天守に現れた四郎は家綱に島原の復讐であることを告げ天草衆の遺髪で束ねた鞭で打つ。直後にガラシャは生前の未練を晴らすべく、家綱を道連れに火中に身を投じて無理心中する。江戸が紅蓮の炎で焼き尽くされていく喜びに四郎はうち震え、江戸城の焦熱は止まらず地獄のような状況で、宗矩は十兵衛を待ち焦がれていた。

猛火に包まれ、崩落する江戸城内に、編み笠を被った十兵衛光厳が父・宗矩の前に現れる。宗矩は十兵衛が笠を外した姿に驚愕。息子は身体を魔除けの梵字で埋め尽くしていた。十兵衛は骨肉を分けた親子が戦わなければならない不条理を嘆き、戦いを避けようと諭すが、宗矩は十兵衛の才能に一人の剣士として戦いたいと強弁したため、十兵衛は魔界衆となった父と望まぬ一騎打ちをすることとなる。同じ流派のため、構えも同じ。壮絶な死闘が始まった。宗矩の尋常ならざる執念と力に苦戦する十兵衛は眼帯を切られ、村正も折られ窮地に追い込まれる、尚も十兵衛に斬り掛かる宗矩。十兵衛は宗矩の村正を、真剣白刃取りで辛うじて受け止める。九字臨 兵 闘 者 皆 陣 列 在 前りん ぴょう とう しゃ かい じん れつ ざい ぜん」と唱えながら十兵衛は、村正ごと宗矩を投げ飛ばし。奪った村正で宗矩の頸動脈を斬る。虚しさだけが残る決着となった。

十兵衛が父に涙していた直後、四郎が現れ、永遠の命を与えると魔界に誘う。が、十兵衛は永遠の命を信じず、人の弱みにつけこみ、宗矩と霧丸を弄んだ四郎の所業を許せんと拒む。四郎は日本中を業火で焼き尽くすと宣言したため、十兵衛と四郎の戦いが始まる。四郎は伊豆守や霧丸を葬った天草衆の遺髪を束ねた鞭で十兵衛を襲うが、十兵衛は左手で防御して躱す。そして右手に持っていた宗矩の村正で鞭を右切り上げ、四郎の頸を左薙ぎで一刀両断。しかし四郎は自分の頭を脇に抱え、復活を予告し、哄笑と共に紅蓮の炎の中に飛んで消えていく。十兵衛はそれを見据えながら、一層燃え上がる焦熱地獄の中、ただ独り佇んでいた。

キャスト[編集]

配役表記のある出演者[編集]

クレジットタイトルに表記され、パンフレットに掲載されている順

上節に該当しない出演者[編集]

※パンフレットに配役表記は無く、クレジットタイトルのみに表示

  • 淡九郎
  • 那須伸太朗
  • 笹木俊志
  • 壬生新太郎
  • 森源太郎
  • 島田秀雄
  • 山田良樹
  • 大城泰
  • 和田昌也
  • 福本清三
  • 木谷邦臣
  • 平河正雄
  • 藤沢徹夫
  • 細川純一
  • 奔田陵
  • 白井滋郎
  • 疋田泰盛
  • 波多野博
  • 小峰隆司
  • 藤長照夫
  • 宮城幸生
  • 志茂山高也
  • 椿竜二
  • 北村明男
  • 美加まどか
  • 稲垣陽子
  • 美柳陽子
  • 富永佳代子
  • 星野美恵子
  • 三谷真理子
  • 紅かおる
  • 美松艶子
  • 岡島艶子
  • 小池満敏
  • 歳原幸博
  • 近藤健
  • 山崎修
  • 伊庭剛
  • 徳永まゆみ
  • 武田文雄
  • 高木吉治
  • 古川京子
  • 小国真寿美
  • 田口智子
  • 安倉文子
  • 吉川幸江
  • 西田治子
  • 前川恵美子
  • 山本亨
  • 崎津均
  • 稲田龍雄
  • 沢田祥二
  • 釼持誠
  • 森晴蔵

スタッフ[編集]

主要スタッフ[編集]

クレジットタイトルに表記され、パンフレットに掲載されている順

上節に該当しないスタッフ[編集]

※パンフレットにスタッフ表記は無く、クレジットタイトルのみに表示

製作[編集]

経緯[編集]

東映京都撮影所(以下、京撮)は、1978年の『柳生一族の陰謀』以降、「これ」という一本を作れずに喘いでいた[23]。そんな折、角川春樹が大作映画の企画を東映に持ち込んでくる[23]。1980年の『復活の日』を製作中から角川は、『忍法魔界転生』を映画化したいと構想していた[2][24]。京撮のプロデューサーである翁長孝雄は「東映というのは、困ったときに救いの神が来るんですよ。あの時、角川さんが来てくれたのは大きかった」と証言している[23]。角川は1977年の『人間の証明』を東映東京撮影所で作っていたものの、京撮では未だに製作していなかった[23]。自社の角川書店で抱える山田風太郎の奇想天外な忍法小説を原作に、角川は「大掛かりな時代劇アクションを作ること」が狙いで、「国内で製作可能な撮影所は東映京都」と考えていた[23]

監督は当初、五社英雄で決まっていた[25][26]。1979年の『闇の狩人』で五社は、エロティシズム・暴力・血しぶきを際立たせる映画を演出しており、角川はその手腕を評価し、本作に適役とオファーしたのだ[25]。しかし準備を半年ほど進めていた矢先[26]、五社が銃刀法違反で逮捕されてしまい、本作は一時頓挫することとなる[23]

五社に代わり、深作欣二を『復活の日』に続いて起用した角川は、山田の『柳生忍法帖』と『おぼろ忍法帖(#小説)』を深作に用意した[23]。このときのやりとりを角川は、「『おぼろ忍法帖』を映画化したいと深作さんから申し出があり、ぼくは『忍法魔界転生』と主張し、互いに作品の面白さを伝えあっていた[2]。内容は同じなのにタイトルが…」と訝しがり[2]、ほどなく「同じ作品であることがわかり、大笑いして、すぐ映画にしようと一致した」と語っている[2][24]。本作公開時に『魔界転生』と再改題された[27]

キャスティング[編集]

千葉真一柳生十兵衛光厳[注釈 3]沢田研二天草四郎時貞は配役の決定事項として進められた[28]。映画『柳生一族の陰謀』(1978年)、テレビ時代劇柳生一族の陰謀』(1978年)・『柳生あばれ旅』(1980年)に続き、千葉が十兵衛に扮する4度目の作品となった。既に十八番と認知されていた十兵衛を千葉は[29][30][31][32]、本作で決定版とすべく役作りを重ねていく[24][28]。プロデューサーの佐藤雅夫は角川春樹から「キャストはできるだけ派手に」と注文をされていたため、十兵衛に千葉真一、その父・柳生但馬守宗矩若山富三郎宮本武蔵緒形拳、四郎に沢田研二と、多彩な豪華メンバーを集めた[27]

原作を全て映画化すると、2時間前後の上映では尺が足りなくなるので、森宗意軒由井正雪の役割を天草四郎に与え、魔界衆の首領を一人に絞った[33]。魔人も計6人に抑え、ストーリーの展開が散漫にならぬようした[33]。男性のみの魔界衆ではインパクトに欠けるので、深作欣二は原作に無い細川ガラシャを魔界衆へ加えた[33]。山田風太郎は「ガラシャは思いつかなかった」と脱帽している[33]。ガラシャは当初、松坂慶子を配役しようとしたが、松竹に拒まれたと深作は述べている[20]

脚本[編集]

深作欣二が時代劇映画を監督するのは1978年の『赤穂城断絶』以来で、萬屋錦之介の要望を受け入れて、出来上がった作品は従来通りの忠臣蔵となり、忸怩たる思いが残っていた[24][34]。その無念を千葉真一の柳生十兵衛と山田の壮大な伝奇ロマンで、深作はリベンジしようと意気込んでいた[24][34]

半年を費やして完成した脚本は、原作で詳細に描かれている魔界側のドラマを徹底して削り、十兵衛と剣豪たちの決闘の連続を映画の見せ場に据えていた[27]。それぞれの殺陣は、深作と殺陣師菅原俊夫が話し合いを繰り返し、練っていく[35]。宮本武蔵を二刀流ではなく、巌流島佐々木小次郎を打ち負かしたを使って戦わせるというアイデアを、菅原が進言する[36]。このような物語が大好きな深作は、「フィクションをどうリアルに描いていくか」と、楽しそうに本作を仕上げていった[24]

撮影[編集]

約1年間の準備を経て、京撮の一角にある稲荷神社で無事完成を祈った後にクランクイン[37]。カメラには東宝長谷川清が招かれていた。しかし宝蔵院胤舜室田日出男は、菅原俊夫と共に宝蔵院流槍術の道場に通っていたが[38]の練習中に右足首捻挫[37]。伊賀の霧丸役の真田広之が、食あたりで入院[37]。細川ガラシャに決まっていた高瀬春奈は、クランクイン直前に病気降板[37]。複数のスタッフが事故・怪我を負うなど、予想外の出来事が次々勃発したため、角川春樹自ら神官となり、千葉真一・沢田研二以下の主要キャストと深作欣二以下スタッフが参列し、再び御祓いと御祭事が行われた[37]

江戸城が紅蓮の炎に包まれるクライマックスは、特撮による合成ではなく、京撮のスタジオ内に建てられたセットを[36]、実際に燃やして撮影された時代劇屈指の名シーンである[24][39]。通常の映画撮影では安全面を考慮し、火事のシーンで実際にセットを燃やさず、撮影用のバーナーとカメラアングルで、セット全体が燃えているように見せる[36]。深作欣二はバーナーで物足りないと思い、このシーンを最高の迫力で撮るために、セット全体を丸々燃やすと決めた[40]。京撮の所長・高岩淡以下、撮影所員が総出で消火器を構え、消防車にも待機してもらった[41]。しかもカメラはフィックス(固定)でなく、セットの中にレールを敷き、移動撮影となる[41]。カメラを固定して望遠レンズで撮るよりも、撮影班もカメラを持って炎の中に入ることで、迫力のある映像を求めていく[41]

俳優・スタッフ共に命がけで臨んだ撮影が敢行され、ワンカット4時間位が頻繁にあった[39]。このような状況なので、撮影はNG無しが原則だったものの、千葉十兵衛の登場シーンでは、みるみるうちに鬘に塗りこんでいる鬢付油から煙が立ち上り、刀のは燃え出していた[41]。消防班はできるだけ早く消したいと身構えていたが、深作がなかなかOKを出さず、セットの足場は燃え、炎はスタジオ棟の3階にまで達しようとしていた[42]。豪火の中で行われた十兵衛と父・宗矩の決闘は、華麗で凄みのある戦いとして劇中最大の山場・名勝負となっている[24][28]。千葉真一や若山富三郎は扮装のまま水をかぶり、重くなった衣装を身に纏いながら戦いを演じたほか、気の遠くなるような長時間を千葉は紅蓮の炎の中に立ちつくし、沢田研二も手の甲を火傷するケガを負っていた[39]。休みなくレンズを覗き続けた長谷川清は、炎で目がやられてしまい、シーン終盤には見ることができなくなっていた[42]

千葉真一は柳生十兵衛の扮装を今までより野性味のあふれるものへと強調し、皮をあしらった衣裳も一際その荒さを目立たせるようにしている[39]。それに対して天草四郎の扮装は南蛮風の異様で生々しい華美を備えたものとし、十兵衛と四郎のコントラストに仕上げられている[28]。四郎の扮装をデザインした辻村ジュサブローは本作で初めて衣裳デザインを手掛け[4]、これは後のリメイクにも踏襲された。沢田研二は撮影以外のスケジュールを全てキャンセルし、この作品に専念[28]。魔界衆は全員、目に金色のコンタクトレンズを着けることで化け物らしさを表現し、若山富三郎は魔界衆で生き返った以降の宗矩の不気味さを、一切まばたきをしないという演技で表現した[43]

原作に漂うエロティシズム・エゴイズムバイオレンスを、深作欣二のダイナミックでスピーディーな演出で、映画として新たな作品に変身した。原作の「女性の腹を割って出てくる」という“魔界転生”を特撮で描けないことはなかったが、「きれいな絵を作りたい」という深作の意向により、本作では意識的に取り入れていない[33]島原の乱で落城し、生首が並ぶシーンのほとんどが本物の人間を埋めており、背景を西方浄土の幻想的な茜色にし、死者がなぜ蘇るのか、蘇りたいのかを表現している[33]。四郎と伊賀の霧丸の接吻は脚本になく、深作が現場で突然言い出した演出である。

公開[編集]

日本国内の封切り公開は6月13日を初日と予定していたが、過去の作品がヒットしていないため、1週間早めて6日の6時から6週間、「666のオーメン」と称してロードショーされた[26]。1981年までの角川映画配給収入が右肩下がりで前年の『復活の日』では7億円の赤字を計上しており、「角川映画そのものが第一作以来大した物がない。キャッチフレーズを使った宣伝の派手な物量的大作にしか過ぎない」と白井佳夫に言われていたが[44]、公開するや否や東京都の東映直営映画館3館の前に朝早くから長蛇の列ができ、初日と2日目で2万5000人を動員[45]。観客層は6対4で女性のほうが多く、従来の男性客が多くを占める東映とは異なる動員をした[45]。初週の興行を「『魔界転生』に女性客殺到」という見出しで週刊誌は報道し、女性客を集めた直近の映画作品の例にたのきんトリオ主演の男性アイドル映画『青春グラフィティ スニーカーぶる〜す』(1981年2月公開)を挙げ、『魔界転生』と並べて配給収入を予想している[45]

海外では『Samurai Reincarnation』のタイトルで欧米では公開された。4年後の1985年には日本映画製作者連盟台湾へ日本映画輸出を再開したときに[注釈 4]、『砂の器』、『サンダカン八番娼館 望郷』、 『先生のつうしんぼ』、そして本作の4本が大ヒットした[46]。中でも本作は1985年10月に一般公開されると、それまでの台湾映画興行で同国記録を更新する歴代最大のヒットを記録した[47]

1983年4月1日フジテレビ時代劇スペシャルで、オリジナル解説VTR付きでTV初放送された。

後世への影響(1981年映画)[編集]

クエンティン・タランティーノの作品や、2012年ハリウッド映画アベンジャーズ』でサミュエル・L・ジャクソンは自身が演じたキャラクターに千葉真一の柳生十兵衛を取り入れるなど後世の作品にも影響を及ぼし[48]福岡ソフトバンクホークス監督秋山幸二は「あなたにとってサムライとは?」という問いに「千葉真一の柳生十兵衛は、生きるか死ぬか究極の真剣勝負というイメージがいい」と評するなど[49]、千葉十兵衛は根強い人気がある[48][49]。千葉の次男・眞栄田郷敦は「子どものころ、唯一父と一緒に観た映画です。ぶっ飛んだ演出なのに緊張感がすごい。大人になってからあらためて観ても、すごい映画だと思いました」と語っている[50]

時代劇専門チャンネルは本作を「千葉真一の殺陣の凄みを最も堪能でき、千葉の殺陣の引き出しの多さに驚かされる。若山富三郎との一騎打ちは、お互いの身体能力をぶつけ合った時代劇史に残る死闘となっている[51]」と紹介している。春日太一は「本来なら、対戦があり得ないはずの剣豪同士の対決が、実現している。全て好カードだが、中でも柳生親子の決闘は、千葉真一が若山富三郎から殺陣を教わっていたので、役者としても師弟対決であり、新旧アクションの名手対決であり、ワクワク要素満載の最高の対戦カードとなっている。決闘の前にお互い必殺技を身につけ[注釈 5]、両雄は対峙する。同じ流派なので、刀の構えからタイミングまで、全てが同じ。双方の互角感が映像から伝わってきて、ド迫力の決闘になっている」と、チャンバラの魅力を存分に堪能できる作品と述べている[43]

山田風太郎全作品を網羅したデータブックで夏葉薫は「深作欣二の代表作のひとつ。主演は柳生十兵衛役の千葉真一だが、ファンは皆この作品を『ジュリーの魔界転生』と呼ぶ。それほど天草四郎役の沢田研二は光っていた」と紹介・評している[52]。テレビCMでは四郎が唱える「エロイム・エッサイム」が流され、子供達の間でも流行り言葉になったという[45]三谷幸喜は2016年の大河ドラマ真田丸』で大坂の陣に参戦したキリシタン武将明石全登を演じる小林顕作に「映画『魔界転生』のジュリー(沢田研二)のように」と演技指示を出し[53]中田譲治は『超獣戦隊ライブマン』の敵幹部、大教授ビアスに扮した際の演技イメージ作りに『ラビリンス/魔王の迷宮』でのデビッド・ボウイと並べて「魔界転生の沢田研二」を取り入れたと語っている[54]

漫画では平野耕太が漫画『ドリフターズ』第3巻のカバー裏オマケで天草四郎をキャラクター化し、映画『魔界転生』のラストシーン同様、自分の生首を脇に抱え哄笑する首無し武者のデザインで描いているが、脇に添えられたキャラ解説は「ジュリー版とクボヅカ版で強さが100倍違う」「真田広之逃げて、超逃げて[注釈 6]」「サニー千葉 with ムラマサ[注釈 7]、やっとどうにかなるレベル」と[55]、平野が何の補足説明もなく1981年・2003年の映画『魔界転生』の感想を綴る内容になっていた。青山剛昌は少年剣士・鉄刃が妖怪じみた老翁・剣聖宮本武蔵に弟子入りし、悪鬼に呑まれたライバル剣士や現代に蘇った佐々木小次郎、柳生十兵衛、天草四郎や風魔小太郎松尾芭蕉沖田総司の6代目子孫、果ては地底人や宇宙人など古今東西の強敵と戦う少年漫画『YAIBA』のインスピレーション元になった映画として本作を挙げている[56]

ゲームソフトでは青山剛昌がキャラクターデザインも行い、本作フォロワー描写を登場させた1994年の『ライブ・ア・ライブ[注釈 8]』幕末編、ゲーム『装甲悪鬼村正』の続編漫画『装甲悪鬼村正・魔界編[注釈 9]』、ゲーム『サムライスピリッツ』に登場する天草四郎[12]、などサブカルチャー分野でもフォロワーを生んでいる。2013年の『真・女神転生IV』に登場する天草四郎時貞モデルのキャラクター「英傑トキサダ」の自分の生首を脇に抱えたデザインなど、映画のラストシーンで妖刀村正を携えた柳生十兵衛との決闘で刎ねられた自分の頭部を脇に抱え哄笑する天草四郎のヴィジュアルをパロディしたフォロワー作品もある。アニメ版『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』島原編の天草翔伍のデザインは、和月伸宏が本作のファンという事もあり、『サムライスピリッツ』版の天草四郎の流れを受けたデザインになっている。

サウンドトラック[編集]

  • 魔界転生 オリジナル・サウンドトラック(2020年12月30日/CINEMA-KAN/規格番号CINK-113)- 映画本編では未使用のイメージ曲も収録されている。

2003年[編集]

魔界転生 (2003)
監督 平山秀幸
脚本 奥寺佐渡子
出演者 窪塚洋介
麻生久美子
長塚京三
古田新太
加藤雅也
佐藤浩市
音楽 安川午朗
撮影 柳島克巳
編集 川島章正・洲崎千恵子
配給 東映
公開 日本の旗 2003年4月26日
上映時間 105分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 6.4億円[57]
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ストーリー(2003年)[編集]

島原の乱で死んだ天草四郎時貞が従者のクララお品を従え、堕天使のごとく復活した。10年ほど後、3代将軍徳川家光の時代、徳川幕府滅亡を志す四郎は鷹狩りに来ていた野心家の徳川頼宣を挑発する。彼に秘術を使って蘇らせた配下の現世に無念を抱く魔界衆荒木又右衛門、宮本武蔵、宝蔵院胤舜を差し向ける。又右衛門の襲撃を期に柳生十兵衛を始めとするお雛、伊達小三郎の柳生衆は秘術の生贄に誘拐されたおひろを追って戦いに参加する。戦いで魔界衆を破られた四郎はさらにクララお品の身体を使い徳川家康までも転生させる。

キャスト(2003年)[編集]

スタッフ(2003年)[編集]

製作(2003年)[編集]

1981年版で特撮を担当した矢島信男の弟子である佛田洋が特技監督を務めた[58]。視覚効果統括の橋本満明は合成会社でのアルバイト時代に1981年版に携わっている[59]。デジタル技術の向上により、1981年版では描写されなかった原作のシーンが映像化されている[60]

原作の魔界転生をCGで再現しており、性的描写はないが女の身体が割れて魔界衆が誕生する様子が描写される。佛田は原作に寄せるというコンセプトから性的描写を構想していたが、監督の平山秀幸に却下された[58]。転生シーンの描写案は難航し、撮影中盤以降になって決定された[59]

クライマックスの江戸城崩壊は佛田と橋本の案により、江戸城に十字の亀裂が入るという描写になった[58]。佛田は1981年版を担当した矢島から「前と同じことをやっても仕方ないから、今の技術で違うことを考えろ」と言われていたという[58]。平山の江戸城を再現するという意向により、時代劇では一般的な姫路城を用いた実景ではなくミニチュアで撮影された[58]

このほか魔界衆の目が十字架のように変わり、1981年の映画では描写されなかった「島原の乱」の合戦シーンがあり、竹田城で撮影された。十兵衛は隻眼ではなく、後に変化する。平山のイメージ案としてギュスターヴ・ドレによる『神曲』の挿絵をモチーフとした「翼の生えた天草四郎」があり[59]寺田克也によるイメージビジュアルなどに取り入れられている[60]

公開(2003年)[編集]

全国230劇場で公開され[61]、2003年4月26日・27日の全国週末興行成績(興行通信社)には観客動員数8位で初登場する[62][注釈 10]。やや期待外れの出足であり、『RED SHADOW 赤影』(2001年)の興収7億円前後を目指すスタートとなった[62]。公開2週目は10位[63]。最終興行収入は6.4億円となった[57]。本作は前年に東映の社長に就任した岡田裕介が社運をかけて製作したものの、『RED SHADOW 赤影』に続き、大コケした大作映画の1本と評されている[64]

演劇[編集]

1981年(演劇)[編集]

タイトルは『柳生十兵衛 魔界転生』。同年の映画を演劇化した作品で、「天草四郎は女であった」と新たな設定が加わり、志穂美悦子が演じている。同時上演は『スタントマン物語』(演出:千葉真一、企画監修:深作欣二、脚本:青井陽治、出演:真田広之・志穂美悦子)。千葉・志穂美・真田はこれが本格的な演劇出演であり、公演も第1回JACミュージカルと銘打たれていた。千葉はこれ以降ミュージカルを毎年企画・演出・主演し、1982年1983年1984年には『ゆかいな海賊大冒険』、1985年には『酔いどれ公爵』を上演していく。

キャスト(演劇)[編集]

スタッフ(演劇)[編集]

  • 企画 - 角川春樹
  • 脚本 - 土橋成男
  • 演出 - 深作欣二

上演日程[編集]


2006年[編集]

原作寄りの内容だが、魔界衆の総大将は2006年以前の映画・演劇・Vシネマ同様に天草四郎としている。

キャスト(2006年)[編集]

スタッフ(2006年)[編集]

上演日程(2006年)[編集]


2009年[編集]

劇団キリン食堂第6回公演[65]

キャスト(2009年)[編集]

  • 新井剣史
  • 松木威人
  • 大島つかさ
  • 藤浪靖子
  • 阿部朋矢
  • 町田光
  • 若林美保
  • 結樺レイナ
  • 長尾一広
  • 田口弘
  • 小菅博之
  • いぬいりさこ 
  • 渡辺健
  • 小島裕
  • 石橋正高
  • 佐藤幹
  • 永友イサム
  • 宮崎涼輔
  • 奥野雄大
  • 杉浦直
  • シノビトライ
  • 北薗亮介
  • 下田澪夏
  • 鈴木優奈
  • 石丸奈菜美
  • 藤原久美子
  • 菅原史子
  • 阿部あすか
  • 深月要
  • 高添耕輔

ゲスト[編集]

スタッフ(2009年)[編集]

  • 脚本・演出 - 久保田誠二
  • 製作 - 劇団キリン食堂

上演日程(2009年)[編集]


2010年[編集]

俳優集団・志道塾第8回プロデュース公演[66]

キャスト(2010年)[編集]

  • 柳生十兵衛 – 南保大樹
  • 柳生但馬 – 大田行雄
  • 天草四郎 – 池谷将之
  • 宮本武蔵 – 高橋聡
  • 宝蔵院胤舜 – 山田顕一
  • 荒木又右衛門 – 井上彰宏
  • お品 – 松本佐知子
  • お篠 – 岡田亜紀子
  • お比呂 – 田村友紀
  • お縫い – 竹澤希里
  • 海斗 – 三島亮太
  • 又吉 – 木村勇太
  • 佐平 – 城田忠尚
  • あかね – 工藤沙織
  • 徳川頼宣 – 水野駿太朗
  • 牧野兵庫頭 – 坂根直樹
  • 松平伊豆守 – 長友倫夫

スタッフ(2010年)[編集]

  • 脚本・演出 – 大田行雄
  • 製作 – SHIDOエンタープライズ

上演日程(2010年)[編集]


2011年[編集]

劇団ヘロヘロQカムパニー第25回公演。敵方の総大将を天草四郎にする流れを踏襲しつつ、オリジナルの解釈が加えられている。

ストーリー(2011年)[編集]

時は徳川家光の時代。「島原の乱」終結に端を発し、徳川への復讐に燃える天草四郎の手によって、忍法「魔界転生」で名だたる剣豪たちがよみがえり、稀代の剣豪と言われる柳生十兵衛と柳生七人衆が迎え撃つ。紀州和歌山を舞台に、両陣営の血で血を洗う戦いが繰り広げられる。

キャスト(2011年)[編集]

スタッフ(2011年)[編集]

  • 脚本・演出 – 関智一
  • 演出協力 – 中博史
  • 製作 – 劇団ヘロヘロQカムパニー・八田麻衣子

上演日程(2011年)[編集]


2013年[編集]

Rooter公演[67][68]

キャスト(2013年)[編集]

  • 柄谷吾史
  • 田中照人
  • 松木賢三
  • 加藤巨樹
  • 武原広幸
  • 飯泉学

ゲスト(2013年)[編集]

スタッフ(2013年)[編集]

  • 脚本・演出 – 吉谷光太郎
  • 音楽 – tak
  • 振付 – MAMORU
  • 殺陣 – 奥住英明(T.P.O.)
  • 舞台監督 – ソマリ工房
  • 美術 – ソマリ工房
  • 照明 – 奥村誠志郎
  • 音響 – 相川幸恵
  • 衣装 – 車杏里
  • ヘアメイク – earch
  • プロデューサー – 坂享宣
  • 企画・制作 – クリエイティヴ零

上演日程(2013年)[編集]


2018年[編集]

日本テレビの開局65周年を記念しての公演[69] であり、同じくマキノノゾミ脚本・堤幸彦演出の『真田十勇士 (2014年の劇作品)』の続編的な要素が満載の作品となっている。[70]

キャスト(2018年)[編集]

スタッフ(2018年)[編集]

上演日程(2018年)[編集]


2021年[編集]

2018年版の再演[71] 。再演にあたって、メインスタッフはそのまま、キャストは変更もあるが続投もいる。

キャスト(2021年)[編集]
  • 柳生十兵衛 – 上川隆也
  • 天草四郎 – 小池徹平
  • お品 – 藤原紀香
  • 根津甚八 – 村井良大
  • 柳生又十郎 – 木村達成
  • 田宮坊太郎 – 田村心
  • 小栗丈馬 – 岐洲匠
  • 戸田五太夫 – 宇野結也
  • 荒木又右衛門 – 財木琢磨
  • 由比正雪・叢雲常陸 – 山口馬木也
  • 宮本武蔵 – 渡辺大
  • 淀殿 – 浅野ゆう子
  • 柳生宗矩 – 松平健
  • 宝蔵院胤舜(野添義弘)
  • すず(立石晴香) 
  • 磯谷千八(小波津亜廉
  • 内藤主膳(横山一敏)
  • 岩浅重成(真砂京之介)
スタッフ(2021年)[編集]
  • 企画・製作 – 日本テレビ
  • 脚本 – マキノノゾミ
  • 演出 – 堤幸彦
  • 音楽 – ガブリエル・ロベルト
  • 美術 – 松井るみ
  • 照明 – 高見和義
  • 音響 – 井上正弘
  • 衣裳 – 宮本宣子
  • ヘアメイク – 川端富生
  • 映像 – 高橋洋人
  • ステージング – 広崎うらん
  • 殺陣 – 諸鍛冶裕太
  • 演出助手 – 松森望宏
  • 舞台監督 – 小川亘
  • プロデューサー – 松村英幹
上演日程(2021年)[編集]

Vシネマ[編集]

解説[編集]

オリジナルビデオとして製作された。The ARMAGEDDONというサブタイトルがつき、2部構成となっている。第1部の正編に続き、第2部の魔道変まで、魔界衆・妖怪たちとの対決を描く。映画版と違い、森宗意軒は登場しないが由比正雪が首領で、原作と同様に天草四郎は配下の一人となる。撮影は長谷川清#1981年の映画に引き続き、参加している。第1部は1996年4月26日発売、85分。第2部は同年10月4日発売、83分。

ストーリー(Vシネマ)[編集]

魔界からの使者、由比正雪は覇権を狙う徳川頼宣のもと、天草四郎時貞、宝蔵院胤舜荒木又右衛門、柳生宗矩、宮本武蔵などの7人を魔界衆として復活させる。柳生十兵衛がその陰謀に挑む。

キャスト(Vシネマ)[編集]

スタッフ(Vシネマ)[編集]

漫画[編集]

魔界転生(石川賢)[編集]

作画は石川賢で、自ら山田風太郎原作で描きたいと角川に打診し、『甲賀忍法帖』を希望したところ、過去に角川で映画化された本作を指定されたという。山田からの要望による縛りが一切無かったことから、石川賢の個性的なアレンジで全くの別物に仕上がっている[74]。主な相違点として、魔界衆は幕府転覆も目論むが、真の目的は魔界と魔王サタンの現世への召喚である。そのため、天草四郎がサタンの一部分という設定で魔界衆の首魁になっている他、原作では転生しない徳川頼宣が転生し、柳生如雲斎の登場がない。魔界転生の素体となる女たちも、クララお品とベアトリスお銭は登場せず、ベアトリスお品とクララお清となり、役回りにも違いが見られる。

魔界転生(とみ新蔵)[編集]

作画はとみ新蔵。前半は原作を踏襲した漫画化。後半よりオリジナル展開。

魔界転生―夢の跡(鳥羽笙子)[編集]

全2巻。2003年版の映画に合わせて角川系列の少女漫画誌で連載された。導入と終盤こそ1981年版映画をベースにして天草四郎を首魁にする流れを踏襲しているが、森宗意軒と由比正雪が天草四郎に随伴しているなど原作要素も取り入れられている。

魔界衆の中で一人だけ人の心を残したまま魔界衆になったというオリジナル設定のもと田宮坊太郎を主人公に据え、江戸城本丸の決戦まで坊太郎を生き残らせるアレンジが加わっている。

天草四郎側に付く小西行長の血筋の子供「お類」(名は『魔界転生』原作版田宮坊太郎の想い人と同一だが、名前以外は完全に『夢の跡』オリジナルキャラクター)が天草四郎・田宮坊太郎とおひろ・十兵衛それぞれに関わる。坊太郎とお類の交流は1981年版映画における伊賀の霧丸とお光のそれを彷彿させる描写になっている。

お雛とおひろの役割も原作と大きく異なり、おひろは生前の坊太郎の想い人(本編では既に故人)・お雛はおひろに生き写しの実妹という役回りになっている。

魔界転生―聖者(ベアト)の行進(九後奈緒子)[編集]

全1巻。2003年版の映画に合わせて角川系列の少女漫画誌『月刊ASUKA』で連載された。全3話の短期連載のためか、登場する魔界衆は天草四郎、宮本武蔵、柳生宗矩のみの超ダイジェスト版。掲載誌のカラー故か森宗意軒と天草四郎、天草四郎と柳生十兵衛の間にボーイズラブ調の脚色が加わり、男性キャラクター同士の執着と愛憎劇が主体になっている。

十 〜忍法魔界転生〜[編集]

原作をほぼ踏襲し、漫画化された。

アニメ[編集]

1998年、アミューズビデオによりOVAとしてアニメ化。「地獄篇 第一歌」「地獄篇 第二歌」の2作が発売されている。当初は全4巻の予定だったが、製作取り止めとなったため、未完となっている。

十兵衛が公儀隠密として島原の乱に参加しており、城に乗り込んできた彼に対して、四郎は自らの首級と引き換えに城の女子供たちの助命を依頼。

快諾する十兵衛だったが、宗意軒の策略により決裂、壮絶な死闘の末に十兵衛に敗れた四郎は怨嗟の言葉を遺して死亡するという、四郎と十兵衛との間に個人的因縁を生じさせる独自の展開になっている。

キャスト(アニメ)[編集]

スタッフ(アニメ)[編集]

ゲーム[編集]

ローグライクゲームで、2003年7月31日PS2専用ソフトとして発売された。開発はタムソフト、販売はディースリー・パブリッシャー。発売に際し日枝神社にて、厄除け祈願が行われている[75]。2003年版映画がベースになっており、秘術の生贄に誘拐されたヒロイン・おひろを救出するため戦いに身を投じた柳生十兵衛を操作し、ゲームを攻略していく。魔界衆を統べる首魁が天草四郎とクララお品のカップル、おひろとお雛が双子の姉妹になっているなどの独自アレンジが加わっている。

キャスト(ゲーム)[編集]

イベント[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 脚色の経緯は、#キャスティング#脚本#撮影の各節を参照のこと。
  2. ^ 中川右介は「キャストや映画のシーンは豪華だったが、抑えられた製作費になった」と書いているが[19]深作欣二によると「東映京都撮影所の既存の道具や施設を使ったので、製作費が膨張しなかった」と述べている[20]
  3. ^ a b c d 柳生十兵衛光厳の「光厳」だが、「三厳」ではなく「光厳」と、本作パンフレットの登場人物紹介や[21]、キャスト一覧に[22]、それぞれ表記されているため、当該記事もこれに則った。
  4. ^ 1972年の日中国交正常化以降、1973年から台湾への映画輸出は禁止されきた[46][47]
  5. ^ 宗矩は自分より剣の実力で勝る十兵衛に勝つために、魔界に魂を売って無敵の力を手に入れる[43]。十兵衛は妖刀村正を手にし、全身に梵字を書き入れ、魔力を封じ込める[43]
  6. ^ 真田広之演じる伊賀の霧丸が、沢田研二演ずる天草四郎に接吻された。
  7. ^ 千葉真一演じる柳生十兵衛は、妖刀村正を駆使して、天草四郎の頸を刎ねた。
  8. ^ ライブ・ア・ライブ』幕末編の内容も、悪魔に魂を売り渡した藩主に誘拐された維新の要人を救出する密命を負った「炎魔忍軍」の若き忍者が魔窟となった城内に潜入し、幕末の世に蘇り不死を自称する天草四郎淀君の怨霊や強敵を求めて彷徨う宮本武蔵の亡霊と戦うほか、最強武器が「むらまさ」など『魔界転生』のストーリーを彷彿させるものになっている。
  9. ^ 『装甲悪鬼村正・魔界編』は時代を越えて召喚された13人の剣客と『装甲悪鬼村正』本編主人公との死闘を描く筋書き。召喚される歴史上の英雄の顔ぶれに天草四郎や細川珠、柳生十兵衛などが抜擢され、最終戦を宮本武蔵との浜辺での決闘で締めくくっているなど、タイトル通り作品そのものが原作と本作のオマージュになっている。
  10. ^ Box Office Mojo(ドル表記)によれば興行収入ベースでは初登場5位(81.6万ドル)となっている[61]

出典[編集]

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参考文献[編集]

※異なる頁を複数参照をしている文献のみ。発表年順。

外部リンク[編集]